MTV UNPLUGGED - KAELA KIMURA

ABOUT MTV UNPLUGGED

「MTV Unplugged」は、“プラグを抜いた”の意の通り、アコースティックな手法とオーディエンスとの親密な距離にこだわり、独特の緊張感と一体感に包まれたライブ空間を実現する、MTVが誇る大人気企画。1989年にニューヨークで初めて実施されて以来、エリック・クラプトンやマライア・キャリー、オアシスといった音楽界のスーパースターから、アデル、ケイティ・ペリー、アダム・ランバートらポップシーンの実力派まで、100組を超えるアーティストが出演し、「出演できるのは一流の証」とさえ言われている。日本制作ではこれまで第1回の宇多田ヒカルをはじめ、計29組が出演しており、今回、木村カエラは通算31作目の「Unplugged」に挑む。

ON AIR INFORMATION

  • 「MTV Unplugged: Kaela Kimura」

    1月15日にBillboard Live TOKYOで行われたMTV伝統のアコースティックライブ「MTV Unplugged: Kaela Kimura」の模様をお届け。

    2017年2月26日(日)22:00-23:00 他

  • 放送日をカレンダーに登録
  • 「木村カエラ: KAELA presents GO!GO! KAELAND 2014 -10years anniversary- "Rockin' ZOO"/"Poppin' PARK"」

    木村カエラがデビュー10周年を記念して、2014年10月に横浜アリーナで開催したワンマンライブ2日間の模様をお届け。

    2017年2月18日(土)・19日(日)20:30-23:00 他

  • 放送日をカレンダーに登録
★レポート

LIVE REPORT

『Butterfly』『TODAY IS A NEW DAY』『向日葵』など、全14 曲を披露

2017-01-15
  • Photo木村カエラが「MTV」伝統のアコースティックライブ『MTV Unplugged』の公開収録を行った。現在、年を跨いだ2つのツアーを開催中の彼女にとっては、昨年秋にファイナルを迎えたライブハウスツアー「STUDS TOUR」と、1月末からスタートするホールツアー「DIAMOND TOUR」とも異なる、1日限りのスペシャルなライブ。バンドはヒイズミマサユ機(P)、會田茂一(G)、佐藤征史(くるり/Ba)、柏倉隆史(Ds)による豪華な現ツアーメンバーに、チェロの徳澤青弦を迎えた5人編成。オーディエンスは、リラックスしたムードの中で、ツアーとは色彩の異なる音色とグルーヴを存分に味わった。大きな拍手と歓声に迎えられてステージに登場したカエラは、オープニングナンバーにまさかの「Yellow」を選んだ。彼女が刈り上げでソフトモヒカンにしていた時期のエッジーなパンクロックであり、アコースティックライブはゆったりしたものという、つまらない固定概念を一瞬にして吹き飛ばされた。金色に輝くノースリーブのロングドレスを身にまとった彼女は、椅子に座ったまま歌唱。普段のライブでは観客を煽りまくる曲だが、動きがない分だけ、全てのエネルギーがマイク一点に集中して向けられており、その歌声にはパンキーな自分を取り戻すんだという激しい情熱が込められていた。続く、「SHOW TIME」では観客からクラップが起き、一人一人の顔を見ながら表情豊かに歌い上げていた彼女は、足を力強く踏み出す仕草を見せながら、ショウの始まりを高らかに宣言し、大きな拍手と喝采を受けた。最初のMC で観客に向けて新年の挨拶をした彼女は、「今年、初めてのライブなので、いいライブにしたいのです。いつもと違って、大人なしっとりしたライブになっていくと思いますが……いや、ならないかな? どうなるかわかりませんが(笑)、最後までゆっくり楽しんでいってください」と語り、絵本のような世界が語られるバラード「ワニと小鳥」と「Butterfly」を続けて披露。絵本のページをめくるように丁寧に語るカエラの優しい歌声とチェロのチャーミングな響きは、喪失感でいっぱいのワニの上で小鳥が羽ばたき、運命の花を見つけた白い蝶が羽ばたく風景を引き連れてきてくれた。ここでベース、ギター、ドラムが一旦退場。カエラがアコギを弾き、ヴォリュームを抑えたピアノとチェロの3人だけで演奏された「リルラ リルハ」は、明るく元気なカエラのパブリックイメージを決定づけた初期のヒット曲だが、テンポを落とした演奏からは、壊れそうな心をなんとか支えようとする、弱さの中の強さのようなもの浮かび上がってきて新鮮であった。「TODAY IS A NEW DAY」はピアノとチェロのみで、歌声だけでスケール感を広げていくような構成。その歌声には胸を打つものがあり、歌い終えた彼女にはこの日一番の万雷の拍手と喝采が浴びせられた。再びバンドメンバー全員を迎え入れた彼女は、「デビュー前、高校生のときに衝撃を受けました。女の人は優しく歌わないといけないものだと思っていたんですが、彼女は力強く歌っていて。こんな風な歌い方がしたいと憧れていたバンドであり、人でした」と語り、グウェン・ステファニーがヴォーカルをつとめていたパンクバンド、ノー・ダウトのヒット曲「Just A Girl」をカバー。表現の方法は様々だけれども、彼女のルーツであり本質は、いつどんな時でもパンクなのだと知らされる思いがした。英語歌詞がメインのパンクロック「TREE CLIMBERS」は、デビュー前の彼女が追い求めていた理想像の1つの到達点だろう。テンポは変わってないが、いつもであればステージ上を所狭しと動き回り、くるくると回転する彼女が、この日は椅子に座ったまま、まっすぐに前を見つめて、まさに力強く歌い上げていた。客席からは自然といつものライブでお馴染みのクラップが沸き起こった。最後に発せられた音が空中ですっと消えていくようなエンディングもかっこよく、その余韻はなかなか消えることはなかった。

  • Photo会場を熱く盛り上げた彼女は、「EGG」「Sun shower」とエモーショナルなバラードを続けた。この堂々たる歌いっぷりには目を見張るような力強さと開放感、どこまでも突き抜けていくような広がりがあった。日々のモヤモヤを全部、洗い流したかのような晴れやかさと清々しさを与えてくれてた彼女は「すごいしっとりしてるでしょ?」と茶目っ気たっぷりに語りかける。そして、自分の気持ちを胸の奥にしまわずに、相手に伝える必要性を歌った「You」、一人ぼっちではないことに気づき、笑顔で前を見て、今を生き、新しい日へと向かうんだと高らかに歌い上げる「僕たちのうた」。そして、いつもキラッキラワクワクしていたいんだという決意を込めた「BOX」へ。椅子から立ち上がり、大きく手を広げて歌う<これからも/この先も/わたしらしくありたい>という宣言に対し、観客は彼女の背中を手拍子で応えた。最後に彼女が「誰かを大切に思えることは、とても素敵なことだと思います。そんな歌を歌いたいと思います」と語ると、ステージ後方の幕が開き、イルミネーションで彩られた東京の夜の街が見えた。くるりの岸田繁作曲によるクラシカルで上品なメロディラインを情感豊かに歌い上げた彼女は、<胸がぎゅっと痛い!>という叫びにも似た歌声を観客の胸に残して、客席に手を振りながらステージを後にした。木村カエラといえば、激しくアグレッシヴなパフォーマンスでライブハウスに集まった観客を熱狂させるロックアーティストというイメージが強いだろう。もちろん、それは決して間違いではないことがこの日も証明されたが、彼女の一面に過ぎないことも確かだ。無条件で聴き手の体を動かし、叫ばせ、興奮させるようなアップテンポの楽曲であっても、その歌詞には彼女の心の状態が描かれており、想像力を喚起させるストーリーがあり、聴き込めば聴き込んだだけ感情の陰影に触れてくるような深さとメッセージ性が込められている。また、小さなライブハウスから活動を開始した彼女だが、デビューから13 年目に入り、ヴォーカリストとしても日々、進化と成長を遂げていることも実感した。そういった意味で、『MTV Unplugged』は、彼女の“歌の言葉”にじっくりと耳を傾け、タフさと説得力を増したヴォーカル力に近距離で触れることができた、またとない貴重な機会となった。

    Photo: 田中聖太郎
    Text: 永堀アツオ