11月15日(日)21:30よりMTV Japanで日本初放送となる「2020 MTV EMA」にてホストという大役を務め、スペシャルパフォーマンスで視聴者を熱くさせたイギリス発の大人気ガールズ・グループ、リトル・ミックス。今回はその直前にリリースされたニューアルバム『コンフェティ』を記念し、改めてリトル・ミックスの魅力や新作の聴きどころについて紹介したいと思う。
同年、BBC3で放送されたのが、ドキュメンタリー番組『Jesy Nelson: ʻOdd One Out'』だ。SNSの普及で、近年大きな社会問題となっているネットいじめ。ジェシーもその標的となり、リトル・ミックスとして活動し始めてから5年の間に、ネット上の誹謗中傷やいじめが原因でうつ病や摂食障害を患い、自殺を試みたこともあるという。多くの人の助けもあり、ネット上の無慈悲なコメントに悩まされることが少なくなった彼女が、「今度は自分が救う番だ」と自身の経験について初めて公に語ったのがこの番組だ。放送されるや否や大きな反響を呼ぶと、BBC3 史上最も視聴されているノンフィクション番組に。それだけでなく、視聴者投票で受賞作品が選ばれる英ITV主催の「第25回ナショナル・テレビジョン・アワード」にて「ベスト・ファクチュアル・プログラム賞」をも受賞した。
2019年にビキニ&スイムウェア・ブランド「In 'A' Seashell」をローンチし、「貝殻のように、私たちはそれぞれに違うストーリーがあり、ユニークで美しい」とボディポシティブなメッセージを発信していたレイ・アンは、唯一のブラック・メンバーだ。2020年はSNSやテレビ番組のインタビューなどを通じ、自身が経験したエンタメ業界の人種差別などを発信し、ブラック・ライヴス・マター運動を支持。様々な著名人が出演し、これまでの経験や若い世代の黒人たちを影響している問題、そしてどのように良い変化をもたらしていくかについて語り、世界的なブラック・ライヴス・マター運動をサポートする番組『MTV Generation Change: Black Lives Matter』にも出演を果たした。
リトル・ミックスといえば、メンバー全員がLGBTQ+コミュニティのサポーターとして知られている。イギリスの雑誌「Attitude」主催アワードでは「ゲイ名誉賞」を授賞しており、2ndアルバム『ゲット・ウィアード』収録曲「Secret Love Song」は同コミュニティのアンセムとして人気が高い。特にサポーター活動に力を入れているジェイドは、プライドバレードへの参加や慈善団体への募金など様々な活動に参加。2020年5月には、人気ドラァグ・クイーンたちと料理対決を行う冠番組『Served! With Jade Thirlwall』に出演。また、9月に開催された「ニューヨーク・ファッションウィーク」では、新鋭デザイナーのクリスチャン・コーワンと、同性愛者であることを公言しているアーティストのリル・ナズ・Xがコラボレーションした2021年春夏コレクションを着用。同コレクションの売り上げの一部は黒人のLGBTQ+コミュニティに寄付されるという。
そんな4者4様の活動も目立つリトル・ミックスだが、決してグループ活動を忘れることはない。5thアルバム『LM5』関連のシングルリリースが落ち着くと、2019年6月にはソウル・トゥ・ソウルの「Back to Life」をサンプリングした「Bounce Back」を、11月にはクリスマスソング「One I've Been Missing」をリリース。そして今年3月には、新たな時代の幕開けを告知。来たるニューアルバムのリードシングル「Break Up Song」をリリースすると、コロナ禍であることを逆手にとり、一人ひとり撮影した映像とフェルトアニメを組み合わせたMVや、リモートでメンバー/ファンが撮影した映像をコラージュしたロックダウンVer.のMVを公開し、ファンにポシティブなパワーを届けた。
10月に差し掛かると、いよいよアルバム発表までカウントダウン。「Not a Pop Song」 「Happiness」「Sweet Melody」とアルバムからの楽曲を少しずつ公開し、期待を煽っていった。そして満を持して届けられたのが、6thアルバム『コンフェティ』である。
幅広い音楽性は健在。より深みのある歌詞にも注目を!
今までに60〜80年代風から、ファンク、ロック、R&B、ラテンポップ、エレクトロなど様々なテイストの楽曲を歌いこなしてきた4人。前作『LM5』は洒落たアーバンサウンドで統一していたが、『コンフェティ』では再び色とりどりのサウンドを届けてくれている。シングルカットされた「Break Up Song」 「Holiday」はキラキラとした80年代風のポップ・ソング。一方、「Happiness」 「Rendezvous」 「If You Want My Love」は、ドラマティックなシンセキーボードの音色やヴォーカルの掛け合いが90年代のポップグループを彷彿とさせる。そんな年上世代にはふんわりと郷愁を、新世代には新鮮さを与えるテイストだけではなく、トラップを取り入れた「Nothing But My Feelings」「Not A Pop Song」など、流行りのサウンドも楽しむことができる。ちなみに、ミッシー・エリオット、ニッキー・ミナージュなどのベテラン勢からマシン・ガン・ケリー、タイ・ダラー・サインといった旬のアーティストまで華麗なるコラボ遍歴を誇る彼女たちだが、本作にはコラボ曲が一切ない。その分、4人の力強く美しいヴォーカルやハーモニーの魅力を存分に堪能することができる。
さて、前作『LM5』では「フィメール・エンパワメント」をテーマに据え、自分らしさ、個性を受け入れることの大切さを訴えていた彼女たちだが、『コンフェティ』でもそのマインドを忘れていない。「Happiness」では「思い出したの 私は私のものだった / あなたのものになる前は / だから諦めて / あなたがいなければ私はもっと強い」 「誓うわ / もう二度と自分を見失ったりしない」と、自分自身を愛することをテーマに熱唱。「Not a Pop Song」では「サイモンの言いなりにはならない / 私のメッセージをちゃんと受け入れて / 人生はいつだってフェアじゃない / 夢を追いかけろと言われて / 紐に吊るされた操り人形になる / それでうまくいく人もいるけど 私は違う」と自立心をアピール。実はこの"サイモン"とは、英語圏の子供向けのゲーム"Simon Says"に引っ掛け、他でもない『XファクターUK』の審査員であり、リトル・ミックスが所属していたレーベル〈Syco〉代表のサイモン・コーウェルのことなのではないかと、注目を集めている。彼女たちは『LM5』制作中、〈Syco〉と同じ〈ソニー〉傘下の〈RCA〉に移籍。後にジェイドはSun誌にて、「(〈Syco〉では)私たちのクリエイティビティを、私たちが望むような形で表に出すことが難しくなってしまった」 「『LM5』のアルバムは、女性の権利と私たちの業界での経験に重きを置いたもの。私たちはある種の航海の最中と言えるのだけれど、そのキャリアの中で、あの頃はかなり厄介な時期だったと言える」と言及。"ありのままの彼女たち"を受け入れようとしないサイモンの策略にはもう乗らないと、改めてノーを突きつけているのが「Not a Pop Song」なのだ。
来たる2021年は、リトル・ミックス結成10周年イヤー。それに向けて、彼女たちは若手育成にも力を入れ始めている。今年9月からは、彼女たち自身が審査員・メンターとなって新グループ結成に携わるオーディション番組『Little Mix The Search』がスタート。次のツアーの前座を務める若手グループを生み出すため、精神的な面も含めてサポートを行なっている。2018年にはForbes誌が選ぶ「30歳未満の30人」のヨーロッパ版のリストにも入っていたリトル・ミックス。今後もアーティストとして、社会活動家として、さらなる高みへと向かうことだろう。