2017-07-31
上白石萌音インタビュー: 本当に宝箱のような一枚ができたなと思って、感謝しかないです



16歳の時、映画『舞妓はレディ』で初主演を務め、日本アカデミー賞新人俳優賞など多数受賞。以降、舞台での主演や新海誠監督の大ヒット映画『君の名は。』でヒロインの宮水三葉の声を演じ、お芝居はもちろん、歌手としても高い表現力でファンを増やしている上白石萌音。昨年10月に、映画主題歌やカバー曲を収録したデビュー・ミニアルバム『chouchou』を発表したが、今回、すべてがオリジナル曲によるアルバム『and...』をリリースする。これまでに縁のあった人たちと作り上げたアルバムであり、このアルバムが人と人とをつなぐ一枚となればという思いを込めたタイトルのもと、秦 基博や内澤崇仁(androp)、同年代の藤原さくらなど、多彩なアーティストを迎えたアルバムとなっている。情緒豊かにバラードやゆったりとした曲を歌い上げる、これまでの印象ともまた違った、上白石萌音の新たな面や等身大の気持ちがうかがえる内容だ。

─昨年度の「MTV VMAJ 2016」にゲストとしてご出演されましたが、どんな印象でしたか。

藤原さくらちゃんと初めて会ったのが、実は「MTV VMAJ 2016」だったんです。わたしがプレゼンターをさせていただいた時、さくらちゃんは新人賞を受賞したんです。暗闇の廊下ですれ違って、お互いに気づいてはじめましてのあいさつをしたのが出会いです。そこから、音楽番組で一緒になったり、楽屋が隣になったりして。お互いにグループではなく、ソロで自分の名前でやっているから、自然に歩み寄っていて、仲良くなったんです(笑)。それがはじまりだったので、MTVさんのあのイベントがなかったら、今回の曲も生まれていなかったかもしれないです(笑)。

─ではせっかくですので、藤原さくらさんが楽曲提供をした「きみに」のお話から伺おうと思います。この曲は、どのように制作が進んだのでしょう。

プライベートで仲良くさせてもらっていて、わたしのなかでいつか一緒にできたらいいなと思っていたんです。それを察したスタッフさんが、さくらちゃんにお願いしてくださって(笑)。それくらい、いろんなスタッフさんにさくらちゃんの話ばかりしていたんですよね。さくらちゃんも快く引き受けてくれて、すぐに4曲くらいデモを送ってくれて。そのなかから選んで、わたしが生まれて初めて詞をつけたのが「きみに」なんです。

─共作という感覚もありますね。

本当は、どちらかのおうちに行って……ということを思い描いたんですけど、それはスケジュールの関係でできずに、ただひたすらにさくらちゃんのことを思って詞を書きました。

─何曲か送ってくれたなかから、この「きみに」を選んだのは?

いちばん言葉が浮かんだのが、この曲だったんです。わたしがとても好きな雰囲気の曲だし、今まであまり歌ってこなかった雰囲気の曲で。あとはやっぱり、さくらちゃんのカラーも持った曲だったので、これを一緒に歌いたいなと思いました。

─レコーディングは一緒にできたんですか。

コーラスを一緒に録ったんですが、楽しかったですね。ひとりずつブースで録っていたんですけど、どちらかが録っているときは、片方がディレクションのところに座って、トークバックで「いいよ〜」っていう(笑)。音楽を通して、一緒に遊んでいる感覚でした。普段、一緒におしゃべりをしている時間の延長線のような時間で、すごく楽しかったんです。友だちとしてもアーティストとしても大好きなさくらちゃんと一緒にお仕事をできたのが、幸せでしたね。

─歌詞について、藤原さくらさんは何かおっしゃっていましたか。

「いいね、いい歌詞」って言ってくれました。書いてくれた曲に歌詞をつけて、それを本人に見せるっていちばん緊張した瞬間なんですけど、すごく気に入ってくれて、嬉しかったですね。

─今、こうして初のオリジナルアルバムが完成して、率直にどう感じていますか。

それぞれの曲のカラーがバラエティに富んでいるので、レコーディングをしながら、これ一枚にまとまるのかなって心配だったんです。けれど、すごく面白い形で、ぎゅっと一枚のアルバムになりました。自分で聴いても、わたし、こんなにいろんな声が出せるんだって気付かされましたね。今回は、本当に大好きな、これまでご縁のあった方々に曲を提供していただいて。その曲にいちばん合う声で歌いたいと思ったし、いちばんその曲が伝わる歌い方で歌いたいと思って。そこをとことん突き詰めたので、それがいろんな色になったのかなと思ってます。クレジットに並んでいる名前を見るだけでも、胸がいっぱいになります。本当に宝箱のような一枚ができたなと思って、感謝しかないです。

─1曲目の「告白」は、秦 基博さんによる曲です。プロデュースも秦さんがされていますが、レコーディングで実際に歌のディレクションなどもされたのですか。

実は曲を作っていただいてから、スケジュールが合わずお会いできていないんです。秦さんがいる場所でレコーディングというのは叶わなくて。でも、仮のオケにわたしが仮歌を入れて、それを秦さんが聴いて、本番のオケをレコーディングしていただいて、それにまたわたしが歌をレコーディングするというやりとりだったんです。その仮歌を聴いていただいた段階で、いろいろなアドバイスを送ってくださったんです。同じ空間にいてのレコーディングはできなかったんですけど、すごく安心感がありました。アレンジャーの皆川真人さんも、秦さんとずっと一緒にやられている方なので、「秦くんはこういうふうに言っていたよ」って、その場で言ってくださったりして。でもやっぱり、完成してから秦さんに聴いていただくまでは緊張しました。

─秦さんとの出会いは、何がきっかけだったのでしょう。

わたしにとって初めての音楽番組の収録で、お会いしたんです。ちょうどその収録の日に、デビュー・ミニアルバムの『chouchou』ができあがったんです。できたてほやほやのアルバムの第一号は、秦さんにお渡ししたんです、偶然だったんですけど、それがはじまりでしたね。

─今回のアルバムの、ご縁がある方々というのは、本当にそうしたゆかりの深い方ばかりなんですね。

そうですね。秦さんも新海誠監督と繋がりがあるじゃないですか(劇場アニメ『言の葉の庭』の主題歌を手がける)。そういう意味でも、初めましての気もあまりしなくて。そこから2、3回音楽番組でご一緒して。秦さんをお見かけすると、安心するっていうところまでいってます(笑)。

─なぜこの「告白」という曲を、萌音さんに書いてくれたのだと感じていますか。

秦さんが、コメントを寄せてくださったんですけど、わたしの持つ雰囲気や声に引っ張られてこの曲ができましたと言ってくださって。歌詞も、わたしのことを言い当てられている歌詞で、すごくドキッとしたんです。なんで秦さん、こんなにわたしのこと知っているんだろうって(笑)。初めて聴いた時には、涙が出ましたね。秦さんの声で歌われたデモだったので、なおさら。

─歌うときにはそこから自分のストーリーへと、変えていくんですね。

自分のなかにもある感情だったし、むしろ自分が思っていたことが歌詞になっていたので、そんなに考えて作り込むことはあまりいらなかったなと思います。等身大で歌えた感じでした。

─androp内澤崇仁さんの曲「ストーリーボード」も、いい曲ですね。

すごく素敵ですよね。わたしが初めて出演したショートフィルムの主題歌もandropさんだったんです。初めての楽曲提供だったそうです。そういうご縁から6年が経って、今回作っていただくことになりました。それでお会いした時に、5、6曲のデモを作ってきてくださったんです。どの曲も本当に素晴らしくて、選ばなきゃいけないのかなと思ってしまいました(笑)。でもとくに「ストーリーボード」の歌い出しにある、“わたしなんて……”っていう気持ちって、わたし自身がずっと思っていたことでもあるんです。でもそれがとても前向きに歌われていて。こういうふうに思える人になりたいなと思ったし、ドキッとしましたね。どの曲がいちばん好きでしたかって、言われた時に、この曲ですと言ったんです。それが結果的にこうして形になって。歌うたびに、グッときます。内澤さん節もありますしね。

─内なる気持ちを丁寧に描いているけれど、とても絵が浮かんでくる曲に仕上がりましたね。

ハッピーなのにすごく切なく聞こえるんですよね。それは、魔法みたいだなと思いました。レコーディングは一本集中みたいな感じで、最初から最後まで歌って、いいテイクをという感じだったんですけど、ストーリーがある曲なので、難しさがありました。わたしは、長距離走とかで最初の方に体力を使い切っちゃうタイプなんです(笑)。歌でも、最初にマックスに達してしまいがちなんですけど、流れを意識して歌いました。これも曲の力に引っ張っていただいた感じですね。

─ひとつひとつ曲に入っていく時には、まずは歌詞を読み込んで、自分でもストーリーを描いていく感覚ですか。

そうですね。役作りみたいな感じの事を毎回していますね。レコーディングには、自分で何パターンか考えていって、何パターンか実際に歌ってみるんです。それでみんなで聴いて、じゃあこの方向でいきましょうと決めたりするので、役作りと一緒ですね。作品の最初に、自分で役についていろいろ考えていって、監督と話し合ってというのと、通じるところがあるのかなと思います。

─デビュー作のミニアルバム『chouchou』は、カバー作品で、ゆったりとした曲が多かったのですが、今回は、例えば世武裕子さん作曲の「パズル」などアッパーな曲もありますね。

バラードが多かったので、そういう曲が好きなのかなって思われるんですけど、結構アップテンポとかロックも好きなので、そういう部分を出せたらいいなって思いました。2曲目の「Sunny」や3曲目の「パズル」は、今までのイメージとはガラッと違う感じになっていると思います。「パズル」は、この8曲の中でも、いちばんチャレンジングな曲でしたね。

─この「パズル」はバンドメンバーも、ギターが澤竜二さん(黒猫チェルシー)、ベースが村田シゲさん(口ロロ)、ドラムが恒岡章さん(Hi-STANDARD)とロックバンドのメンバーたちですしね(笑)。

レコーディングに行ったら、ちょうど澤さんがいらしていて、緊張しちゃいました(笑)。この曲も、いろんな主人公を自分で作って、レコーディングブースに入ったのですが、作曲してくださった世武さんもスタジオにいらしたので、緊張しました。歌いはじめると、ひとりの世界にスっと入るのは変わらないんですけど。

─そしてHYの名嘉俊さんによる「カセットテープ」。こちらもまたパワフルながら、いろんな音が入ったカラフルなポップチューンで新鮮ですね。

すごく楽しかったです。レコーディングってこんなに楽しくていいんだって思いました。それまでがバラードだったりと、入り込んでいくレコーディングが多かったんです。これはニコニコしながら、踊りながら歌ってました(笑)。後ろの方で鳴っている口笛もすごく好きですね。HYさんのイメージもあって、愛を叫ぶような曲なのかなと思って、最初はそういう歌い方で持っていったんですけど、聴いてみたらちょっと違って。アレンジャーさんと、もっと、鼻歌のような、隣の人に語りかけるような柔らかくて跳ねるような歌い方がいちばんいいのかな、って話をしました。

─「String」は、ストリングスとヴォーカルの緊張感のある絡みがある曲ですね。

レコーディングでは、アドレナリンが出まくってました。自分で歌詞を書いているんですけど、心の叫びのような歌なのかなと思って。これまでとはちょっと違う、歪みみたいな歌の感じが、きっとバイオリンの音とも合っていいのかなと、そういう歌い方にも挑戦してみたんです。これは、自分で聴いてびっくりしました。こういう歌い方が、わたしにもあったんだって。

─自分で書いた歌詞、自分の言葉に引っ張られたところもあると思いますが、なぜこの曲を自分で書こうとなったのでしょう。

もともとこの曲に歌詞をつけようというのは、決まっていたんです。でもすごく難しくて。「Sunny」や「きみに」は、明るくて、誰かに向けて書く感覚でしたけど。「String」は自分の体の真ん中らへんで、メラメラしているものというか。吐き出したくても吐き出せないものがうごめいているのを、曲を聴いた時に感じたんです。その吐き出したくても吐き出せないものを、どう書けばいいんだろうって思って(笑)。いちばん自分の内面というか、そこと向き合った曲だったかなと思います。

─今までは、それをヴォーカルとして表現することは多かったと思うんですが、こうして、実際に言葉に落とし込む難しさはありましたか。

恥ずかしさが一番でした(笑)。脳みそを覗かれているというか、嘘がつけないじゃないですか。初めて作詞をしたのが「きみに」だったんですけど、一度やってみると、その恥ずかしさはなくなっていきましたね。スタートが大事なんだなって。今までもずっと、少しずつ歌詞は書きためていたりしたんです。でも人に見せる勇気がなくて、しまったままだったんですけど。今回は見せなきゃいけない、出さなきゃいけないという状況になって初めて、“わたしの思いです”って出せました。

─今は、作詞の面白さも出てきましたか

これほど難しいものなんだなというのはありますね。やってみないとわからないと思いました。生みの苦しみは常にあるんですが、でもそれを超えて書き上げた時の達成感というか、自分の言葉を歌える喜びもあって。そうやって苦しんで、乗り越えるということを、またやっていきたいなとは思っていますね。

─MVを、「告白」と「ストーリーボード」で制作されているということですが。どのような作品になりそうですか。

最初に「告白」のMVを撮ったんですけど、草原で、恋が去ってしまった当時の自分と、少し時間が経った自分という、過去と現在の視点から描いているMVなんです。衣装もふたつあって、まったく違う自分がいるというのが面白かったですね。『chouchou』の時は、「366日」でMVを撮ったんですが、その時は曲も流さずに散歩していたり、電車に乗っているところをフィルムで撮っていただいて、繋いだものだったんです。今回は初めて、実際に音を鳴らしながらリップシンクをする撮影でした。

─これぞMVという撮影ですね。

うわー、歌手みたい!って思いました(笑)。すごく楽しかったんです。でも照れますね、広いところで自分の歌が大きく流れるのは。

─「ストーリーボード」の方は。

これは、夜中から明け方にかけて、東京のいろんな場所を歩きながら撮っていたんです。自分の、誰にも言えない出会えた喜びみたいなことを、ポツリポツリと口に出しながら、散歩しているみたいな感じで。知らなかった場所を探していくようなMVになってます。どちらも池田千尋監督に撮ってもらったんですが、全然違うものになっているんです。

─デビューをして、最初はカバーアルバムを出して、今回はオリジナルの作品を出して、心の変化や歌手としての新たな思いは芽生えていますか。

やっぱりカバーとオリジナルは、歌うときの気持ちが全然違うと思いました。カバー曲も、自分の歌だと思って歌っていたけれど、どこかに歌わせていただいているという気持ちもあるし、わたしの中にずっとあるのは原曲だったんですよね。オリジナルとなると、元から自分の曲で、どう歌ってもよくて。一個どこかで縛っていたものが、パッと解き放たれたような感覚がありました。人前でオリジナルを歌ったのは、一度だけなんですけど。その時は、ああこんなに違うんだなって思いましたね。これから、どうやって色付けていこうかなって。年齢を重ねていって、どう変わるんだろうっていう面白さというか、楽しみもあって。でも、カバー曲と一緒で曲を作ってくださった方がいて、作ってくださった方の思いがあるのは、歌うときにひとりじゃないんだなと思える要素でもあるので。今はすごくワクワクしています。

Interview + Text: 吉羽さおり

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