2017-05-22
SALUインタビュー:「2040年にもヤバいと言われるアルバムだけ」



SALUがニューアルバム『INDIGO』を5月24日にリリースする。前作以上にポップになった本作はどのような意図で制作されたのか?「SALU WEBインタビュー曲解説WEEK」と銘打ち、MTV、EMTG MUSIC、Qetic、MEETIA、M-ON! MUSICに分けて、トータル11曲を紹介する異例の企画を展開。 MTVではアルバムの冒頭を飾る「WALK THIS WAY」と「LIFE STYLE feat. 漢 a.k.a GAMI、D.O」の2曲を中心に話を聞いた。

■明るい音楽をやることは挑戦

─最新作『INDIGO』はとても明るいアルバムになりましたね。

はい。これまでは割と考えさせるようなものが多かったので、今回は何も考えずに楽しく聴けるアルバムを作りたいなと思って。

ーアルバムのリリース直前に英語詞の新曲「YEDI」をYouTubeで公開しましたね。

ずっと英語の歌詞の曲を作りたかったんです。2012年にMTVの「Check the Rhyme」でSEEDAさんと対談した時に「英語でラップしないの?」って聞かれて、その時僕は「やりたいんですけどね~」と答えたのですが、そのやりとりが僕の中にずっと残ってて。そんな中『Good Morning』を作り終えた直後に「YEDI」の歌詞が自分の中から出てきたので、「これは絶対にアルバムに入れたい!」と思ったことが、そもそもの始まりになりました。

─でもアルバムには入らなかった。

本当は「YEDI」をアルバムに入れたいと同時に、次は明るくて聴きやすい作品にしたいという気持ちもあって。しかも英語で、暗くて、僕が普段やってる音楽とも違う。でも自分の中から出てきた表現だし、発表はしたかった。だから、「YEDI」は『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』なんです。『エピソード3』と『エピソード4』の間の話。『Good Morning』と『INDIGO』をつなぐ曲というか。

ーなぜ『INDIGO』を明るい作品にしたかったんですか?

世の中が暗いからせめて音楽やアートでは明るい楽しい気持ちになってほしいという思いがあるんです。客演とかではたまに暗い面や鋭い面を出すけど、基本的にはそういう部分に甘えないで、聴いてくれる人を楽しませたり、何かのきっかけになるような音楽を作りたくて。

ー暗さや鋭さは甘えですか?

今の自分にとっては。自分は2012年にデビューしてるんですが、それ以前は本当にどん底の生活を歌った曲ばっかりなんですね。「いつか必ずやってやるぜ」「俺の周りはこんなやつしかいない」みたいな。とにかく今聴くと落ち込む曲が多かった(笑)。明るい音楽をやることは、自分にとっての挑戦なんですよ。そこが自分のスタート地点になってる。

ーとはいえ、ヒップホップを聴く人の多くは刺激を求めてると思います。

僕は「普通」をぶち壊したい。これまで日本で主流と言われてきたラップはもちろんカッコいいと思う。けど、それ以外の部分に光が当たらな過ぎると思う。だから僕は自分のスタイルを維持しつつ、当たり前にいい曲でまるで息をするように間違いなくカッコいい曲を作り続けなくてはいけないと思ってるんです。

■最初にできて最後に仕上げた「WALK THIS WAY」

ー1曲目「WALK THIS WAY」はその言葉通りの曲ですね。普通に聴くと歌っぽいけど、実はミーゴス以降USのメインストイームで流行ってるフロウが落とし込まれていますね。

そうですね。「WALK THIS WAY」は一聴すると普通の歌に聴こえますが、実は色々やってます。

ートラップを通過した間の取り方ですよね。細かい部分だと、最初の「散々かけた迷惑 / もう戻れないのさDay One」の「もうもどれない」を「ももどれない」と発音してたり。

この曲はJIGGさんとスタジオでああだこうだ相談しながら、すごく微妙なニュアンスまで細かく2人でやり取りしてフロウを作っていきました。そこに自分の言いたかったことをあてはめていった感じですね。しかも「WALK THIS WAY」はアルバムで一番最初にプリプロが終わってるんですが、仕上がったのは一番最後なんです。

ーどれくらい時間が空いてるんですか?

半年くらいかな。「WALK THIS WAY」は個人的にもすごくポテンシャルの高い曲だと思ったので、「狙って作る」ということをちゃんとやりたかった。やっぱりプリプロ直後は良いと思っても冷静になると違うと感じるかもしれないし。あと半年も経つとシーンのトレンドもだいぶ変わるから。

ー意図的にこの形にしたんですね。

はい。余計なものを減らしつつも気持ち良さは残して、かつトレンドも抑えて、ラップとしてもフロウできる歌を作りたかった。

ーSALUさんのメロディ作りはどういった部分が原点になっているんですか?

両親が聴いていたブラックミュージックですね。スティーヴィー・ワンダー、アル・グリーン、アート・ペッパーとか。日本人では、山下達郎さん桑田佳祐さんとか。ラップに関してはスヌープ・ドッグとかドクター・ドレーとかG-FUNKがよくかかってて。だから自分がラップする時も、最初からメロディのあるフロウに抵抗がなかったんですよ。日本では「メロディアスなラップはダサい」みたいな固定観念があったと思うけど、SEEDAさんが出てきてそういうのもなくなったと思う。僕的には「やっぱりそうですよね?」って感じでした。

■「WALK THIS WAY」は決意の歌

ー「WALK THIS WAY」というとヒップホップ的にはRUN DMCを思い浮かべますが、この曲はラブソングですね。

歌詞は自分のリアルな恋愛体験をもとにして書いたんですが、ただのラブソングにはしたくなかったんですよ。僕、ラブソングを聴いてると「だから?」とか思っちゃうタイプで。この曲ってガールフレンドとの別れを歌ってるように聴こえると思うんですが、リリックにはプラスアルファとして他の要素も落とし込んでるんです。

ー他の要素とは?

愛する人と別れて「もうやるしかないぞ」と決意した人の歌なんです。かつての一緒に活動したり関わった友達や仲間の中には、一緒に同じ景色を見ることができなかったやつらもいる。そういうみんなにあの日の続きをやってるんだなって思ってもらえたらいいなって。

ー昔のSALUさんは「こんな世界なら / 滅んだ方がいいと考えたけど」と考えていたんですか?

はい。自分1人の世界にいた時は「人間は滅ぶべきだ」と思っていました。でも人との出会いと、環境で変わった。もう存在しているんだから滅ぶとは別の方法で存在意義を見出すべきだと考えるようになりました。当時の僕はたくさん壁を作っていたけど、それを壊して入ってきてくれた友達がいたんです。

ー綺麗事ではなく、人間は1人では生きていけませんからね。

その友達に「SALUくんは鬱病になっちゃったんだね」って言われたんですよ。それまで自分が鬱病だなんて考えたこともなかった。でもそこから僕は自分と向き合うようになったんです。僕にとってその友達は「この人は俺のために今このタイミングでここにいてこう言ってくれてるんだ」と思える存在でした。僕は間違いない作品を作り続けることで、その友達に感謝を示したい。それが僕のアンサーになると思う。その意味でも今回は明るい内容にしたかったんですよね。



■漢さんとD.Oさんと僕は声に超特徴がある


ー「LIFE STYLE feat. 漢 a.k.a. GAMI、D.O」にはヤバいメンバーが集ましたね。

全員声に超特徴がある。だから音楽的にも絶対面白いと思ってて。

2人とは旧知の仲なんですか?

漢さんと初めてお会いしたのは2014年くらい。曲作りとかじゃなくてプライベートで仲良くして頂いて。もちろん漢さんには「いつか一緒に曲やりたいです」ということはお伝えしていました。

ーD.Oさんとは?

実は僕が10代の頃、初めてライブを観たラッパーがD.Oさんなんです。初めて実際にご挨拶させてもらってのは去年の3月くらい。札幌でD.Oさん、漢さん、RYKEYくん、僕の4人が出演するライブがあって。当時の話をしたら「そうなんですか?」って敬語で接して下さって。

ーヤバいエピソードですね(笑)。

僕にとってお二人は本当に憧れのラッパーだったから、今回一緒に曲を出来たことがすごく嬉しかったです。

ー「LIFE STYLE」はまずSALUさんの歌うフック(サビ)に驚きました。

みんな大体「えっ、この曲SALUくんはいつ出てくるの?」って言うんですよ。「いやいや一番最初で歌ってるじゃないですか!」みたいな(笑)。僕としては自分の声って感じなんですけど、普段と違う発声をしているので聴く人にとってはかなり意外だったみたいです。

■16小節も割愛されたSALUのヴァース

ーこの曲はどうやって作ったんですか?

まずトラックを作ってもらったChaki Zuluさんには、トラップのビート感を踏まえつつ、明るくて爽やかな、いい気分で聴けるビートを欲しいとお願いしたんです。あと「まだオファーはしてないけど、漢さんとD.Oさんと僕の3人の曲にしたい」とも伝えて。その段階で僕の中にはミュージックビデオのアイデアもあって脚本も書いていたから、それも話しておきました。そしたら1~2日でこのビートが送られてきて。だから僕もすぐにヴァースの24小節分のラップとフックを書いて、2人でスタジオに入ったんです。そしたらChakiさんが「SALUくん、書くの早いね~。というか書いちゃったんだね~」って言うんですよ。

ー確かにSALUさんはフックしか歌ってないですよね。

「どういうことですか?」って聞いたら、「いやSALUくんはフックだけで良いかなと思ってるんだよね」って(笑)。「え~っ、自分、このヴァースめっちゃ気に入ってるんですけど」って言ったんですけど、「いや~、俺のイメージではSALUくんはフックだけなんだよね~。あと24小節のうち最後の8小節だけアウトロに使いたい」と言うんですね。「残りの16小節分はどうするんですか?」って聞いたら、「……今回は」と却下されちゃって。

ー「僕のアルバムなのに……」みたいな(笑)。

まさにそんな感じでした(笑)。でも最終的にはChakiさんの判断は正しかったんだけど。で、トラックに僕のフックとヴァース、アウトロを入れた状態で漢さんに電話をしたんです。「お二人に参加していただきたい曲があります。コンセプトはライフスタイル。サウンドはキャッチーなんですが、お二人にはいつも通りドープでスリリングなラップをして頂きたいと思っています」とだけ伝えて音源を送ったら、すぐOKして頂きました。後に9sariのスタジオに呼んでもらって夜中に行ったら、もう2人のヴァースも掛け合いの部分もできていて、あとは録るだけみたいな状態で。

ーいい話ですね~。

僕がスタジオに着いたらD.Oさんがちょうど録って下さっているところで、そこで初めてリリックを聴かせてもらったんですけど「ヤベぇ」ってなりました。本当にお二人の度量のデカさを痛感しました。

ー2人は今回直接的なサグワードを使ってないんですよね。

そうですね。「弱い犬程よく吠える」といいますが、漢さんとD.Oさんはそれを逆説的に証明されていると思います。

ーSALUさんから見て、2人の魅力はなんだと思いますか?

リアルなのにエンターテイナーというところ。「自分のことをわかってほしい」とかそういうエゴはとうの昔に通り越してて、人を楽しませること、ヒップホップを盛り上げることに徹してる。本人たちは絶対にそんなこと言わないけど、僕からはお二人がそう見える。

ー自分たちのキャラクターを客観視できてるということなんですかね?

そうじゃないと「TVじゃモンスターお茶目なおじさん」って言えないと思いますね。聴いててクスってなりそうだけど、笑っちゃいけない雰囲気も漂っている。この歌詞はお二人の僕へのメッセージにも聴こえるし、ラッパーに憧れている子たちへの言葉にも取れる。本当に絶妙だと思いました。

■2040年の人たちにヤバいと言われるアルバム

ー昨今はApple Musicなど、音楽をより手軽に楽しめるシステムが増えていると思います。そんな時代をSALUさんはミュージシャンとしてどのように感じていますか?

音楽がすぐ聴けるということはすごくいいことだと思います。ファストファッションのように音楽を消費していく流れが加速するのは、もはや誰にも止めらないことだとも思う。だけど、僕は安易なものは絶対に作りたくない。そしたら市場にはダサい音楽が溢れかえって、聴く人も「なんでもいい」と感じてしまう。僕、このアルバムを作っている時、スタッフに「僕は20年後に聴いてもヤバいと思えるものしか作りたくない」って言ってたんですよ。みんな冗談だと思ったかもしれないですが。1~2年とか、今日明日とかも大事ですが、2040年頃の人たちに「2017年のSALUって超ヤバいことやってるね」って言われるようなアルバムだけでいい。

ーあと今回はWWWでワンマンが予定されているとか。

今まではDJもいない一人きりのステージとか、フルバンドのライブとかをやってきたんですど、今回はそれを混ぜた内容にしようと思っています。いろんな表情のあるステージにしたいです。

ーライブはどんなモチベーションで臨みますか?

僕、デビュー当時の僕は人の目を見て話すことすらできなかったから本当にライブ苦手だったんです。そのあと「やるしかないでしょ」ってモードになったんだけど、今は友達の家に遊びに行くテンションでいいライブをするようになりたいですね。音源もライブも気軽さを追求していきたい。もっと気軽に、かつクオリティの高いという。

ーミュージシャンとしてどんどん成長しているんですね。

確かにデビュー当時はこんなこと考えてませんでしたね(笑)。「LIFE STYLE」でも歌ってるんですけど、僕は「まだ君は知らない / きっと想像もつかない / 俺がどこから来て / どこまで行くか」っていうのをSALUで表現したいんです。次のアルバムは「そう来たか」って感じになるかもしれないし。そろそろ昔のことを歌い始めようと思ってるんですよ。自分がどこで何をやってきたかを音楽で伝えるフェーズに入ってきたかなって。

Interview + Text: 宮崎敬太


SALU WEBインタビュー曲解説WEEK 『INDIGO』リリース連動企画 各メディア展開!

・ MTV:2017.05.22(月)公開
解説曲:#1 WALK THIS WAY / #2 LIFE STYLE feat. 漢 a.k.a. GAMI, D.O

・ EMTG MUSIC:2017.05.23(火)公開
解説曲:#3 TOKYO / #4 SPACE

・ Qetic:2017.05.24(水)公開
解説曲:#5 Dear My Friend / #6 First Dates

・ MEETIA:2017.05.25(木)公開
解説曲:#7 Good Bye / #8 2045

M-ON! MUSIC:2017.05.26(金)公開
解説曲:#9 夜に失くす feat. ゆるふわギャング (Ryugo Ishida, Sophiee) / #10 Butterfly / #11 東京ローラーコースター feat. FRAME a.k.a FAKE ID for Refugeecamp