2017-04-26
キャリア史上最も濃厚で攻撃的なアルバム『デス・エクスプレス』を 完成させたリトル・バーリーにインタビュー!



リトル・バーリーが前作『シャドウ』から約3年振りとなるニュー・アルバムをリリースした。再生すると同時に感じる、これまでとは明らかに違う熱。古き良きロックンロールのレコードとギターに魅せられた、バーリー・カドガンが現代に挑むバンドという、これまで筆者がリトル・バーリーに抱いていたイメージが変わったわけではない。その部分において、一気にエクストリームな別の領域へと引っ張られるような感覚。極限状態から飛び出す魂の叫びや、限界の向こう側にある酩酊感が入り混じったような、リアルとの戦いと逃避を繰り返すかのような、全20曲(海外盤は全19曲、2017年6月以降リリース予定)のロングラン。まさに『デス・エクスプレス』というタイトルが示す通りのスリリングなストーリー性に溢れた作品について、バーリーに語ってもらった。



―2013年リリースの前アルバム『シャドウ』に収録されている、「Eyes Were Young」のミュージック・ビデオが2015年に公開されましたが、日本のバーで遊ぶシーンが大きく取り上げられていましたね。

そう、あの日はドラムのヴァ―ジル(ヴァ―ジル・ハウ/Dr)の誕生日でさ。メンバーの良き日を、日本で祝えて本当に嬉しかったんだ。

―そして今回のアルバム『デス・エクスプレス』のジャケットは、日本のファンが撮った写真だと伺いました。日本や日本人になにか特別な思いがあるのでしょうか?

イギリスと比べると感覚的に違うんだ。あらゆる物事がきちんと整理されている気がする。例えば、洋服は凄くディテールにこだわって作られているし、楽器屋さんに行っても、本当に細かいことにまで配慮して売られているから買いやすい。そういった仕事に対する美意識みたいなところにピンと来てるんだと思う。

―ファッションでいうと、デニムジャケットやレザージャケット、シャツなどがいつもよくお似合いです。シンプルなんですけどサイズ感がばっちりで。日本でも買うことはあるんですか?

僕は体が小さいから、日本で売っているサイズがしっくりくるんだ。だから買い物がいつも楽しみ。イギリスだと頑張って小さいサイズを探さなきゃいけないし、アメリカの古着マーケットなんかに行くと、ヴァ―ジルやルイス(ルイス・ワートン/Ba)はたくさん買い込むんだけど、僕だけ何も買えないんだよね(笑)

―昨日(このインタビュー前日の2月26日)のHostess Club Weekenderでのパフォーマンスの感想を訊かせてもらえますか?

プライマル・スクリームで立ったことがあった場所で、その時の感覚も覚えていたからやりやすかったね。

―アグレッシヴなビートでめちゃくちゃ踊れるんですけど、バーリーのギタープレイにも、ヴァ―ジルのドラム捌きにも目を奪われますし、そうなるといぶし銀なルイスも気になりますし、あらゆる感覚が開きっぱなしである意味忙しい(笑)、とても楽しいライブでした。

なるほど(笑)。まあ音楽は踊ってもらうのが一番。お客さんが踊っている姿をみて僕らも乗ってくるし、その感じがたまらないから。

―バンドとしてより強くなった印象を受けました。実感や要因はあるのでしょうか?

今回リリースしたアルバム『デス・エクスプレス』を無事作り終えられた解放感だね。曲を書き始めた頃からだと1年半くらいかかった。だから新しい曲が演奏できることが、今まで以上に嬉しいんだ。

―『デス・エクスプレス』は初のセルフ・プロデュース作。まさに心機一転というか、とても攻撃的で感情的なアルバムだと思いました。

本当はロンドンにあるエドウィン・コリンズのスタジオで作りたかったし、そのつもりだったんだけど、エドウィンがスタジオを閉めてスコットランドに帰っちゃったんだ。じゃあどうするか。正直、彼のスタジオほど僕らに向いている場所はないと思っていたから迷いはあったんだけど、いざ「I.5.C.A」を録ってみたら、凄くいいものになったから、「これは自分たちでやれるかもしれない」って、前向きになれたんだ。

―ビートからもバーリーのギタープレイからも、これまで以上に攻めの姿勢を感じます。凄くタフでディープなロックンロール・アルバム。音も凄く良いと言いますか、その特徴が生々しく伝わってきます。

そうだね。ダークなところはあるんだけど、ビートはアップテンポではっきりした曲が多くなったんじゃないかな。全体的なサウンドは、バンドとして充実している状態を詰め込めたというか、デモの段階ならではのマジックがあるんだ。そこで思った以上に勢いのあるものができた。だから、その持ち味とスピリットを活かしながら、レコーディングにちょっとこわだわる。そこのバランスは満足いくレベルに持って行けたと思う。僕がプロデューサー的な感じで指示を出す、ヴァ―ジルがマイクの位置を調整するとか、そういうことをしてくれて、そこにルイスがやってきて、みんなで音を作って、アイデアがあれば取り入れて、ということの繰り返し。とてもパーソナルな手作り感のあるアルバムになったと思うし、そういうことをやって成立するところまで来られたんだって、実感できたね。

―全19曲、日本盤は20曲と、とてもボリュームのある作品ですね。

レコードって結局のところ、それを作っている時期の自分の気持ちを封じ込めるようような作業だと思うんだ。本当はもっと短くしたかったんだけど、1枚の絵を描くうえで、自分たちのドキュメントとして、全ての曲が必要だと感じたから削らなかったんだ。

―全編通じて、極限状態から生まれるスリルや生命力を感じました。それぞれの曲に熱いドラマがあって、それらが繋がっていくんです。

うん、そういうイメージだね。心情的には曲によって説明しやすいものと、改めて言葉では説明できないようなものもあるんだけど。

―では、「I.5.C.A」はどうですか?サイケなフィルターにドライブの風景を映したミュージックビデオも印象的でした。

この曲は、東京からLAに飛んで行って、西海岸のインターステイト5号線を走った風景を歌った曲なんだ。ただでさえフライトで疲れていたのに、レンタルでバンを借りるのに2時間くらい手間取った。そこからサンホゼを目指したんだけど、ラッシュアワーと重なって、LAを出るだけでめちゃくちゃ時間がかかって、到着するまでに10時間くらい。実はそれはまだ序盤の話で、一番北はカナダのヴァンクーバーまで行って、そこからサンディエゴに戻って、またLAに帰ってきてレンタカーを返してUKに戻ったんだ。レンタカー屋の人も、「こんなことをやるのはどっかのイギリスのアホくらいだ」って(笑)。

―はい。僕でもそう言うかと(笑)

長い貨物列車が走っていたり、ヴィンテージカーがたくさん並んでいたり、昔テレビで観た、僕が思うアメリカを重ね合わせる。そうやって美しい景色が広がっていくような楽しみもありつつ、長時間ドライブしていると本当に幻覚のようなものを見ることもあるし、夜は真っ暗で何もなくて、怖くなって追い詰められて、対向車線のトラックにぶつかりそうになったこともあった。だから夜は寝ないように窓を開けて、耐えられないくらい寒いんだけど、外の冷たい空気を入れながら運転するんだ。そんな過酷な旅のなかで見えたことや感じたことが詰まってる。最大で14時間くらい走っていたんだけど、駄目だね。人間には限界があることを学んだよ(笑)

―「Golden Age」にある思いにも興味があります。

僕らはそんなに年をとったわけではないけど、キッズではなくなった。その間に見てきた変化、全体的にそういったことについて歌った曲が多いように思う。ヴァーチャル・リアリティだとかデジタルだとか、いろんなことが、自分が子供だった頃とは違っていて、戸惑うこともある。それで、昔を振り返って「あの頃は良かったなあ」って片付けるのは簡単だけど、だからって今をネガティブに捉えるつもりもない。そういうことって、誰もが少なからず考えることだと思うんだけど、どう?

―はい、分かります。

そんななかで、電話帳を見ると、もう死んじゃった人もいるし、そういう年にもなってきたんだなあって。エドウィンが発作を起こして、命も危ない状況を経て、今だってしっかりとは歩けない状態で、音楽なんてとても無理だって言われていたのにアルバムを3枚も作った。そんな彼が日々の大切さについて話すんだ。「本当にそうだよな」って心から思う。いろいろあるけど、一つひとつの物事を大切に、大切な人たちと大切な時間を過ごしたいと思ってるんだ。今だってそうさ。こうして日本にまで来られるバンドってなかなかいないし、その価値を感じてる。

―エドウィン・コリンズからそんな話を聞いたら…、想像しただけでも頷けます。

 そんなことを感じながら、今のロンドンの街について考えるんだ。昔からの建物やバーやべニューが”再開発”という名のもとにどんどん取り壊されてる。一時的な金儲けのためだけの見栄えがいい建物が増えて、昔の風情や文化が一掃されてるんだ。でもイデオロギーだけで懐古主義に走る気持ちもどうかと思うし、そこのせめぎ合いが、最もよく現れたのが「Golden Age」だね。「Compressed Fun」もそういう意味で繋がっているんだ。

 ―サウンドからもその”せめぎ合い”を感じることができるんです。リトル・バーリーの音楽性は、1960年代のロックンロール・R&B、ソウルやサイケデリック・ロックなどが影響源にある、ヴィンテージなものですが、今回はそういった文脈ではなく”それだけじゃない”部分について訊きたいんです。例えば、サイケデリックやクラウト・ロックだけでなく、現代のエレクトロニック・ミュージックも踏まえた作品なのではないかとも考えたんです。夜な夜なクラブに出かけたり。

いや、僕はそういうクラブには行かないなあ。そこも、1960年代や70年代の話になっちゃう。だからそのまんまと言えばそのまんまだね。具体的なアーティストを挙げると、クラフトワークや、シルヴァー・アップルズ、カンもよく聴くよ。現代のエレクトロニック・ミュージックにも影響を与えている音楽だね。昔のサイファイっぽい感じやフューチャリスティックな音に惹かれるんだ。今ほどのテクノロジーじゃないんだけど、当時としては最先端なものにある、独特の温かみというか。あとは、ギターの音を触るのが好きで、そこで言うと、ビースティー・ボーイズが凄く好き。僕はそんな感じ。だけどヴァ―ジルはクラブ・ミュージックも好きだし、レイヴにもよく行ってたし、その雰囲気はレコードにも詰まっていると思う。ただ、あくまでロックンロール、ガレージ・バンドとしてのスピリットが基盤にあること、そこを絶対的に大切にしたいって3人とも思ってるんだ。そのうえで、それだけじゃないことをミックスしていく。例えば「Love Or Love」のドラムは、よくサンプリングかと聞かれるんだけど、僕らはそんなことはしない。ちゃんと叩いてる。

―ヴァ―ジルの、手数を楽しんでいるようなパフォーマンスに驚きました。

クリックも鳴らさないよ。レコードのヴァイブが死んじゃう感じがするんだよね。

―なるほど。そこまでロックンロールの生々しさにこだわる理由は何なのでしょう?チャートアクション的なところで言うと、今はそういうフィジカルなロックンロールはなかなか厳しい時期。バーリーはそういうことを気にするタイプではないと思うんですけど、キャリアもありますし、あえて周囲の状況と照らし合わせた話も聞いてみたいです。

物事には波があるからね。でも僕らはそもそもポップなバンドではないから、トレンドを追いかけるのではなく、興味があることを追求するのみ。それがヒットチャートという視点から見て、いい感じになることもあれば、なんの反応も得られないこともある。だからといって何も変わらない。今はギターの音が古い、エレクトロニックが新しいなんて言われるけど、シンセみたいな電子機器だって50年以上前から使われていて、今日に至るまで進化してきたわけで。そのなかで古臭い音だってあるでしょ?ギターだって同じということではないけど、要は発想次第だよね。新しいし新しくなれる。ロックンロールのエネルギーをキープしつつ、音の面での進化に目を向けて、面白いと音をどんどん探してやっていきたいと思ってるんだ。




Interview + Text: TAISHI IWAMI