2017-03-21
雨のパレードインタビュー:ポップスとは、自分の人生に寄り添ってくれるものだったり、時には指針になってくれるもの



2016年3月に1stアルバム『New generation』でメジャーデビューし、インディR&B、アンビエントハウス、トラップなどさまざまなジャンルを飲み込んだアート性が高いサウンドで、感度の高い音楽ファンやポップファンの心を掴んだ4ピースバンド、雨のパレード。1年ぶりとなる最新アルバムは、『Change your pops』と名付けられた。美しく、試みに満ちたポップスの革命を仕掛けるアルバムだ。シングル曲「You」や「stage」を始め、前アルバム以降の曲はより深みを帯びて、尖った音や多彩なビートを使い、彼らならではのサウンドへと閉じ込めた。都会的でアンニュイなムードや甘い夢み心地のひと時、あるいは吹き抜ける風やしっとりと密度の濃い空気、ほのかな光のあたたかさ。曲ごとに豊かな体感があり、音に身を委ねていると自ずと歌が染み入ってくる。耳なじみも、肌なじみも抜群でいて、心のうちに大きく作用するエモーショナルで、刺激的なアルバムとなっている。このアルバム『Change your pops』について、フロントマン・福永浩平(Vo)に話を聞いた。

─前作『New generation』に続いて、今回はよりバンドの強い意志を感じるタイトル『Change your pops』のアルバムとなりました。ポップスを更新していくという思いが形になった作品ですが、どう着手していったんでしょうか。

昨年が本当に忙しかったんです。1年間ずっと制作で、アルバム1枚とシングル3枚を出して。今回のアルバムも、昨年のうちに録り終えていたので、着手というよりは…

─ずっと制作を重ねてきたなかでの作品。

そうですね。そのなかで、前作『New generation』が、バンドサウンドにこだわらないことが、より明確になった作品だったんですけど。終わった後にはやっぱり、ここはもうちょっとできたなとか、些細なことですけど心残りもあったんです。機材的なところでも、シンセが簡易的なものだったし。この作品で、新しい機材も入れて、やりたかったアプローチにもどんどん挑戦できて。心残りは今のところないアルバムですね。

─サウンド的に深みを帯びて、エレクトロ、バンドサウンドが高い濃度で溶け合っています。それはシングルの時から意識的にやっていったところですね。

シングルでは「You」がいちばん最初なんですが、これは僕自身“思い切りいけた!”っていう曲で。スネアの代わりに、よくR&Bの人たちがやっているようなフィンガースナップを、最初に挑戦してみた曲ですね。やりたいアプローチをガンガンに詰め込むことができて、それでいてちゃんとした歌ものであるという、自分のなかでも完璧に近い楽曲だったんです。

─新しい機材をということでは、今回はどういうものを導入したのですか。

前作『New generation』の時は、シンセがmicroKORGというKORGのシンセだったんですけど。そこから、アナログシンセの2大巨頭のひとつ、Dave Smith Instruments のProphet’08をギターの山崎(康介)が手に入れまして。音がむちゃくちゃいいんです。それはかなり使っていますね。「feel」とか「Count me out」、「intuition (Interlude)」では、同じDave Smith Instrumentsのドラムマシーンを使っていますね。FKA twigsがアルバム『Pendulum』(2014年)をほぼそのドラムマシーンで作ったと言われているんです。あとはベースの是永(亮祐)が、Deep Impactというシンセベースの音が出るエフェクターがあるんですけど、それが最近リメイクされてFuture Inpactという名前で出ているんですけど、それを使ってみたりとか。新しいものはいろいろ取り込んでます。サンプリングパットも、環境音をいろいろ取り入れてみたりと、これまで使ってなかった音も、挑戦的にしてみたつもりです。

─アナログシンセなどの機材は、過去のいろんなアーティストの作品を聴いてインスパイアされたり、こんな音がほしいなとなるんですか。

僕は新しい音楽を聴くのが好きなんです。洋楽の新譜が多いんですけど、主にインディーR&Bとか、エレクトロハウスとかをたくさん聴いて。そこから、アプローチや音色、これは流行りそうだなとか、これかっこいいなとかは、毎回曲によって挑戦してます。

─音楽の聴き方として、福永さん自身はどういうところに耳がいきますか?

最初は、本当に単純に好きかどうかというところから入ってますね。最近だと2月に出たSamphaのアルバム『Process』に、「(No One Knows Me )Like the Piano」という、ほとんどピアノの弾き語りみたいな曲があるんですけど。ヴォーカルにリバーブがほぼかかっていないデッドな質感になっていて、聴き心地がすごく新鮮なんですよね。そのアプローチ新鮮だなと思って、次にやってみたいなと思ったりします。そういう感じですね。昨年出たJack Garrattのアルバムも──ちなみに彼とは同い年なんですけど。意外と攻撃的なベースの音色だったり、そんな展開になるんだ?っていう展開をしたりする。そういうところは意識してやっていますね。小節の一拍でブレイクして入る、というのをやりたいと思って、「stage」の間奏部分でやってみたりとか。

─へええ。

Disclosureとかもそういうアプローチをしていたんですけど。そういう感じで、どんどん面白いと思ったものをインプットして。意識的にアプローチに加えているという感じですね。

─バンドという形態にこだわらないことでも、より自由度が広がったわけですね。

こだわらなくていいんだという、そのことに気づけたという感じですかね。自分の好きな音楽がバンドでできるとは思っていなかったんですけど。やっぱり、サンプリングパットだったり、機材だったりで、意外とバンドでもできるなっていう。

─それをメンバーそれぞれで、人力でやっていくんですよね?

うちはメンバーが優秀なので、いろいろできますし。

─とはいえ、なかなか無理難題も多いのでは(笑)。

とても多いと思います(笑)。例えば、「free」だったら、ギターの山崎は、1サビ後はアナログシンセを♪ファファファファ〜って弾いてサスティーンを踏んで、その状態でギターをエフェクターを踏みながら弾きはじめるという。両手両足を使った状態になってます。

─もう一本手がほしいくらいのものですね。

よく言ってますね。いわゆるセッションとはちがうと思いますけど、このバンドでは、みんなで集まって、コード進行だったりセクションだったり、音色、リズム、アプローチをディスカッションしながら作っていくんです。だから、その場でやれちゃう量でやるんでよね、もともと作った音を同期で流すということはないんです。

─ドリーミーで、美しくアンビエントな曲や、R&B的なクールなサウンドをセッションで作っているというのは、意外でした。

ほぼほぼそうですね。このアルバムに関しては、サビのメロディやコード進行を先に僕が持ってきて、そこから肉付けしていくというものが多いんですけど。100パーセントに近いくらい、スタジオで作り上げていきますね。「You」は僕がこうしたいというのがあったので、1日2日でできましたし。本当になにもない状態からはじめる曲もいっぱいありますね。

─サウンドへの高いこだわりや挑戦的な音への探究心が詰まっている一方で、歌心のある曲が多いですね。今回はタイトルにもある“ポップス”に重きを置いているだけあって、これをいかにして聴かせるかにもこだわられていると思います。

メロディから作るということで、それにより近づけたり、自分たちの思い描くものになれているのかなと思います。自分の中でポップスってなんだろうと考えた時、自分の人生に寄り添ってくれるものだったり、時には指針になってくれることかなと僕は思ったので。歌詞はわりとそういう曲が多いかなと思います。

─雨のパレードならではの歌詞世界というのはできあがってきましたか。

ずっと詩的に書いていた時期があるんですけど、これ自分に向かって書いてないか?って言われた時があって。確かにそうかもしれないと思って。最近は、聞き手に向かって、ちゃんと書くようにはしているんです。自分の心から思っていることで、相手に伝えるっていうのが、いちばん伝わるのかなって。

─アルバムの冒頭を飾る「Change your mind」などまさにそうですね。

『Change your pops』というアルバムタイトルを決めてから書いた曲なんですけど。「Change your pops」をテーマに書きはじめえ、直感に素直になれるようにと書いた曲ですね。直感って、なりたい自分に素直って聞いたことがあって、確かにそうだなと思って。正直に生きようと。

─新しい音楽、音への感度が高いけれど、同じように歌を大事にされていて。この歌、歌心には日本の音楽からの影響や懐かしさも感じますね。

もちろん好きな邦楽アーティストもいっぱいいます。僕らが所属しているSPEEDSTAR RECORDSで言えばハナレグミさんとかすごく好きですし、本当にいいレーベルですね(笑)。

─確かに(笑)。その中で、新しい世代の音楽を生み出していこうという気概も。

もちろん、ありますね。ユーミン(松任谷由実)さんなどもそうだったと思うんですけど、みんな“ポップス”として聴いているけれど、よく聴くと、ファンクやボサノバだったり、この曲でこんなジャンルをやっているんだってなる。僕らも現代のそういう立ち位置のバンドになりたいというか。自分の好きなトラップやポストダブステップだったり、アンビエントだったり。今僕らが、かっこいいと思える音を“ポップス”として、受け入れられる存在になりたいですね。

─今のポップスというものを見渡して、もっとこうしたいという思いがあるんですか。

僕らの世代って多分、学生時代に“なんでこんなのが売れてんだよ”みたいのを感じている人が多い世代だと思うんです。Youtubeも一般的になった時代で、みんな好きな音楽をいろいろ聴けたし、それぞれが、本当に好きなことをやりはじめているというか。みんな、自分の“ポップス”を持っていて、時代に認めさせたいっていう気持ちがすごく強いのかなと思っているんです。音楽業界自体もなにが売れるかわからないという状況だと思うし。そんな時代ではあるけど、個性があるバンドたちがちゃんとフィーチャーされるようになってきているのかなとは思うんです。

─今は今で、ちゃんと面白みがあるってことですね。

そうですね。こうすれば売れる、みたいなものは誰もわからないし。あ、これ売れるんだ?っていうのが今はあると思うので。だから逆に僕らは、自由にやれる時代に生まれたかなと思ってます。そういった意味では幸せかな。

─MTVでは「Change your mind」のMVがオンエア中です。今回のビデオのこだわりなどはありますか。

とにかく演奏シーンがかっこいいという。一つ前のMVまでは、監督がMitch Nakanoさんで、年齢が僕の2つ上だったから、ほんとうに友だちみたいな感じで、ずっと一緒にやってきていたんです。その時はいい意味で一緒に作っていたんですよね。手探りだったし、やれることは全部やるっていう感じで、テイクは何度もとるとか(笑)。今回はQotori filmの島田大介さんなんですけど、島田さんは、撮影時間が短くて。1カット2テイクくらいで終わりみたいな感じで。“あれ、もう終わっちゃった”みたいな感じだけど、すげえいいのができていたし。カルチャーショックでしたね(笑)。

─今回、島田さんとはどういうふうにビデオの制作を進めていったんですか。

じつは普段から仲良くさせてもらっているんですけど、初めて一緒にやることになったんです。まずはQotori filmの近くの喫茶店で、どういうものにしようかって打ち合わせをして。“Qotori filmさん独特のフィルムの感じも好きなんですけど、個人的にパキパキしたコントラストの強いものも好きだ”って話したんです。動画自体のテーマとしては、いろんな若者たちが、自分たちそれぞれが持つポップスをぶつける印象にしたい、と話して。それでこういう形になったんです。とてもいい仕上がりになりました。

─こうした映像的な作品へのこだわりも強いですか。

映像だけでなく、雨のパレードと名のつくものはすべて自分の意見を言うよう口出しすることにしてます。その方が統一感が出るし。それはインディーの頃から心がけていますね。アートワークも、今回はシングル2枚とも一緒にやってくれたアートディレクターの方とやっているんですけど。僕が好きな、ヨハン・ローゼンマンスという、コペンハーゲンで活動しているカメラマン/アーティストがいるんですけど。彼の本がすごく好きで。こんな世界観がいいかもねとみんなで共有して、ディスカッションを重ねてこういう形になりました。今回はタイトルにインパクトがあったので、ジャケットは文字押しでもいいかなというので、このパターンになったんですけど、ブックレットの中身も面白いことになっているので、見てほしいですね。


Interview + Text: 吉羽さおり