2017-03-17
【TeddyLoid×アイナ・ジ・エンド特別対談】:本当の『ワルい音』って、本物の不良じゃないと作れないと思う。秘めた凶暴さが今回の作品には現れてます。



TeddyLoidは2016年度の「Spotifyで日本以外の海外で最も再生された日本人アーティスト 第5位」に選ばれ、サウンドプロデューサー/DJ/リミキサーとして近年ますます活動の勢いを増している。昨年はKOHHの「Die Young」のサウンド・プロデュースや2020年の東京五輪・パラリンピックなどに向けた国際会議「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム」で上演された「The Land of the Rising Sun」の音楽を担当する等々、まさに日本の音楽の未来を担っていくであろうアーティストとして注目すべき存在ではないだろうか。そして『SILENT PLANET』と呼ばれるプロジェクトは、中田ヤスタカ、HISASHI(GLAY)、近田春夫×tofubeats、佐々木彩夏(ももいろクローバーZ)等々、錚々たる顔ぶれのアーティストを迎えて2015年にリリースした2ndアルバムからスタートしており、2016年からは『SILENT PLANET 2』と題した、続編〜スピンオフ的なデジタルEPシリーズを始動。その最新作となる4作目には、”楽器を持たないパンクバンド”BiSHのアイナ・ジ・エンドを迎え、全4曲を収録。カップリング曲にはKダブシャインも参加しており、異色のコラボレーションが実現している。アイナ・ジ・エンドのハスキーな声によるラップまでもが堪能できる本作は、ソングライティングにMaryJaneが参加し大きく貢献している。MTV JAPANでは『SILENT PLANET 2 EP vol.4 feat. アイナ・ジ・エンド(BiSH)』のリリースを記念して、TeddyLoidとアイナ・ジ・エンドの対談インタビューを敢行。楽曲制作へのこだわり、アイナ・ジ・エンドがフェイバリットに挙げたTeddyLoidとKOHHの”Die Young"、アイナ・ジ・エンドが抱える葛藤、Kダブシャインと宇多田ヒカルという、ふたりがそれぞれ尊敬するアーティストへの想い等、TeddyLoidとアイナ・ジ・エンドの意外な一面が垣間見える貴重な対話だ。

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≫ TeddyLoid - TO THE END feat. アイナ・ジ・エンド (BiSH) (lute Edition)
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■声が特徴的だから一回聴いたら忘れられなくなるし、とにかくステージングが圧巻です。『荒々しさ』を感じたんですよね

-TeddyLoidさんは最近、トークやライヴ等、テレビの音楽番組の出演が続きましたね。いかがでしたか?

TeddyLoid(以下T):あまりトークは得意な方では無いので、ちょっと緊張しましたが楽しかったです。ちゃんみなちゃんとのライヴは急に決まったんですが、実現出来てよかったです。

-トークゲスト時は、北海道のDJ/トラックメーカーのMATZさんと、ちゃんみなを紹介されていましたね。

T:今は10代から若い才能がたくさん現れています。でも、インターネットが発達し過ぎちゃってて、知る手段が多過ぎるから、逆に(才能ある人に)気付かないことも多いと思うんですよ。なので、番組で10代の彼らを紹介することが出来たのは、とてもいい機会だったと思います。僕も負けないようにしなきゃなって日頃から思ってますよ(笑)。

-Teddyさんと一緒に出演していたヒャダインさんがBiSHを紹介していましたね。アイナ・ジ・エンドさんは放送を見ましたか?

アイナ・ジ・エンド(以下A):はい!もう、ずーっと番組を見るためにスタンバイしてました。少し放送時間が押しちゃったんですけど、それでもずっと待ってました。ヒャダインさんが紹介してくれて嬉しかったです!TeddyLoidさんも、BiSHのライヴで起きるモッシュのことに触れてくださって。

-TeddyさんはBiSHをを知っていたのですよね?3月17日にリリースされる『SILENT PLANET 2 EP Vol.4 feat.アイナ・ジ・エンド』は、どのような経緯で制作することになったのでしょうか?

T:マネージャーから興奮気味に「すごいヴォーカリストがいたよ!」って言われて、早速BiSHさんのライヴに行ってみたんですけど、本当に驚きました。声が特徴的だから一回聴いたら忘れられなくなるし、とにかくステージングが圧巻です。『荒々しさ』を感じたんですよね。そのラフさ、ワイルドさがBiSHさん自体の音楽性にも影響してるのかなと思いました。オーディエンスの煽り方ひとつにしても、海外のパンクバンドみたいだし(笑)。それぐらい衝撃的なライヴだったので、終わって客電がついた時にはもう「絶対にアイナさんに歌ってもらいたい!」って思いました。

A:すごく嬉しいです。実は前からTeddLoidさんのことは知ってたんですよ。ももいろクローバーZの曲を手がけていらしたり、DAOKOさんも好きで曲を聴いてましたし、もちろんちゃんみなさんとの曲も聴きましたし。 (『SILENT PLANET 2 EP vol.3 HAL by TeddyLoid』「ダイキライ feat. ちゃんみな」「ダイスキ feat. DAOKO」を収録)

-2015年にリリースされたアルバム『SILENT PLANET』シリーズから数えると、柴崎コウさん、池田智子さん(Shiggy Jr.)、佐々木彩夏さん(ももいろクローバーZ)、ボンジュール鈴木さん、DAOKOさん、ちゃんみなさん、そして今回はアイナ・ジ・エンドさんと、女性アーティストとのコラボレーションは8人目となりますね。それぞれ活動するフィールドは違っていても、マインド上は共通しているところがあるようにも感じられるのですが、いかがでしょうか?

T:僕はすべての曲をひとりで作ることが多いので、自分に無い感覚を持っている人と一緒にやるのが好きですね。あと、たぶん共通してるのは、皆さん「自分をちゃんと持ってる人」という点ですね。昔はアイドルって作られた存在のようなイメージだったじゃないですか。ですけど、アイナちゃんにしてもそうですし、自分をしっかり持っていて、見せ方がうまい人、セルフ・プロデュース出来ている人、というところかも知れません。

-アイナさんは声帯結節の手術をされて復帰したばかりとのことですが、具合はもう大丈夫ですか…?

A:はい!大丈夫です。歌いやすくなりましたよ。逆に。

T:実は今回の作品は、アイナちゃんの手術前の最後のレコーディングだったんですよ。…めっちゃシャウトしてもらっちゃいましたけど(笑)。

A:あはは(笑)!必死でしたけど楽しかったですよ。

-もともとソロ活動への願望があったのですか?

A:そうですね、BiSHに入る前に少しだけやってて、完全に趣味で1人だけでやってたんですけど。私の声って、ラーメンでいえば”こってり系”っていうか。とんこつラーメンばっかりずっと出されても濃すぎて飽きちゃうだろうしなーって、なんか自信がなかったというか。ちょっと難しかったんです(笑)。

T:でも、すごくクセになる味なんだよね。また聴きたくなる声というか。

A:ありがとうございます。本当にTeddyさんにそう言っていただけて、ソロなんてやってもだめだ、自信ないって思ってたので、それをTeddyさんがポジティブに変えてくださいました。すごく嬉しかったです。

■アイナ:プロデューサーとラッパーって、わりとラッパーの方が大きく取り上げられるものだと思ってんたんですけど、「Break’en All feat,KOHH」は自立した2人が一緒に曲を作ってるんだなあっていう印象が強くて。
Teddy:お互いに不良だから一緒に『ワルい曲』を作りはじめたんですよ(笑)。


-初めて会ったときはどんな印象でしたか?

A:なんか、テレビの中の人というか、音源でしか知らないひとっていう感覚なので、生で見たときの現実感がぜんぜんなくて(笑)。「あ!喋った!」みたいな感じでした(笑)。

T:アー写があんな感じだから、あんまり喋るイメージがないのかもしれないね(笑)。

A:「あの音楽作った人だ!」みたいな。

-特に好きな曲といえば?

A:KOHHさんと一緒にやっていた「Break'em all feat.KOHH」です。「Die Young」ももちろん好きなんですけど。どうやったら”2人で”あんなに最高傑作な曲が作れたのかな?って。プロデューサーとラッパーって、わりとラッパーの方が大きく取り上げられるものだと思ってんたんですけど、「Break’en All」は、自立した2人が一緒に曲を作ってるんだなあっていう印象が強くて、すごくかっこいいなと思いました。

T:ああ、アイナちゃんにそう言ってもらえるなんてすごく嬉しいですね。中田ヤスタカさんも言ってるんですけど、日本のサウンド・プロデューサーって、裏方っぽ過ぎて顔が見えてこない、キャラクターが伝わりづらい場合が多いんですよ。だから、サウンド・プロデューサーはもっと前へ前へと出てくるべきだと思うし。せっかく個性的な曲を作ってるんだから。そういう気持ちでプロデューサーとしてのTeddyLoidのプロジェクトを始めたんです。

-トラックを作ってるのにクレジットに載せられないというような話も聞きますね。個人的にTeddyLoidのすべての作品に共通しているのは反骨精神なのかな?と、勝手に思ってました。Teddyさんのご両親はロカビリー好きで、2歳からエレクトーンを習い、とてもお若い頃から作曲やDJ活動をしてこられたんですよね。これまで何度か取材したり、メディアを通して見ていても同じなんですが、Teddyさんはとても物腰が柔らかくて、周りに気遣いができて、欠点がない完璧な好青年に見えてしまうんですが…音を聴いてると全くそうは思えないんです(笑)。それこそ「Break’em All feat,KOHH」も極悪ですし。アイナさんはどんな人物だと想像していましたか?

A:Teddyさんのインタビューを読んだり、動画を見たりもしてたんですけど…いい話しか出てこないみたいな(笑)。どこに闇があって、こういう曲が作れるんだろう?そういうところがないと、あんなに深い曲は作れないなと思うんです。聴けば聴くほどかっこいい。でもやっぱりインタビューとかを読んでるといいところしか出てこないっていう…不思議な方だなと思ってました(笑)。

T:ああ…(笑)。本当の『ワルい音』って、本物の不良じゃないと作れないと思ってます。だからKOHHくんとも気が合ったのかも知れないし、お互いに不良だから一緒に『ワルい曲』を作りはじめたんですよ(笑)。そんな秘めた凶暴さが今回の作品にも現れてます。

■この凶悪な曲に、自分の凶悪っぽいところを出したいと思って書きました。絶対に普段は出せない自分ですね

-それではEP『SILENT PLANET 2 EP Vol.4 feat.アイナ・ジ・エンド』についてお訊きします。まずTeddyさんのなかに”こういう感じで作ろう”というテーマのようなものはあったんですか?

T:普段、BiSHではロッキンでパンキッシュな彼女に、あえて全く違う豪快なEDM〜R&Bのスタイルで歌ってもらいたいと思ったんです。絶対ラップにもトライしてもらいたかったし。その時にもうハッキリと今回のMVの様なストリート・ダンスのイメージまでありました。なんとか新しいアイナ・ジ・エンド像を引き出したくて。

-歌詞はどの様に書かれたのですか?

T:タイトルはオファーする前から”TO THE END”に決めていました。もちろん『アイナ・ジ・エンド』っていう最高にカッコいい名前からのインスパイアです。テーマを作ったのはアイナちゃんですね。どんな曲がやりたい?とか、いろいろディスカッションして、後に歌詞のテーマになる熱心なメモを送ってきてくれたんです。それで「終わりに向かって突き進め」とか、「アンタたちは最後までついてこれるの?」みたいに、ちょっと挑発的な内容にしようと。曲作りにはMaryJane のLUNAさんとTSUGUMIさんに協力してもらいました。アイナちゃんの書いたテーマをそのまま渡して、そこから広げてリリックとして形にしてくれました。ラップとライミングもバッチリ考えてくれたし、ゴージャスなコーラス・アレンジもしてくれた。そんなことが出来るのは彼女達だけですよ。

-そうだったんですね!ラップしながら歌うのは大変でしたか?

A:もう、ほんとうに必死でした。ふだんラップってやったことないし、ぜんぶ自分の中に取り入れて”どう表現しようか?”っていろいろ考えて。今までにやったことがない音楽だったから、空回ってテンパって(笑)。

-Track,1「TO THE END」は、タイトルといい歌詞といい意味深な内容ですが、どのようにテーマを考えていったのでしょうか?

A:元になる曲を聴かせていただいたときに、私の中では”凶悪な曲だ”と思ったんですよ。すごくかっこよくて…。歪んでる感じとか。ふだんの私って、性格的にあんまりガツガツいけないところがあるんです。だからこの際もう、”この凶悪な曲に自分の凶悪っぽいところを出したい”と思って書きました。ふだんは出せない自分です。

-”まじだりぃ”とか、最高ですね(笑)。ちなみにアイナさんは”まじだりぃ”なんて普段言ったりします?

A:いやいや絶対言わないですよ!(笑)。そこはMaryJaneのお2人に書いていただきました。

-ですよね(笑)。”逃げるのイヤだ 壊したい”とか、”出口が見あたらない”など…アイナさんの心の中には、この曲で歌われてるような葛藤があったということでしょうか?

A:はい、ふだんは絶対に言わないところですね。

-逆にアイナさんがすべて作詞していたら、立場を考えても変な誤解や深読みをされちゃっていたかもしれないですね(笑)。

A:そうですね(笑)。そこはLUNAさん、TSUGUMIさん(MaryJane)にディレクションしていただきました。

T:MaryJaneのおふたりは、とてもディレクションが上手なんですよ。バッキング・コーラスでもアイナちゃんの声と彼女達のデモテイクを混ぜて使っていたりします。SKRILLEXとか海外のプロデューサーやアーティストって、チームで音楽を作るんですよね。作詞家だけで5人くらいいたり、メロディー担当だけでも何人もいたり。

A:へえー!そうなんですか!

-分業制になってるんですよね。2016年はチャンス・ザ・ラッパーを擁するシカゴのクルー、セイブ・マネーの名前もよく目にしましたし。

T:そうなんですよ。彼ら若いアーティストはほんとにすごいんですよね。僕も今回のMaryJaneさんや、ちゃんみなさんの曲のフックを描いてもらったCREAMのMINAMIさんの様に、曲によってどんどん外部ブレーンに協力してもらいながら曲のバリエーションを増やしていきたいです。共作は今まであまりしてこなかったんですが、そういう武器になるようなプラスαはどんどん実験して取り入れたい。




■いろんな作風で、いろんな人とコラボレーションして作っていると、自分のオリジナリティが損なわれるというか、バランスが取れなくなりそうな時もあるんですよ

-「TO THE END」のトラックはBPM128の四つ打ちで、きれいな音色のシンセなど全体的に華やかでもありながら、要所要所でしっかりとTeddyLoid印の激しさが主張されてますね。それから、Bメロにあたる部分のキックは音色が生ドラムのようになって、そこからエレクトリックなキック音にバチっと切り替わる部分にゾクっとしました。

T:プリコーラス(Bメロ)は、アイナちゃんが綺麗に歌い上げている部分で、生の重厚なバッキングコーラスも入っているので、ドラムも情緒ある質感にしたくて生ドラムの音色を入れました。自分がドラマーになった気分で入れてます(笑) 。

-アイナさんの歌声がしっかり生きていて歌詞も聞き取やすいですね。そして、がっつりオートチューンもかかってるという。

T:そうですね。ヴォーカル・テイクを確保出来たら、意識して敢えてドライに素材として扱わせてもらうので、この曲では一番かっこいい聴こえ方になるように工夫しています。シャウトのところはオートチューンを少し弱めたり、そういう微調整も加えながら。

-アイナさんは、自分の声にここまでオートチューンがかったものを聞いたことがありました?

A:なかったです。なんか、すごく自分の声が客観的に見れるっていうか。すごく楽しかったです。”わあ!TeddyLoidさんの曲の声になったー!”って(笑)。

T:嬉しいですね。それが一番の狙いなんですよ。いろんな作風で、いろんな人とコラボレーションして作っていると、自分のオリジナリティが損なわれるというか、バランスが取れなくなりそうな時もあるんですよ。だから、どの作品でもすぐにTeddyLoidの曲だ!って気付いてもらえるように心がけています。

■パンクロックでシャウトしてる人が、こんなにラップもできるのか!って。初めてとは思えない。

-それではTrack.2「SHOUT IT OUT」についてお訊きします。ビートはトラップですが、さきほどアイナさんが好きな曲だとおっしゃっていた「Break'em all feat.KOHH」や「Die Young」は、いわゆるトラップの特徴とされる重低音をベースにスネアが32分音符で連打されるという基本枠からだいぶ飛び越えてますよね。個人的にギターの音色やアプローチ的に、前者は”デスコア×トラップ”、後者は”インダストリアル・メタル+オルタナ×トラップ”というような感覚で、ロック感のインパクトが大きかったです。「SHOUT IT OUT」については、どちらかというと王道のトラップ・ヒップホップに近い印象を受けたのですが、いかがでしょうか?

T:確かにそうですね。KOHHくんと曲を作ってたときに、「トラックに音が詰まりすぎてるからラップを入れる隙がないよー」って言われたんです(笑)。トラップとは言ってもラップ向けではなく、インストのクラブ・ミュージックとして完成されすぎちゃっていて。それからKOHHくんに教えてもらったアトランタ・トラップとかもいろいろと聴いて、ラップやヴォーカルが入れられるトラップを研究したんです。「SHOUT IT OUT」も「TO THE END」も元からラップと相性がいいトラックにしようと思って作りました。

-トラップのビートにラップを乗せるのは難しそうですが、言葉数も違ってくるのでしょうか?

T:そうなんですよ。基本的に言葉が少ないんです。少ないところと多いところの緩急の触れ幅が大きいんですよ。普通の曲だとあまりそうはならないんですけど、トラップの場合だと、いきなり音数が増えたり減ったりが急に入ってくるんですよね。この曲もMaryJaneさんにコ・ライトしてもらって、もちろんラップ・パートもあらかじめリクエストしました。自分の自由を守りたくて頑張ってみせる女の子をテーマに。

-アイナさんはトラップ系のヒップホップもよく聴いてるんですか?

A:はい、ダンスを習っている時とかもよく聴いてました。だから、どちらかというと「SHOUT IT OUT」のほうが歌いやすかったんです。

T:そうそう、この曲のレコーディングは僕が腸炎になってしまって立ち会えなかったんですよ!なのでアイナさんとMaryJaneさんにお任せしてしまったんですが、ヴォーカルのデータが送られてきた瞬間に、「ウマっ!」ってびっくりしちゃいました。ダンスの経験があったからなのかもしれないけど、ラップ・パートに切り替わった時のビートに対するアプローチというか声の乗せ方が絶妙なんです。自分の身体そのものがリズムに乗っかっているような。パンクロックでシャウトしてる人が、こんなにラップもできるのか!って。初めてとは思えない。


■Kダブさんのラップを文字に起こしてみたら、"あ!私怒られてる!”って(笑)。

-アイナさんのラップに対し、”教えてやろうかダメな理由と大きな声で入ってくるKダブシャインさんのラップを聴いた瞬間、思わずおおお!と声を上げてしまいました。この応酬は興奮せずにいられないですね。

T:Kダブシャインさんはずっと僕の憧れの人なんです。元々この曲は割と大人の男性ラッパーがイメージだったので…これを機に思い切ってお願いしてみようかと。さすがにドキドキしましたけど、快諾して下さったのですごく嬉しかったです。実は僕が小学生のとき、Kダブさんの「ソンはしないから聞いときな」のリミックス・コンテストに応募してるんですよ。

A:ええ!!すごい!!

-そんなに子どもの頃に。

T:そのくらい大好きな人なんです。日本のラッパーの頂点にいるレジェンドだし、そのKダブさんが、若い女性であるアイナちゃんに対して、説教とまではいかないけど、「大人として一言言わせてもらおう」っていう。Kダブさんのいちばんいいところを引き出せたかなと思います。

A:めっちゃかっこよかったです!Kダブさんのラップを文字に起こしてみたら、"あ!私怒られてる!”って(笑)。

TeddyLoidマネージャー氏:Kダブさんは、アイナさん個人に向けてというよりは、若い女性達に向けて書いてくださってるんですよ。お説教の様でいて、実は頑張っている若い女の子達へのエールになる様な内容をリクエストしました。

-Kダブさんのリリックにはとても説得力がありますよね。さきほどおっしゃってたように、アイナさんが怒られているようにも聞こえたり(笑)。詳しい内容は聴いて確かめていただくとして。ちなみにアイナさんはBiSHで活動するなかで、大人に同じようなことを言われたことはあります?

A:うーん、あるといえばあるんですけど、ここまでゴリゴリに言われたことはないですからね(笑)。こういう大人に、側にいてほしいなって思いますよ。

-なるほど…。ただ物申すということではないですし、最後の言葉も誰が聞いても嬉しいですよね。

A:はい!ほんとうに嬉しかったです。

T:あと、実はKダブさんってこんなに早いラップをされたことがないと思うんですよ。K ダブさんの曲っていうのは、もっとゆっくりした、これぞヒップホップ!っていうグルーヴが味わいだから。この曲では本当に新しい一面を見せてくれたんです。Kダブさんは、このトラックと、アイナちゃんのヴォーカルに影響を受けて「こういうフロウにしてみたよ」って言ってくれて。僭越ですがKダブさんにとっても新たなトライになったと思うし、きっと誰も聴いたことがない感じになってると思いますよ。

-なるほど、確かにここまで早いラップをしている印象はないですね…。

T:そうなんですよ。ここまで捲くし上げる感じのは。もうひとつ嬉しかったのは、Kダブさんの『理由』というアルバムがあるんですけど、おそらく「教えてやろうかダメな『理由』」にかけてくれてると思うんですよ。僕が大好きなアルバムで、K ダブさんのキャリアにとっても重要な作品なんですが、その現代版なのなかな?って思います。 (『理由』2004年リリース。Kダブシャインの3rd.アルバム)

A:えええー!そうなんですか!なんか嬉しいですよね?すごい。

T:僕は『理由』を聴いて道徳を学びましたから。K ダブさんのラップを聴いて育つと、こうなるっていう(笑)。

-TeddyさんにとってのKダブシャインさんのような存在、アイナさんの場合は誰が浮かびますか?

A:宇多田ヒカルさんですね。3歳くらいからだと思うんですけど、うちの母がすごく好きで、母が歌ったりしてたのをよく聴いてたんです。車の中でもずっとかかってましたし、艶感だけじゃなくて、脆さといか、儚さがあるというか…。UAさんとか中森明菜さんとか、とにかく母がそういうアーティストが好きだったんですね。それで母に「あんたは生まれたときからこんな声だから、いつか宇多田ヒカルみたいになりぃや。」って言われて。あとはアリシア・キーズとか。強さも弱さもある、そういう声の人が好きです。

-去年リリースされた宇多田ヒカルさんのアルバム「Fantôme」は聴きましたか?

A:はいもちろん。ああ、やっぱり宇多田ヒカルさんだなぁって。ごめんなさい、あんまり音楽用語がわからないんですけど…。声が変わってないし、力強くて脆い感じもあって。KOHHさんとの曲(「忘却 feat. KOHH」)にはびっくりしすぎました(笑)。逆にTeddyさんとの曲を先に知ってましたし、わあ!こんなこともできるんだ!って。

-Teddyさんはこのアルバムを聴いてどう感じましたか?

T:もちろん素晴らしいですよね。僕自身もいつでも音楽シーンの動向を追っていますが、宇多田ヒカルさんもすごくトレンドを押さえてる方なんですね。2010年から2017年のすべてのトレンドが凝縮されてると感じました。そしてストリートのヒップホップをフックアップしたというのもすごいですし。

-少し話しが逸れましたが、「SHOUT IT OUT」を作るにあたって、特に重点を置いたのはどこでしょうか?

T:ギターサウンドですね。BiSHは今まで聴いたことがないような、がっつりパンクな感じだったので、ロック要素をたっぷりと入れてみれました。あまりボトムを意識せずに歪ませて、リフが際立つように入れています。アンプもいくつかの種類の物を混ぜたりこだわっています。

-”SHOUT IT OUT”という声にB♭B B♭と三連符で刻んでいるリフですね。後半のKダブさんのラップのバックも流れているギターのフレーズはどういうイメージで作ったのでしょうか?

T:後半のギターには元ネタがあるんですよ。Kダブさんのクラシックのひとつに「自主規制」という曲があるんですが、Kダブさんはブルージィな渋いギターやビートが似合うので、オマージュというかそういうシーンを作りました。

-さすがです。「Die Young」や「Break’em All」はもちろん、すべてのギターの音もTeddyさんが作ってるんですよね?ギターを弾くのではなく。

T:はい。よく曲を作ってると、「このギターは誰に弾いてもらったの?とか、ベースは誰が弾いてるの?」とか聞かれることがあるんですけど、ぜんぶ自分がPC上で音を作ってるんですよ。例えばMaryJaneにデモトラックを渡すときも、サビの部分は自分の歌を入れておいたりするんです。そのほうがニュアンスが伝わりやすいので。

A:すごいなぁ…。

■言われたことしかできない自分がイヤだから、”唯一無二の存在になりたい”っていう気持ちを初めて出せた作品なんです

-アイナさんのソロ活動としての作品でもありますし、BiSHの活動にはない新たな心がけも必要だったのではないかと思うのですが、いかがですか?

A:元々BiSHは<新生クソアイドル(Brand-new idol SHiT)>というテーマから始まってて、自分で何かを生み出して歌うのではなくて、提示されたものに対して120%でやるっていう気持ちでレコーディングを大事にしてたんですね。でも今回は、アイナ・ジ・エンドを切り取っていただいたソロですし、言われたことをやるんじゃなくて、いかにかっこよく聞かせられるかっていうことを、初めて自分で考えました。アーティストさんにとっては当たり前のことかもしれないですけど…。だからこの作品のレコーディングにも、自分のなかでイメージがある状態でいきました。いつもはイメージを作っておいても”そこは変えてもらえる?”って言われたりするんですけど。今回は膨らまして、自分でイメージしてたものをそのままぶつけて、さらにMaryJaneさんたちにいろいろ教えていただいて。シャウトも難しかったですけど、自分になかったことをイメージしたので、すごく楽しかったです。

T:『TO THE END』のレコーディングの時もほぼ録り直しとかしてないし、完璧だったもんね。

-アイナさんにとってはいつもと反対だったかもしれませんけど、さきほど”アーティストさんなら当たり前のことなのかもしれないけど”とおっしゃいましたが、既に立派なアーテイストだとしか思えないですよ。何かコンプレックスがあるんですか?

A:あ、ありますね。それが反骨精神になってるのかもしれないです。言われたことしかできない自分がイヤだから、ライヴだと”私はもっとやれる!”っていうところ出してる気がします。”唯一無二の存在になりたい”っていう気持ちを初めて出せた作品なんです。

-アイナさんにとっても記念碑的な作品になったのですね。さて、Track.3「SHOUT IT」はリミックス・ヴァージョンが収録されていますね。

T:そうなんですよ。アイナさんはもちろん、Kダブさんの声をカットアップして、切り刻んで再構築できる機会なんてないので、このリミックスはそこにとてもこだわりました。タイトルの「SHOUT IT OUT」という名のとおり、アイナちゃんのかっこいいシャウトもいっぱい録れたので、それを全面に持ってきました。メロディは置いといて、敢えてシャウトをメインに持ってきたリミックスですね。

-かなり激しい音ですよね。ダブステップから始まって

T:そうですね。最初はBPM150なんですけど、途中で128になるんですよ。

A:サビのところですか?

T:ううん、最初のテンポと終わりのテンポが違うの。

-曲の中盤から展開していってテンポが遅くなるんですよね。私はずっとロックDJをやっているのですが、BPMもジャンルもバラバラなリクエストがガンガンきたりもしますし、こういう頭と終わりでBPMが変わってくれる曲は切実にありがたいんです…。Teddyさんは、DJの現場での曲の使い道なども考えながらトラックを作るんですか?

T:そうですね。DJのときに次にかけたい曲のためにBPMを変えようという感じで。クラブのフロアでかけれるか、かけれないかっていう基準で曲を作ってますし。DJの皆さんにも、ダブステップから四つ打ちに持っていくときにぜひ使っていただきたいですね。

■リミックスを作る人の中には、声をぐっちゃぐちゃにして、原曲がなんだかさっぱりわかんないようにしちゃう人もいるじゃないですか。そういうのはすごくイヤなんです。

-Track.4「MONSTERS」は、BiSHのライヴの定番といわれている曲のリミックスですね。

T:今回リミックスするにあたってBiSHの曲をいろいろと聞かせていただいて、すごく悩んだんですよ。でもこの曲のシャウトを聴いた瞬間に、「この『声』を切り刻みたい!」って思ったんです(笑)。

-リミックスの素材として、切り刻みたいと(笑)。

T:そうそう。MVもすごいじゃないですか。トラックで遺体が詰め込まれて運ばれていって…。海外のEDMだとそういうMVもあるんですけど、日本の女性グループでそんな作風観たことないし、あのMVを観てる最中からリミックスのアイデアがどんどん出てきちゃいました。あと、このリミックスは必ずBiSHのファンが喜んでくれる、楽しんでもらえるものにしたい、というのもテーマでした。

A:めちゃくちゃ喜ぶと思いますよ!

-トラップから始まって、ビルドアップしてダブステップへ展開して、サビの部分はEDMバージョンのバイレ・ファンキと言いたくなるようなハネるリズムの4つ打ちで、さらにビルドアップしてドロップする部分など、TeddyLoidが得意とする複合的なエレクトロの要素が詰め込まれたフロアライクな仕上がりですね。ももクロのリミックスにしても、Teddyさんのリミックスは原曲ファンに好意的に受け止められている印象があります。

T:ありがたいですね。リミックスを作る人の中には、声をぐっちゃぐちゃにして、原曲がなんだかさっぱりわかんないようにしちゃう人もいるじゃないですか。そういうのはすごくイヤなんです。やっぱり原曲の素晴らしさを活かしつつ、さらにかっこよくしたいんで。原曲のファンにイヤがられるようなものなら、いいリミックスとは言えないと思います。

-確かにがっかりを通り越して殺意が沸くリミックスもたくさんありますが、Teddyさんのリミックスは必ずフロア映えしますしかっこいいものしかないですね。「MONSTERS」はライヴの動画も見たのですが、すさまじい熱量だし、フロアもカオスでびっくりしました。とてもかっこよかったです。

T:そうそう、すごいですよね。「MONSTERS」だけに(笑)。それからサウンドがしっかりしてますね。

-原曲はメタリックなアレンジでドラムも2バスであったり。

A:ずっと2バスなんですよ。最近生のバンドとツアーを一緒に回ったんですけど、ドラムの人が死にそうでした(笑)。

■アイナ:心の中では”ウオー!”ってなるんですけど、音楽用語とかわからないし、勉強してないから大丈夫かな?って。 Teddy:今の音楽シーンだと、勉強とかそういうのってまったく関係ないと思う。

-アイナさんからTeddyさんになにか聞いてみたいことはありますか?

A:KOHHさんにしてもそうですし、Teddyさんと誰かがコラボレーションしてる曲ってぜんぶ神曲って思ってて。自立した2人が一緒に作った曲っていうイメージなんですね。でも私は自分で発信する力が弱かったりするんですよ。Teddyさんはすっごく自立してるのに、私はふにゃふにゃで…でも芯はあるんです!でも心はあるんですけど形で提示できなかったと思う部分もあったし、そこに対して、フラストレーションというか…物足りない部分とかありましたか?(小声)

T:いや?逆に僕はアイナちゃんの普段のパフォーマンスでも、前のソロの曲でも、すべてから『意志』を感じるし、自分で思ってるよりちゃんと自立して発信してると思うよ。そんなことこれっぽっちも思ってない。悩むことなんてなかったし。

-先ほどもおっしゃってましたが、アイナさんとしては”言われたことをやらなきゃ”という気持ちが強いのかもかもしれないですけど、まずそれをやれることもすごいことだと思いますし、さらにBiSHでは振り付けも担当してるんですよね。そして今回はソロとしての作品がリリースされるすわけですし、聞いてる側はちゃんとわかってると思いますよ。

T:うん、ほんとにそうですよ。

A:えっ!…めっちゃ嬉しいです!なんか、私のカウンセリングみたいになっちゃってすみません(笑)。いつもめちゃくちゃ気を張ってて、心の中では”ウオー!”ってなるんですけど、音楽用語とかわからないし、勉強してないから大丈夫かな?って。

T:いや、それが逆にアイナちゃんの良さだと思うよ。僕がいるEDMっていうジャンルのトップDJに、キーボードも弾けないし、音符もわからない、マウスしか触れないような人がいるけど何千万枚もCDを売ってたりするし、今の音楽シーンだと、勉強とかそういうのってまったく関係ないと思う。アイナちゃん独特の『荒々しさ』が今回の作品を作ろうと思ったきっかけだったし。だから変に勉強しないでください(笑)。

A:そうなんですかねぇ…。

-今の話に繋がるのですが、Teddyさんは「聴かなくてもいいものがある」というような意味合いの発言をしていましたが、それって具体的にどういうことなのでしょうか?

T:音楽をやってるDJもミュージシャンもそうなんですけど、先輩が「この曲は聴かなきゃだめだよ!」とか言ってくるじゃないですか。「え?この曲通ってないんだ?」みたいな。でも、それしか通ってなかったら今の自分の音楽に辿り着けてないし。今って毎日毎日新しいアルバムに出会えちゃうし耳に入るじゃないですか。そういう状況で音楽をやっている人たちは、ある程度の取捨選択をしないとオリジナリティがなくなっちゃうから。

A:なんか、新しい人ですね…。よく「FALL OUT BOYを聴きなよ」とか言われるんですよ(笑)。

-アイナさんはTeddyさんのDJを見たことはありますか?

A:生ではまだないんですよ。動画では見させていただいたんですけど。

-つい先日の3月4日にも、新木場スタジオコーストでちゃんみなさんとライヴをやったそうですね。

T:はい。ちゃんみなはステージングがすごくて。今回参加してれてるアーティストもみんなパフォーマンスがすごいから、一緒にライヴがやりたくなりますよね。

A:えー!ぜひやりたいです!!

-作品もリリースされましたし、Teddyさんとアイナさんお2人のライヴも見てみたいで す。

T:ぜひやりたいですね。これからも「最期まで」一緒にぶっ壊していきましょう(笑)。

A:はい!!!



Interview + Text: Kaoru Sugiura
Photo: kentaro Chiba

商品概要
TeddyLoid
Digital EP「SILENT PLANET 2 EP vol.4 feat. アイナ・ジ・エンド(BiSH)」 3月17日(金)配信開始
Apple Music & iTunes 先行配信
iTunes
AppleM

[収録曲]
M1. TO THE END feat. アイナ・ジ・エンド(BiSH)
M2. SHOUT IT OUT feat. アイナ・ジ・エンド(BiSH) & Kダブシャイン
M3. SHOUT IT OUT feat. アイナ・ジ・エンド(BiSH) & Kダブシャイン (Remix)
M4. BiSH - MONSTERS (TeddyLoid Remix)

▼TeddyLoid website
Official:http://www.teddyloid.com/
twitter:@TeddyLoidSpace
Instagram:teddyloidspace