2017-02-15
ライアン・アダムス、2年半ぶりのニューアルバム『Prisoner』を語る



エルトン・ジョンをはじめとする多くのアーティストから絶賛される、00年代~10年代を代表するシンガーソングライター、ライアン・アダムスが、2月17日にニューアルバム『Prisoner』をリリースする。昨年12月には、リリースを前に東京・新木場スタジオコーストにて初の単独来日公演を開催、この日を待ち望んでいた多くのファンを魅了した。MTV NEWSではライブの翌日にインタビューを行い、約2年半ぶりとなる新作について聞いた。

ーニューアルバム『Prisoner』のリリースおめでとうございます。とても素直な感情が詰まった作品ですね。

とてもエモーショナルな作品なんだ。そうしたかったんだよ。

ー年半ぶりのアルバムリリースですが、曲作りはいつごろスタートしたんですか?

実はずっと書いていたんだ。僕はかなりまとまった期間に集中して曲を書くんだけど、その期間中にはすごい数を書く。一旦曲を書いたら、少し時間を置くのがいつものやり方だよ。とはいえ、手元にギターがあれば、大抵は何かしらを書いているけどね。それが僕のスタイルなんだ。昨日も曲を書いたくらいだよ。今作に収録されている楽曲は4ヶ月前くらいまで書いていた。曲作りの過程があまりにも長かったから、マスタリング作業を終えるころには恐らく80曲くらいあったんじゃないかな。

ー80曲も書いたんですか?

実際に書いたのはもっと多いよ。レコーディングしたのが80曲くらいあった。

ーアルバムのタイトル『Prisoner』に込めた意味は?

僕にとっては、あの曲「Prisoner」自体がアルバムに込めたメッセージを反映しているし、暗示しているんだ。プリズナー(囚人)というコンセプトは哲学的なものなんだけど、少なくとも僕にとって、失恋やロマンスといった経験は、自分の体や心の囚人になるということなんだ。そのことを認識し、それ以上の存在になるために努力をするということ。ダークに思われるかもしれないけれど、これはそれに気付くための声明なんだ。

ー失恋を歌った楽曲が多いように感じましたが、そこに描かれているのは当時のあなた自身の心情なのですか?

それが僕の楽曲のスタイルだからね。僕はできるだけ多くのものをシェアしたいんだ。そして、できる限り美しく作りたいと思っている。スキャンダラスに何でも暴露しようとしたわけではないんだ。それよりも、僕は100年後を考えているんだよ。そのころには僕の作品としてではなく、その内容が注目されるだろうから。

ー自分の感情を曲に書き出すことで、癒やされる部分はありますか?

癒やされるというよりは、楽曲を書くことで、それらの感情を感じることができるという感じかな。曲作りは肉体的にも精神的にも人間であることを感じさせてくれるんだ。僕にとっては、音楽やアートは人生を表現する色のようなものなんだよ。でも、決して正確で完全な絵を描くことはできない。もしそれができたら、アートによって怒りや狂気、傲慢さを持った人々を治せるはずだからね。とはいえ、人々により良くなろうと思わせてくれる良い指標ではあると思う。

僕の場合は、ただ大好きだから曲を書いているんだ。引きつけられるんだよ。たとえばサーファーがただ波に乗るように、僕もなぜかわからないけどギターを弾いて曲を書いている。時々思うんだけど、もし自分が曲を書く理由がわかったら、もう書かないんじゃないかな(笑)。わからないけどさ。

ーサウンド面でこだわったことは?

今作では自分自身のサウンドにもっと近づけたような気がしている。進めていくうちに、極限まで自分をさらけ出して、好きなように描き、ありのままの自分でいることを止める理由がなくなったんだ。僕が長いこと自分に制限を課していた理由は、たくさんの人に向けたアルバムを作っていたからだと思う。

アルバム制作は常に最も純粋な形でやっているんだ。まるで料理のように、作りながらいろいろなことが起こる。誰かがキッチンに一瞬だけやって来るかもしれないし、それによって料理も少し変わってくる。失敗することだってあり得るんだ。長いこと続ければ続けるほど、過去からいろんなものを取り除いて、終わりに近づくことができるようになった。自分が想像していたことや、その時の自分にね。

ーあなたの音楽にはさまざまな要素が含まれていますが、どのような音楽を聴いて育ったのですか?

ものすごいいろんなタイプのレコードを聴いて育った。プリンスやブラック・サバスも好きだったし、シンプル・マインズやティアーズ・フォー・フィアーズも聴いていたし、あらゆる種類の曲を聴いていたよ。一つの特定のタイプの音楽を聴く人が多いことを知らなかったんだよね。知らなかったから、全部好きでもいいと思っていた。もちろん、それでいいんだけどさ。でも大きくなってくると、「待って、ソニック・ユースとガンズ・アンド・ローゼズが好きなんてありえないでしょ」とか言われるようになって、「なんで?」って思っていた。全然理解できなかったよ(笑)。

僕からしてみれば、毎晩同じ料理を食べたくないようなものなんだよね。でも中には、自分自身を一つの方法だけで表現したい人もいる。だから、音楽がそうする上での補完になっているのかもね。でも僕はすべての色を見たいし、すべての感情を感じたい。すべてのものを目にしたいからこそ、さまざまな音楽を受け入れられるのかもしれないね。

ー最近よく聴いているアーティストはいますか?

フルタイムでソングライター/ミュージシャンをやっているせいか、新しいバンドをチェックすることが少ないんだ。それに僕自身が自分の気持ちについて書くことが多いソングライターだからか、他のソングライターの曲をあまり聴きたいと思わない。そういう音楽にはあまり引かれないんだ。それよりヘヴィメタルとか昔のパンクとかを聴くことが多い。

僕もみんなと同じように、逃避するために音楽を聴いているんだ。自分の音楽に近いものについては、あまり知らずに曲作りをしている。そんな隔離された状況は、実際にとても良いものだよ。それに、もし自分の音楽に近い曲やフィーリングを求めているのなら、それこそ自分で書いてしまうよ。自己中心的かもしれないけどさ。

ーすてきなことだと思いますけど。

そうだね。畑をやっている人が、ニンジンが欲しくなったら自分で種を撒いて育てるようなものだよ(笑)。

ー今作の制作を通じて得たものの中で、印象に残っていることは?

曲を作っていた時は、とにかく自分自身と向き合って、自分を表現していたんだ。何も期待していなかったからこそ、あのような作品になったんだと思う。すべての曲を気に入っているけれど、不思議なことに、プレイが楽しみだという部分以外では特に愛着を感じているわけでもない。僕はどんどん先へと進んでいるんだ。完成した作品は、その瞬間を表現したもの。でも僕は既に次に進んでいる。既に曲も書いているしね。

ー今回は初の単独来日公演を行われましたが、いかがでしたか?

素晴らしかったよ。あの会場(※新木場スタジオコースト)もすごく気に入った。音も良かったし、新しいバンドを連れてきたんだけど、今回が3回目のライブだったんだ。みんなすごい時差ぼけだったから、すべては少し非現実的に感じられた。でもあの時差ぼけの中で、あんなにも良い演奏ができたことに驚いているよ。もっとライブをやりたいと思った。

ー日本のオーディエンスはいかがでしたか?

大好きだよ!素晴らしいオーディエンスだと思う。みんながすごく音楽に集中してくれたから、僕ももっと集中したいと思えたし、自分が居た場所よりもさらに遠くまで行くことができた。本当に素晴らしいと思った。

ーオアシスの「Wonderwall」のカバーも盛り上がっていましたね。

みんなが喜んでくれて良かった。実はセットリストにはなくて、その場で決めて演奏したんだ。

ー久しぶりの日本はいかがですか?

最高だよ。素晴らしい時間を過ごしている。今回が5度目の来日なんだ。日本は大好きなんだけど、毎回すべてを見るのに十分な時間がないんだよね。でも、今回は少しだけ時間があったよ。

ー少しは観光できましたか?

早い時間のフライトで来たから、少しだけ観光できた。東京はとても興味深い街だよね。もっとたくさん観るべきところがあるんだろうな。とにかくすごくこの街が好きになったよ。

ー2017年はアルバムもリリースされて大忙しだと思いますが、今後の予定は?

とにかく自分らしく音楽をプレイし続けたいね。ヘヴィなアルバムなのにおかしいと思われるかもしれないけど、ライブでプレイするのが楽しみなんだ。今はとても良い気分だし、毎日何か新しいことを学べることに感謝しているよ。

ーまた日本に戻ってきてくれますか?

そう願うよ。日本は大好きだから、東京以外の場所もツアーでまわれたらいいな。またみんなに会える日が待ち切れないよ。

Interview + Text: Nao Machida


ライアン・アダムス:
1974年11月5日、米ノースカロライナ州ジャクソンビル生まれ。高校在学中にバンド活動を始め、バンド解散後ソロに転向、2000年にデビュー作『Heartbreaker』を発表すると、エルトン・ジョンをはじめ多くアーティストから絶賛された。翌年には『Gold』を発表。9.11同時多発テロ事件の1週間前に撮影されたシングル「New York, New York」のミュージックビデオに映る在りし日のツインタワーに人々は思いを巡らせ、同曲はスマッシュヒットを記録、グラミー賞にもノミネートされた。その後、ほぼ毎年新作をリリースし、時には1年に3枚を出すこともあったが、2009年からメニエール病に悩まされ、ライブ活動から遠ざかっていた。しかし2014年に復帰、翌年にはフジロックに出演し、10月にはテイラー・スウィフトの『1989』をカバーして話題になった。


『Prisoner』

1. Do You Still Love Me?
2. Prisoner
3. Doomsday
4. Haunted House
5. Shiver And Shake
6. To Be Without You
7. Anything I Say To You Now
8. Breakdown
9. Outbound Train
10. Broken Anyway
11. Tightrope
12. We Disappear