2016-05-02
SALU ロングインタビュー、新作『Good Morning』を語る



2012年にインディーズリリースされたファーストアルバム『In My Shoes』で注目を集め、翌年にメジャーデビュー。その後も勢いよくシーンを駆け抜けてきたSALUが、2年ぶりとなるニューアルバム『Good Morning』をリリースした。MTVでは今回ロングインタビューを敢行し、バックグラウンドからアルバムの制作秘話まで、じっくりと話を聞いた。

──まずは少しSALUさんのバックグラウンドについてお聞きしたいのですが、プロフィールを拝見したら、3歳でドクター・ドレーを初めて聴いたと書かれていて驚きました。

そうですよね(笑)

──ご両親も音楽好きだったのですか?

父親も母親も音楽が好きで、特に父親はソウルとかファンクとかヒップホップが好きで、車とか家でかかっていたんです。聴かせられていた、みたいな感じです。それが原体験として残っていて、だいぶ体に染み込んでいると思います。

──他にはどんな音楽を聴いて育ちましたか?

ヒップホップは少なくて、家の中ではソウルとファンクとジャズとハウスがかかっていました。洋楽が多かったですね。日本の歌だと、サザンオールスターズとか山下達郎さんはかかっていた気がします。

──ラップを始めたのは14歳の頃だそうですが、何かきっかけがあったのですか?

音楽をずっとやってみたいと思っていたんですけど、歌も歌えないし楽器もできなかったので諦めていたんです。でも、ラジオでKICK THE CAN CREWさんの曲を聴いて、日本語でラップされている方を初めて知って、自分でもできるかなと思ったのがきっかけです。それから見よう見まねというか、好奇心で始めた感じです。

──ちなみに初めて書いたリリックの内容は?

学校の先生の悪口とか(笑)。何でもない歌詞を書いていました。

──SALUと名乗り始めたのはいつ頃ですか?

14、5歳の頃です。なんでSALUっていう名前にしたんだっけな…ちょっと定かじゃないんですけど。意味はたくさんあるんですけど、なんでSALUにしたのか覚えていなくて(笑)。

──そして2012年に『In My Shoes』で大きな注目を集めて、2013年にメジャーデビューを果たし、セカンドアルバムを発表し、ワンマンツアーを開催して…すごい勢いで駆け抜けてきたここ数年だったと思うのですが、3作目へのプレッシャーはありましたか?

プレッシャーというよりも、何をしたらいいのか、何をしたいのか、ちょっと分からなくなっていたんです。何でもできる環境にいて、何でもできるようになって、それが分かった上で…セカンドアルバムを出した後、「じゃあこれを使って何をしたらいいのかな?」というところにいました。プレッシャーというよりも、「何をするか」ということを考えていましたね。

──それまでやってきたことを出せるデビュー作と比べて、2作目、3作目で迷うアーティストは少なくないかと思いますが、そういうこともあって2年という時間を要したのですか?

そうですね。曲は作り続けていて、できていたんですけど、「これじゃない」っていうのが続いて。今回のアルバムに入っていない曲でも30曲くらいあるし、2年間で50曲以上は作ったんじゃないかと思います。

──ニューアルバム『Good Morning』は、「今までやらなかったことの中で、やってみたかったことの1つ目」だそうですが、なぜこのタイミングでやってみようと思ったのですか?

デビューが決まってからセカンドアルバムまでの3年間、2011年から2014年まではあっという間だったんです。1年くらいの間に3年が過ぎていったような感じで、他にやりたいことがたくさんあることも忘れちゃっていました。でも、セカンドアルバムを出した後にちょっと時間ができて、何をしたいか、何をすべきかとか、自分はどんな人間だったかな、どんな風になりたいって思っていたんだっけな、ということを思い返しました。その時に、そうだ、こういうこともやりたかったなと思って、今回はセルフプロデュースでいろんな方と作品づくりをしてみようと思ったんです。

──多彩なトラックメーカーやプロデューサーを迎えた作品ですが、セルフプロデュースをする上で、どのようなことにこだわりましたか?

こだわりというよりも直感というか、最初に感じたことを大事にしようと思って。何かやりたいと思った時に、それをやるとこう思われちゃうとか、こう言われちゃうとか、そういうことを考えないようにしようと思いました。最初の直感というか、心の声に従うということを大切にして制作しました。

──先行シングルの「Tomorrowland」ではtofubeatsさんとコラボされています。ヒップホップ系ではない彼にトラックを依頼しようと思った理由は?

tofu君がデビューした時からインターネットで知っていて、すごい好きで気になっていたんです。彼が作品を出すごとに、いいなと思っていて、いつか一緒にやりたいと思っていました。それで今回思い切ってオファーしたんです。自分からは何もリクエストせずに、tofu君の好きなように作ってもらいました。

──あの曲を先行シングルに選んだ理由は?

tofu君のおかげで、アルバムの中で1番明るくポップな方向に振り切っている曲ができたかな、と思って。それはぜひ一番みんなの目に触れるところに置きたいな、と。

──リリックの中で、「理想の世界と僕が住む世界は/ずっと別だと思ってたけど/実はここから続いていた」という部分がとても印象的でした。この2年間に、SALUさんの中で何かが見えたのかなと感じたのですが、心境の変化はありましたか?

心境は大きく変わりましたね。自分を変えるために、この2年間を費やしていた感じがあったので。自分が変わることで、もっと分かりやすい、より良いものを作りたいという欲がすごくて。もっと多くの人に聴いてほしいという気持ちが根源にあったので、そのためには、まずは自分が変わらなきゃいけないと思いました。そのために2年間で自分を変えていったので、だいぶ心境は変わったかなと思います。

──1曲目の「All I Want」から2曲目の「Tomorrowland」への流れが、夜明けから始まって明るい太陽が出てきたようなイメージで、聴いていてとても気持ちよかったです。『Good Morning』というタイトルには、どのような意味が込められているのですか?

「All I Want」が1曲目にできたんですけど、その時に2年間の夜が明けた気がしたんです。それをみんなに伝えられる1番シンプルな言葉にしようと思って、『Good Morning』にしました。



──「All I Want」では、Salyuさんのボーカルがとても曲に合っていますよね。今回初めて女性ボーカルを迎えられていますが、この曲を作った時にSalyuさんのイメージがあったんですか?

Salyuさんとは、ずっと音楽をやりたいなと思っていたんですけど、お願いできそうな曲がなかなか作れなかったんです。でも、「All I Want」ができた時に、これは絶対にSalyuさんに頼みたいってすぐに思いました。

──女性ボーカルではもう1曲、「ビルカゼスイミングスクール」で中島美嘉さんをフィーチャーされています。意外なコラボレーションにも思えますが、彼女をフィーチャリングした経緯は?

これもただ、中島美嘉さんが大好きだっただけです(笑)。デビューされたのが、僕が中学生くらいの時だったんですけど、それからずっとアーティスト業も俳優業も見てきて、いつか自分がプレーヤーとして曲を出す時に、何か一緒にできたらいいな、と。ずっと心のどこかで思っていたことを今回この2年間で思い出して、ダメ元でオファーしてみました。

──中島さんはリリックにも参加されたそうですね。コラボしてみていかがでしたか?

思っていた通りのものができて、思っていた通りの感触で、「やっぱりそうだったんだ」と思いました。

──ボーカルスタイルにしても、今回のコラボは中島さんにとっても新しいことだったのかなと感じたのですが、SALUさんからリクエストしたことはありますか?

一つだけ、作詞に関して、「天からの声」というイメージだけお伝えしたんです。そしたら、それだけであの歌詞が来たので驚きました。まさにこういうことが言ってほしかった、と思って。

──他にも今作にはスチャダラパーのSHINCOさんや、水曜日のカンパネラのサウンドプロデューサー、Kenmochi Hidefumiさん、mabanuaさんなど、多彩な方々が参加されていますね。特に印象に残ったコラボレーションはありますか?

mabanuaさんとお互いに意見を出し合って、密に直接やり取りできたのがうれしかったです。真剣に同じ一つの音楽に向き合ってくれたというか、それがすごくうれしかったですね。

──「Mr. Reagan」にトランペットで参加した黒田卓也さんは、かなりすごい方なんですね。

そうなんです、黒田さんはすごい人なんです(笑)。全く交流はなかったんですけど、ホセ・ジェイムスのバンドで活躍されていて、「あれ、この黒田卓也っていう人、日本人だよな?」と思って、調べたらトランぺッターだったんです。それで黒田さんのソロの作品を聴いてみたら、すごくて。僕もジャズで育ったので、この人すごいなと思って。それでまたダメ元でオファーするっていう、一連の流れなんですけど(笑)。そしたらわざわざニューヨークから日本に帰ってきている時にスタジオまで来てくれて、一緒に制作しました。

──レコーディングはいかがでしたか?

生のトランペットは本当にすごかった。かっこ良かったです。気持ち良かったっていうか、とにかくすごかった。ちなみに「Mr. Reagan」は映画『マトリックス』の登場人物の名前から取りました。

──曲作りにおいて、他にはどんなことからインスピレーションを受けますか?

映画は大好きだし、本、マンガ、テレビ番組、音楽、人の話、場所、景色、記憶…とかですかね。あとは美術館とか博物館とか。でも、インプットの期間とアウトプットの期間が分かれている方です。この2年間にはインプットをたくさんしました。

──セルフプロデュースでアルバムを制作してみて、今作を通じて得た一番大きなものは何だったと思いますか?

音楽を楽しむ心。手に入れたというよりも、取り戻したというか。それを思い出せたというのが一番大きいかなと思います。

──『Good Morning』を聴く人たちに、ぜひ感じ取ってほしいものはありますか?

たくさんあるんですけど、何も考えないで聴いてもらうのが一番良いかなと思っていて。何も考えないで聴いてもらった時に印象に残ったことが、この作品において、その人と僕の間で大切なことなのかなと思います。

──作品を聴いた人の反応を通して、これまで見えていなかったことが見えることもあるのかと思いますが、今のところどんなフィードバックがありましたか?

知り合いの方に、『「ハローダーリン」は今の日本語ラップの現状について歌っているんですか?』と聞かれて、全然そういうつもりはなかったのでびっくりしました。人によっていろんな解釈があるんだな、と思って。今回はそういう作品にしたかったんです。隙間がいっぱいあるというか、どうとでも取れるような作品にしたかったので、それは実現できたかなと思います。

──今、この時点で気に入っている曲や、今のご自分に近い曲はありますか?

6曲目の「Nipponia Nippon」という曲が僕は1番好きですね。

──メッセージ性の強い曲ですよね。今作ではリリックでもご自身を以前より解放しているのかな、と感じました。

そうですね、作詞に関しても解放していると思います。制御していた部分を制御しなかったり。でも、今作も完全に解放しているわけではないと思っていて、まだ何段階か残っているんで、もうちょっとは音楽活動続けられるかな、っていう感じです(笑)。

──6月には『Good Morning』を引っさげてツアーを行うそうですね。

今までは変化球的なライブが多くて、フルバンドでやらせてもらったり、DJすらステージにいなくて、僕だけしかいないだとか、そういうのが多かったんです。今回はオーソドックスな形のライブができたらな、と思っています。

──今作は「今までにやらなかったことの中で、やってみたかったことの一つ目」だそうですが、アーティストとして、今後はどのように活動していきたいですか?

いろいろやりたいことは本当にたくさんあって、毎日これもやりたい、これもやりたいってアイデアがいっぱいあるんです。新しくいろんな人とつながったりして、それができるようになっていって、ていう中で、やっぱり自分が伝えたいことや、音楽をやりたいっていう気持ちを忘れずにいられたらいいなと思います。

──最後にMTV視聴者やこれを読んでいる人にメッセージがあればお願いします。

Good Morning, Nipponia Nipponっていう感じです(笑)。



SALU:
1988年札幌生まれ、神奈川は厚木育ち。ユルフワ系脱力フロウを武器とするニュータイプ·ラッパー。2012年3月にインディーズ·リリースされたファーストアルバム『In My Shoes』は、23歳にして得た濃厚な人生経験と、初期騒動に裏付けされたSALU が"In My Shoes(=僕の立場から)”から見た世界について歌った作品で、J-HIPHOPのフィールドでは異例のスマッシュヒットとなり、iTunes総合チャートで初登場2位を記録。KREVAや木村カエラらさまざまな方面から絶賛され、ヒップホップ·ヘッズはもちろん、ロックリスナーからも高い支持を集めた。2013年にはロックフェスにも初参戦し、TOY'S FACTORYよりメジャーデビュー。ミニアルバム”IN MY LIFE”を発表する。2014年にはメジャー移籍後初のフルアルバム『Comedy』をリリース。リリース後は初のワンマンツアー"TOUR OF COMEDY ~喜劇の旅~”を地元の札幌を皮切りに名古屋、福岡、大阪、東京で開催した。





『Good Morning』
01. All I Want feat. Salyu
02. Tomorrowland
03. ハローダーリン
04. Mr. Reagan feat.Takuya Kuroda
05. How Beautiful
06. Nipponia Nippon
07. Lily
08. 痛いの飛んでいけ -interlude-
09. ビルカゼスイミングスクール feat. 中島美嘉
10. タイムカプセル
11. In My Face
12. AFURI

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