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スパイク・ジョーンズ『her/世界でひとつの彼女』来日インタビュー後編

2014-06-27


ビースティ・ボーイズやファットボーイ・スリム、ビョークといった数々のアーティストの名作ミュージックビデオや、人気シリーズ「jackass」など、MTVでもすっかりおなじみの奇才スパイク・ジョーンズ。常に奇想天外なアイデアで観る者を驚かせる監督の最新映画『her/世界でひとつの彼女』が、6月28日(土)より全国で公開される。

映画は近未来のロサンゼルスを舞台に、AI(人工知能)型OSのサマンサと恋に落ちていく主人公セオドアの物語。これまでにない設定ながらも、普遍的な感情を繊細に描いたスパイクは、今作で第86回アカデミー賞脚本賞を受賞した。MTV Newsは4年半ぶりに来日したスパイクにインタビュー。映画の見どころや舞台裏について、たっぷりとうかがった。

インタビュー前編はこちら>>

──今作の衣装は1920年代〜30年代を参考にしたそうですが、近未来が舞台の作品で過去のファッションを採用しようと決めた理由は?

70年代に50年代のものがカムバックしたり、90年代に70年代のものがカムバックしたりするよね。でも20年代はまだカムバックしたことのない時代のように感じた。時代を決めることで、独特な世界観を作り上げることができたよ。

レトロにしようとしたわけではなく、その時代のアイデアを起用したんだ。主人公セオドアのハイウェスト・パンツにしても、当時とは違った暖かみのある赤や柔らかい素材と合わせてみた。ゴールは独自の世界観を作り上げることだったんだ。セオドアの口ひげも20年代っぽいし、赤ちゃんの名前にしたって、トレンドは繰り返すと思うんだよね。



──とても美しい今作の脚本は監督のオリジナルとのことですが、脚本家としては今後どのように活動していきたいですか?

これからも書き続けていきたい。でも、オープンな気持ちでいたいと思う。10年後に自分が何をしているかは分からないし、決めたくないんだ。未来に何が起こるかは分からないから、いつでもいろんなチャンスを発見できるようにしておきたい。

──これまで監督としてたくさんの作品を手掛けてこられましたが、脚本家としてアカデミー賞を受賞したことについてはどう感じられましたか?

僕は過去に短編を書いていたし、初めての仕事は雑誌のライターだった。ミュージックビデオやショートフィルムのトリートメントも自分で書いてきた。そういう意味では、今回の受賞は自然なことのように感じるよ。どんな賞でも受賞するって最高のことなんだけど、今回は脚本家として受賞できたことがとてもうれしかった。物書きとして、僕らはみんな、それがどれだけ大変な作業か分かっているだろう?

──孤独な仕事ですよね(笑)

うん、とてもね(笑)



──さらに監督は良い役者でもありますよね。『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の出演シーンは本当に面白かったですし、今作でも主人公がプレイするゲームに登場する、宇宙人の子ども役として声の出演をされています。役者業はお好きですか?

好きだよ。監督として、他の監督の仕事ぶりを間近で見る機会は貴重なんだ。もちろん、役を作り上げて演じるのも楽しいしね。5作品でコラボレートしてきたマーティン・スコセッシとレオナルド・ディカプリオが生み出した世界に入れてもらって、世界で最も尊敬する監督のひとりであるスコセッシの仕事を見学できるなんて、とても稀なことなんだ。

──スコセッシ監督からはどのような演技指導をされましたか?

撮影前日に衣装を着て、あの口ひげをつけて、監督に会いに行ったんだ。「僕からは何が必要ですか?」って聞いたら、(スコセッシの物まねで)「こういう感じもありだし、こういう感じでもいいし…」って話しだして、「うわ、スコセッシだ!」って思ったよ(笑)最高だった。僕よりもあの役を上手に演じていたんじゃないかな。

実は言われたことが脚本と全然違ったから、「脚本と違いますよね?」って聞いたら、「いいんだよ、脚本は気にするな」って言うんだ。「話の筋は分かっているだろう?あとは好きなこと言っていいよ」ってね。撮影当日は何テイクも撮ったんだけど、会話のほとんどがアドリブだった。毎回レオといろんな会話をして、スコセッシは側で見ていて、たまに「おばあちゃんの話をしてみたら?」とか言われたよ(笑)

──今回は4年ぶりの来日ですが、日本でインスパイアされる場所はありますか?

僕は街を歩き回るのが大好きなんだ。日本には何か独特な美学があるように思う。街のデザインやお店の在り方、ものづくりにおいても、そこには美しさがあるよね。

キャンディの包み紙でさえも、美しい贈り物のようにデザインされているだろう?今作に登場する携帯端末のデザインやインターフェイスも、そんな風に感じられるものにしたかったんだ。見た目というよりもフィーリングという意味で、日本のキャンディの包み紙とグーグル・アースの中間くらいのデザイン性を求めていたんだ。



この前も夜7時くらいに代官山を歩いていたら、とても美しかったよ。お店が並んでいて、仕事帰りに友だちと飲みに行く人々がいて、川沿いの風景があって…東京には六本木みたいなとても忙しそうなエリアもあるけど、あんな風に落ち着いたエリアもあるから興味深いね。

──ファットボーイ・スリムのミュージックビデオ「Weapon of Choice」で俳優クリストファー・ウォーケンを宙に舞わせてみたり、『マルコヴィッチの穴』でジョン・マルコヴィッチの頭の中に入ってみたりと、いつも奇想天外なアイデアを見事に映像化される監督ですが、最近お気に入りのクレイジーな妄想はありますか?

いつも妄想しているよ。今回のインタビューは楽しいけど、時にはあまり楽しめないインタビューもあるんだ。そんな時は、目の前のテーブルに火を点けて、燃え上がる炎を囲んで取材が続いて行く様子を妄想したりしてね(笑)妄想することで助けられる時もあるんだよ。

──作品毎に予想外のアイデアが炸裂しているので、『マルコヴィッチの穴』のように監督の頭に入ってみたい人は多いと思います。

いいよ。でも、きっとがっかりするんじゃないかな。「なーんだ、私と同じような不安を抱えているんだ」って思われると思う。何か面白いものが見つかったら、ぜひ教えてほしいよ(笑)



──MTVの人気シリーズ『jackass』のようないたずらにしてもそうですが、ユニークな発想はどのような時に浮かぶのですか?作品を手掛ける上で大事にしていることはありますか?

僕は自分の気持ちに誠実に、間違いは気にせず、本当に作りたいものを作ろうと思って作品を手掛けているだけなんだ。みんなと何ら変わらないと思うよ。

ちょっと恥ずかしいと思うことでも素直に表現すると、多くの場合は人とよりつながることができる。自分を見せるという勇気ある行為を通して、人はより親密になれるんじゃないかな。

Interview + Text: Nao Machida
Photos (Spike Jonze): Taro Mizutani




『her/世界でひとつの彼女』

監督・脚本・製作:スパイク・ジョーンズ
キャスト:ホアキン・フェニックス、エイミー・アダムス、ルーニー・マーラ、オリヴィア・ワイルド、スカーレット・ヨハンソン
6月28日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
Photo courtesy of Warner Bros. Pictures

オフィシャルサイト>>

13:00

スパイク・ジョーンズ『her/世界でひとつの彼女』来日インタビュー前編

2014-06-26


ビースティ・ボーイズやファットボーイ・スリム、ビョークといった数々のアーティストの名作ミュージックビデオや、人気シリーズ「jackass」など、MTVでもすっかりおなじみの奇才スパイク・ジョーンズ。常に奇想天外なアイデアで観る者を驚かせる監督の最新映画『her/世界でひとつの彼女』が、6月28日(土)より全国で公開される。

映画は近未来のロサンゼルスを舞台に、AI(人工知能)型OSのサマンサと恋に落ちていく主人公セオドアの物語。これまでにない設定ながらも、普遍的な感情を繊細に描いたスパイクは、今作で第86回アカデミー賞脚本賞を受賞した。MTV Newsは4年半ぶりに来日したスパイクにインタビュー。映画の見どころや舞台裏について、たっぷりとうかがった。



──今作には主人公セオドアとAI(人工知能)型OSのサマンサの恋愛が描かれています。声だけの相手との恋愛シーンを描く上で大事にしたことはありますか?

1人しかスクリーンに登場しない中で2人のシーンを描くことは、今作における大きなチャレンジの1つだったように思う。でも、脚本を書いたときも役者たちと話し合ったときも、僕はそれをリアルな恋愛として話すようにしていたんだ。

サマンサが身体を持っていないことにより抱くであろう自己疑念について、スカーレット(・ヨハンソン、声の出演)と話した時も、僕らは常に人間関係の映画として考え、自分たちの人生や人間関係と結びつけて考えていた。もしかしたらそういった素直さが、人と人との結びつきを描いた作品として信ぴょう性をもたらし、観る人に響いたんじゃないかな。

──セオドアとサマンサは肌を触れ合うことができません。そこには特定の悲しみや寂しさがあると思いますが、監督は彼らの孤独感をどのようにとらえていましたか?

それはその通りだと思うし、だからこそ彼らは苦しむんだ。2人はそのことについて話し合っているし、たぶん問題を抱える他のどのカップルとも同じように悩んでいるよね。

長くつきあっていてもお互いの気持ちを話し合うことをせず、相手のことを深く理解していない恋愛もあるわけで。彼らの関係には間違いなく限界や苦しみがあるわけだけど、少なくとも本当の意味でつながりを感じ、お互いをよく理解していると感じられる関係ではあるんだ。

日本の皆さんには、今作をぜひカップルで観に行ってほしいね。そうしたら、パートナーとこういった会話ができるんじゃないかな?



──ホアキン・フェニックスが演じるセオドアというキャラクターには監督の愛を感じましたし、彼の演技も素晴らしかったです。現場で演じるホアキンを見ていて、深遠な気持ちになることはありましたか?

撮影中に彼の演技が心に響いた瞬間はたくさんあったよ。今回の撮影では少人数しか部屋にいないことが多かったんだ。モニターもなくて、僕はカメラの隣でホアキンの演技を見ながらメモを取っていて、それはとても親密な空間だった。モニターがないから、そこにいるのは僕とホアキンだけで、そういう意味でも僕らは通じ合っていて、とても親密なコラボレーションになった。

──セオドアには監督自身が投影されているのかな、と感じたのですが。

セオドアだけではなく、全ての登場人物に少しずつ自分が投影されているよ。全員に共感しながら書いていたし、特定の状況を経験したことがあるかどうかは関係なく、セオドアやエイミー(セオドアの友人)、セオドアがデートした相手のことだって、僕はみんなに共感しながら書いていたんだ。

──マンションのポストの前で、エイミー(エイミー・アダムス)がセオドアに“ひざカックンされるシーンがありましたね。 

あれは僕が友だちによく仕掛けるお気に入りのいたずらなんだ(笑)君もやったことある?

──あります(笑)あのシーンから現場の楽しそうな雰囲気が伝わってきました。監督が役者を演出するにあたって気をつけていることや、キャストを集中させるための雰囲気作りで工夫していることはありますか?

どの役者もそれぞれ違うので、もちろん演技のプロセスも違う。でも最も大切なのは、何をしても間違いではないと感じてもらえる環境を作ることなんだ。僕らはある意味、役者たちにバカな真似をするように頼んでいるようなものだからね。

それが感情的なことであろうが、セクシュアルなことであろうが、彼らには失敗を恐れず、自分自身を出してもらう必要がある。だから、良い悪いをジャッジすることのない、遊び心のある雰囲気を作りたいと思っているよ。役者が何でもできると感じられるような環境をね。



──アーケイド・ファイアやオーウェン・パレットが手掛けたスコアも素晴らしかったですが、特にヤー・ヤー・ヤーズのカレン・Oが書いた劇中歌「The Moon Song」が、セオドアとサマンサの心に優しく寄り添っているようで美しかったです。曲を書く上で、カレンにはどのようなリクエストをしたのですか?

僕に言わせれば、カレンには失敗なんてありえないんだ。彼女は心で感じたことを、とても深い形で自分の作品に詰め込むことができるアーティストだからね。最初はカレンが僕のアパートに来て、一緒にいろんなアイデアを試し、そこでコード進行が決まった。それから彼女は家に帰って、この曲を書いて僕に送ってくれたんだ。コーヒーテーブルに小さなレコーダーを置いて、1時間くらいで書いたそうだよ。

カレンがアカデミー賞の歌曲賞にノミネートされた朝、電話して伝えたらとても驚いていたよ。「1時間くらいで書いた曲でノミネートされるなんて」ってね。僕は彼女に、「1時間で書いたとしても、僕らは10年前から親しい友人だし、この曲は僕らの友情を通じて、お互いをよく理解しているからこそ生まれたんじゃないかな」って伝えたよ。

もちろん、彼女には脚本も読んでもらったし、曲が流れるシーンでの登場人物の気持ちについても話してあった。でも、僕にとって今作がどんな作品なのか、このシーンがどんな意味を持つのかを、彼女がちゃんと理解していたからこそ、友人として書くことができた曲なんだと思う。(関連ニュース

──アカデミー賞授賞式でのカレンとエズラ・クーニグ(ヴァンパイア・ウィークエンド)によるパフォーマンスも美しかったです。

ありがとう!僕らは数日前からカメラマンとリハーサルをして準備していたんだ。僕は月のセットをデザインして、カレンのドレスや靴も決めて、あの瞬間を演出させてもらった。すごくうれしかったよ。それは特別な瞬間だった。



──映画ではロサンゼルスがとても輝かしく映っていましたが、舞台が東京やニューヨークだったら、結末が違ったのではないかなと感じました。舞台にロサンゼルスを選んだ理由は?

僕らは現代の便利な世の中を誇張したような世界観を作りたかったんだ。どこへ行ってもコーヒーが飲めたり、美味しいものが食べられたりと、この世の中は本当に便利だけど、それでもなお僕らは孤独を感じている。東京のようにデザイン性の高い美しい街に住んでいても、どこかで孤独を感じるんだ。

LAは本当に住みやすいし、そもそも誇張されているのが今のLAなんだと思う。ビーチもあって、天気もよくて、とても住みやすいのに孤独だっていう点で、僕はあの街が完璧な舞台になると思ったんだ。

後編に続く)

Interview + Text: Nao Machida
Photos (Spike Jonze): Taro Mizutani





『her/世界でひとつの彼女』

監督・脚本・製作:スパイク・ジョーンズ
キャスト:ホアキン・フェニックス、エイミー・アダムス、ルーニー・マーラ、オリヴィア・ワイルド、スカーレット・ヨハンソン
6月28日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
Photo courtesy of Warner Bros. Pictures

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15:00

祝オスカー2冠!『ジャンゴ 繋がれざる者』クエンティン・タランティーノ監督 来日会見レポート

2013-02-26


『レザボア・ドッグス』から『イングロリアス・バスターズ』まで、誰にも真似のできないユニークな作品の数々を発表してきたクエンティン・タランティーノ監督の最新作『ジャンゴ 繋がれざる者』が、3月1日に全国で公開される。映画は南北戦争前のアメリカ南部を舞台にした西部劇。解放奴隷のジャンゴがドイツから来た賞金稼ぎのDr.キング・シュルツに導かれ、奪われた妻を取り戻すため、農園の領主カルヴィン・キャンディに立ち向かう姿が、監督ならではの骨太なアクションと共に壮大なスケールで描かれている。

ここでは、公開を目前に来日したタランティーノ監督の記者会見の一問一答を紹介。大好きな日本で終始ハイテンションだった監督が、今作の魅力や裏話をたっぷりと語った。映画は日本時間2月25日に発表された第85回アカデミー賞で、脚本賞(タランティーノ)と助演男優賞(クリストフ・ヴァルツ)を受賞。2人の受賞スピーチもあわせてお楽しみください。



クエンティン・タランティーノ監督(以下、監督): みんなに会えてうれしいよ!

—監督は脚本も手掛けられていますが、なぜ今の時代に西部劇を撮ろうと考えたのでしょうか?

監督: 実は映画製作を始める前から、いつか西部劇を作りたいと思っていたんだ。過去の作品にも西部劇の要素は取り入れていたしね。あのウォルター・ヒルでさえ、西部劇の要素を取り入れた作品を作り続けて、ようやく『ロング・ライダーズ』を作るに至ったと語っていた。僕は『パルフ・フィクション』を“ロックンロール・マカロニ・ウェスタン”と呼んでいたし、日本のサムライ映画やショウ・ブラザーズのカンフー映画の影響を受けている『キル・ビル Vol. 1』に対して、『キル・ビル Vol. 2』はマカロニ・ウェスタンの影響を受けているんだ。『イングロリアス・バスターズ』だって、特にオープニング・シーンは西部劇的な作りになっている。そして今回ようやく自分自身の西部劇を作る機会を得られたのさ。でも、奴隷制度のような、通常の西部劇では扱われないような題材を選ぶことで、僕は僕流の西部劇を作った。西部劇をこれまでとは違った獣にできると思ったし、普通の歴史映画とは違ったものにできると思って、このテーマを選んだんだ。

—レオナルド・ディカプリオが初の本格的悪役に挑むということが発表された時から、日本では大きな話題でした。彼を冷酷な領主カルヴィン・キャンディ役に抜擢した1番の理由は?

監督: おかしなことに、あの役はもっと年上の設定で書いたんだ。そしたら突然、「レオナルドが脚本を読んで、君に会いたがっている」と連絡を受けた。僕らは前からお互いのファンだったから、彼は僕が脚本を書き上げたらすぐに読んで、何か自分に演じられる役がないか探してくれたようだ。彼がカルヴィン・キャンディについて話したがっていると聞いて、「カルヴィン・キャンディだって?」と思ったよ。60歳くらいの男をイメージして書いた役だったからね。実際に彼と会って、作品や登場人物について話すうちに、キャンディを若い設定にするという彼のアイデアが気になってきたんだ。帰ってからよく考えて、確かにキャンディは“悪の帝国の悪い王様”というよりも、南北戦争前の南部におけるルイ14世のような、手に負えない王子のような存在にした方が、強いキャラクターになると考えた。ものすごく面白いアイデアだと思ったよ。



—実際に悪役に扮したレオナルド・ディカプリオの演技を見ての感想を教えてください。

監督: 彼の演技は素晴らしいというだけでなく、本当に見事な性格描写だったと思う。彼は言うまでもなく世界有数の映画スターであり、主演俳優だ。でも、有数の性格俳優でもあるんだ。登場人物に埋没して、レオナルドが見えなくなるんだよ。キャンディの性格描写は、僕がこれまでに作ってきた登場人物の中でも最高だった。劇中で彼がハンマーを手にするシーンは本当に恐ろしかったよ。それは彼の見事な演技のおかげなんだ。

—ジャンゴ役のジェイミー・フォックスとDr.キング・シュルツ役のクリストフ・ヴァルツのコンビがとても良かったです。監督から2人にどのようなディレクションをしたのですか?

監督: 脚本の時点から、ジャンゴとシュルツはとても大切なキャラクターだった。ジェイミーとクリストフは、人としても役者としても考え方も、これ以上ないくらい全く違うタイプなんだ。でも、ジャンゴとシュルツにも同じことが言える。リハーサルも面白かったし、現場での撮影も面白かったけど、デイリー(1日に撮影したものを上映する)を観るまで、自分が金塊を掘り当てたことには気づいていなかった。あの2人の間には魔法があったんだ。彼らは『明日に向って撃て!』やテレンス・ヒルとバッド・スペンサー以来の最高の西部劇コンビだと思う。

—2人の演技の見どころは?

監督: 僕が気に入っているシーンは、「I Got a Name」が流れるモンタージュ・シークエンス。初めて自由の身になったジャンゴが、キング・シュルツと一緒に賞金稼ぎとして、馬に乗って雪山を歩いて行くシーンだよ。あれは劇中で最も感動的なシーンだと思う。チームとしての2人の対等な関係が描かれているんだ。今こうして説明しているだけで、涙が出てくるよ。



—『イングロリアス・バスターズ』に続いて出演したクリストフ・ヴァルツについて。

監督: クリストフは現場における一服の清涼剤だった。今作は現代のアメリカに生きる僕らがいまだに社会的犠牲を払っている、奴隷制という史実を描いた物語なんだ。お察しがつくように、現場では白人と黒人の間にピリピリした空気が流れていた。題材が題材だからね。クリストフはアメリカ人ではなくオーストリア人で—彼をドイツ人と呼んだらダメだからね—オーストリア人だからこそ、一人だけピリピリしていなかったんだ。これは彼の国でもなければ、彼の問題でもなく、彼の恥でもないわけだから、現場のピリピリ感を流すことができたんだよ。「どうでもいいじゃん、とにかく始めようよ。映画を作ろう。そんなこと忘れなよ」ってね。「150年も前のことなんだから、物語を伝えることに集中しよう。もう十分だろ!」ってさ(笑)

僕が怖じ気づいた時もクリストフに心境を伝えたら、「『イングロリアス・バスターズ』の時に言ったじゃないか。ドイツ人にあの映画は作れなかったよ。君はドイツ人や第2次大戦の側面は気にしていなかっただろう?『イングロリアス・バスターズ』は君にしか作れなかった。『ジャンゴ』で自分自身の足かせになってはダメだ。自由に作れよ」って言ってくれた。「そのとおりだ!」って思ったよ。

—カルヴィン・キャンディの執事スティーブン役を演じたサミュエル・L・ジャクソンの演技が最高でしたが、彼にはどのようなリクエストをしましたか?

監督: サムには僕も圧倒されたよ!スティーブン役のサムを演出するのは、シェイクスピアがDNAに流れている俳優に『ハムレット』の演出をするようなものだ。あのようなレベルの高い、かつ誇張されたような演技は、彼の血に流れているんだ。初めての読み合わせが終わった時、クリストフが「サム・ジャクソンには驚いたよ」と言っていた。「インスパイアされたと同時に驚異を感じたよ。あの男は演劇界の獣だ!」とね。

確かに僕はサムを演出したわけだが、思い出せないくらい微細なものだった。演出というよりも、一観客として彼の演技を味わって、楽しんで、極微細な調整をするという感じだ。毎日公開初日に最前列でサムの演技が観られるというような、光栄な立場を味わわせてもらったよ。



—ご自分も脇役で出演されていますが、最初から自分が演じるつもりで書いたのですか?

監督: あの役は僕が演じるために書いたわけではないんだ。あれは最後に撮影したシーンで、その時点で僕らのスケジュールは大幅に遅れていた。最初はあの役もキャスティングしてあったんだけど、撮影を延期し続けたおかげで、役者を失ってしまったんだ。別の人をキャスティングしても、さらなる延期で失ってしまって。それにどうやって撮影しようか実際に考えた時点で、ものすごく危険を伴うシーンだと分かったから、役者にお願いする気になれなくてね。たとえばサム・ワーシントンに爆薬を背負わせるなんて、できっこないだろう?(笑)だから僕が自分でやったんだ。たとえもし死んでも、自分の映画だから問題ないし!

—今作にはラブストーリーの要素も含まれていましたが、それは最初から決めていたことですか?

監督: ほぼ最初から、ジャンゴがブルームヒルダを救いに行くという物語を描こうと思っていた。最初からロマンスとして書き始めたんだよ。ジャンゴが報復するという西部劇的に楽しいシーンもあるけど、ただの血まみれの銃撃戦ではなく、誰もが理解できるような要素を追加したかったんだ。ジャンゴには復讐の旅ではなく妻を救うためのロマンスを求める旅に出てほしかった。さらに、おとぎ話のような要素を取り入れようと考えた。つまり、ブルームヒルダは悪の帝王により高い塔にとらわれたお姫様で、それを救うヒーローがジャンゴなんだ。

ご存知かもしれないが、僕は『仁義なき戦い』シリーズの深作欣二監督と友だちだった。これもご存知かもしれないが、「仁義」という言葉は英語に訳せないんだ。「名誉」のようなものだけど、それ以上の言葉で、「人間性」のようなものだけど、それ以上の言葉だと思う。ある時、欣二に彼の考える「仁義」の意味を聞いてみた。すると彼は、「仁義とは、この世の終わりまでしたくないけれど、必ずしなければならないもの」と答えた。今作に照らし合わせると、ようやく一人の男として自由になったジャンゴは、愛するブルームヒルダを救うために自分が逃げてきたはずの地獄に戻る。彼女があと1分でも長く奴隷でいるようでは、彼は生きていけないからだ。それこそが「仁義」なんだ。



—今作はアメリカの各地で撮影されたそうですが、映画製作において、監督の考える時間とお金の効率の良い使い方を教えてください。

監督: プロデューサーや映画会社に聞いたら、その質問は他の人に聞くべきだと言うだろう(笑)監督にとって最も重要なのは、自分が求めていることが分かっていること。それがちゃんと脚本に書かれているということ。考えたことを強要するのではなく、オープンな気持ちで撮影に臨む必要があるが、何を求めているかは明確であるべきだ。監督の仕事は決断することだから、優柔不断な監督がいるということが理解できないよ。

残念ながら、10年、20年、30年と残るような素晴らしいアクションを撮りたかったら、それには時間がかかる。サム・ペキンパーだって、1週間で『ワイルドバンチ』のラストを撮ったわけではないだろう。時間がかかったことは、作品を観れば分かる。会話のシーンはリハーサルどおりにできるし、当日のみんなの緊張さえ乗り越えれば、それは可能なんだ。でもアクション・シーンでは、どれくらい時間がかかるか予測するのは難しい。素晴らしいアクションには時間がかかるし、素晴らしいアクション、イコール日数だと思う。

—『レザボア・ドッグス』から20年が経ちましたが、今作はどのような思い入れのある作品となりましたか?

監督: 今作はとても特別な作品なんだ。ずっと作りたかった西部劇だし、アメリカの奴隷制についても、かねてから描いてみたかった。うわべだけでなく包み隠さず、でも同時に、映画として楽しい作品としてね。僕にとっては『キル・ビル』が1番の大作なのだが、それと同じくらい壮大なスケールで描けたと思う。

それに僕は今作が肝の座った作品になったことを誇りに思っている。危なっかしい作品で、たくさんの危険な試みをしたんだ。悪い評価を受けたり、拒否されたりするかもしれないというリスクを、僕らはあえて大作にかけてみた。たくさんの時間とお金を費やした作品だし、商業的にも芸術的にも自分たちを破滅させかねなかったんだ。でも結果的にそうはならなかったようだし、僕は今作をとても誇りに思っているよ。この仕事を20年来続けてきたが、今でも僕はリスクを恐れず、常に自分のアソコを差し出すようなつもりで映画を撮っているんだ(笑)



<第85回アカデミー賞受賞スピーチ>
クエンティン・タランティーノ/脚本賞:
僕の脚本に関しては、素晴らしい演技をしてくれた役者たちに感謝したいと思う。僕がここに立っているのは彼らのおかげなんだ。最高のキャスティングをするチャンスは1度しかない。キャラクターに息吹を与え、息の長い存在にするためには、ぴったりの人選が必要なんだ。今回はバッチリだったよ。それに脚本部門も脚色部門も豊作だったから、特に今年受賞できたことを光栄に思う。今年はライターの年だよ!じゃあな!


Photo: Mark Davis/WireImage

クリストフ・ヴァルツ/助演男優賞:
どうもありがとう。同じ部門にノミネートされたアーキンさん、デ・ニーロ さん、ジョーンズさん、ホフマンさんに敬意を表します。僕は今作で演じたキング・シュルツに感謝しきれません。つまり、それは彼と今作の荘厳な世界を創りあげたタランティーノ監督に感謝しきれないということです。僕らはヒーローの旅に同行しました。ヒーローとは、クエンティンのことです。(監督に向かって) 勇敢な君は登頂に成功した。勇敢な君は竜を倒した。そして価値を信じて炎をくぐり抜けた。今のはキング・シュルツの言葉です。ごめんね、借りずにはいられなかったよ。ありがとう。


Photo: Kevin Winter/Getty Images




『ジャンゴ 繋がれざる者』

南北戦争勃発直前のアメリカ南部。奴隷のジャンゴが、元歯科医のキング・シュルツに銃の手ほどきを受け、賞金稼ぎで荒稼ぎ!へんてこなコンビが涼しい顔して、お訪ね者を次々と殺しまくる。ジャンゴの目的は、ただひとつ。彼の自由と妻ブルームヒルダを奪った白人に復讐し、妻を取り戻すこと。妻が農園の領主カルヴィン・キャンディの元にいることを突き止めたジャンゴ。だが、キャンディは部下のスティーブンと、奴隷たちを鍛え上げ、互いに闘わせて楽しむ極悪人だった。妻を取り戻すための“生きるか死ぬか”の壮絶な闘いが始まるー。

監督・脚本:クエンティン・タランティーノ
出演:ジェイミー・フォックス、クリストフ・ヴァルツ、レオナルド・ディカプリオ、ケリー・ワシントン、サミュエル・L・ジャクソン、ほか
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
2013年3月1日(金)より丸の内ピカデリー他全国ロードショー

オフィシャルサイト>>

<関連ニュース>
2/26: 第85回アカデミー賞 『ライフ・オブ・パイ』が4冠、作品賞は『アルゴ』に

Text: Nao Machida

14:33

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