ガールズ来日インタビュー 『Father, Son, Holy Ghost』
2011-11-08
2009年、『Album』というあまりにもシンプルなタイトルのデビュー・アルバムと共に、USインディ・シーンに登場したサンフランシスコ出身のインディー・ギター・バンド、ガールズ。メンバーのクリストファー・オウエンスとチェット・JR・ホワイトが、共に暮らすアパートのベッドルームで録音した、カリフォルニア・ポップのテンプレートにローファイ色を被せたサウンドと、どこか浮世離れした純粋さの漂うリリックやセンチメンタルなヴォーカルが印象的な同作は、各音楽メディアから高い評価を得た。
そんなガールズが待望のセカンド・アルバム『Father, Son, Holy Ghost』を引っさげて、10月に一夜限りの来日公演を実現。MTVはライヴの前日にフロントマンのクリストファーに話を聞くことができた。前夜に到着したばかりだったが、「全然疲れていないから大丈夫だよ」と笑顔で登場し、水色のネイルポリッシュが塗られたツメをいじりながら、新作について、来日について、今後の展望について語ってくれた。

—1年振りの来日、ありがとうございます。
クリストファー・オウエンス(以下、CO): こちらこそ。前回は去年の8月の「SUMMER SONIC」だったんだけど、その後は元気に忙しくしていたよ。もう1年ちょっと経つんだね。サマソニでは大阪にも行けたから良かった。
—ニュー・アルバム『Father, Son, Holy Ghost』の完成おめでとうございます。ようやくリリースする気分は?
CO: 最高だよ。アルバムを制作している間、ずっと良い予感がしていたんだ。制作してからリリースまでに数ヶ月かかるから、店に並ぶまで待たないとならないんだけど、すごく気に入っている作品だから、発売が待ち遠しかった。レコーディング中から、とても良いサウンドだと思っていたし、完成してすぐにインターネットで流したいくらいだった。リリースまでの数ヶ月はワクワクして、同時にちょっと気がかりだった。
—曲作りから完成まで、どれくらいの期間を要したのですか?
CO: 僕は常に曲を書いているから、特にアルバムのために曲作りをすることはしないんだ。スタジオでの作業は1ヶ月くらい。3週間でレコーディングをして、残りの1週間でミキシングとマスタリングを行って、音質を調整した。でもレコーディング自体は3週間だけだよ。だから、最初から最後までトータルで1ヶ月くらい。悪くないよね(笑)
—常に曲を書いているということは、アルバムを制作するにあたって特にコンセプトのようなものは決めないのですか?
CO: 決めたことはないよ。今後のアルバムでは決めたりもするかもね。でも今のところは、常にいろんなアイディアが頭に浮かぶから、その都度曲を書いて、しまっておくんだ。のちに時間ができて、レコーディングする機会が得られたときに、自分のコンピュータの中にしまってあるデモに目を通す。その中から最もエキサイティングな曲を選ぶんだ。もしかしたら将来的には、アルバムのために曲作りをすることもあるかもしれない。でも今は、1曲ずつその都度書くことにしているんだ。
—今回のアルバムに収録された楽曲は、いつ頃に書かれたものですか?
CO: いくつかの曲は2008年にまで遡る。あとは2009年~2010年かな。
—2年前に書いた楽曲について、いま歌ってみると違った感情を持つことはありますか?
CO: それが、みんなが思うよりも違わないものなんだよ(笑) 僕は曲を書いたらしまっちゃうから、ライヴで演奏することもないし、古く感じないんだ。もっと最近に書いた曲と同じくらい新鮮に感じる。今でもライヴでは、ファースト・アルバム(『Album』)と今作とEP(『Broken Dreams Club』)からの楽曲しか演奏しないからね。数年前に書いた楽曲も、1週間前に書いた楽曲も、僕にとっては同じくらいエキサイティングなんだ。古いからといって、ライヴで演奏したことも、バンドに聴かせたこともない曲たちなわけだから。メンバーにとっては、完全に真新しい楽曲だよ(笑)
—普段はどんなところからインスピレーションを得ていますか?
CO: 日々の生活だよ。毎日の暮らしの中で起こる出来事。僕は他の音楽や特定のテーマからインスパイアされることは、ほとんどない。それよりも、毎日の生活で起こる出来事から曲が生まれるんだ。
—ファースト・アルバムでは『Album』というあまりにもシンプルなタイトルに驚かされましたが、今作は『Father, Son, Holy Ghost』という聖書からのフレーズ(三位一体)をタイトルに選ばれていますね。
CO: “Father, Son, Holy Ghost”は、僕に言わせれば何かのタイトルにするのにうってつけのフレーズなんだ。たまたま今回はアルバムだったけど、どんなものにも合う、良いタイトルだと思う。特に聖書から引用したわけではないんだよ。“Father, Son, Holy Ghost”というフレーズは、僕にとってはそれぞれ「起源(Origin)、個々のアイデンティティ(Indivisual Identity)、精神的な特質(Spiritual Quality)」を意味する。このフレーズを選んだのは本当に偶然なんだ。僕はこういった、よく使われるフレーズを使うのが好きなんだ。すでに誰もが耳にしたことのあるフレーズだから、1度聞いたら覚えてもらえるしね。
—1つのコンセプトに基づいていない、様々なインスピレーションから作られた楽曲を集めたアルバムにはぴったりのタイトルですね。それに、もう『Album』っていうタイトルも使っちゃったし。
CO: うん、ほんとにそうだよね(笑) 実は『Album 2』っていうタイトルも考えたんだけど、でも、それもどうかなあと思ってさ。
—あなたのバックグラウンド(註:クリストファーは俳優の故リヴァー・フェニックスなども所属していたカルト教団、チルドレン・オブ・ゴッドのヒッピーの子として生まれ育った)を知っている人は、今作のタイトルに何か深い意味があると考えそうですが。
CO: そうなんだよね。よく訊かれるんだけど、本当に深い意味はないんだ。みんな、いろいろ考えるみたいなんだけどね(笑)でも、とにかく深い意味はない。僕は気にしないよ、みんながそう考えてしまうことは、僕にだって理解できるし。でも僕が書いた楽曲を聴けば、まったく宗教的ではないだろ?(笑)
—確かにそうですね。幅広い時期に書かれた収録曲の中で、1番気に入っている楽曲は?
CO: うーん、新作だったら「Just A Song」が個人的に1番気に入っているかな。全部を気に入っているから選ぶのは難しいけど、もし1曲だけ選ぶとしたら、いくつかの理由であの曲を選ぶよ。あの曲は比較的最近書いた曲で、自分が普段書く曲とは構成がちょっと違うんだ。いつもはヴァースがあってコーラスがあって、セカンド・ヴァースがあって、またコーラスがあって…といった調子なんだけど、この曲はそのような構成は取り払って、少し実験的なものにしてみた。よくわからないけど、まあとにかく個人的に気に入っているんだよ(笑)

—デビュー作『Album』と比較して、サウンド面では明らかに大きな変化が感じられます。特にギターの存在感が増していましたが、今回は新しいメンバーを迎えて制作したそうですね。
CO: ファースト・アルバムではベース以外、ほとんどすべての楽器を僕が自分で演奏した。とにかく非常にシンプルに制作したんだ。今作を聴いたら、あらゆる部分が良くなっていることがわかってもらえるはずだよ。それぞれの楽器を演奏してくれるミュージシャンがいたからね。
—ドラマー(ダレン・ワイス)とギタリスト(ジョン・アンダーソン)が参加したんですよね?
CO: うん。今回も一緒に来日しているよ。アルバムに参加したギタリストは旅をしたくないというから、同行したのは新しいギタリストだけどね(笑)2人とも友だちの友だちだったんだ。以前に一緒にツアーをしたバンドから、今回のドラマー、ダレンを紹介してもらった。ジョンは何年も前にも一緒に演奏していたんだけど、入ったり辞めたりする奴なんだ(笑)
—『Album』はベッドルームで録音した作品でしたが、今作はスタジオ入りしたそうですね。
CO: スタジオはとても快適だった。宅録よりずっと速く作業が進むし、クオリティも高いから、すごく気に入ったよ。今回はプロデューサー(ダク・ボーム)もいたしね。プロデューサーを迎えるのはJRのアイディアだったんだ。スタジオ作業は僕ではなくJRの担当だからね。JRが誰かサポートしてくれる人を望んでいて、実現したんだ。
—レコーディングはサンフランシスコで?現在もサンフランシスコに住んでいるのですか?
CO: そうだよ。もうJRとは一緒に住んでいないけど、今でも僕らは同じ町に住んでいるんだ。スタジオはダウンタウンにある、とあるビルの地下にあった。僕たちの自宅からも近くて、バスで15分くらいだったから、通うのも楽で良かった。
—サンフランシスコのどういうところが一番好きですか?
CO: 街そのもの。風景も好きだし、サイズも良いし。特に人に興味があるとか、特定の何かというわけじゃなく、あの街の在り方が好きなんだ。建築も良いし、海に面しているし、気候も良い。小さな街だけど、どこへ行くにもアクセスが良くて、それでいて歴史やカルチャーがあるんだ。
—サンフランシスコの音楽シーンはどんな感じですか?
CO: バンドが多いんだけど、あらゆる種類のバンドがいるんだ。特定のシーンはない。ガレージロックとかインディーロックが多いかな。でも、とてもユニークなシーンだよ。今は特定のムーヴメントというよりも、幅広い種類の音楽が流行っている。
—アルバムに話を戻しますが、ファースト・アルバムは各方面で大絶賛され、ここ日本の音楽ファンの間でも非常に評価が高かったのですが、セカンド・アルバムを制作するにおいてプレッシャーは感じましたか?
CO: 全然。僕にとっては、むしろファースト・アルバムよりも楽しんで作れた。プレッシャーや不安もさほど感じなかったよ。とにかくワクワクしていた。ツアーでずっとライヴをやってきたから、ようやく再びレコーディングする機会ができて嬉しかったんだ。レコーディングに向けて十分に計画していたし、すでに曲も書いてあって、良い出来だとわかっていたから、ただただエキサイティングだった。
—スタジオでレコーディングしたこと以外に、ファースト・アルバムからセカンド・アルバムに至る間に変わったことは?
CO: 一緒に演奏する人が増えたこと。プロデューサーやエンジニアが手伝ってくれたこと。でもそれって、本来なら普通のことだと思う。それ以外はあまり変わっていないよ。曲やアイディアなどは全く変わっていない。ただ、より多くの才能がある人たちと、以前よりも良い環境や良い機材で制作したということだけさ。すべてはスムースに進んだし、それが唯一、僕らが実現したかったことだった。ケンカとかも一切なかったよ(笑)
—新作から「Vomit」と「Honey Bunny」のミュージックビデオを拝見しましたが、どちらもまったく雰囲気の違う作品ですね。ミュージックビデオにはどれくらいアイディアを出すのですか?
CO: 「Vomit」では僕もアイディアを出したけど、普段はノータッチなんだ。いつもは他の人が考えてくれて、自分は出演するだけの方がいい。ビデオについてはあまりこだわりがないから(笑)
—「Honey Bunny」は「Lust for Life」のミュージックビデオを思い出させるイメージでした。背中にGirlsと書いてある、あのデニムのジャケットも登場していたし。
CO: 日本に持って来てはいないけど、あのジャケットは今も持っているよ。実は僕のジャケットなんだ(笑) あの曲は愛する人を探し求める気持ちを歌った曲。もしかしたら僕自身のことかもね(笑)
—「Vomit」は?
CO: あれはアルバムで一番古い曲なんじゃないかな。自分が感じていた孤独について書いた。「Vomit」もまた、誰かを探し求める気持ちを書いた曲だけど、「Honey Bunny」とは違って、特定の人のことを書いているんだ。あの頃、僕はとある人ともっと一緒にいたいと思っていたのだけど、うまく行かなくて…どうにかうまく行くように努力していたんだけど、それは良いアイディアではなかった…あれはマジでダメだったな(笑) とにかくあの曲は、誰かと一緒にいたいという気持ちを書いた曲なんだ。
—新作のアートワークについてお聞かせください。
CO: バンドのアートワークはすべて僕が手掛けているんだ。今回僕たちは何か新しいイメージを求めていたから、収録曲のリリックを並べてみた。見た感じも良いし、アルバムを聴きながらジャケットを眺めれば、歌詞が読めるようになっている。

—今回はこの新作を引っさげての来日公演ですね。
CO: うん。演奏する曲が増えて嬉しいよ(笑) ニュー・アルバムを制作すると、ライヴがエキサイティングになるんだ。古い曲ばかり演奏していると飽きちゃうからね(笑) 日本でのライヴは好きだよ。いつも盛り上がってくれる。今回でまだ3回目だけど、どれも楽しい思い出だ。まだ全国ツアーをやったことがないから、日本のオーディエンスについては多くを語れないけどね。いつかツアーして全国をまわれたらいいな。
—滞在中にやりたいことはありますか?
CO: 特に計画はしていないけど、空き時間に東京周辺を散歩したい。さっきは本屋に行って、日本のアーティストの小さなアートブックを買ったんだ。HOKUSAI(葛飾北斎)って、わかる?とても小さな本なんだけど、小さなイラストがたくさん載っていて気に入ったんだ。
—ガールズの今後の予定は?
CO: 新作をリリースしたから、これからは再びツアーの日々だよ。それが終わったら、またレコーディングする。ツアーはせいぜい来年の夏までにしたいね。少なくとも1年に1回はレコーディングしたいんだ。僕は今後も音楽作りやツアーを続けて行きたい。何としてでも続けたいよ。ライヴよりもレコーディングがしたいんだ。僕は常にたくさんの曲を書いているから、リリースできないものがいっぱいあって、しばらくライヴをしていると書きためたものを吐き出したくなる。だから、将来的にはライヴをたくさんする代わりに、1年に2回以上レコーディングできるようにしたい。そうなったら嬉しいよ」
—日本のファンにメッセージをお願いします。
CO: ものすごくたくさんの人に同時にメッセージを送るって難しいよね(笑)でも、僕は来日することができて本当に嬉しいと思っている。バンドを初めて以来、毎年来日できているから幸せだよ。将来的にはもっと来日したいな。とにかく、日本でライヴをするチャンスに恵まれて嬉しいということを伝えたい。日本のみんなが僕らの音楽を気に入ってくれてハッピーだよ。近い将来、日本中をまわるツアーができることを願っている。みんなの地元を訪問したいんだ。それが日本での僕のゴール。楽しみにしていてね。
***
インタビューの翌日、ガールズは東京・渋谷のduo MUSIC EXCHANGEにてライヴを開催した。セットリストは以下のとおり:
Laura
Heartbreaker
Love Like A River
Alex
Darling
My Ma
Die
Honey Bunny
Saying I Love You
Broken Dreams Club
Lust For Life
Vomit
Morning Light
- encore -
Summertime
Jamie Marie
Magic
Hellhole Ratrace


Photo (Christopher Owens): Kenta Terunuma
Live Photos: TEPPEI
Interview + Text: Nao Machida
そんなガールズが待望のセカンド・アルバム『Father, Son, Holy Ghost』を引っさげて、10月に一夜限りの来日公演を実現。MTVはライヴの前日にフロントマンのクリストファーに話を聞くことができた。前夜に到着したばかりだったが、「全然疲れていないから大丈夫だよ」と笑顔で登場し、水色のネイルポリッシュが塗られたツメをいじりながら、新作について、来日について、今後の展望について語ってくれた。

—1年振りの来日、ありがとうございます。
クリストファー・オウエンス(以下、CO): こちらこそ。前回は去年の8月の「SUMMER SONIC」だったんだけど、その後は元気に忙しくしていたよ。もう1年ちょっと経つんだね。サマソニでは大阪にも行けたから良かった。
—ニュー・アルバム『Father, Son, Holy Ghost』の完成おめでとうございます。ようやくリリースする気分は?
CO: 最高だよ。アルバムを制作している間、ずっと良い予感がしていたんだ。制作してからリリースまでに数ヶ月かかるから、店に並ぶまで待たないとならないんだけど、すごく気に入っている作品だから、発売が待ち遠しかった。レコーディング中から、とても良いサウンドだと思っていたし、完成してすぐにインターネットで流したいくらいだった。リリースまでの数ヶ月はワクワクして、同時にちょっと気がかりだった。
—曲作りから完成まで、どれくらいの期間を要したのですか?
CO: 僕は常に曲を書いているから、特にアルバムのために曲作りをすることはしないんだ。スタジオでの作業は1ヶ月くらい。3週間でレコーディングをして、残りの1週間でミキシングとマスタリングを行って、音質を調整した。でもレコーディング自体は3週間だけだよ。だから、最初から最後までトータルで1ヶ月くらい。悪くないよね(笑)
—常に曲を書いているということは、アルバムを制作するにあたって特にコンセプトのようなものは決めないのですか?
CO: 決めたことはないよ。今後のアルバムでは決めたりもするかもね。でも今のところは、常にいろんなアイディアが頭に浮かぶから、その都度曲を書いて、しまっておくんだ。のちに時間ができて、レコーディングする機会が得られたときに、自分のコンピュータの中にしまってあるデモに目を通す。その中から最もエキサイティングな曲を選ぶんだ。もしかしたら将来的には、アルバムのために曲作りをすることもあるかもしれない。でも今は、1曲ずつその都度書くことにしているんだ。
—今回のアルバムに収録された楽曲は、いつ頃に書かれたものですか?
CO: いくつかの曲は2008年にまで遡る。あとは2009年~2010年かな。
—2年前に書いた楽曲について、いま歌ってみると違った感情を持つことはありますか?
CO: それが、みんなが思うよりも違わないものなんだよ(笑) 僕は曲を書いたらしまっちゃうから、ライヴで演奏することもないし、古く感じないんだ。もっと最近に書いた曲と同じくらい新鮮に感じる。今でもライヴでは、ファースト・アルバム(『Album』)と今作とEP(『Broken Dreams Club』)からの楽曲しか演奏しないからね。数年前に書いた楽曲も、1週間前に書いた楽曲も、僕にとっては同じくらいエキサイティングなんだ。古いからといって、ライヴで演奏したことも、バンドに聴かせたこともない曲たちなわけだから。メンバーにとっては、完全に真新しい楽曲だよ(笑)
—普段はどんなところからインスピレーションを得ていますか?
CO: 日々の生活だよ。毎日の暮らしの中で起こる出来事。僕は他の音楽や特定のテーマからインスパイアされることは、ほとんどない。それよりも、毎日の生活で起こる出来事から曲が生まれるんだ。
—ファースト・アルバムでは『Album』というあまりにもシンプルなタイトルに驚かされましたが、今作は『Father, Son, Holy Ghost』という聖書からのフレーズ(三位一体)をタイトルに選ばれていますね。
CO: “Father, Son, Holy Ghost”は、僕に言わせれば何かのタイトルにするのにうってつけのフレーズなんだ。たまたま今回はアルバムだったけど、どんなものにも合う、良いタイトルだと思う。特に聖書から引用したわけではないんだよ。“Father, Son, Holy Ghost”というフレーズは、僕にとってはそれぞれ「起源(Origin)、個々のアイデンティティ(Indivisual Identity)、精神的な特質(Spiritual Quality)」を意味する。このフレーズを選んだのは本当に偶然なんだ。僕はこういった、よく使われるフレーズを使うのが好きなんだ。すでに誰もが耳にしたことのあるフレーズだから、1度聞いたら覚えてもらえるしね。
—1つのコンセプトに基づいていない、様々なインスピレーションから作られた楽曲を集めたアルバムにはぴったりのタイトルですね。それに、もう『Album』っていうタイトルも使っちゃったし。
CO: うん、ほんとにそうだよね(笑) 実は『Album 2』っていうタイトルも考えたんだけど、でも、それもどうかなあと思ってさ。
—あなたのバックグラウンド(註:クリストファーは俳優の故リヴァー・フェニックスなども所属していたカルト教団、チルドレン・オブ・ゴッドのヒッピーの子として生まれ育った)を知っている人は、今作のタイトルに何か深い意味があると考えそうですが。
CO: そうなんだよね。よく訊かれるんだけど、本当に深い意味はないんだ。みんな、いろいろ考えるみたいなんだけどね(笑)でも、とにかく深い意味はない。僕は気にしないよ、みんながそう考えてしまうことは、僕にだって理解できるし。でも僕が書いた楽曲を聴けば、まったく宗教的ではないだろ?(笑)
—確かにそうですね。幅広い時期に書かれた収録曲の中で、1番気に入っている楽曲は?
CO: うーん、新作だったら「Just A Song」が個人的に1番気に入っているかな。全部を気に入っているから選ぶのは難しいけど、もし1曲だけ選ぶとしたら、いくつかの理由であの曲を選ぶよ。あの曲は比較的最近書いた曲で、自分が普段書く曲とは構成がちょっと違うんだ。いつもはヴァースがあってコーラスがあって、セカンド・ヴァースがあって、またコーラスがあって…といった調子なんだけど、この曲はそのような構成は取り払って、少し実験的なものにしてみた。よくわからないけど、まあとにかく個人的に気に入っているんだよ(笑)

—デビュー作『Album』と比較して、サウンド面では明らかに大きな変化が感じられます。特にギターの存在感が増していましたが、今回は新しいメンバーを迎えて制作したそうですね。
CO: ファースト・アルバムではベース以外、ほとんどすべての楽器を僕が自分で演奏した。とにかく非常にシンプルに制作したんだ。今作を聴いたら、あらゆる部分が良くなっていることがわかってもらえるはずだよ。それぞれの楽器を演奏してくれるミュージシャンがいたからね。
—ドラマー(ダレン・ワイス)とギタリスト(ジョン・アンダーソン)が参加したんですよね?
CO: うん。今回も一緒に来日しているよ。アルバムに参加したギタリストは旅をしたくないというから、同行したのは新しいギタリストだけどね(笑)2人とも友だちの友だちだったんだ。以前に一緒にツアーをしたバンドから、今回のドラマー、ダレンを紹介してもらった。ジョンは何年も前にも一緒に演奏していたんだけど、入ったり辞めたりする奴なんだ(笑)
—『Album』はベッドルームで録音した作品でしたが、今作はスタジオ入りしたそうですね。
CO: スタジオはとても快適だった。宅録よりずっと速く作業が進むし、クオリティも高いから、すごく気に入ったよ。今回はプロデューサー(ダク・ボーム)もいたしね。プロデューサーを迎えるのはJRのアイディアだったんだ。スタジオ作業は僕ではなくJRの担当だからね。JRが誰かサポートしてくれる人を望んでいて、実現したんだ。
—レコーディングはサンフランシスコで?現在もサンフランシスコに住んでいるのですか?
CO: そうだよ。もうJRとは一緒に住んでいないけど、今でも僕らは同じ町に住んでいるんだ。スタジオはダウンタウンにある、とあるビルの地下にあった。僕たちの自宅からも近くて、バスで15分くらいだったから、通うのも楽で良かった。
—サンフランシスコのどういうところが一番好きですか?
CO: 街そのもの。風景も好きだし、サイズも良いし。特に人に興味があるとか、特定の何かというわけじゃなく、あの街の在り方が好きなんだ。建築も良いし、海に面しているし、気候も良い。小さな街だけど、どこへ行くにもアクセスが良くて、それでいて歴史やカルチャーがあるんだ。
—サンフランシスコの音楽シーンはどんな感じですか?
CO: バンドが多いんだけど、あらゆる種類のバンドがいるんだ。特定のシーンはない。ガレージロックとかインディーロックが多いかな。でも、とてもユニークなシーンだよ。今は特定のムーヴメントというよりも、幅広い種類の音楽が流行っている。
—アルバムに話を戻しますが、ファースト・アルバムは各方面で大絶賛され、ここ日本の音楽ファンの間でも非常に評価が高かったのですが、セカンド・アルバムを制作するにおいてプレッシャーは感じましたか?
CO: 全然。僕にとっては、むしろファースト・アルバムよりも楽しんで作れた。プレッシャーや不安もさほど感じなかったよ。とにかくワクワクしていた。ツアーでずっとライヴをやってきたから、ようやく再びレコーディングする機会ができて嬉しかったんだ。レコーディングに向けて十分に計画していたし、すでに曲も書いてあって、良い出来だとわかっていたから、ただただエキサイティングだった。
—スタジオでレコーディングしたこと以外に、ファースト・アルバムからセカンド・アルバムに至る間に変わったことは?
CO: 一緒に演奏する人が増えたこと。プロデューサーやエンジニアが手伝ってくれたこと。でもそれって、本来なら普通のことだと思う。それ以外はあまり変わっていないよ。曲やアイディアなどは全く変わっていない。ただ、より多くの才能がある人たちと、以前よりも良い環境や良い機材で制作したということだけさ。すべてはスムースに進んだし、それが唯一、僕らが実現したかったことだった。ケンカとかも一切なかったよ(笑)
—新作から「Vomit」と「Honey Bunny」のミュージックビデオを拝見しましたが、どちらもまったく雰囲気の違う作品ですね。ミュージックビデオにはどれくらいアイディアを出すのですか?
CO: 「Vomit」では僕もアイディアを出したけど、普段はノータッチなんだ。いつもは他の人が考えてくれて、自分は出演するだけの方がいい。ビデオについてはあまりこだわりがないから(笑)
—「Honey Bunny」は「Lust for Life」のミュージックビデオを思い出させるイメージでした。背中にGirlsと書いてある、あのデニムのジャケットも登場していたし。
CO: 日本に持って来てはいないけど、あのジャケットは今も持っているよ。実は僕のジャケットなんだ(笑) あの曲は愛する人を探し求める気持ちを歌った曲。もしかしたら僕自身のことかもね(笑)
—「Vomit」は?
CO: あれはアルバムで一番古い曲なんじゃないかな。自分が感じていた孤独について書いた。「Vomit」もまた、誰かを探し求める気持ちを書いた曲だけど、「Honey Bunny」とは違って、特定の人のことを書いているんだ。あの頃、僕はとある人ともっと一緒にいたいと思っていたのだけど、うまく行かなくて…どうにかうまく行くように努力していたんだけど、それは良いアイディアではなかった…あれはマジでダメだったな(笑) とにかくあの曲は、誰かと一緒にいたいという気持ちを書いた曲なんだ。
—新作のアートワークについてお聞かせください。
CO: バンドのアートワークはすべて僕が手掛けているんだ。今回僕たちは何か新しいイメージを求めていたから、収録曲のリリックを並べてみた。見た感じも良いし、アルバムを聴きながらジャケットを眺めれば、歌詞が読めるようになっている。

—今回はこの新作を引っさげての来日公演ですね。
CO: うん。演奏する曲が増えて嬉しいよ(笑) ニュー・アルバムを制作すると、ライヴがエキサイティングになるんだ。古い曲ばかり演奏していると飽きちゃうからね(笑) 日本でのライヴは好きだよ。いつも盛り上がってくれる。今回でまだ3回目だけど、どれも楽しい思い出だ。まだ全国ツアーをやったことがないから、日本のオーディエンスについては多くを語れないけどね。いつかツアーして全国をまわれたらいいな。
—滞在中にやりたいことはありますか?
CO: 特に計画はしていないけど、空き時間に東京周辺を散歩したい。さっきは本屋に行って、日本のアーティストの小さなアートブックを買ったんだ。HOKUSAI(葛飾北斎)って、わかる?とても小さな本なんだけど、小さなイラストがたくさん載っていて気に入ったんだ。
—ガールズの今後の予定は?
CO: 新作をリリースしたから、これからは再びツアーの日々だよ。それが終わったら、またレコーディングする。ツアーはせいぜい来年の夏までにしたいね。少なくとも1年に1回はレコーディングしたいんだ。僕は今後も音楽作りやツアーを続けて行きたい。何としてでも続けたいよ。ライヴよりもレコーディングがしたいんだ。僕は常にたくさんの曲を書いているから、リリースできないものがいっぱいあって、しばらくライヴをしていると書きためたものを吐き出したくなる。だから、将来的にはライヴをたくさんする代わりに、1年に2回以上レコーディングできるようにしたい。そうなったら嬉しいよ」
—日本のファンにメッセージをお願いします。
CO: ものすごくたくさんの人に同時にメッセージを送るって難しいよね(笑)でも、僕は来日することができて本当に嬉しいと思っている。バンドを初めて以来、毎年来日できているから幸せだよ。将来的にはもっと来日したいな。とにかく、日本でライヴをするチャンスに恵まれて嬉しいということを伝えたい。日本のみんなが僕らの音楽を気に入ってくれてハッピーだよ。近い将来、日本中をまわるツアーができることを願っている。みんなの地元を訪問したいんだ。それが日本での僕のゴール。楽しみにしていてね。
***
インタビューの翌日、ガールズは東京・渋谷のduo MUSIC EXCHANGEにてライヴを開催した。セットリストは以下のとおり:
Laura
Heartbreaker
Love Like A River
Alex
Darling
My Ma
Die
Honey Bunny
Saying I Love You
Broken Dreams Club
Lust For Life
Vomit
Morning Light
- encore -
Summertime
Jamie Marie
Magic
Hellhole Ratrace


Photo (Christopher Owens): Kenta Terunuma
Live Photos: TEPPEI
Interview + Text: Nao Machida
『SOMEWHERE』ソフィア・コッポラ監督 & スティーヴン・ドーフ インタビュー
2011-04-01
『ヴァージン・スーサイズ』や『ロスト・イン・トランスレーション』など、独特な世界観をフィルムに収めてきた女性監督ソフィア・コッポラ。『マリー・アントワネット』以来、4年ぶりとなる待望の新作『SOMEWHERE』が、いよいよ2日より全国で公開される。
ハリウッド・セレブ御用達ホテルとして有名なシャトー・マーモントを舞台に、そこで暮らす人気俳優ジョニー・マルコ(スティーヴン・ドーフ)と、彼と一夏を共に過ごすことになった11歳の娘クレオ(エル・ファニング)の交流を描いたこの作品。ジョニーの心の動きが、コッポラならではの繊細な空気感の中で緩やかに映し出されている。去る1月に来日したコッポラと主演のスティーヴン・ドーフに、作品の魅力を訊いた。

—ヴェネチア映画祭で『SOMEWHERE』金獅子賞を受賞されたことは、ご自身のキャリアにどのような影響を与えると思いますか?
ソフィア・コッポラ(以下、SC): とても光栄に思っているし、この作品にとっては幸先が良かったわ。国際的な観客に上映したのは、あの時が初めてだったの—観客に見せること自体が初めてだったから、すごくエキサイティングだった。とても権威のある映画賞だし、これをきっかけに、より多くの人にこの作品を観てほしいと思う。
—毎回サウンドトラックも素晴らしいソフィアさんの作品ですが、今作では沈黙の使い方がとても印象的でした。意図的な演出だったのですか?また、ザ・ストロークスの「I'll Try Anything Once」をプールサイドのシーンに選んだ理由は?
SC: 気づいてくれてありがとう。今作では意図的に音楽を控えめにして、沈黙の瞬間を増やしたかったの。過去の作品では、たくさんの楽曲を使っていたけれど、沈黙は自分が考えていたよりも効果的だったし、楽曲数を減らした方がインパクトが強くなると思った。それに作品のスタイルにも合っていたわ。あえて沈黙を選ぶことで、男の孤独感が強調されると思ったのよ。ザ・ストロークスの楽曲は、脚本を書いていたときに聴いていたもの。父娘の絆が描かれたシーンにぴったりの甘さがあると思った。使用できて嬉しかったわ。
—撮影中に聴いていた音楽は?
SC: いろいろあるけれど、スティーヴンには映画に使用した音楽を渡してあったの。作品のムードに入ってもらうために、フェニックスの「Love Like a Sunset」などを聴いてもらったわ。
スティーヴン・ドーフ(以下、SD): 作品の雰囲気に入るために、ソフィアは音楽だけではなく、映画とか、素晴らしい題材をたくさんくれた。フェニックスの楽曲を聴きながらロサンゼルスの街で車を走らせていたよ。そうやって役に入って行った。ソフィアが素晴らしいツールをたくさんくれたんだ。
—まさにサウンドトラックですね。
SD: その通り。音楽に限らず、本だったり、今作のヴァイブスや色彩が感じられるいろいろなものを与えてくれて、作品が持つ感触や感情をよく理解して演じる上で、すごく役立ったよ。それにソフィアにはリーバイスを履かされた(笑)
—撮影前から友人同士だったそうですが、今回の作品を通じて新たに発見したことはありますか?
SC: もちろんよ、スティーヴンとこんなにたくさんの時間を過ごしたのは初めてだったし。彼は友人の友人で、ときどき一緒に遊ぶくらいだったから。誰かとこんなに集中して仕事をするということは全く別の体験で、それなりに新しい発見はあったわ。実際に何を発見したかをここでしいて言うことはしないけれど(笑)でも彼がハードワーカーだということはわかったし、真面目に仕事に打ち込む人だと思ったわ。
—スティーヴンさんはこれまでに数々の監督と仕事をされていますが、ソフィア監督との仕事は他の監督と比べてどう違いましたか?新しい発見は?
SD: 今作における経験のすべてが、俺にとって様々な意味で大きなハイライトとなったよ。これまでの人生で、多くの才能あふれる監督たちと仕事をする機会に恵まれてきたけど、ソフィアとの仕事はすごく楽しかった。言葉にできないけれど、ユニークな経験だったんだ。これまでに一緒に仕事をしてきた監督たちよりも、ずっとリラックスしていて、スイートな監督で。怒鳴ったり、かんしゃくを起こしたりする人もいるからさ(笑)彼女はこのままの人なんだよ。現場のスタッフはみんな仲が良かったし、作品の雰囲気もとても親密で、映画の撮影をしていることを忘れるときもあった。そのような中で、俺はジョニー・マルコの感情に入っていくことができた。主人公の男の人生を覗き見ているかのような映画だからね。とても特別な作品だよ。いつかまた、この作品と同じくらい特別なものに巡り会えたらいいけど、難しいだろうね。このような作品には常に出会えるわけではないんだ。これはそれくらい特別なのさ。
—ジョニー・マルコの生き方について、同じ男性としてどう感じましたか?
SD: 映画の冒頭のジョニーは自分を見失っているんだ。退屈していて、混乱していて…人生や娘を含む大切なものとの絆を見失っている状態にある。言ってみれば、彼の心は休暇中なんだよ。成功を収めてから数年間、流されるようなライフスタイルを送ってきたからね。映画の冒頭で彼が車でひたすらグルグルまわっているシーンがあるけれど、彼は同じような感じで人生を生きている。有名になったことによって自分を見失ってしまった男なんだ。でも、本当はスイートな心を持った男だと思う。ソフィアは彼のスイートな資質を俺に引き出してほしかったんだ。彼はどん底に居てもスイートな資質を持っているんだよ。
—父と娘がテーマですが、2人にとって家族とは?
SC: 映画では、娘の面倒を見たりだとか、ジョニーのよりリアルな一面にフォーカスしたの。楽しいけれど嘘くさい、キャリアでの一面とのコントラストを描いたわ。そういった視点から見ると、家族は誰にとっても基盤であり、地に足をつけて生きることを教えてくれる存在だと思う。浮いた気持ちだったら、引っ張って地に下ろしてくれるようなね。私にとっても家族は人生におけるとても重要な存在よ。
SD: 家族は何よりも大切な存在。俺自身、良い家族に恵まれて幸運に感じている。若い頃は、家族が守ってくれたおかげでクレイジーにならずに済んだんじゃないかな。ジョニーもそういったことに気づいていくんだ。究極的に、家族こそが1番大切なリアルなものなんだと思う。表面的で楽しいだけのものではない、真に大切なもの。それが家族なんじゃないかな。
—脚本を書くときは実体験や自分の考えを入れるとおっしゃっていましたが、あなたの人生において映画作りとは?
SC: 自分の視点や創造力を表現する方法。映画というメディアは、写真や音楽や演技やデザインや、様々な要素を網羅している。だからエキサイティングだと感じるの。いろんなことが出来るという点でも、映画作りに興味を持っているのよ。
—当初、ジョニー・マルコはソフィア監督が書いていたヴァンパイア映画の登場人物だったそうですが、その作品は今後完成させる予定はあるのですか?
SC: あれは数ページしか書かなかったの。最近はヴァンパイアものがたくさんあるから、もう新鮮じゃなくなっちゃった(笑)今はわからないけれど、もしかしたらいつか創るかも。
SD: ジョニー・マルコの次の役がヴァンパイアだったりしてね。
SC: そうね(笑)
—映画や文化など、日本について興味のあることは?
SC: 日本の映画はあまりたくさん観たことがないけれど、幼い頃から両親に連れられて何度か来日していたし、かねてから日本との絆は感じていたわ。それに小津安二郎監督は尊敬しているの。
SD: 18か19の頃に初めて来日したんだ。毎回エキサイティングな思い出だよ。今回の来日は4年か5年ぶりかな。映画を引っさげて来日できるのはいつも嬉しいこと。でも、日本との特別なつながりはないな。何人か友だちはいるし、過去に北野監督だとか、日本の映画監督と会ったことはあるけれどね。東京は好きだよ。とても情熱的な都市のようだし、芸術を大事にしていて、センスも良い。どうにかソフィアとホテルを抜け出して、買い物をする時間があるといいんだけどね(笑)
—時間はありそうですか?
SD: そう願うよ。ソフィアが教えてくれた東急ハンズに行ってみたくてさ。
SC: 日本ならでの店よ。
SD: このホテルのスパにも行きたい。日本のスパはいいよね。サウナと水風呂を繰り返してさ。あれはいいよ。日本のスタイルが好きなんだ。
—『ロスト・イン・トランスレーション』は東京を舞台にしていましたが、再び日本で映画を撮るとしたら、気になっているスポットはありますか?
SC: 私の場合、プランはあってないようなものなので、今は特にプランはしていないわ。来日はいつも楽しみにしているけれどね。
SD: リッツ・カールトンでアクション映画を作ったらどうかな?(註: インタビューはリッツ・カールトン東京にて行われた)「ダイ・ハード・ミーツ・リッツ・カールトン東京」みたいな(笑)冗談だよ。
—今回スティーヴンさんを監督して、今度はこういう役を演じたら面白そうだな、と思うことはありますか?
SC: 特に考えたことはないけど…今作では、これまでに彼が演じたことのないような役を見てみたいと思って起用したから、今後もいろんな役を演じているところを見てみたいわ。彼のいろんな面を見ることに興味を持っているの。
—これまではガールズムービーの名手という印象でしたが、今作では男性の孤独を描かれています。男性と女性の孤独の違いは?
SC: 正直言って、ジョニー・マルコには共感が持てたの。彼の気持ちがわかるな、と感じたのだけれど、基本的に男でも女でも人間の本質は大きくは変わらないと思う。特に孤独を感じるという部分では同じだと考えているし、自分なりに男性の孤独に関して共感の持てる部分を引き出して、それを反映させるようにしたの。それに、自分の性格には男性的な部分もあれば、女性的な部分もあると思う。だから自分の中の男性的な部分を通して、男性の孤独感を引き出してみたわ。
SD: ソフィアが言ったように、男と女は違うけど同時に似ていると思う。どう感じているかにもよるけれど、もし孤独だったり、心が傷ついていたりしたら、性別に関係なく同じような孤独を感じているのだと思う。同時に違うところもあるんじゃないかな。でも、女性に演出されるのは大好きだよ(笑)
SC: 今回が初めて?
SD: 2回目。メアリー・ハロン監督(『I SHOT ANDY WARHOL』)が初めてだった。メアリーはソフィアには及ばないよ。メアリーもスイートだけど、ソフィアは格別にスイートだ(笑)■

映画『SOMEWHERE』は4/2(土)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー。
『SOMEWHERE』公式サイト>>
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04/01: ソフィア・コッポラ&スティーヴン・ドーフが語る『SOMEWHERE』
01/20: 『SOMEWHERE』 ソフィア・コッポラが都内で会見
interview + text: nao
ハリウッド・セレブ御用達ホテルとして有名なシャトー・マーモントを舞台に、そこで暮らす人気俳優ジョニー・マルコ(スティーヴン・ドーフ)と、彼と一夏を共に過ごすことになった11歳の娘クレオ(エル・ファニング)の交流を描いたこの作品。ジョニーの心の動きが、コッポラならではの繊細な空気感の中で緩やかに映し出されている。去る1月に来日したコッポラと主演のスティーヴン・ドーフに、作品の魅力を訊いた。

—ヴェネチア映画祭で『SOMEWHERE』金獅子賞を受賞されたことは、ご自身のキャリアにどのような影響を与えると思いますか?
ソフィア・コッポラ(以下、SC): とても光栄に思っているし、この作品にとっては幸先が良かったわ。国際的な観客に上映したのは、あの時が初めてだったの—観客に見せること自体が初めてだったから、すごくエキサイティングだった。とても権威のある映画賞だし、これをきっかけに、より多くの人にこの作品を観てほしいと思う。
—毎回サウンドトラックも素晴らしいソフィアさんの作品ですが、今作では沈黙の使い方がとても印象的でした。意図的な演出だったのですか?また、ザ・ストロークスの「I'll Try Anything Once」をプールサイドのシーンに選んだ理由は?
SC: 気づいてくれてありがとう。今作では意図的に音楽を控えめにして、沈黙の瞬間を増やしたかったの。過去の作品では、たくさんの楽曲を使っていたけれど、沈黙は自分が考えていたよりも効果的だったし、楽曲数を減らした方がインパクトが強くなると思った。それに作品のスタイルにも合っていたわ。あえて沈黙を選ぶことで、男の孤独感が強調されると思ったのよ。ザ・ストロークスの楽曲は、脚本を書いていたときに聴いていたもの。父娘の絆が描かれたシーンにぴったりの甘さがあると思った。使用できて嬉しかったわ。
—撮影中に聴いていた音楽は?
SC: いろいろあるけれど、スティーヴンには映画に使用した音楽を渡してあったの。作品のムードに入ってもらうために、フェニックスの「Love Like a Sunset」などを聴いてもらったわ。
スティーヴン・ドーフ(以下、SD): 作品の雰囲気に入るために、ソフィアは音楽だけではなく、映画とか、素晴らしい題材をたくさんくれた。フェニックスの楽曲を聴きながらロサンゼルスの街で車を走らせていたよ。そうやって役に入って行った。ソフィアが素晴らしいツールをたくさんくれたんだ。
—まさにサウンドトラックですね。
SD: その通り。音楽に限らず、本だったり、今作のヴァイブスや色彩が感じられるいろいろなものを与えてくれて、作品が持つ感触や感情をよく理解して演じる上で、すごく役立ったよ。それにソフィアにはリーバイスを履かされた(笑)
—撮影前から友人同士だったそうですが、今回の作品を通じて新たに発見したことはありますか?
SC: もちろんよ、スティーヴンとこんなにたくさんの時間を過ごしたのは初めてだったし。彼は友人の友人で、ときどき一緒に遊ぶくらいだったから。誰かとこんなに集中して仕事をするということは全く別の体験で、それなりに新しい発見はあったわ。実際に何を発見したかをここでしいて言うことはしないけれど(笑)でも彼がハードワーカーだということはわかったし、真面目に仕事に打ち込む人だと思ったわ。
—スティーヴンさんはこれまでに数々の監督と仕事をされていますが、ソフィア監督との仕事は他の監督と比べてどう違いましたか?新しい発見は?
SD: 今作における経験のすべてが、俺にとって様々な意味で大きなハイライトとなったよ。これまでの人生で、多くの才能あふれる監督たちと仕事をする機会に恵まれてきたけど、ソフィアとの仕事はすごく楽しかった。言葉にできないけれど、ユニークな経験だったんだ。これまでに一緒に仕事をしてきた監督たちよりも、ずっとリラックスしていて、スイートな監督で。怒鳴ったり、かんしゃくを起こしたりする人もいるからさ(笑)彼女はこのままの人なんだよ。現場のスタッフはみんな仲が良かったし、作品の雰囲気もとても親密で、映画の撮影をしていることを忘れるときもあった。そのような中で、俺はジョニー・マルコの感情に入っていくことができた。主人公の男の人生を覗き見ているかのような映画だからね。とても特別な作品だよ。いつかまた、この作品と同じくらい特別なものに巡り会えたらいいけど、難しいだろうね。このような作品には常に出会えるわけではないんだ。これはそれくらい特別なのさ。
—ジョニー・マルコの生き方について、同じ男性としてどう感じましたか?
SD: 映画の冒頭のジョニーは自分を見失っているんだ。退屈していて、混乱していて…人生や娘を含む大切なものとの絆を見失っている状態にある。言ってみれば、彼の心は休暇中なんだよ。成功を収めてから数年間、流されるようなライフスタイルを送ってきたからね。映画の冒頭で彼が車でひたすらグルグルまわっているシーンがあるけれど、彼は同じような感じで人生を生きている。有名になったことによって自分を見失ってしまった男なんだ。でも、本当はスイートな心を持った男だと思う。ソフィアは彼のスイートな資質を俺に引き出してほしかったんだ。彼はどん底に居てもスイートな資質を持っているんだよ。
—父と娘がテーマですが、2人にとって家族とは?
SC: 映画では、娘の面倒を見たりだとか、ジョニーのよりリアルな一面にフォーカスしたの。楽しいけれど嘘くさい、キャリアでの一面とのコントラストを描いたわ。そういった視点から見ると、家族は誰にとっても基盤であり、地に足をつけて生きることを教えてくれる存在だと思う。浮いた気持ちだったら、引っ張って地に下ろしてくれるようなね。私にとっても家族は人生におけるとても重要な存在よ。
SD: 家族は何よりも大切な存在。俺自身、良い家族に恵まれて幸運に感じている。若い頃は、家族が守ってくれたおかげでクレイジーにならずに済んだんじゃないかな。ジョニーもそういったことに気づいていくんだ。究極的に、家族こそが1番大切なリアルなものなんだと思う。表面的で楽しいだけのものではない、真に大切なもの。それが家族なんじゃないかな。
—脚本を書くときは実体験や自分の考えを入れるとおっしゃっていましたが、あなたの人生において映画作りとは?
SC: 自分の視点や創造力を表現する方法。映画というメディアは、写真や音楽や演技やデザインや、様々な要素を網羅している。だからエキサイティングだと感じるの。いろんなことが出来るという点でも、映画作りに興味を持っているのよ。
—当初、ジョニー・マルコはソフィア監督が書いていたヴァンパイア映画の登場人物だったそうですが、その作品は今後完成させる予定はあるのですか?
SC: あれは数ページしか書かなかったの。最近はヴァンパイアものがたくさんあるから、もう新鮮じゃなくなっちゃった(笑)今はわからないけれど、もしかしたらいつか創るかも。
SD: ジョニー・マルコの次の役がヴァンパイアだったりしてね。
SC: そうね(笑)
—映画や文化など、日本について興味のあることは?
SC: 日本の映画はあまりたくさん観たことがないけれど、幼い頃から両親に連れられて何度か来日していたし、かねてから日本との絆は感じていたわ。それに小津安二郎監督は尊敬しているの。
SD: 18か19の頃に初めて来日したんだ。毎回エキサイティングな思い出だよ。今回の来日は4年か5年ぶりかな。映画を引っさげて来日できるのはいつも嬉しいこと。でも、日本との特別なつながりはないな。何人か友だちはいるし、過去に北野監督だとか、日本の映画監督と会ったことはあるけれどね。東京は好きだよ。とても情熱的な都市のようだし、芸術を大事にしていて、センスも良い。どうにかソフィアとホテルを抜け出して、買い物をする時間があるといいんだけどね(笑)
—時間はありそうですか?
SD: そう願うよ。ソフィアが教えてくれた東急ハンズに行ってみたくてさ。
SC: 日本ならでの店よ。
SD: このホテルのスパにも行きたい。日本のスパはいいよね。サウナと水風呂を繰り返してさ。あれはいいよ。日本のスタイルが好きなんだ。
—『ロスト・イン・トランスレーション』は東京を舞台にしていましたが、再び日本で映画を撮るとしたら、気になっているスポットはありますか?
SC: 私の場合、プランはあってないようなものなので、今は特にプランはしていないわ。来日はいつも楽しみにしているけれどね。
SD: リッツ・カールトンでアクション映画を作ったらどうかな?(註: インタビューはリッツ・カールトン東京にて行われた)「ダイ・ハード・ミーツ・リッツ・カールトン東京」みたいな(笑)冗談だよ。
—今回スティーヴンさんを監督して、今度はこういう役を演じたら面白そうだな、と思うことはありますか?
SC: 特に考えたことはないけど…今作では、これまでに彼が演じたことのないような役を見てみたいと思って起用したから、今後もいろんな役を演じているところを見てみたいわ。彼のいろんな面を見ることに興味を持っているの。
—これまではガールズムービーの名手という印象でしたが、今作では男性の孤独を描かれています。男性と女性の孤独の違いは?
SC: 正直言って、ジョニー・マルコには共感が持てたの。彼の気持ちがわかるな、と感じたのだけれど、基本的に男でも女でも人間の本質は大きくは変わらないと思う。特に孤独を感じるという部分では同じだと考えているし、自分なりに男性の孤独に関して共感の持てる部分を引き出して、それを反映させるようにしたの。それに、自分の性格には男性的な部分もあれば、女性的な部分もあると思う。だから自分の中の男性的な部分を通して、男性の孤独感を引き出してみたわ。
SD: ソフィアが言ったように、男と女は違うけど同時に似ていると思う。どう感じているかにもよるけれど、もし孤独だったり、心が傷ついていたりしたら、性別に関係なく同じような孤独を感じているのだと思う。同時に違うところもあるんじゃないかな。でも、女性に演出されるのは大好きだよ(笑)
SC: 今回が初めて?
SD: 2回目。メアリー・ハロン監督(『I SHOT ANDY WARHOL』)が初めてだった。メアリーはソフィアには及ばないよ。メアリーもスイートだけど、ソフィアは格別にスイートだ(笑)■

映画『SOMEWHERE』は4/2(土)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー。
『SOMEWHERE』公式サイト>>
【関連ニュース】
04/01: ソフィア・コッポラ&スティーヴン・ドーフが語る『SOMEWHERE』
01/20: 『SOMEWHERE』 ソフィア・コッポラが都内で会見
interview + text: nao
ASH来日インタビュー “Vol. 2”
2010-11-26
こんばんは~。お待たせしました!
今日は先日来日したアッシュの独占インタビュー“Vol. 2”をお届けします。
(Interview "Vol. 1"はこちら)
インタビュー後半はデジタル化が進む音楽シーンについて、自分たちのレーベルについて、
今後のアッシュについてなど、たっぷり語っていただきました。
来日ツアーの初日、11/22の東京公演からのライブ写真もあわせてお楽しみください!

左から=マーク、ティム、リック
***
―今回の“The A-Z Series”はご自分たちのレーベルから発表しているわけですが、サブスクリプション・サービスをはじめ、ネットを駆使していますよね。以前よりもフィルターを通さずに直接的にファンの声が聞こえてくるのではないかと思うのですが、その点はいかがですか?
ティム: 最高であると同時に、混乱もしている(笑)
リック: 曲をリリースするたびにいろんな意見が届くからね。一部の人がすごく気に入ってくれても、必ず1人か2人は反対意見があったりして。
マーク: それに、みんながバンドの様々な側面に魅了されていることもわかった。へヴィーな曲が好きなファンがいれば、メロディアスな曲が好きなファンもいて、実験的な曲が好きなファンもいる。難しいよね。
ティム: みんなが違った理由で自分たちのことを好きでいてくれるんだって気づいた。興味深かったよ。
―自分たちでレーベルをやってみて新たに学んだことは?
マーク: ファンが多様性を求めているっていうことかな。そして、みんながこのプロジェクトの規模を楽しんでいるということ。たとえ死ぬほど僕らのファンだとしても、必ずしも全ての曲が好きとは限らないということは理解していたけど、彼らは次に何が来るかわからず、多彩な曲が発表されることを楽しんでいるんだ。
ティム: うん、とても面白いよね。それに、ほぼ全員が曲を気に入ってくれたときはすぐにわかるよ。奇妙なもんだな(笑)
―アッシュのデビュー当時と比較すると、かなり時代が変わりましたよね。当時のアイルランドではレコード契約を得るのが大変だったそうですが、今はどこにいてもmyspaceやFacebookを通じて世界に向けて発表できます。様々なSNSがありますが、ファンとインターネットで直接交流することはありますか?
ティム: Facebookはけっこう便利だよね。
マーク: FacebookとかTwitterとかね。ああいったSNSを使って、ファンは常にバンドの動向をのぞいているみたいだ。
ティム: 何か伝えたいことがあるときはいいよね。メディアに頼る必要がなくて。
リック: 昔は何か伝えようとすると記者に頼るしかなくて、実際に記事が印刷されるまで内容がわからなかったからね。
ティム: 相手がどう受け止めているかわからないしね。時々、全く違った角度からとらえられることもある。でも今は直接伝えられるんだ。
―その反面で、ネット上の言葉って難しいですよね。読んでいる人によって受け止め方も違うし、言葉には時に予期せぬ破壊力があると思うんです。
ティム: うん、確かに。
マーク: SNSの問題のひとつは、ごく短いコメントをFacebookにアップしただけで、真剣にとられたり、誤解されたりすることがあるということ。本当はただの冗談だったとしてもね。時に人は深読みしすぎてしまうんだ。
―「Binary」のビデオはネットを通じて知り合ったファンが作ったそうですね。
ティム: 彼は僕らのファンで、趣味でアッシュのビデオを作っていたんだ。とても美しいビデオをね。彼にはいろいろ手掛けてもらっているよ。ジャケットとかね。
―そういう意味では、ネットは便利ですよね。
ティム: うん。マークが彼にメールで連絡して、最終的にいろんな仕事をお願いすることになった。ビジュアル面で重要な存在となったよ。
マーク: いろんなものを作ってもらっても、いまだにライブになるとモッシュにいるんだから笑えるよね。「あ、いたいた」ってさ(笑)
ティム: 彼は長年に渡るハードコアなファンなんだ。知り合った後でもそうやって夢中でいてくれるって嬉しいよね。何年も活動を続けていて良いことは、ファンが大人になって、その中から才能あふれる人が出てきたりすること。(サポート・ギタリストのブロック・パーティの)ラッセル(・リサック)なんか、まさにそうだよ。僕たちの音楽を聴いて育ったんだよ。
―デジタル配信が主流となり、CDが売れない現状を悲観するアーティストが多い中で、アッシュは今回のプロジェクトでこの状況を見事に活用してみせたように思います。
ティム: 僕たちはポジティブに受け止めて、そこから発展する方法を考えるようにしている。だって、今の時代でも誰もが音楽を必要としていることに間違いはないんだから。
―その一方で、『Vol. 2』に収録された「Physical World」では、「デジタルな世界からフィジカルな世界に戻ってこい」と歌っていますよね。
ティム: そうだね、時には昔が懐かしいのさ(笑) 僕は今でも時々レコード屋に行って、アナログ盤を買うんだ。そういう時代が終わってしまったと考えると悲しくなるよ。子供の頃は本当に聴きたい曲を苦労して探していたからね。見つかるとすごくエキサイティングでさ。苦労した分だけ、余計に気に入るんだ。
リック: 時間やお金を費やしたしね。特にレアなものだと何週間もかけて探したもんだ。でも今の時代は、何か欲しければクリックすれば手に入ってしまう。
マーク: ワンクリックで全てが手に入るから、結局全部は聴かなかったりするんだ。情報が多すぎるんだよ。
ティム: そういう意味では昔が懐かしいね。
リック: Spotify(音楽ストリーミング・サービス)みたいに便利な側面もあるけどね。ネットでは人間関係だけではなく、音楽的にも複雑だ。1曲聴いただけでアーティストを判断してしまいかねないし。最近では10秒とか15秒とか聴いただけで「あんまり好きじゃないな」って決めちゃったりするだろ。もしかしたら頭の10秒はクソでも、30秒後には世界一素晴らしいコーラスが待っているかもしれないのに!みんなもっと音楽に時間を費やすべきだと思う。音楽は使い捨てるものではなく、人生の重要な一部分なんだから。
―デジタル配信を始めて、新たなファンはできましたか?
ティム: できたと思うよ。最近では昔のファンが大人になって、彼らの子供たちが僕たちの音楽にはまっていたりするんだ。ファンはみんな素晴らしいよ。感謝してる。
マーク: YouTubeとかでみんなのコメントを読むと面白いよね。新曲をアップしたら、5年くらい僕らを忘れていた人が「最高だね。彼らは解散したと思っていた」と書いていたりするんだ。
―『The A-Z Series』がようやく終わった今、何をやりたいですか?
ティム: しばらくはリラックスしたいかな。
―次のプロジェクトについて考えていることはありますか?
ティム: いいや、まだだよ。何が起こるか様子見だね。これまでノンストップで音楽活動をしてきたから、しばらくはまったりして、みんなにはこれまでの作品を楽しんでもらいたいよ。
―ティムとマークはニューヨーク、リックはスコットランド在住ですが、今後もそれは変わらず?
ティム: ああ、そう思うよ。
―遠距離でも大丈夫?
ティム: うん。
リック: 僕から言わせればばっちり(笑)
―ティムとマークはニューヨークでの生活はどう?ミュージシャンとして、良い環境ですか?
ティム: 最高。素晴らしいよ。クリエイティブな出会いがたくさんあるし、みんな心が広いしね。自分たちのスタジオも最高なんだよ。素晴らしいエナジーが感じられるよ。
マーク: ニューヨークでは、毎日全く違うことができるんだ。ロンドンにはあそこまで幅広いものはないと思う。いや、あったのかもしれない、僕が参加していなかったというだけで(笑)
ティム: ニューヨークは良いよ。なぜか過ごしやすい場所なんだよね。大都市だけど、大き過ぎはしないし。すごい人種のるつぼだよね。パワフルでフレンドリーな町だよ。
―他に住んでみたい町はありますか?
ティム: 東京に住んでみるのも楽しいかもね。村上春樹の本を読むと住みたくなるよ(笑)
―10代からずっと活動を続けているアッシュですが、ここまで続くと考えていましたか?その原動力は?
ティム: 常にワクワクできるものを見つけてきたから続けられているんじゃないかな。今回のプロジェクトは、まるで再スタートのようなものだった。全てを自分たちでまかなっていた、デビュー当時に戻ったようだったよ。
―1度でもバンドを辞めようと思ったことはある?
ティム: ないよ。一緒に演奏するのがすごく楽しいからね。楽だし。
マーク: 年齢と共に変わってきているよね。デビュー当時は突然シーンに放り込まれてわけがわからなかったけど。かなり激しいジェットコースターのような旅だったな。
ティム: うん。
マーク: 自分たちでレーベルをやることは、怖いことでもあったよね。でも、怖いと感じることは良いことなんだ。
リック: だから人はホラー映画を観るってわけだ。
ティム: 過去2年間はホラー映画だったってことだな(笑)■
***










Photo: Teppei
interview + text: nao
今日は先日来日したアッシュの独占インタビュー“Vol. 2”をお届けします。
(Interview "Vol. 1"はこちら)
インタビュー後半はデジタル化が進む音楽シーンについて、自分たちのレーベルについて、
今後のアッシュについてなど、たっぷり語っていただきました。
来日ツアーの初日、11/22の東京公演からのライブ写真もあわせてお楽しみください!

左から=マーク、ティム、リック
***
―今回の“The A-Z Series”はご自分たちのレーベルから発表しているわけですが、サブスクリプション・サービスをはじめ、ネットを駆使していますよね。以前よりもフィルターを通さずに直接的にファンの声が聞こえてくるのではないかと思うのですが、その点はいかがですか?
ティム: 最高であると同時に、混乱もしている(笑)
リック: 曲をリリースするたびにいろんな意見が届くからね。一部の人がすごく気に入ってくれても、必ず1人か2人は反対意見があったりして。
マーク: それに、みんながバンドの様々な側面に魅了されていることもわかった。へヴィーな曲が好きなファンがいれば、メロディアスな曲が好きなファンもいて、実験的な曲が好きなファンもいる。難しいよね。
ティム: みんなが違った理由で自分たちのことを好きでいてくれるんだって気づいた。興味深かったよ。
―自分たちでレーベルをやってみて新たに学んだことは?
マーク: ファンが多様性を求めているっていうことかな。そして、みんながこのプロジェクトの規模を楽しんでいるということ。たとえ死ぬほど僕らのファンだとしても、必ずしも全ての曲が好きとは限らないということは理解していたけど、彼らは次に何が来るかわからず、多彩な曲が発表されることを楽しんでいるんだ。
ティム: うん、とても面白いよね。それに、ほぼ全員が曲を気に入ってくれたときはすぐにわかるよ。奇妙なもんだな(笑)
―アッシュのデビュー当時と比較すると、かなり時代が変わりましたよね。当時のアイルランドではレコード契約を得るのが大変だったそうですが、今はどこにいてもmyspaceやFacebookを通じて世界に向けて発表できます。様々なSNSがありますが、ファンとインターネットで直接交流することはありますか?
ティム: Facebookはけっこう便利だよね。
マーク: FacebookとかTwitterとかね。ああいったSNSを使って、ファンは常にバンドの動向をのぞいているみたいだ。
ティム: 何か伝えたいことがあるときはいいよね。メディアに頼る必要がなくて。
リック: 昔は何か伝えようとすると記者に頼るしかなくて、実際に記事が印刷されるまで内容がわからなかったからね。
ティム: 相手がどう受け止めているかわからないしね。時々、全く違った角度からとらえられることもある。でも今は直接伝えられるんだ。
―その反面で、ネット上の言葉って難しいですよね。読んでいる人によって受け止め方も違うし、言葉には時に予期せぬ破壊力があると思うんです。
ティム: うん、確かに。
マーク: SNSの問題のひとつは、ごく短いコメントをFacebookにアップしただけで、真剣にとられたり、誤解されたりすることがあるということ。本当はただの冗談だったとしてもね。時に人は深読みしすぎてしまうんだ。
―「Binary」のビデオはネットを通じて知り合ったファンが作ったそうですね。
ティム: 彼は僕らのファンで、趣味でアッシュのビデオを作っていたんだ。とても美しいビデオをね。彼にはいろいろ手掛けてもらっているよ。ジャケットとかね。
―そういう意味では、ネットは便利ですよね。
ティム: うん。マークが彼にメールで連絡して、最終的にいろんな仕事をお願いすることになった。ビジュアル面で重要な存在となったよ。
マーク: いろんなものを作ってもらっても、いまだにライブになるとモッシュにいるんだから笑えるよね。「あ、いたいた」ってさ(笑)
ティム: 彼は長年に渡るハードコアなファンなんだ。知り合った後でもそうやって夢中でいてくれるって嬉しいよね。何年も活動を続けていて良いことは、ファンが大人になって、その中から才能あふれる人が出てきたりすること。(サポート・ギタリストのブロック・パーティの)ラッセル(・リサック)なんか、まさにそうだよ。僕たちの音楽を聴いて育ったんだよ。
―デジタル配信が主流となり、CDが売れない現状を悲観するアーティストが多い中で、アッシュは今回のプロジェクトでこの状況を見事に活用してみせたように思います。
ティム: 僕たちはポジティブに受け止めて、そこから発展する方法を考えるようにしている。だって、今の時代でも誰もが音楽を必要としていることに間違いはないんだから。
―その一方で、『Vol. 2』に収録された「Physical World」では、「デジタルな世界からフィジカルな世界に戻ってこい」と歌っていますよね。
ティム: そうだね、時には昔が懐かしいのさ(笑) 僕は今でも時々レコード屋に行って、アナログ盤を買うんだ。そういう時代が終わってしまったと考えると悲しくなるよ。子供の頃は本当に聴きたい曲を苦労して探していたからね。見つかるとすごくエキサイティングでさ。苦労した分だけ、余計に気に入るんだ。
リック: 時間やお金を費やしたしね。特にレアなものだと何週間もかけて探したもんだ。でも今の時代は、何か欲しければクリックすれば手に入ってしまう。
マーク: ワンクリックで全てが手に入るから、結局全部は聴かなかったりするんだ。情報が多すぎるんだよ。
ティム: そういう意味では昔が懐かしいね。
リック: Spotify(音楽ストリーミング・サービス)みたいに便利な側面もあるけどね。ネットでは人間関係だけではなく、音楽的にも複雑だ。1曲聴いただけでアーティストを判断してしまいかねないし。最近では10秒とか15秒とか聴いただけで「あんまり好きじゃないな」って決めちゃったりするだろ。もしかしたら頭の10秒はクソでも、30秒後には世界一素晴らしいコーラスが待っているかもしれないのに!みんなもっと音楽に時間を費やすべきだと思う。音楽は使い捨てるものではなく、人生の重要な一部分なんだから。
―デジタル配信を始めて、新たなファンはできましたか?
ティム: できたと思うよ。最近では昔のファンが大人になって、彼らの子供たちが僕たちの音楽にはまっていたりするんだ。ファンはみんな素晴らしいよ。感謝してる。
マーク: YouTubeとかでみんなのコメントを読むと面白いよね。新曲をアップしたら、5年くらい僕らを忘れていた人が「最高だね。彼らは解散したと思っていた」と書いていたりするんだ。
―『The A-Z Series』がようやく終わった今、何をやりたいですか?
ティム: しばらくはリラックスしたいかな。
―次のプロジェクトについて考えていることはありますか?
ティム: いいや、まだだよ。何が起こるか様子見だね。これまでノンストップで音楽活動をしてきたから、しばらくはまったりして、みんなにはこれまでの作品を楽しんでもらいたいよ。
―ティムとマークはニューヨーク、リックはスコットランド在住ですが、今後もそれは変わらず?
ティム: ああ、そう思うよ。
―遠距離でも大丈夫?
ティム: うん。
リック: 僕から言わせればばっちり(笑)
―ティムとマークはニューヨークでの生活はどう?ミュージシャンとして、良い環境ですか?
ティム: 最高。素晴らしいよ。クリエイティブな出会いがたくさんあるし、みんな心が広いしね。自分たちのスタジオも最高なんだよ。素晴らしいエナジーが感じられるよ。
マーク: ニューヨークでは、毎日全く違うことができるんだ。ロンドンにはあそこまで幅広いものはないと思う。いや、あったのかもしれない、僕が参加していなかったというだけで(笑)
ティム: ニューヨークは良いよ。なぜか過ごしやすい場所なんだよね。大都市だけど、大き過ぎはしないし。すごい人種のるつぼだよね。パワフルでフレンドリーな町だよ。
―他に住んでみたい町はありますか?
ティム: 東京に住んでみるのも楽しいかもね。村上春樹の本を読むと住みたくなるよ(笑)
―10代からずっと活動を続けているアッシュですが、ここまで続くと考えていましたか?その原動力は?
ティム: 常にワクワクできるものを見つけてきたから続けられているんじゃないかな。今回のプロジェクトは、まるで再スタートのようなものだった。全てを自分たちでまかなっていた、デビュー当時に戻ったようだったよ。
―1度でもバンドを辞めようと思ったことはある?
ティム: ないよ。一緒に演奏するのがすごく楽しいからね。楽だし。
マーク: 年齢と共に変わってきているよね。デビュー当時は突然シーンに放り込まれてわけがわからなかったけど。かなり激しいジェットコースターのような旅だったな。
ティム: うん。
マーク: 自分たちでレーベルをやることは、怖いことでもあったよね。でも、怖いと感じることは良いことなんだ。
リック: だから人はホラー映画を観るってわけだ。
ティム: 過去2年間はホラー映画だったってことだな(笑)■
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Photo: Teppei
interview + text: nao