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アイルランド出身の実力派バンド、ヴィレジャーズ来日インタビュー

2013-04-01


アイルランド・ダブリン出身のシンガーソングライター、コナー・J・オブライアンが中心となって結成したヴィレジャーズ。デビュー・アルバムがアイルランド・チャートやUKインディ・チャートを制覇し、英国で最も栄誉あるミュージック・アワードの「マーキュリー・プライズ」にノミネート、さらには権威ある英国音楽賞「アイヴァー・ノヴェロ賞」を受賞するなど、本国では既に話題のバンドだ。

そんな彼らが今月、セカンド・アルバム『{Awayland}』をリリースし、満を持して日本デビューを果たした。2月に開催されたイベント「Hostess Club Weekender」で初来日を果たし、ライブで日本の音楽ファンを魅了したヴィレジャーズから、コナー・J・オブライアンに話を聞いた。



—日本へようこそ!

こちらこそ、来日できてうれしいよ!アリガト。

—初来日はいかがですか?

最高だよ。日本ではみんなとても礼儀正しいっていうのが第一印象。オーディエンスも礼儀正しくて、僕らにとって初の“カルチャー・クラッシュ”だったよ。観客が英語を完全に理解していない状況でのライブは、たぶん今回が初めてだったんだ。それによって、僕は普段よりもフィジカルに表現しようとしたし、言葉が伝わらない分、音楽で伝えようと努力することができた。素晴らしいチャレンジとなったよ。

—その試みは完全に成功していたようですね。最高のライブでした。

良かった!それはうれしいね。ありがとう。

—1番バッターで早い時間に始まったのに、たくさんの観客が集まっていて驚きました。

僕もだよ。あんなにたくさんの人が観に来てくれて、クールだった。日本のオーディエンスは素晴らしかったよ。僕らの曲にはたくさんの言葉が入っていて、伝わらないのではないかと少し心配していたんだ。でも、音楽が言葉を包んで、フィーリングを伝えてくれたのではないかと感じた。観客からはたくさんの温かみが返ってきたように感じたしね。ライブが進むにつれて、バンドとオーディエンスにコネクションが生まれた。最終的には一体感があって、本当に楽しかったよ。



—以前は他のバンドとして活動していたそうですね。ヴィレジャーズを始めることになったきっかけは?

僕はアイルランドのダブリン出身で、ジ・イミディエイトというバンドをやっていたんだけど、解散したんだ。今より若い頃、学生時代に組んだバンドで、それはそれで楽しかったんだけど終わる必要があった。あのバンドを解散して数日後、いや、数時間後に、僕はヴィレジャーズのドラマーに電話して「何かやろう」と伝えたんだよ。

—随分切り替えが早いですね!?

ある意味、ヴィレジャーズは“立ち直るためのバンド”だったんだけど、それがどういうわけか続いたんだよね(笑)前のバンドではエレキギターを弾いていて、どちらかというと初期のエルヴィス・コステロというか、ポップ/パンクな感じのサウンドだった。ライブ活動だけでリリースはなかったんだけど、曲を書いているうちに、エレキではなくアコースティック・ギターを使ったら、歌詞がより重要性を増して、もっとパワフルになるんじゃないかと考えるようになったんだ。それで少しずつ、フォーク・ミュージックをよく聴くようになった。結局ドラマーから始まり、少しずつ他のメンバーも誘っていって、ヴィレジャーズが完成したんだよ。ベースのダニーは子どもの頃からの友だちで、ギターのトニーは前のバンドのサウンド・エンジニア兼ドライバーだった。昇格したのさ(笑)コーマックは前のバンドが解散した後、女性シンガーのバンドで演奏していた時に一緒だった。そうやってみんなを誘って、いつの間にかここまで成長したんだ。

—それはいつ頃のことですか?

初めてのライブはダブリンで、2008年の年末だった。それから1年ほどツアーをまわって、そしてレコード契約をもらって、最初のアルバムは2010年にリリースしたんだ。

—ヴィレジャーズ(村人たち)というバンド名の由来は?

よく間違われるんだけど、“ザ・ヴィレジャーズ”ではなく、ただの“ヴィレジャーズ”なんだ。そこ大事だよ(笑)とにかく匿名っぽい名前にしたかったんだよね。僕にとって大切なのは楽曲だから、プロジェクトだとかバンドだとかについては、“複数の人たち”という意味があればよかった。あくまでもフォーカスはサウンドにあって、名前は“ヴィレジャーズでいいよ”っていう感じ。当時まだMySpaceが流行っていて、曲をアップする時に何かしらの名前が必要だったんだ。だから適当に、“ヴィレジャーズでいいや”って。

—いつ頃からミュージシャンになりたいと思っていましたか?

僕はずっと音楽に夢中だったんだ。子どもの頃も、映画を観に行くと劇中の歌を歌いながら帰ってくるような子だった。だから、“ロックスターになりたい”とか意識的に思っていたわけではなく、ただずっと音楽に夢中であり続けて今に至るんだ。

—ギターを手にしたのはいつですか?それが初めての楽器?

いや、子どもの頃、親がピアノを習わせたんだ。14歳くらいで辞めちゃったんだけどね。兄が持っていたエレキギターの方がかっこいいと思って(笑)子どもの頃からロックは好きで、初めてはまったのはキンクス。9歳か10歳だったと思う。姉がカセット・ウォークマンを持っていて、いつもこっそり借りて聴いていたんだ。それから12、3歳でグリーン・デイにはまった。『Dookie』が出た頃だよ。ちょっとパンクに走ったんだ。

—パンクを演奏していたんですか?

うん、12、3歳の頃はグリーン・デイを弾いていた。それからセックス・ピストルズやザ・クラッシュを聴いて、“待てよ、グリーン・デイは彼らの真似をしていたのか…”って思って(笑)それからレディオヘッドにはまって、初めて行ったコンサートは14歳の時のレディオヘッドのダブリン公演だった。あのライブを観て、僕はレディオヘッドに夢中になった。

—今回の「Hostess Club Weekender」では、レディオヘッドの第6のメンバーとも呼ばれているナイジェル・ゴドリッチのウルトライスタが出ていましたが、ライブは観られましたか?

観ていないんだ!ちょうどインタビューを受けていたんだよ。ナイジェルに挨拶したかったんだけど、恥ずかしくてできなかった。

—ヴィレジャーズのデビュー・アルバム『Becoming a Jackal』は、アイルランド・チャートで1位、UKインディ・チャートでも1位を獲得したそうですね。

エキサイティングだったよ。でもツアー中はそういった状況に気づかないんだよね。あまりに忙しくて、自分の周りで起きていることに実感がないというか。毎日ライブをうまくやることだけを考えているんだ。だから大きなぼんやりとしたイメージなんだよ。でもライブに人が増えてきて、それで初めて実感した。ライブ中は観客が以前よりも静かになって、ちゃんと曲を聴いてくれるようになったしね。それくらいかな。別に億万長者になったわけではないしね(笑)でも、今まで行かれなかったような場所にツアーで行かれるようになった。

—そういった成功や状況の変化は期待していましたか?

こと音楽や曲作りに関して、僕はいつでもどこかで自分を信じているんだ。というか、自分への信頼感は全て音楽に注いでいるように思う。音楽以外には何も残らないのさ(笑)これが僕の人生なんだ。

—デビュー・アルバムではマーキュリー・プライズにもノミネートされて、さらにはアイヴァー・ノヴェロ賞を受賞したわけですよね。

すごく奇妙な体験だったよ。僕はスピーチがかなり苦手なんだ。でもエルトン・ジョンやジミー・ペイジのようなすごい人たちの前で受賞スピーチをしなくてはならなくて、トロフィーを手に持って“…ありがとう”と言って、逃げるようにステージを降りたよ。確か謝ったんだと思う。何だかパーティーを台無しにしたような気分になってしまって、「ごめんなさい」って(笑)

—バンドのメンバーも喜んだのではないですか?

うん、喜んでくれたよ。あの日、他のメンバーはイングランドの別の場所で待っていたんだ。僕はアイヴァー・ノヴェロ賞を受賞してすぐ、バッグにトロフィーを突っ込んで、電車でバンドの元へ行かなくてはならなかった。ライブをするためにね。特にその日の会場は規模が小さくて、派手な場所から一気に現実に戻されたよ。



—3月には待望のセカンド・アルバムがリリースされますが、日本でアルバムを出すことについてはどう思いますか?

アメイジングだよ。僕にとって、世界の反対側に暮らす、他のカルチャーや言語を持つ人たちにも伝わるかどうかは、音楽を作る上でのテストなんだ。新作が日本でも受け入れられるといいな。また日本に戻ってきたいよ。日本のフェスでもプレイしてみたいんだ。

—タイトル『{Awayland}』に込められた意味を教えてください。

アルバムにコンセプトがあったわけではなかったから、タイトルは全ての曲を書き終えた後に決めたんだ。特定のテーマを表すものよりも、楽曲のフィーリングを表現できるようなタイトルにしたかった。それに、ちょっと子どもっぽい音がする言葉を求めていたんだ。“Awayland”は“Homeland(故郷)”の反対語として、子どもが思いつきそうな言葉だと思って。どの曲も、国民性だとか、文化の相違によって生まれる考えだとかいうことではなく、もっと自由な内容を歌っているからね。個人的には、今作はもっと普遍的なところから生まれた音楽のように思っている。だからタイトルでもそういったことを表現したかった。それに“Awayland”という字面も気に入っているよ。

—今作の曲作りはどのように進めましたか?

少し大変だったよ。ファースト・アルバムが評価されて、当然のことながらプレッシャーもあったしね。僕は忙しくなると自分で自分にプレッシャーを与えるようになって、でも逆に助けられるんだ。自分の批評家はあくまでも自分で、妄想上のジャーナリストによるプレッシャーに苦しむわけではないからね。僕はいつもアートに関して、自分を痛めつけてしまいがち。今回は自分を忙しくするためにシンセサイザーとドラムマシンを買って、エレクトロニック・ミュージックを作り始めた。

—確かに、アルバムのサウンドはとても新鮮でした。

曲は書かず、エレクトロニック・ミュージックをたくさん作ったんだ。そしたらゆっくりと曲がやって来て、それでアコースティック・ギターを手にして、言葉を書き始めた。

—面白い曲作りのプロセスですね。

しばらくの間は、そういった要素をどうやってまとめるべきか全く分からなかったよ。最終的に完成したアルバムは、自分が考えていたよりもファースト・アルバムに近いものになった。「The Waves」以外は特にエレクトロニックな曲ではなく、かすかに音が取り入れられているんだ。

—ギターが前面に出ていながら、さまざまなエレメントが聴こえてきて、とても興味深いです。レディオヘッドのようなバンドを聴いて育ったことも影響していると思いますか?

たぶんね。レディオヘッドは永遠に僕のソウルに植え付けられていると思うから(笑)14歳の頃に好きになったバンドって、自分にとっての全てになるんだよね。まるで世界を救いにきたエイリアンのようなイメージで(笑)僕はそういったフィーリングを今でも覚えているんだよ。それに、いつまでも変化し続ける彼らの姿勢にもインスパイアされる。同じことは繰り返さないんだ。方程式を見つけて、それをずっと使うバンドは多いけど、それはちょっとつまらないよね。

—今作で他にインスピレーションを受けたバンドはいますか?

エレクトロニックな部分では、初期のテクノ・ミュージックにインスピレーションを受けた。PlastikmanやDrexciyaのような、初期のデトロイト・テクノとかを聴いていたんだ。一方で、カーティス・メイフィールドやアラン・トゥーサンのようなファンキーな音楽も聴いていた。1970年代前半のニューオーリンズの音楽をね。グルーヴィーな音楽が好きなんだ。でもハリー・ニルソンやジョージ・ハリソンとかも聴いていたし。そういったいろんな音楽を聴いていたんだよ。

—リリック面でのインスピレーションやテーマは?

書き始めた時はテーマはなかったから、自分が何について書きたいのか分からなかった。でも少しずつ、この惑星における自分が過ごす短い時間や、地球全体における自分がいる場所の小ささを考えるようになった。そういった大きなことを考え出すと、自分の頑迷な考えやささいな悩みなどどうでもよくなってくる。自分がこの世界において、どれだけちっぽけな存在なのかに気づくんだ。子どもはみんなそういったイメージを持っているのだけど、大人は人生経験に毒されて、時に忘れてしまう。僕もそうなりつつあるように感じているから、音楽を使ってそういった考えを撃退して、また自由になりたかった(笑)



—ファースト・シングル「Nothing Arrived」は、あなたにとってどのような曲ですか?

あの曲は初めて、朝目覚めたら頭の中にコーラスが浮かんで書いた曲なんだ。僕にはそんなこと初めてだったから、驚いたよ。それで横にあったコンピューターで急いで録音して、それからヴァースを書いた。何か難しい状況をくぐり抜ける時の気持ちや、そういう時に抱く空虚感、全てに無意味さを感じてしまうこと—それは誰もが感じることだと思うんだ。でも中には、そういった空虚感を他人への嫌悪感や宗教なんかで埋めようとする人もいる。それはそれでいいと思うんだけど、僕はそういったことを避けて、ある意味、空虚感に圧倒されてしまおうと思った。そういった感情こそが、人間をひとつにするんだと気づいたからね。僕らはみんなでこれに直面しているんだ、と。だから、あの曲は人類へのラブソングみたいなものなんだよ(笑)とにかく、書いている時はそう感じたんだ。

—ミュージックビデオも良かったです。

アルデン・ヴォルニーというフランス人のディレクターが作ったんだ。曲を送ったら、あの主人公が出てくるアイデアが返ってきた。曲のリリックを非常に隠喩的に表現していて気に入ったよ。同じような日々を送る主人公は毎日宝くじを買っていて、ある日ついに当たるんだよね。ビデオには、自分の外のことから充実感や幸福を得るのは不可能だというメッセージが込められているんだ。だから、彼はくじが当たったという事実を無視して、日々の生活を続ける。物質的な世界よりも、自分の内面からしか充実感は得られないのだと気づいたんだ。

—当選番号が出てくるところはドキドキして、最後の1つで外れるのかと思いました。当たってびっくりしたけれど、結局何も起こらないんですよね(笑)

そういうこと。♪Nothing Arrived♪ってことさ(笑)

—今後ヴィレジャーズはどのように進んで行くのですか?

これからもバンドとして探検を続け、成長していきたい。じっと止まっているのではなくね。こちらに向かう飛行機の機内では、次のアルバムについてたくさん話し合ったんだ。僕は曲を書くペースが遅いから、早く始めなくては。

—日本のファンにメッセージをお願いします。

今回のとても短い来日で、素晴らしい時間を過ごすことができた。次回はもっと長く滞在したいな。みんながアルバムを気に入ってくれることを願っているよ!


Interview + Text: Nao Machida
Photos: Rich Gilligan
Live Photos: Kazumichi Kokei



ヴィレジャーズ

アイルランドはダブリン出身のシンガーソングライター、コナー・J・オブライアンを中心としたバンド。2010年のデビュー作『Becoming a Jackal』がUKインディー・チャート1位、アイルランド1位を獲得。英国最高峰音楽賞マーキュリー・プライズにノミネート、さらには過去にアデル、レディオヘッド、オアシスらが受賞した権威ある英国音楽賞アイヴァー・ノヴェロ賞を受賞。2013年2月、Hostess Club Weekenderにて初来日を果たす。


『{Awayland}』
1. My Lighthouse
2. Earthly Pleasure
3. The Waves
4. Judgement Call
5. Nothing Arrived
6. The Bell
7. {Awayland}
8. Passing a Message
9. Grateful Song
10. In a Newfound Land You Are Free
11. Rhythm Composer

オフィシャルサイト(英語サイト)>>

14:00

2013年注目のUKロック・バンド、パーマ・ヴァイオレッツ来日インタビュー

2013-03-08


英ロンドン出身の4ピース・バンド、パーマ・ヴァイオレッツが、今週ついにデビュー・アルバム『180』を日本リリースした。ザ・スミス、ザ・ストロークス、ザ・リバティーンズを見出したラフ・トレードの創始者、ジェフ・トラヴィスが、たった1曲聴いただけで即契約したという話題のバンドは、アルバムのリリース前から英「NME」誌の表紙を2度も飾り、シングル「Best of Friends」が同誌のトラック・オブ・ザ・イヤーに選ばれるなど、大きな注目を集めている。

MTV Newsでは、2月に「Hostess Club Weekender」出演のために来日したバンドからサム・フライヤー(Vo/G)とピート・メイヒュー(Key)にインタビュー。イギリスのキャンディをバンド名の由来に持つ彼らに、バンド結成までの経緯やニック・ケイヴとの対面について聞いた。

—日本にはたくさんのUKロック・ファンがいて、パーマ・ヴァイオレッツも既に大きな話題となっています。まずはバンド結成までの経緯を教えていただけますか?

サム・フライヤー(以下、サム): レディング・フェスティバルに行った時に、キャンプファイアを囲んで俺がギターを弾いていたんだ。チリ(・ジェッション、Vo/B)のことは知らなかったんだけど、突然俺のところにやって来た。「ヘイ、お前のギター気に入ったよ。俺がマネージャーになって、マネージメントしてやる」ってね。俺には曲もバンドもなかったんだけど、まいっかって思って、それから何度かミーティングしたんだ。何かしら音楽活動をしたいということ以外、2人とも何がしたいのか分かっていなかったよ。そして最終的にスタジオ180を発見した。ロンドンの中心部、ビッグベンの川向こうにあって、ものすごくかっこいい場所だよ。画家とかダンサーとか、いろんなアーティストがいろんな活動をしているんだ。

—ミュージシャンだけではないんですね。

サム: うん、ミュージシャンは俺たちと韓国版ジョージ・マイケルだけだよな(笑)

ピート・メイヒュー(以下、ピート): ああ(笑)

サム: スタジオ180を発見してすぐに、俺はウィル(・ドイル、Dr)とピートに連絡したんだ。ウィルは俺の知る1番のドラマーだし、ピートは俺の知る1番のミュージシャンだったから。昔から友だちだったんだけど、一緒にバンドをやったことはなくて、急いで彼らをつかまえなければと思っていた。

—それはいつ頃の話ですか?

サム: 1年半前くらいかな。それで4人で集まって、一緒に曲作りを始めた。スタジオ180で5曲作って、地下で友人向けにライブを始めたんだ。あまり上手くなかったけど、自分たちがやりたいからやっていた。最初は仲間内でやっていて、次第にラフ・トレードを含む業界人たちが噂を聞きつけたんだ。

—すごい速さですね。バンド活動はみんな初めてだったんですか?

サム: そうだよ。

—バンドを始める前は何をしていたんですか?

サム: バイトしてた。俺は美術館で働いたり。洋服屋で働いていたヤツもいたし、ピートはいつもダラダラしてたな(笑)

—それで突然チリがマネージャーになると言ったわけですか。じゃあ、別にロックスターになりたいと思っていたわけではなく?

サム: 俺は思っていたよ。いつも学校では上の空で、ロックやりたいと思っていた。ギターでザ・リバティーンズやザ・スミスの曲を弾いたりしてさ。チリはミュージシャンになるつもりはなかったんだ。楽器の弾き方も知らなかったしね。でも音楽が大好きだったから、マネージャーになろうとしていた。

—では、チリはバンドを始めてからベースを覚えたんですか?

サム: うん。最初はピートとウィルと俺がミュージシャンだった。ピートはベースもキーボードもギターも弾けるんだ。それで、なんか適当にピートはキーボード担当ってことになったんだよね。キーボードはすごく音がいいから。

ピート: ギターとかも弾けるんだけど、飽きちゃってね。

サム: それにお前はステージで立っているのが嫌なんだよな?

ピート: ああ、キーボードは座っていられる。

サム: こいつは座っていたいんだ(笑)

ピート: 俺たちがバンドを始めた頃、ちょうどザ・ヴァクシーンズの人気が出てきたというのもある。2人のギタリストがフロントっていうスタイルを、少しは意識したよな。彼らのように、リード・ギターがなんか変なことをしたりするのはやりたくなかった。

サム: 俺たちのスタイルではなかったんだ。作曲をする時に、ボーカルの美しいメロディをキーボードで作ると、とても興味深くて、想像をかき立てるものができるしね。まあとにかく、俺たちはチリに強制的にベースを覚えさせた(笑)まずはジミ・ヘンドリックスの「Hey Joe」を教えたよ。あの曲さえ弾ければベーシストになれるから。

—先ほどザ・リバティーンズの名前が挙がりましたが、多くのメディアはあなたたちの音楽をザ・リバティーンズと比較していますね。そのことについてはどう思いますか?

サム: 俺はザ・クラッシュとかザ・リバティーンズとかザ・キンクスとか、クラシック・ロックのバンドを聴いて育った。ザ・リバティーンズは大好きなバンドだし、比較されてうれしいけど、俺たちのサウンドとは全然違うと思う。2人のリード・シンガーがいるから、ステージでは似たようなエナジーが感じられるかもしれないけど、サウンド的にはあまり似ていると思わないな。自然にこういうスタイルになったし、俺たちのサウンドはキーボードが主軸になっている部分が大きいんだよ。



—スタジオ180はどんな雰囲気の場所ですか?

サム: 大きな家だよ。たくさん部屋があって、それぞれの部屋をいろんなアーティストが借りている。俺たちは地下を借りているんだ。普通のバンドが借りるリハーサル・スタジオよりも全然安いんだよ。スタジオ180を見つけたことは天の恵みのようだった。パートタイムでバイトさえすれば借りられる場所だったからね。ときどき泊まったりもしているし、いい感じだ。

—地下でのライブは「Best of Friends」のミュージックビデオのような感じですか?

サム: 初期は特にあんな感じだった。初めてのライブは10人しか観に来なかったんだ。すごく優しい友だちだけ(笑)「お前らのやっていること良いよ、応援するよ」ってさ。でもだんだんマジになってきて、口コミで人も増えた。最近はやっていないけど、今だったら「チャーリーとチョコレート工場」のウィリー・ウォンカみたいに、ゴールデン・チケット方式じゃないとできないだろうね。人が殺到して大変なことになっちゃうよ。

ピート: 裏に交番もあるし、ヤバいよね(笑)

—最初にライブをやった時は、何曲くらいあったのですか?

サム: オリジナルは5曲。あとはカバーを演奏した。初めてのライブではラモーンズがカバーしたことで有名なザ・リヴィエラスの「California Sun」をカバーして、自分たちの5曲を演奏して、最後は「Hey Jo」の20分バージョンをやったんだ。5曲終わったら、「え、それだけ?」って言われてさ。だから「Hey Jo」を20分間演奏した(笑)でもその後にもっと曲を作って、そしたらみんながちゃんと興味を持ってくれた。

—その5曲はデビュー・アルバム『180』に収録されていますか?

サム: うん、全部入っているよ。

ピート: 作った曲でアルバムに入っていない曲はないよね。

サム: 作った曲は全部入れたよ。最初に書いたのは「14」で、「Rattlesnake Highway」と「All the Garden Birds」、「Tom the Drum」、「Last of the Summer Wine」が最初の5曲。他の曲はもう少し後に書いた。

—アルバムは日本でも3月にリリースされますが、今の気持ちは?

サム: ようやく聴いてもらえてエキサイティングだよ。最初はかなりナーバスだったけど、今は早く聴いてもらいたい。ネットで噂話をするのはやめて、とにかく聴いてから意見を教えてほしい。

—ザ・スミスやザ・ストロークス、ザ・リバティーンズを見出したラフ・トレードの共同オーナー、ジェフ・トラヴィスが、1曲聴いただけで即契約を結んだという話は日本でも話題になっています。

サム: 実は1曲も聴いてなかったんだ。レコーディングした曲はなかったからさ(笑)だからスタジオまで来てもらって、ジェフとジャネット(・リー、共同オーナー)と数人のためにライブを行ったんだ。

ピート: その時もあの5曲を演奏した。

サム: 「Hey Jo」の20分バージョンはやめておいた(笑)でも「California Sun」は演奏して、ジェフも気に入ってくれた。あの曲を聴いたら、俺たちの通ってきた方向性が分かったって。それでジェフが俺たちを座らせて、「オーライ、お前らと契約したい」って。「マジ?」って感じだったよ。

—ライブのその日に?

サム: うん、その日に。他のメジャーレーベルのA&Rは、ビールとかお土産持ってきたり、ディナーに連れて行ってくれたりしたんだ。ラフ・トレードはそういうのが全くなくて、代わりに彼らのレガシーとアイデアを持ってきてくれた。「契約したい」って言われて、断ることなんてできなかったよ。

—ラフ・トレードは突然連絡してきたのですか?

ピート: その頃には、いろんなところで俺たちのことが噂になっていたんだ。たくさんのレーベルが会いにきたけど、話が通じたのはラフ・トレードだけだった。他のレーベルはもっと大きな話をするんだけど、彼らは良いレコードを作りたいと話してくれた。

サム: ああ、ラフ・トレードは良いレコードを作ることだけが目的だった。他はみんな「たくさん売ってやる」とか。

ピート: 「お前らをビッグにしてやる」とかね。

サム: うん。でもラフ・トレードは、自分たちのレガシーの一部として、ずっと大切にしたいと思える音楽を作ることが目的だった。彼らにはとても豊かで興味深いロックンロールのレガシーがあるからね。その一員になれるって、本当に素晴らしいことだよ。

—レコーディング・スタジオでの作業はあまり好きじゃないそうですが、初めてのレコーディングはいかがでしたか?パルプのベーシスト、スティーヴ・マッキーがプロデューサーを務めたそうですね。

サム: スティーヴと出会って良かったよ。俺たちがスタジオに居たくないっていうことを理解してくれて、とても心地良く作業を進めてくれたんだ。いつかはレコードを作らなければ、誰にも聴いてもらえないということは分かっていたんだけどね。スティーヴは失敗もさせてくれた。「これがロックンロールの最高なところだ」って、不完全なところを認めてくれた。

—ずっとスタジオ180で活動してきて、初めてレコーディングしたわけですが、完成したアルバムを聴いてみてどう思いましたか?

サム: 最初は「クソ!もっと上手くできたはずだ」って思ったんだけど、今はこれ以上ないほど良い作品だと思っている。レコーディング・スタジオ嫌いの俺たちにしては、かなり上出来だ(笑)

—このアルバムを一言で表現するとしたら?

ピート: 「若々しい」アルバムだと思う。



—アルバムをリリースする前から大注目を集めていますが、ニック・ケイヴがライブを観に来たという噂は本当ですか?

サム: うん、ブライトンでやったライブに来たんだ。人生で最高に緊張した出来事だったよ。「こんにちは、サムです。大ファンです」って言うのが精一杯だった。俺は自分にとってヒーローのような存在の人と、あまり関わりたくないんだ。だって、もし嫌われたら人生台無しになっちゃうからさ(笑)

ピート: でも良い人だったよね。

サム: とても良い人だった。チリは楽しそうに話していたよ。あいつはそういうことができるんだけど、俺には無理だ。

ピート: 俺も「こんにちは、大ファンです」って言って、逃げたよ。

—パーマ・ヴァイオレッツのサウンドについては何と言っていましたか?

サム: 実は最近言われたんだけど、俺たちに注目が集まっていてうれしいって。ライブの直後には「最高のライブだったな」って言われたから、「めちゃくちゃだった」って言ったんだ。俺はステージでギターを壊しちゃったし。そしたら、「いや、めちゃくちゃじゃなかったよ」って。俺にはそれで十分だった。自分のライブがニック・ケイヴに「めちゃくちゃじゃなかった」と言ってもらえれば十分だ。彼にとってうれしい驚きだったみたいで、あのニック・ケイヴが楽屋まで来てくれんだ。「正直言って、ちょっとだけのぞいて帰ろうと思っていたんだ」って。「でも実際には楽しかった」って言ってくれた。最高だったよ。

—バンドを結成してから1年半の間で、最もクレイジーな出来事は何でしたか?ニック・ケイヴ以外で。

サム: ニック・ケイヴは相当ヤバかった(笑)最高にうれしかったのはジュールズ・ホランドのBBCの番組に出たことかな。あれはかなりアメイジングな経験だった。「フ○ック、マジかよ?」っていうような経験だったね。「場違いなところに来ちゃったよ」っていうようなさ。

ピート: 子どもの頃から「NME」誌を読んでいたし、ジュールズ・ホランドの番組を観ていた。ああいうのに出るってどんな感じだろうと思っていたんだ。その2年後には「NME」誌に載って、同じ年にジュールズ・ホランドに会っているなんてね。

サム: もう真剣じゃないとは言えなくなっちまったな(笑)今はいろんなことがすごい速さで起こっていて、常に次々と進んでいるけど、20年後に振り返ったら、自分たちがどんなことを成し遂げたのか分かるんじゃないかな。

—もしレコード契約を得ていなかったら、今頃何をしていたと思いますか?

サム: ダラダラしてただろうね(笑)仕事をするよりはダラダラしていたい。

ピート: 俺も仕事は大嫌いだった。多分契約なくても同じことしていたんじゃないかな。スタジオ180にたむろしてさ。今と変わらず音楽を演奏していたと思うよ。

サム: 音楽を演奏はしていただろうけど、誰も聴いていなかっただろうね(笑)

—EDMが大人気の最近の音楽シーンで、パーマ・ヴァイオレッツのようなロック・バンドの登場は新鮮でした。今後はどのようなバンドに成長していきたいと思いますか?

ピート: これまで通り流れに任せて、自然に行き着く先に行きたいね。

サム: ああ、俺たちはあまり先のことは考えていないんだ。考えずに自然にここまで辿り着いたからね。次もまた一緒にスタジオに集まって、どんなアイデアが浮かぶかによって、自然に音楽を作っていきたい。


2月2日に開催された「Hostess Club Weekender」にて初の来日ライブを敢行。

—今回が初来日だそうですが、滞在中にトライしたいことはありますか?

サム: 犬が買いたいんだ。

—犬!?

サム: うん、ペットショップに行きたい。ショーウィンドウからかわいい犬が見えるだろ?ああいう犬が買いたい(笑)

ピート: 髪が伸びてきたから、散髪に行きたい。日本の美容院で日本的なヘアカットをしたいね。美容師におまかせして、どうなるか試してみたいよ。

—日本のファンにメッセージをお願いします。

ピート: アリガト。

サム: アリガトウ!

Studio Photos: Owen Richards
Live Photo: Kazumichi Kokei
Interview + Text: Nao Machida



パーマ・ヴァイオレッツ:
ロンドン出身のサム・フライヤー(Vo/G)、チリ・ ジェッソン(Vo/B)、ピート・メイヒュー(Key)、ウィル・ドイル(Dr)からなる4ピース。英老舗レーベル<Rough Trade>の創始者でありザ・スミス、ザ・ストロークス、ザ・リバティーンズを見出したジェフ・トラヴィスが1曲だけを聴いて即契約をした期待の新人バンド。デビュー前から英「NME」誌の表紙に抜擢されるなど、既に熱い注目を浴びる中、彼らのライヴを観に、あのニック・ケイヴやバーナード・バトラー(元スウェード)等大物ミュージシャンも足を運んだという。


『180』
1. Best of Friends
2. Step Up for the Cool Cats
3. All the Garden Birds
4. Rattlesnake Highway
5. Chicken Dippers
6. Last of the Summer Wine
7. Tom the Drum
8. Johnny Bagga' Donuts
9. I Found Love
10. Three Stars
11. 14

日本盤ボーナストラック
 (Hostess Club Weekender Live / Feb 2nd 2013)
12. Johnny Bagga Donuts
13. All the Garden Birds
14. Tom the Drum
15. Best of Friends
16. Step Up for the Cool Cats
17. Last of the Summer Wine
18. 14 / Brand New Song

日本公式サイト>>
『180』全曲試聴実施中!

<MTVオンエア情報>
LIVE in JAPAN:Hostess Club Weekender 2013.Feb
3/23(土)19:00 - 20:00(初回放送)
3/25(月)21:00 - 22:00(リピート放送)

<来日情報>
SUMMER SONIC 2013
日程:2013年8月10日(土)11日(日)
東京会場:QVCマリンフィールド&幕張メッセ
大阪会場:舞洲サマーソニック大阪特設会場
INFO: http://www.summersonic.com/2013

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超能力者 VS 科学者の頭脳戦『レッド・ライト』ロドリゴ・コルテス監督に聞く

2013-02-14


ロバート・デ・ニーロがカリスマ超能力者に扮し、超常現象の嘘を暴こうとするシガーニー・ウィーバーとキリアン・マーフィー演じる科学者チームと頭脳戦を繰り広げる謎解きスリラー『レッド・ライト』が、2月15日より全国で公開される。メガフォンを執ったのは、棺桶に閉じ込められた男を描いた究極のワンシチュエーション・スリラー『リミット』を手掛けた、スペイン出身のロドリゴ・コルテス監督。今作では超能力者と科学者チームの対決を通じて、観客のマインドを最後の最後まで絶妙にコントロールしている。MTV Newsでは、初来日したコルテス監督を直撃。『レッド・ライト』誕生までの経緯や、現場で起きた奇妙なエピソードなど、作品の裏話を教えてもらった。



—『レッド・ライト』は最後まで予測不可能な展開で呆然としました。映画が終わった後も何だか気になって、眠る前にストーリーを思い返してしまいました。

ロドリゴ・コルテス監督: そう言ってくれてとてもうれしいよ。僕は最後まで終わることを抵抗するような映画が好きなんだ。脳内から出て行ってくれないような作品がね。多くの場合、観客は映画が終わるとすぐに忘れ始める。でも中にはどういうわけか、頭の中に留まる作品があるんだ。時間をかけて消化する必要があるような作品だよ。観客は全ての答えを得たと思っていても、次の瞬間、自分が間違っていたことに気づく。疑問を持たせるのはとても大切なことだから、そのような感想を聞くとうれしいんだ。

—前作『リミット』は世界的な成功を収めましたが、今作を制作するにあたって、どのような気持ちで挑みましたか?

監督: 僕は鈍感だから何のプレッシャーも感じなかった。おかげでいつも助かっているよ。知性のなさは意外と便利なものだ(笑)

—『レッド・ライト』のような映画は知性がないと作れませんよ!

監督: それが作れちゃったんだよ(笑)実は『レッド・ライト』の脚本は『リミット』を作る前に書いたものなんだ。だから、作品を選ぶ上で特に迷いはなかった。僕は自分のキャリアにとって何が都合が良いかは考えず、単純に伝えたいことがあるから素直に伝えているだけなんだよ。もしかしたら多少のプレッシャーを感じるべきだったのかもしれないけど、できる限り最高の作品を作ることに専念することにした。少なくとも、その方が健康的だよね。

—『レッド・ライト』はネタバレせずに話すのが難しいタイプの作品ですが、カリスマ的な超能力者と、超常現象のペテンを見抜こうとする科学者チームの対決というアイデアは、どのように浮かんだのですか?

監督: アイデアは一瞬でひらめいたようなものではなく、自然な流れで広がっていった。最初はでっちあげられた超能力について考えるところから始めたんだ。2つの相反するコンセプトが1つになっている。1つは超能力、つまりは魔法、説明できないもので、それは映画にとって完璧なバックグラウンドになる。もう1つはでっちあげ、つまりは人間のつく嘘だ。それにより、触れられる、物質的で具体的なものが生まれる。科学的なアプローチができるんだ。僕はその点に魅了された。

—監督自身、脚本を書く前は超能力などに対して懐疑的だったのですか?

監督: リサーチを終えた今の方が懐疑的な気がするよ(笑)懐疑的ということは、疑問を持つということだからね。自分を懐疑的だと言う人の多くは、実際には否定論者なんだと思う。彼らはただ否定するだけなんだよ。でも本来は懐疑的というのは疑問を持つことであって、何も知らなかったかのように、物事をゼロから熟考することなんだ。そうすれば、物事に対してとてもクリーンなアプローチができる。状況を再評価する必要があるんだ。

—相当のリサーチを要した作品だと思われますが、撮影前にはどのような準備をしたのですか?

監督: 1年半かけて、「超能力者や信者」と「懐疑論者や否定派」の両側からリサーチをしてみた。すると、どちらの“チーム”もとても似たような行動をとっていたんだ。みんな自分たちにリスクを及ぼすことは否定するんだよ。人間は誰しも自分に都合の良いことだけを信じようとすることに気づいた。

—リサーチ中は実際に超能力者に会ったのですか?

監督: ああ、多くの人に会ったよ。彼らについて学び、インタビューもたくさん読んだ。でも目を見張るようなものは何もなかった。僕が目にした全てのことは、単純なマジックのトリックで説明できたんだ。超能力が本当に存在するのかは分からないけど、超常現象を信じるかと言われたら、僕の答えはノーだ。自然を超越することはできないと思うからね。でも超能力は別の問題だ。なぜなら、世の中にはいまだに解明されていない現象があるから。たとえばラジオの高周波は、16世紀には超能力だと考えられていたんだよ。だから、ふさわしいツールに辿り着くまでは、解明できないこともある。

—科学者側の言い分についてはどう思われますか?

監督: 科学は常に進化している。1世紀前には科学的に証明ができなかったことが、今はできている場合も多々ある。科学は進化し続け、証明できることは増えて行くだろう。一部の人にとって、科学は宗教のようなものだ。結局のところ、多くの場合、全ては信念に基づいているんだと思う。人間にとって、自分が信じていることが最も重要なんだ。先に結論が決まっていて、その結論を支えるセオリーを求めたがる。人間の脳みそはそのようにできているんだ。


物理を信奉するマーガレット・マシスン博士役はシガーニー・ウィーバー。

—ロバート・デ・ニーロ、シガーニー・ウィーバー、キリアン・マーフィーなど、今作ではそれぞれの登場人物を描く役者の演技力が際立っていました。どのようなプロセスでキャスティングしたのですか?

監督: 今作のキャスティングについて考えると、もしかしたら超常現象は存在するのかもしれないと思うよ(笑)どうやってこんなキャスティングが実現したのか、説明がつかないからね。多かれ少なかれ、最初はいつもと同じように、理想のキャストのリストを作るところから始めた。それぞれの登場人物に対し、観客が感情移入できるような役者を第1希望から第10希望くらいまで挙げるんだ。常識的に、第7希望くらいが実現すればいいなと考える。第1希望はダメ元で、絶対に無理だろうけど、念のためトライしてみるんだ。でもどういうわけか、今作では第1希望の役者がみんな参加してくれたんだ!

—彼らはどのような理由で出演を決めたのですか?

監督: 誰もがキャラクターや会話、それにたくさんの層からなる綿密な脚本に強い反応を示してくれた。デ・ニーロとはシシリアで、シガーニーとはニューヨークで、そしてキリアンとはロンドンでミーティングをしたんだ。まるで世界ツアーだったよ。どれもとても素晴らしいミーティングだった。お互いを探り合ってね(笑)そして数ヶ月後、みんなで撮影をしていたんだ。本当に何が起こったんだか、訳が分からないよ(笑)

—70年代生まれとのことで、デ・ニーロやシガーニーが出演している作品を観て育ったのではないかと思いますが、スクリーンを通して観ていたスターたちを演出するのはどんな気分でしたか?

監督: それを考え出したら自分に不利になるから、現場では忘れるように心がけていた。最初はまさに“生きる伝説”が目の前にいるわけだけど、2分も経てば、彼らだって同じ人間だと分かる。撮影現場では、彼らの偉業については考えないようにするんだ。もし考え出したら押しつぶされてしまうからね。でもみんなとても温かくてフレンドリーな人たちだったよ。デ・ニーロは40年もトップの俳優でいるにもかかわらず、今でも脚本に書かれた自分のキャラクターを表現ことだけに集中しているんだ。それは感動的だったし、気持ちが少し楽になったよ。

—今作のテーマは観客にたくさんの論議をもたらすと思います。現場ではみんなで超能力について話し合ったりしましたか?

監督: その箱は開けたくなかったんだ(笑)キャラクターに集中してほしかったからね。役者にはそれぞれの登場人物の背景を理解する上で知っておいてほしい情報だけを与えた。与えた情報は役によって全く違ったんだ。シガーニーにはある本を読むように勧めて、キリアンには別の本を勧めた。デ・ニーロとは撮影に入る前に、信じられないかもしれないけどスカイプで話し合ったんだよ(笑)超能力者だけでなく、政治家や心霊治療者、牧師など、さまざまな人たちの声やジェスチャーなどについて話したんだ。テーマに対する個人的な意見は置いておいてね。

—物語の主軸でもある助手のトム・バックリーを演じたキリアン・マーフィーは、特に役にピッタリでしたね。不思議な目力が印象的でした。

監督: 彼はパワフルであり、同時にエレガントでもある、アメイジングな役者だと思う。2つの特性を持った珍しい人だ。演技では時にとても純粋な面を見せる。まるでボーイスカウトのような、幼い表情を持っているんだ。だが、一瞬にして、とても不穏な人物に変身できる。ものすごくダークで、この役に完璧な一面だった。彼はラブコメを一瞬でホラー映画にできるような役者。それはとてもパワフルな素質だと思う。普段はとてもフレンドリーで楽しい人だよ。



—ホラー映画の現場では超常現象が起こったりするとよく聞きますが、『レッド・ライト』の現場で奇妙な出来事はありましたか?

監督: 超常現象は禁じられていたよ(笑)通常は1日あたり10〜12カットを撮影するところを、僕らは40カットも撮影しなければならなかったからね。だから、他のことを考えているわけにはいかなかった。でもおかしな出来事はあったよ。ある晩、オフィスで翌週の撮影の準備をしていたんだ。すると窓に何かがぶつかる大きな音が聞こえた。それは窓にぶちあたった鳥で、死体が床に落ちていた。まるで今作のワンシーンのようにね。脚本は既にできていたから、興味深い偶然だと思った。そして翌日、そのことをキリアンに話したら、同じ時間に彼のホテルの窓にも鳥が突っ込んでいたことが分かった。ストーリーは2つ増え、鳥は2羽減ったといったところだ(笑)

—ついに超常現象を信じる気になりましたか?(笑)

監督: 説明はできないけど、あれは“レッド・ライト”(赤信号、警告)かもね。でも僕らの現場の雰囲気はとても良くて、笑いが絶えなかったよ。時にストーリーがダークであればあるほど、現場の空気は明るいんだ。常にジョークが飛び交っていたし、キャストとの仲も良かった。でも僕が「アクション」と言うと、全てのムードが一変して、ものすごく張りつめた空気になるんだ。

—ベテラン揃いですが、現場でのキャストたちの様子は?

監督: みんなおもしろかったよ。シガーニーはとても皮肉っぽいシャープなユーモアのセンスの持ち主なんだ。デニーロはとても温かい人柄で、シャイというわけではないけれど、口数は少ない。彼が3つ言葉を発すると、それは倍の意味を持つような素晴らしい人だよ。キリアンもとても面白い人だ。僕らはまるで同じ車を運転している相棒のようだった。

—デ・ニーロは出てきた瞬間から、カリスマ超能力者サイモン・シルバーにしか見えませんでした。

監督: 素晴らしいよね。彼には人を引きつける存在感があるんだ。彼を一目見ると、史上最高の超能力者だと信じてしまう。何を演じても史上最高になれる人だよ。何しろロバート・デ・ニーロだからね!

—日本の映画ファンには、どのように『レッド・ライト』を楽しんでほしいですか?

監督: 僕が保障できるのは、観客は自分自身を疑い始めるはずだということ。映画が始まった時点では安心していて、自分で自分の考えをコントロールできると信じている。でも、だんだんその感覚を失っていくだろう。自分自身の知覚を信用できなくなる瞬間が来ると思うよ。自分が理解していると確信していても、必ず裏切られるんだ。

—これから映画を観に行く人に、何か一つ注意を払うべきヒントをあげるとしたら?

監督: 注意を払うのではなく、チケットにお金を払ってほしいな(笑)それは冗談で、僕は何にも注意を払ってほしくないんだ。今作はマジックのトリックだから。どこに注意を払っても、それは間違っていると思うよ。

—まだ全ての答えを得られていないような気分です…もう1度観て、1度目に見逃した全ての“レッド・ライト”を見つけたいです。

監督: 多くの場合、疑問は答えよりも大切なんだ。2度目に観ると、1度目に見逃したたくさんのディテールを発見するだろう。そして、全ての“レッド・ライト”が最初からそこにあったことに気づくんだ。どれをどのように解釈するべきか、自分が何を探していたのかが分からなかっただけでね!



『レッド・ライト』

物理学を信奉するマーガレット・マシスン博士とジョシュのトムは、科学力によって数え切れないほどの超常現象のペテンを見抜き、イカサマ超能力者の嘘を暴き出してきた。そんな彼らの前に、恐るべき強敵が出現する。30年以上も姿をくらませていた超能力者サイモン・シルバーが表舞台に復帰したのだ。やがてマーガレットは因縁あるシルバーの呪いに襲われたかのように倒れ、トムは奇妙な現象に悩まされながらもシルバーの調査に身を投じていく。はたしてシルバーの超能力は本物なのか。そしてシルバーが復活を遂げた真の目的とは…。

監督/脚本/編集/製作:ロドリゴ・コルテス
出演:キリアン・マーフィー、シガーニー・ウィーバー、ロバート・デ・ニーロ、ほか
配給:プレシディオ
2013年2月15日(金)より、TOHOシネマズ六本木ヒルズ他全国ロードショー!
©2011 VERSUS PRODUCCIONES CINEMATOGRAFICAS S.L.(NOSTROMO PICTURES) / VS ENTERTAINMENT LLC

オフィシャルサイト>>

Interview + Text: Nao Machida

10:34

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