待望の新作リリース!スピリチュアライズド来日独占インタビュー
2012-04-11
J・スペースマンことジェイソン・ピアース率いる英国ロック界の至宝、スピリチュアライズドが、本日(4月11日)約4年ぶりとなる待望のニュー・アルバム『Sweet Heart Sweet Light』をリリースした。MTV Newsは先日都内で開催されたライヴ・イベント「Hostess Club Weekender」のために来日したジェイソンにインタビュー。2年の月日を費やし、完璧な「ポップ・レコード」を作りたかったという新作の裏話や、最近の再結成ブームについてなど、たっぷりと語ってくれた。

—今日はお時間ありがとうございます。また来日してくださって嬉しいです。
ジェイソン・ピアース(以下、JP): ありがとう、俺もまた戻って来られて嬉しいよ。来日してからはずっとこの取材部屋に監禁されているんだけどね。この部屋の中で可能な限り楽しんでいるよ(笑)昨日到着したんだけど、1日中インタビューを受けていたんだ。
—それはお気の毒ですね。
JP: 構わないさ。自由時間はないけれど、そもそも演奏するために来日したんだからね。文句は言えないよ。
—日本はお好きですか?
JP: ああ、友人も何人かいるし。東京は奇妙な都市だ。俺の目には、街全体がまるで子どものために作られたように映る。
—そうですか?どんな部分が?
JP: 街中に子どものような好奇心や不思議さがあふれているよ。すごくカルチャーショックを受けるんだ。日本はイングランドやアメリカと同じように裕福なのに、関連性が全くない。全ては同じはずなのに、デザインだとか、あらゆることが完全に奇妙だ。まるで子どもがレゴで作った街のように見える。レゴでは少しずつパーツを足していくだろう?子どもの頭の中では、その全てに理由や計画があるわけだが、大人には奇抜に見える。日本も同じように何だか斬新に見えるんだ。別にそれが悪いと言っているわけではなく、非凡だと思うんだよね。
—ニュー・アルバム『Sweet Heart Sweet Light』の完成おめでとうございます。前作からは3年以上経っていますが、待望の新作は複数の都市でレコーディングしたそうですね。
JP: そう言うとグラマラスに聞こえるかもしれないけど、実際はそうでもないんだ。確かにストリングスはアイスランドでレコーディングした。アコースティック・ライヴをしていた時に、ストリングスの楽団やシンガーを連れて行く予算がなかったから、ツアーは2人でまわって、各地で地元のミュージシャンに出演してもらったんだ。その時にアイスランドで出会った、ミーナというバンドの娘たちが今作に参加してくれたんだよ。ツアーで出会ったほとんどの弦楽奏者はクラシック専門だったが、彼女たちはポップ・ミュージックを演奏している人たちで、とても気に入ったんだ。
さらにLAでも同じツアーで出会った3人の女の子たちと一緒にレコーディングしたんだ。ライヴに参加してもらった多くのシンガーはゴスペル・シンガーだった。教会のシンガーは独特の歌い方やハーモニーを持っているからね。でもLAでは想定外に3人のポップ・シンガーが参加することになった。彼女たちはレナード・コーエンの「So Long, Marianne」に登場する女性シンガーのような歌声の持ち主で。または、ボ・ディドリーやレイ・チャールズのバックシンガーのようだった。それで彼女たちに、LAで一緒にアルバムのレコーディングをしてほしいと依頼したんだ。
—それで複数の都市でレコーディングすることになったわけですか。
JP: ああ、特定のパートを異なる都市でレコーディングした。アルバムの大半は俺がウェールズに所有するスタジオで2回にわたってレコーディングしたんだ。最初は作詞したり、楽曲を構成したりするのに十分な素材をレコーディングして、楽曲ができたら再びスタジオに戻って必要なパートをレコーディングした。残りは全てロンドンの自宅で録音したよ。

—アルバムが完成するまでには、どれくらいの時間を要しましたか?
JP: 全体を通して2年近くかかった。2年間ずっと作業していたわけではなく、少しずつね。今作では時間にゆとりを持ちたかったんだ。スタジオで全てのアイデアを追求するにはお金がかかるし、常に時間との戦いのような気持ちになる。気に入っていようがいまいが、できたものを受け入れざるをえなくなるんだ。俺は主に「聴く」という作業に時間をかけることにした。多くのレコードでは、本当にアーティストが求めていたサウンドかどうかを確認する上で、聴くことに十分な時間が費やされていないように思える。だから俺は自分に失敗する余裕と、最終的に収録されないと分かっているようなアイデアでも試す時間を与えた。そこから何か発見があるかもしれないからね。時に…いや、大半の場合、失敗は最高の結果を生み出すんだ。常に成功していたら得られないような結果が、挑戦したことによる失敗によって得られるのさ。
—先ほどおっしゃっていましたが、今作を制作する前にアコースティック・ライヴを行ったそうですね。ツアーでの経験は今作のサウンドにどのようなインスピレーションを与えたと思いますか?
JP: アコースティック・ライヴによる影響は…俺は突然、ノイズの中に自分の声を紛らわすことができない状況に気づいたんだ。アコースティック・ライヴでは、いかに楽曲の構成が良いかが全てだった。だから、俺は基本的にはポップ・レコードが作りたかったんだ。トランプで作った家のように、各曲が互いを支え合うような11曲のコレクションにしたかった。壊れやすい楽曲があるからこそ、より過激な曲があり、壮大な楽曲と親密な楽曲が隣り合わせに存在するような作品にね。
そしてそれは、俺がこれまでに気づかなかったスピリチュアライズドの一面だった。これまでは音楽をより抽象的に形作っていたんだ。でも、ポップ・ミュージックにおいては隠れる場所がない。音楽は抽象的で奇妙なものにすればするほど、理解が難しいとされがちだ。「音楽的な知識が足りない君には理解できない」と言われてしまったりね。でもポップ・ミュージックは誰もが理解できる。だからこそ、ちゃんと作る必要があるんだ。その曲があるべき姿になるように、確実に完成させる必要があるんだよ。
—前作『Songs in A&E』をリリースする前に命を失いかけたそうですが、前作の楽曲は全て病気になる前に書かれたそうですね。生死をさまよった経験は、今作のために曲作りをする上で何か影響を与えたと思われますか?
JP: それは分からないな。俺は生まれ変わって戻ってきたかったんだ。何か伝えられることがあったらいいなと思っていたんだが…。
—生まれ変わったと感じますか?
JP: いいや、俺はかつてと同じ残念な人間なんだ。実はけっこうショックなんだよね。
—そんなことないですよ!
JP: マジでそうなんだよ。何か素晴らしいメッセージを抱いて戻ってきたかったんだ。「キッズ、大丈夫だ。俺たちの行く末に心配はないよ」とか言えるようなね。でも今でも昔と同じくらい疑念に満ちた、自信のない、以前のままの俺なんだ。
—そんな風には思えませんよ!
JP: ああ、今は良い感じだけどさ。今はこの時間を楽しんでいるよ(笑)

—2009年には1997年リリースの代表作『Ladies and Gentlemen We Are Floating in Space』を完全な形で披露するというライヴを行ったそうですが、その経験による影響はありますか?
JP: ああ、良くも悪くもね。
—悪くも?
JP: ああ。あのライヴはすごく名誉なことだったし、興奮したよ。俺はあのライヴに全てを捧げた。素晴らしい企画だったと思う。あのアルバムは単体で成り立つもので、全ての曲がアルバム全体の一部だからね。でも、あのライヴをやったことによって、最近の音楽が過去を振り返ってばかりいることに気づかされた。「これこそが名盤だった」「あれが全盛期だ」「あの頃の俺たちは特別だった」というようにね。そういった途方もないメランコリアにより、俺は深い悲しみを感じたんだ。あれほどパワフルですごく重要な音楽が死にかけていて、もう振り返ることしかできなくなっているんだ、とね。
未来に向けて進んで行く唯一の方法は、新たな名盤を作ることだ。時間をかけて、とても特別な一枚を今この時に出す必要がある。同世代のほとんどのバンドが再結成したり、過去の作品を振り返ったりしているように感じるよ。そもそも音楽というものは、未来に向けて大きな一歩を踏み出すことができないんだ。これまでに聴いたことがないような、正真正銘の新しい音楽を作ることは不可能なんだよ。音楽は進化していくもので、常に過去と関連せざるをえないからね。
これから新しいものを作る唯一の方法は、正しい方向に前進すること。俺は『Ladies and Gentlemen』のライヴにインスパイアされて、過去に頼らずに美しいものを今作りたいと思うようになった。過去を称賛することにより生じる問題は、作品がより早く歴史と化してしまうことだと思う。こんなに美しくパワフルな作品なんだ、博物館の展示物のようになってほしくないよ。俺は作品を自分たちの人生の一部として考えたい。そしてあの頃のような壮大なサウンドを、いま生み出したいんだ。
—おっしゃったように最近は多くのバンドが再結成していますが、そのような状況をどう思いますか?
JP: 正直な話、俺は他人をジャッジしようとは思わない。ただ、俺には向いていなかったというだけさ。誰もが自分の好きなようにするべきだと思う。俺からしてみれば、音楽の未来のために健康的な状況ではないと思うけど。
—新たなサウンドを生み出す上で?
JP: ああ。本当に新しい音楽を生み出すのは、新しい動物を作り上げるくらい不可能なことだ。音楽では一歩一歩がとてもスローでほんのわずかだからね。リスナーが真新しい音楽だと思っているものが、実際には過去の作品のスタイルを大幅に変えただけだったりする。新しく聴こえるように、過去の作品を組み合わせたりね。大切なことは、少なくとも正しい方向に進もうとトライすることだ。
—アルバムのタイトル『Sweet Heart Sweet Light』に込められた意味は?
JP: 『Sweet Heart Sweet Light』は「Hey Jane」のリリックの一部なんだ。アルバムは実はかねてから「Huh?(は?)」と呼ばれていた。ジャケットのアートワークのようにね。でも、そのタイトルを考える度にコメディのようなシナリオが浮かんでしまったんだ。誰かが「スピリチュアライズドのニュー・アルバム買った?」と聞いて、相手が「『Huh?』(は?)」と答える。そして再び「だから、スピリチュアライズドのニュー・アルバム買った?」と聞いて、「『Huh?』」と答える…とエンドレスに続くんだ。考える度に、そのことが頭の中にループしてしまった。そこで買ってくれた人たちが困らないように、『Sweet Heart Sweet Light』にしたんだ。もし買ってくれれば、の話だが。
—当然買いますよ!ファンは何年も待っていたんですから。
JP: だと嬉しいね。

—今回は「Hostess Club Weekender」にヘッドライナーとして出演されますが、どのようなステージを期待できそうですか?
JP: 最高だよ。まだライヴを再開して間もないんだ。俺はライヴが1番好きでね。もしレコードを作る必要がなければ、作らないだろう。ただ、レコードを出さないとライヴをしに来られないからね。ライヴで演奏しているときは、まるで音楽の滝の中に居るかのような最高の気分なんだ。レコーディングのように、うまくとらえなければと心配する必要もないしね。最高のスリルが感じられて、アメイジングだよ。日本にまた来られたことも嬉しいね。ライヴ前はいつになくハイになるよ。
—他の出演バンドで観たい人はいますか?
JP: 誰が出るのかよく把握していないんだ。ザ・ホラーズは前から知っているけどね。このバッジをくれた男は観てみたいな(セーターにアトラス・サウンドのバッジをつけていた)。
—ブラッドフォード・コックス、アトラス・サウンドですね。
JP: そうそう、そいつ。でも、俺たちの前に出るから、直前のバンドを観ることはなかなかできないんだよな。でも、また挨拶できたら嬉しいよ。
—最近はロック・バンドが減ってきていると言われていますが、昨今の音楽シーンについてはどう思いますか?
JP: うーん…俺がガキの頃から大して変わっていないように思うな。俺は音楽シーン自体には興味がないんだ。ただ単に売れるからという理由で、似たような音楽が作られるんだと思う。もしあるレコードが1万枚売れたら、もっと売るためにあと3組のバンドに同じような曲をやらせよう、ということさ。でも、市場とは無関係のことをしようとしている人は常に存在する。自分の中に存在する音楽を出したいから作品を作っている人たちだ。何が売れるか、何が人気かは関係なくね。
それに俺は音楽シーンの流行にうといんだ。常に新しい音楽を探さなければならないとは感じていない。世の中には膨大な量の作品が存在していて、その多くがかつてよりもリスナーに届けやすいから作られているんだと思う。名前をタイプすれば、そのアーティストの全作品をゲットすることができる世の中だ。だがそれは「音楽を聴く」という行為とは異なる。影響を受けるほど音楽に没頭するような状況からは遠ざかっているんだ。どんなアーティストのカタログだって流し聴きすることができるだろうけど、それは作品と友だちになるような状態とは違うよ。音楽が自分にとって意味を持つような状況ではない。俺が思うに、最終的には音楽が聴く人を探してくれるんだと思う。
—ところで以前、ハーモニー・コリン監督の『ミスター・ロンリー』の音楽を手掛けていましたが、監督は現在、新作映画を製作しているそうです。あなたは参加していないのですか?
JP: 俺は参加していないんだ。彼の前作「Trash Humpers」は驚異的だったよ。これまでに観た映画の中でも屈指の素晴らしい作品だった。『ミスター・ロンリー』よりもずっと良かったよ。「Trash Humpers」にも参加できたら良かったな。
—次回作「Spring Breakers」は、女子大生が春休みに遊ぶ資金を作るために強盗をするというようなストーリーらしいです。
JP: ありえるね。ハーモニー・コリンのマインドが生み出す作品はどれも深く破壊的で奇妙なものだから(笑)とにかく「Trash Humpers」は素晴らしかった。『イレイザーヘッド』と同じくらい良かったけど、それよりも格段に良かったよ。ほんとうに驚異的な作品だ。彼とは3 ヶ月前に話したのが最後かな。いつどこで何について話したのかも覚えていないけど、お互いに連絡は取り合っているんだ。俺は連絡を取るのが得意ではないんだけどね。
—日本のファンにメッセージをお願いできますか?
JP: ワーォ。は?…今のが俺からのメッセージだよ(笑)



Photos (Jason Pierce): KNTR
Live Photos: Kazumichi Kokei
Interview + Text: Nao Machida
スピリチュアライズド:

伝説的バンド、スペースメン3の中心人物、ジェイソン・ピアース a.k.a. J・スペースマンによって1990年に結成される。1991年以来コンスタントにアルバムを発表し、97年、20世紀のロック史に燦然と輝く傑作『Ladies and Gentlemen We Are Floating in Space(邦題: 宇宙遊泳)』をリリース。このアルバムは各方面で大絶賛を浴び、スピリチュアライズドの最高傑作として高い評価を得る。2001年『Let It Come Down』、03年に『Amazing Grace』を発表。そして05年6月に病に倒れ、一時は危篤状態まで陥り生死の狭間を行き来するほどまでに悪化するが、その後、奇跡的に回復に向かう。08年、前作から5年という期間を経て遂に『Songs in A&E』をリリース。同年には「SUMMER SONIC 08」にて久々の来日も果たし、スピリチュアライズド完全復活を強く印象付けた。本作『Sweet Heart Sweet Light』は約4年ぶり、通算7作目となるスタジオ・アルバムである。
オフィシャルサイト(英語)>>
新鋭ディレクター、AGロヤスが手掛けたリード・シングル「Hey Jane」の話題のミュージックビデオを配信中。

—今日はお時間ありがとうございます。また来日してくださって嬉しいです。
ジェイソン・ピアース(以下、JP): ありがとう、俺もまた戻って来られて嬉しいよ。来日してからはずっとこの取材部屋に監禁されているんだけどね。この部屋の中で可能な限り楽しんでいるよ(笑)昨日到着したんだけど、1日中インタビューを受けていたんだ。
—それはお気の毒ですね。
JP: 構わないさ。自由時間はないけれど、そもそも演奏するために来日したんだからね。文句は言えないよ。
—日本はお好きですか?
JP: ああ、友人も何人かいるし。東京は奇妙な都市だ。俺の目には、街全体がまるで子どものために作られたように映る。
—そうですか?どんな部分が?
JP: 街中に子どものような好奇心や不思議さがあふれているよ。すごくカルチャーショックを受けるんだ。日本はイングランドやアメリカと同じように裕福なのに、関連性が全くない。全ては同じはずなのに、デザインだとか、あらゆることが完全に奇妙だ。まるで子どもがレゴで作った街のように見える。レゴでは少しずつパーツを足していくだろう?子どもの頭の中では、その全てに理由や計画があるわけだが、大人には奇抜に見える。日本も同じように何だか斬新に見えるんだ。別にそれが悪いと言っているわけではなく、非凡だと思うんだよね。
—ニュー・アルバム『Sweet Heart Sweet Light』の完成おめでとうございます。前作からは3年以上経っていますが、待望の新作は複数の都市でレコーディングしたそうですね。
JP: そう言うとグラマラスに聞こえるかもしれないけど、実際はそうでもないんだ。確かにストリングスはアイスランドでレコーディングした。アコースティック・ライヴをしていた時に、ストリングスの楽団やシンガーを連れて行く予算がなかったから、ツアーは2人でまわって、各地で地元のミュージシャンに出演してもらったんだ。その時にアイスランドで出会った、ミーナというバンドの娘たちが今作に参加してくれたんだよ。ツアーで出会ったほとんどの弦楽奏者はクラシック専門だったが、彼女たちはポップ・ミュージックを演奏している人たちで、とても気に入ったんだ。
さらにLAでも同じツアーで出会った3人の女の子たちと一緒にレコーディングしたんだ。ライヴに参加してもらった多くのシンガーはゴスペル・シンガーだった。教会のシンガーは独特の歌い方やハーモニーを持っているからね。でもLAでは想定外に3人のポップ・シンガーが参加することになった。彼女たちはレナード・コーエンの「So Long, Marianne」に登場する女性シンガーのような歌声の持ち主で。または、ボ・ディドリーやレイ・チャールズのバックシンガーのようだった。それで彼女たちに、LAで一緒にアルバムのレコーディングをしてほしいと依頼したんだ。
—それで複数の都市でレコーディングすることになったわけですか。
JP: ああ、特定のパートを異なる都市でレコーディングした。アルバムの大半は俺がウェールズに所有するスタジオで2回にわたってレコーディングしたんだ。最初は作詞したり、楽曲を構成したりするのに十分な素材をレコーディングして、楽曲ができたら再びスタジオに戻って必要なパートをレコーディングした。残りは全てロンドンの自宅で録音したよ。

—アルバムが完成するまでには、どれくらいの時間を要しましたか?
JP: 全体を通して2年近くかかった。2年間ずっと作業していたわけではなく、少しずつね。今作では時間にゆとりを持ちたかったんだ。スタジオで全てのアイデアを追求するにはお金がかかるし、常に時間との戦いのような気持ちになる。気に入っていようがいまいが、できたものを受け入れざるをえなくなるんだ。俺は主に「聴く」という作業に時間をかけることにした。多くのレコードでは、本当にアーティストが求めていたサウンドかどうかを確認する上で、聴くことに十分な時間が費やされていないように思える。だから俺は自分に失敗する余裕と、最終的に収録されないと分かっているようなアイデアでも試す時間を与えた。そこから何か発見があるかもしれないからね。時に…いや、大半の場合、失敗は最高の結果を生み出すんだ。常に成功していたら得られないような結果が、挑戦したことによる失敗によって得られるのさ。
—先ほどおっしゃっていましたが、今作を制作する前にアコースティック・ライヴを行ったそうですね。ツアーでの経験は今作のサウンドにどのようなインスピレーションを与えたと思いますか?
JP: アコースティック・ライヴによる影響は…俺は突然、ノイズの中に自分の声を紛らわすことができない状況に気づいたんだ。アコースティック・ライヴでは、いかに楽曲の構成が良いかが全てだった。だから、俺は基本的にはポップ・レコードが作りたかったんだ。トランプで作った家のように、各曲が互いを支え合うような11曲のコレクションにしたかった。壊れやすい楽曲があるからこそ、より過激な曲があり、壮大な楽曲と親密な楽曲が隣り合わせに存在するような作品にね。
そしてそれは、俺がこれまでに気づかなかったスピリチュアライズドの一面だった。これまでは音楽をより抽象的に形作っていたんだ。でも、ポップ・ミュージックにおいては隠れる場所がない。音楽は抽象的で奇妙なものにすればするほど、理解が難しいとされがちだ。「音楽的な知識が足りない君には理解できない」と言われてしまったりね。でもポップ・ミュージックは誰もが理解できる。だからこそ、ちゃんと作る必要があるんだ。その曲があるべき姿になるように、確実に完成させる必要があるんだよ。
—前作『Songs in A&E』をリリースする前に命を失いかけたそうですが、前作の楽曲は全て病気になる前に書かれたそうですね。生死をさまよった経験は、今作のために曲作りをする上で何か影響を与えたと思われますか?
JP: それは分からないな。俺は生まれ変わって戻ってきたかったんだ。何か伝えられることがあったらいいなと思っていたんだが…。
—生まれ変わったと感じますか?
JP: いいや、俺はかつてと同じ残念な人間なんだ。実はけっこうショックなんだよね。
—そんなことないですよ!
JP: マジでそうなんだよ。何か素晴らしいメッセージを抱いて戻ってきたかったんだ。「キッズ、大丈夫だ。俺たちの行く末に心配はないよ」とか言えるようなね。でも今でも昔と同じくらい疑念に満ちた、自信のない、以前のままの俺なんだ。
—そんな風には思えませんよ!
JP: ああ、今は良い感じだけどさ。今はこの時間を楽しんでいるよ(笑)

—2009年には1997年リリースの代表作『Ladies and Gentlemen We Are Floating in Space』を完全な形で披露するというライヴを行ったそうですが、その経験による影響はありますか?
JP: ああ、良くも悪くもね。
—悪くも?
JP: ああ。あのライヴはすごく名誉なことだったし、興奮したよ。俺はあのライヴに全てを捧げた。素晴らしい企画だったと思う。あのアルバムは単体で成り立つもので、全ての曲がアルバム全体の一部だからね。でも、あのライヴをやったことによって、最近の音楽が過去を振り返ってばかりいることに気づかされた。「これこそが名盤だった」「あれが全盛期だ」「あの頃の俺たちは特別だった」というようにね。そういった途方もないメランコリアにより、俺は深い悲しみを感じたんだ。あれほどパワフルですごく重要な音楽が死にかけていて、もう振り返ることしかできなくなっているんだ、とね。
未来に向けて進んで行く唯一の方法は、新たな名盤を作ることだ。時間をかけて、とても特別な一枚を今この時に出す必要がある。同世代のほとんどのバンドが再結成したり、過去の作品を振り返ったりしているように感じるよ。そもそも音楽というものは、未来に向けて大きな一歩を踏み出すことができないんだ。これまでに聴いたことがないような、正真正銘の新しい音楽を作ることは不可能なんだよ。音楽は進化していくもので、常に過去と関連せざるをえないからね。
これから新しいものを作る唯一の方法は、正しい方向に前進すること。俺は『Ladies and Gentlemen』のライヴにインスパイアされて、過去に頼らずに美しいものを今作りたいと思うようになった。過去を称賛することにより生じる問題は、作品がより早く歴史と化してしまうことだと思う。こんなに美しくパワフルな作品なんだ、博物館の展示物のようになってほしくないよ。俺は作品を自分たちの人生の一部として考えたい。そしてあの頃のような壮大なサウンドを、いま生み出したいんだ。
—おっしゃったように最近は多くのバンドが再結成していますが、そのような状況をどう思いますか?
JP: 正直な話、俺は他人をジャッジしようとは思わない。ただ、俺には向いていなかったというだけさ。誰もが自分の好きなようにするべきだと思う。俺からしてみれば、音楽の未来のために健康的な状況ではないと思うけど。
—新たなサウンドを生み出す上で?
JP: ああ。本当に新しい音楽を生み出すのは、新しい動物を作り上げるくらい不可能なことだ。音楽では一歩一歩がとてもスローでほんのわずかだからね。リスナーが真新しい音楽だと思っているものが、実際には過去の作品のスタイルを大幅に変えただけだったりする。新しく聴こえるように、過去の作品を組み合わせたりね。大切なことは、少なくとも正しい方向に進もうとトライすることだ。
—アルバムのタイトル『Sweet Heart Sweet Light』に込められた意味は?
JP: 『Sweet Heart Sweet Light』は「Hey Jane」のリリックの一部なんだ。アルバムは実はかねてから「Huh?(は?)」と呼ばれていた。ジャケットのアートワークのようにね。でも、そのタイトルを考える度にコメディのようなシナリオが浮かんでしまったんだ。誰かが「スピリチュアライズドのニュー・アルバム買った?」と聞いて、相手が「『Huh?』(は?)」と答える。そして再び「だから、スピリチュアライズドのニュー・アルバム買った?」と聞いて、「『Huh?』」と答える…とエンドレスに続くんだ。考える度に、そのことが頭の中にループしてしまった。そこで買ってくれた人たちが困らないように、『Sweet Heart Sweet Light』にしたんだ。もし買ってくれれば、の話だが。
—当然買いますよ!ファンは何年も待っていたんですから。
JP: だと嬉しいね。

—今回は「Hostess Club Weekender」にヘッドライナーとして出演されますが、どのようなステージを期待できそうですか?
JP: 最高だよ。まだライヴを再開して間もないんだ。俺はライヴが1番好きでね。もしレコードを作る必要がなければ、作らないだろう。ただ、レコードを出さないとライヴをしに来られないからね。ライヴで演奏しているときは、まるで音楽の滝の中に居るかのような最高の気分なんだ。レコーディングのように、うまくとらえなければと心配する必要もないしね。最高のスリルが感じられて、アメイジングだよ。日本にまた来られたことも嬉しいね。ライヴ前はいつになくハイになるよ。
—他の出演バンドで観たい人はいますか?
JP: 誰が出るのかよく把握していないんだ。ザ・ホラーズは前から知っているけどね。このバッジをくれた男は観てみたいな(セーターにアトラス・サウンドのバッジをつけていた)。
—ブラッドフォード・コックス、アトラス・サウンドですね。
JP: そうそう、そいつ。でも、俺たちの前に出るから、直前のバンドを観ることはなかなかできないんだよな。でも、また挨拶できたら嬉しいよ。
—最近はロック・バンドが減ってきていると言われていますが、昨今の音楽シーンについてはどう思いますか?
JP: うーん…俺がガキの頃から大して変わっていないように思うな。俺は音楽シーン自体には興味がないんだ。ただ単に売れるからという理由で、似たような音楽が作られるんだと思う。もしあるレコードが1万枚売れたら、もっと売るためにあと3組のバンドに同じような曲をやらせよう、ということさ。でも、市場とは無関係のことをしようとしている人は常に存在する。自分の中に存在する音楽を出したいから作品を作っている人たちだ。何が売れるか、何が人気かは関係なくね。
それに俺は音楽シーンの流行にうといんだ。常に新しい音楽を探さなければならないとは感じていない。世の中には膨大な量の作品が存在していて、その多くがかつてよりもリスナーに届けやすいから作られているんだと思う。名前をタイプすれば、そのアーティストの全作品をゲットすることができる世の中だ。だがそれは「音楽を聴く」という行為とは異なる。影響を受けるほど音楽に没頭するような状況からは遠ざかっているんだ。どんなアーティストのカタログだって流し聴きすることができるだろうけど、それは作品と友だちになるような状態とは違うよ。音楽が自分にとって意味を持つような状況ではない。俺が思うに、最終的には音楽が聴く人を探してくれるんだと思う。
—ところで以前、ハーモニー・コリン監督の『ミスター・ロンリー』の音楽を手掛けていましたが、監督は現在、新作映画を製作しているそうです。あなたは参加していないのですか?
JP: 俺は参加していないんだ。彼の前作「Trash Humpers」は驚異的だったよ。これまでに観た映画の中でも屈指の素晴らしい作品だった。『ミスター・ロンリー』よりもずっと良かったよ。「Trash Humpers」にも参加できたら良かったな。
—次回作「Spring Breakers」は、女子大生が春休みに遊ぶ資金を作るために強盗をするというようなストーリーらしいです。
JP: ありえるね。ハーモニー・コリンのマインドが生み出す作品はどれも深く破壊的で奇妙なものだから(笑)とにかく「Trash Humpers」は素晴らしかった。『イレイザーヘッド』と同じくらい良かったけど、それよりも格段に良かったよ。ほんとうに驚異的な作品だ。彼とは3 ヶ月前に話したのが最後かな。いつどこで何について話したのかも覚えていないけど、お互いに連絡は取り合っているんだ。俺は連絡を取るのが得意ではないんだけどね。
—日本のファンにメッセージをお願いできますか?
JP: ワーォ。は?…今のが俺からのメッセージだよ(笑)



Photos (Jason Pierce): KNTR
Live Photos: Kazumichi Kokei
Interview + Text: Nao Machida
スピリチュアライズド:

伝説的バンド、スペースメン3の中心人物、ジェイソン・ピアース a.k.a. J・スペースマンによって1990年に結成される。1991年以来コンスタントにアルバムを発表し、97年、20世紀のロック史に燦然と輝く傑作『Ladies and Gentlemen We Are Floating in Space(邦題: 宇宙遊泳)』をリリース。このアルバムは各方面で大絶賛を浴び、スピリチュアライズドの最高傑作として高い評価を得る。2001年『Let It Come Down』、03年に『Amazing Grace』を発表。そして05年6月に病に倒れ、一時は危篤状態まで陥り生死の狭間を行き来するほどまでに悪化するが、その後、奇跡的に回復に向かう。08年、前作から5年という期間を経て遂に『Songs in A&E』をリリース。同年には「SUMMER SONIC 08」にて久々の来日も果たし、スピリチュアライズド完全復活を強く印象付けた。本作『Sweet Heart Sweet Light』は約4年ぶり、通算7作目となるスタジオ・アルバムである。
オフィシャルサイト(英語)>>
新鋭ディレクター、AGロヤスが手掛けたリード・シングル「Hey Jane」の話題のミュージックビデオを配信中。
『マリリン 7日間の恋』ミシェル・ウィリアムズ来日インタビュー
2012-03-23
魅惑的なセックスシンボルとして世界を虜にした世紀のスター、マリリン・モンローが、36歳という若さでこの世を去ってから今年で50年。彼女の知られざる素顔を描いた映画『マリリン 7日間の恋』がついに公開される。タイトルどおり、マリリンと名もなき青年の一週間のはかない恋を描いた今作で、マリリン役を美しく繊細に演じたミシェル・ウィリアムズが待望の初来日を果たした。
スクリーンで観るよりも小柄でブロンドのベリーショートがチャーミングな彼女は、いまやハリウッドを代表する女優の一人であるにもかかわらず、とても気さくで地に足の着いた聡明な女性だ。元恋人の故ヒース・レジャーとの間に誕生した6歳になる愛娘マティルダちゃんの話題になると、ふと優しい母親の顔を見せたのが印象的だった。マリリン・モンローについて、役作りについて、人生について—— 初めての日本に瞳を輝かせ、すっかり気に入ったという緑茶を手に、一つ一つの質問に言葉を選びながら丁寧に答えてくれた。

—まずは初来日してくださってありがとうございます。
ミシェル・ウィリアムズ(以下、MW): こちらこそ、ありがとう。
—マリリン・モンローというと「セクシーなブロンドの美女」という表面的なイメージしかなかったのですが、今作では感情豊かで繊細な一人の女性としての一面を見ることができて、彼女にもこんな7日間があったのだな、と微笑ましく思いました。同じ女優をお仕事にされている女性として、彼女のどんなところに最も共感されましたか?
MW: 今作では思いがけない偶然がいくつかあったの。私は30歳で今作を撮影したのだけれど、マリリンは30歳のときに『王子と踊り子』を撮影したのよ。私たちが撮影を行った場所の多くが、実際にマリリンが撮影を行った場所だったし、スタジオで私が使用した楽屋は、当時マリリンが使っていた楽屋だったの。だから私たちの間には、どこか魔法のような重要な共通点がいくつかあったわ。
女優としてマリリンに共感する部分は…演技の勉強不足なところかな(笑)それに彼女ほど深いものではないにしても、不安な気持ちや恐怖心、周りの助けを必要としているところとか…うん、そういったことには少し共感したけれど、私はマリリンほど極端ではないわね。
—この映画では、マリリン・モンローがスターとしての顔と素顔のギャップに苦しむことが1つのテーマだと感じたのですが、ミシェルさん自身がそう感じるときはありますか?もしあるとすれば、どのようにして乗り越えていらっしゃいますか?
MW: マリリンが女優として生きていた時代は、今の私が生きる恵まれた時代とは大きく違っていたと思うの。当時は制限の多いスタジオのシステムの下で、素顔の自分と演者としての自分の間にギャップを作り、スター的人格を育てるように仕向けられていた時代だったわ。私はそういったギャップが小さい時代に生きているの。今の私たちは人間らしくいることを許されているどころか、できる限りそうするように勧められているのよ。道化師のように振る舞ったり、極限までギラギラに飾り立てたりする必要はないの。
つまり、今あなたの目の前に座っている私と、友人たちと一緒にいる私は、さほど変わらないというわけ。もちろん、友だちと過ごす時よりは遠慮がちだし、インタビューでは言わないこともあるかもしれないけれどね(笑)でも、一人の人としての私の目標は、自分自身をよく理解して、自分らしく表現することなの。それはこうしてあなたの前に座っている、女優としての私の目標でもあるわ。だから私の場合は、自分の中に明確な境界線を感じていないの。
そこにもっと大きなギャップがあればいいのに、って思うこともあるわ。素顔の一部を伏せておけば、たとえ人が私のことを噂していても、本当の自分は知られずに済むものね。でもそれは私の生き方ではないし、私はそうするつもりはないの。とはいえ時々、芸名があったらいいのにな、って思う。そうすればプライベートから距離を感じられるもの。特に私のことを好きではない人から意地悪を言われたときにね(笑)でも、とにかく私はマリリンとは全然違うわ。

—劇中でマリリンと7日間を過ごすコリン・クラークについて、ミシェルさんはマリリンがなぜ彼にひかれたのだとお考えですか?また、ミシェルさん自身は彼のような人をどう思いますか?
MW: その質問は何度も自問したわ。「この男の子のどこかそんなに特別だったのかしら?彼のどんなところがマリリンの心を動かしたのかしら?」ってね。私がたどり着いた答えはこうよ。もしマリリンが女王様だとしたら、敵側にスパイが必要なはず。あの状況に置かれた彼女は、自分の支持者として彼を見つけたんだと思う。
それから、私は『王子と踊り子』を観ていた時に気づいたの。劇中でマリリンが演じたキャラクターは若い王様と恋に落ちるでしょ?マリリンは女優として真実味を探求する人だったのよね。もしかしたら、彼女は年下の男性と恋愛をした経験がなかったのではないかしら。年下の男性との恋愛がどのようなものなのかを、役のために知る必要があったのかもしれないわね。
もう1つ考えたのは、目の前に居る、天真爛漫でオープンで目がキラキラしたコリンとの駆け引きを純粋に楽しんでいたのかもしれないっていうこと。マリリンは本質的に好奇心が強くて子どものような一面を持っていた女性だから、コリンほど無邪気な人を前にして、もて遊んでいたのかもしれない。彼ほど高潔で親切で優しくて寛大な人と一緒にいると、とっても良い気分になるものだしね。当時のマリリンは夫や演技コーチ、ビジネス・パートナーやローレンス・オリヴィエに見放されたと信じ込んでいて、わらにもすがりたい気分だったはず。それにコリンは特別な青年だったんだと思うの。人当たりが良くて、賢くて、騎士道精神あふれた紳士だから、彼女の寂しさを紛らわしてくれたのかもしれないわ。
でも、全ては彼というよりもマリリンの問題だったんじゃないかな。私は今作をラブストーリーとして考えたことはないの。マリリンは彼との時間を恋愛として楽しんでいたわけではないと思うわ…ちょっと答えが長かったかな(笑)

—今作でゴールデン・グローブ主演女優賞を受賞されましたが、受賞スピーチで娘のマティルダちゃんに、「6ヶ月間、ベッドタイムストーリーのお姫様をマリリンの声で読んだのに耐えてくれてありがとう」と言っていたのが印象的でした。マティルダちゃんはどのような反応をしましたか?他にも私生活でマリリンを引きずってしまうことはありましたか?
MW: 娘はマリリンの声に気づいたのよ(笑)今作に限らず映画の撮影中は、絵本の読み聞かせをする時に役の影響が出てしまうの。イギリス人の役を演じているときは、娘のベッドタイムストーリーに登場するキャラクターがみんなイギリス英語に、南部出身の役を演じている場合は南部なまりに…といった具合にね。私はどんな作品を撮影している時でも、自然に感じられるように役を自分の日常に取り入れようとするの。ベッドタイムストーリーにはいろんなキャラクターが登場して、いろんな声を出す必要があるから、最適なチャンスなのよね。だから娘のための読み聞かせの時間は、私にとって楽しい実験の時間なの。娘も今ではいろんなアクセントを上手に話せるのよ(笑)
たとえそれがどんな役であれ、撮影中は自分が演じている役のカラーが私生活にもにじみ出てくるもの。境界線が曖昧になってくるのだけれど、そのことで怖じ気づいたり心配したりすることはなくなったわ。そこから抜け出られないなんていうことはないって、今はもう分かっているから。それは仕事をする上で必然的かつ有益でもある、一時的な状況に過ぎないのよ。
—今作や『ブルーバレンタイン』など、女性の共感度が高い役が多い印象ですが、出演作はどのように選んでいるのですか?
MW: 私はかねてから身近に居そうな人物を演じることに興味があるの。地下鉄で隣に座っているような人や、高校の同級生のような人、時には自分自身のような人をね。グラマラスであったり、人より成功していたりといった、完璧に洗練された役にはもともとあまり興味がないの。観客との間に隔たりを持ちたくないのかもしれないわ。上手に説明できないけれど、観客と映画の間にガラスがあるのは嫌なの。それは条件というよりも、私のテイストの問題かもしれない。観に行く映画や読む詩集を選ぶときもそうだけれど、私は完璧に磨かれた作品ではない方が好きなの。
役選びでは自分の本来のテイストというものが自然に出てくるの。それ以外で特に条件はないわ。役選びをする上でのルールを記したリストがあるわけではなく、その瞬間に自分が魅力を感じた役、心に響くものがあった役を選ぶの。その作品を踏み台にして将来的に自分がどこへたどり着けるか、というようなことは、あまり考えないわ。ブロックを積み重ねるようには考えず、一日一日、その時に自分が感じたことを大切にしているの。
—ということは、監督や脚本ではなくキャラクター次第ということですか?
MW: 原則的には作品自体で選んでいるわ。自分自身と脚本の間に生じる反応が決め手よ。とても私的で孤独な枠の中で選んでいるの。他の要素が悪い場合もあるだろうし、それが最善の方法なのかはわからないけれどね。どのような人が参加しているかということにも、以前よりは注目するようにしているけど…でもやっぱり、そうでもないな(笑)ぜひ一緒に仕事をしてみたい監督もいるけれど、その役や作品に自分が反応しなければ引き受けられないの。少なくとも私にとっては、興味のあるものや挑戦してみたい作品に自分が本当に正直であり続ければ、ちょうど良いタイミングでしっくりくる役がいただけると信じているの。そういった作品は女優として向上させてくれると同時に、最終的に人としても私を成長させてくれる。そうね、どんな役かということは、もしかしたら私にとって最も重要な部分かもしれないわ。

—マリリン・モンローは「太く短く」生きたというイメージですが、ミシェルさんは人として、女優として、どのような生き方を目指していますか?
MW: こう言うとシンプルに聞こえるけれど、これが本音よ—— 私は幸せになりたいの。他の何よりも、自分自身のため、そして娘のために幸せな人生を歩むことに興味があるの。常にそれが頭のどこかにあるんだと思う。仕事も友情も自分自身のことも、「いかに私たちの人生を長く幸せなものにするか」という指針に基づいて決めているわ。平凡で退屈な答えに聞こえるかもしれないけれど、いつもそう考えて生きているの。本当につまらない答えよね(笑)でも本当に、私が欲しいのは普通の家庭と安全で幸せな人生だけなの!
—つまらなくないですよ!
MW: そうね、つまらなくはないわよね(笑)女優を始めてからしばらくの間は、何とかやって行けるようになることがゴールだった。そして何とかやって行けるようになると、今度は「幸せになりたい」って思うのよね。実際には複雑なことだと思うわ。「幸せ」という言葉には多くの要素が含まれるもの。でも、それが私の最大のゴールなのよ。
Photos: Tetsuro Sato
Interview + Text: Nao Machida

3月13日に開催されたジャパン・プレミアにはマリリン風の白いドレスで登場。

プレミアの翌日の記者会見は、赤いヴァレンチノのドレスにジュゼッペ・ザノッティのハイヒール。

会見の後は東京・代官山蔦屋書店で「“マリリン” ポスター回顧展」オープニングイベントに参加。
『マリリン 7日間の恋』
1956年、ローレンス・オリヴィエ監督・主演の映画『王子と踊り子』の撮影のために、ハリウッドの大スター、マリリン・モンローがイギリスに降り立った。初のプロデュース作品に意気込むマリリンだったが、彼女の演技法を受け入れないオリヴィエと対立。慣れない環境でのプレッシャーから精神的に不安定になり、夫にも見放されてしまう。孤独を抱えたモンローは、いつしか映画の第3助監督コリン・クラークに心を許すようになっていく…。

監督: サイモン・カーティス
脚本: エイドリアン・ホッジス
原作: コリン・クラーク「マリリン・モンロー 7日間の恋」
キャスト: ミシェル・ウィリアムズ、ケネス・ブラナー、エディ・レッドメイン、ほか
3月24日(土)角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー
© 2011 The Weinstein Company LLC. All Rights Reserved.
オフィシャルサイト>>
【関連ニュース】
『マリリン 7日間の恋』ミシェル・ウィリアムズ初来日、愛娘からの義援金を寄付
ゴールデン・グローブ賞 『アーティスト』が3冠、『ファミリー・ツリー』に作品賞
ミシェル・ウィリアムズ、故ヒース・レジャーとの出会いは「宇宙的」
スクリーンで観るよりも小柄でブロンドのベリーショートがチャーミングな彼女は、いまやハリウッドを代表する女優の一人であるにもかかわらず、とても気さくで地に足の着いた聡明な女性だ。元恋人の故ヒース・レジャーとの間に誕生した6歳になる愛娘マティルダちゃんの話題になると、ふと優しい母親の顔を見せたのが印象的だった。マリリン・モンローについて、役作りについて、人生について—— 初めての日本に瞳を輝かせ、すっかり気に入ったという緑茶を手に、一つ一つの質問に言葉を選びながら丁寧に答えてくれた。

—まずは初来日してくださってありがとうございます。
ミシェル・ウィリアムズ(以下、MW): こちらこそ、ありがとう。
—マリリン・モンローというと「セクシーなブロンドの美女」という表面的なイメージしかなかったのですが、今作では感情豊かで繊細な一人の女性としての一面を見ることができて、彼女にもこんな7日間があったのだな、と微笑ましく思いました。同じ女優をお仕事にされている女性として、彼女のどんなところに最も共感されましたか?
MW: 今作では思いがけない偶然がいくつかあったの。私は30歳で今作を撮影したのだけれど、マリリンは30歳のときに『王子と踊り子』を撮影したのよ。私たちが撮影を行った場所の多くが、実際にマリリンが撮影を行った場所だったし、スタジオで私が使用した楽屋は、当時マリリンが使っていた楽屋だったの。だから私たちの間には、どこか魔法のような重要な共通点がいくつかあったわ。
女優としてマリリンに共感する部分は…演技の勉強不足なところかな(笑)それに彼女ほど深いものではないにしても、不安な気持ちや恐怖心、周りの助けを必要としているところとか…うん、そういったことには少し共感したけれど、私はマリリンほど極端ではないわね。
—この映画では、マリリン・モンローがスターとしての顔と素顔のギャップに苦しむことが1つのテーマだと感じたのですが、ミシェルさん自身がそう感じるときはありますか?もしあるとすれば、どのようにして乗り越えていらっしゃいますか?
MW: マリリンが女優として生きていた時代は、今の私が生きる恵まれた時代とは大きく違っていたと思うの。当時は制限の多いスタジオのシステムの下で、素顔の自分と演者としての自分の間にギャップを作り、スター的人格を育てるように仕向けられていた時代だったわ。私はそういったギャップが小さい時代に生きているの。今の私たちは人間らしくいることを許されているどころか、できる限りそうするように勧められているのよ。道化師のように振る舞ったり、極限までギラギラに飾り立てたりする必要はないの。
つまり、今あなたの目の前に座っている私と、友人たちと一緒にいる私は、さほど変わらないというわけ。もちろん、友だちと過ごす時よりは遠慮がちだし、インタビューでは言わないこともあるかもしれないけれどね(笑)でも、一人の人としての私の目標は、自分自身をよく理解して、自分らしく表現することなの。それはこうしてあなたの前に座っている、女優としての私の目標でもあるわ。だから私の場合は、自分の中に明確な境界線を感じていないの。
そこにもっと大きなギャップがあればいいのに、って思うこともあるわ。素顔の一部を伏せておけば、たとえ人が私のことを噂していても、本当の自分は知られずに済むものね。でもそれは私の生き方ではないし、私はそうするつもりはないの。とはいえ時々、芸名があったらいいのにな、って思う。そうすればプライベートから距離を感じられるもの。特に私のことを好きではない人から意地悪を言われたときにね(笑)でも、とにかく私はマリリンとは全然違うわ。

—劇中でマリリンと7日間を過ごすコリン・クラークについて、ミシェルさんはマリリンがなぜ彼にひかれたのだとお考えですか?また、ミシェルさん自身は彼のような人をどう思いますか?
MW: その質問は何度も自問したわ。「この男の子のどこかそんなに特別だったのかしら?彼のどんなところがマリリンの心を動かしたのかしら?」ってね。私がたどり着いた答えはこうよ。もしマリリンが女王様だとしたら、敵側にスパイが必要なはず。あの状況に置かれた彼女は、自分の支持者として彼を見つけたんだと思う。
それから、私は『王子と踊り子』を観ていた時に気づいたの。劇中でマリリンが演じたキャラクターは若い王様と恋に落ちるでしょ?マリリンは女優として真実味を探求する人だったのよね。もしかしたら、彼女は年下の男性と恋愛をした経験がなかったのではないかしら。年下の男性との恋愛がどのようなものなのかを、役のために知る必要があったのかもしれないわね。
もう1つ考えたのは、目の前に居る、天真爛漫でオープンで目がキラキラしたコリンとの駆け引きを純粋に楽しんでいたのかもしれないっていうこと。マリリンは本質的に好奇心が強くて子どものような一面を持っていた女性だから、コリンほど無邪気な人を前にして、もて遊んでいたのかもしれない。彼ほど高潔で親切で優しくて寛大な人と一緒にいると、とっても良い気分になるものだしね。当時のマリリンは夫や演技コーチ、ビジネス・パートナーやローレンス・オリヴィエに見放されたと信じ込んでいて、わらにもすがりたい気分だったはず。それにコリンは特別な青年だったんだと思うの。人当たりが良くて、賢くて、騎士道精神あふれた紳士だから、彼女の寂しさを紛らわしてくれたのかもしれないわ。
でも、全ては彼というよりもマリリンの問題だったんじゃないかな。私は今作をラブストーリーとして考えたことはないの。マリリンは彼との時間を恋愛として楽しんでいたわけではないと思うわ…ちょっと答えが長かったかな(笑)

—今作でゴールデン・グローブ主演女優賞を受賞されましたが、受賞スピーチで娘のマティルダちゃんに、「6ヶ月間、ベッドタイムストーリーのお姫様をマリリンの声で読んだのに耐えてくれてありがとう」と言っていたのが印象的でした。マティルダちゃんはどのような反応をしましたか?他にも私生活でマリリンを引きずってしまうことはありましたか?
MW: 娘はマリリンの声に気づいたのよ(笑)今作に限らず映画の撮影中は、絵本の読み聞かせをする時に役の影響が出てしまうの。イギリス人の役を演じているときは、娘のベッドタイムストーリーに登場するキャラクターがみんなイギリス英語に、南部出身の役を演じている場合は南部なまりに…といった具合にね。私はどんな作品を撮影している時でも、自然に感じられるように役を自分の日常に取り入れようとするの。ベッドタイムストーリーにはいろんなキャラクターが登場して、いろんな声を出す必要があるから、最適なチャンスなのよね。だから娘のための読み聞かせの時間は、私にとって楽しい実験の時間なの。娘も今ではいろんなアクセントを上手に話せるのよ(笑)
たとえそれがどんな役であれ、撮影中は自分が演じている役のカラーが私生活にもにじみ出てくるもの。境界線が曖昧になってくるのだけれど、そのことで怖じ気づいたり心配したりすることはなくなったわ。そこから抜け出られないなんていうことはないって、今はもう分かっているから。それは仕事をする上で必然的かつ有益でもある、一時的な状況に過ぎないのよ。
—今作や『ブルーバレンタイン』など、女性の共感度が高い役が多い印象ですが、出演作はどのように選んでいるのですか?
MW: 私はかねてから身近に居そうな人物を演じることに興味があるの。地下鉄で隣に座っているような人や、高校の同級生のような人、時には自分自身のような人をね。グラマラスであったり、人より成功していたりといった、完璧に洗練された役にはもともとあまり興味がないの。観客との間に隔たりを持ちたくないのかもしれないわ。上手に説明できないけれど、観客と映画の間にガラスがあるのは嫌なの。それは条件というよりも、私のテイストの問題かもしれない。観に行く映画や読む詩集を選ぶときもそうだけれど、私は完璧に磨かれた作品ではない方が好きなの。
役選びでは自分の本来のテイストというものが自然に出てくるの。それ以外で特に条件はないわ。役選びをする上でのルールを記したリストがあるわけではなく、その瞬間に自分が魅力を感じた役、心に響くものがあった役を選ぶの。その作品を踏み台にして将来的に自分がどこへたどり着けるか、というようなことは、あまり考えないわ。ブロックを積み重ねるようには考えず、一日一日、その時に自分が感じたことを大切にしているの。
—ということは、監督や脚本ではなくキャラクター次第ということですか?
MW: 原則的には作品自体で選んでいるわ。自分自身と脚本の間に生じる反応が決め手よ。とても私的で孤独な枠の中で選んでいるの。他の要素が悪い場合もあるだろうし、それが最善の方法なのかはわからないけれどね。どのような人が参加しているかということにも、以前よりは注目するようにしているけど…でもやっぱり、そうでもないな(笑)ぜひ一緒に仕事をしてみたい監督もいるけれど、その役や作品に自分が反応しなければ引き受けられないの。少なくとも私にとっては、興味のあるものや挑戦してみたい作品に自分が本当に正直であり続ければ、ちょうど良いタイミングでしっくりくる役がいただけると信じているの。そういった作品は女優として向上させてくれると同時に、最終的に人としても私を成長させてくれる。そうね、どんな役かということは、もしかしたら私にとって最も重要な部分かもしれないわ。

—マリリン・モンローは「太く短く」生きたというイメージですが、ミシェルさんは人として、女優として、どのような生き方を目指していますか?
MW: こう言うとシンプルに聞こえるけれど、これが本音よ—— 私は幸せになりたいの。他の何よりも、自分自身のため、そして娘のために幸せな人生を歩むことに興味があるの。常にそれが頭のどこかにあるんだと思う。仕事も友情も自分自身のことも、「いかに私たちの人生を長く幸せなものにするか」という指針に基づいて決めているわ。平凡で退屈な答えに聞こえるかもしれないけれど、いつもそう考えて生きているの。本当につまらない答えよね(笑)でも本当に、私が欲しいのは普通の家庭と安全で幸せな人生だけなの!
—つまらなくないですよ!
MW: そうね、つまらなくはないわよね(笑)女優を始めてからしばらくの間は、何とかやって行けるようになることがゴールだった。そして何とかやって行けるようになると、今度は「幸せになりたい」って思うのよね。実際には複雑なことだと思うわ。「幸せ」という言葉には多くの要素が含まれるもの。でも、それが私の最大のゴールなのよ。
Photos: Tetsuro Sato
Interview + Text: Nao Machida

3月13日に開催されたジャパン・プレミアにはマリリン風の白いドレスで登場。

プレミアの翌日の記者会見は、赤いヴァレンチノのドレスにジュゼッペ・ザノッティのハイヒール。

会見の後は東京・代官山蔦屋書店で「“マリリン” ポスター回顧展」オープニングイベントに参加。
『マリリン 7日間の恋』
1956年、ローレンス・オリヴィエ監督・主演の映画『王子と踊り子』の撮影のために、ハリウッドの大スター、マリリン・モンローがイギリスに降り立った。初のプロデュース作品に意気込むマリリンだったが、彼女の演技法を受け入れないオリヴィエと対立。慣れない環境でのプレッシャーから精神的に不安定になり、夫にも見放されてしまう。孤独を抱えたモンローは、いつしか映画の第3助監督コリン・クラークに心を許すようになっていく…。

監督: サイモン・カーティス
脚本: エイドリアン・ホッジス
原作: コリン・クラーク「マリリン・モンロー 7日間の恋」
キャスト: ミシェル・ウィリアムズ、ケネス・ブラナー、エディ・レッドメイン、ほか
3月24日(土)角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー
© 2011 The Weinstein Company LLC. All Rights Reserved.
オフィシャルサイト>>
【関連ニュース】
『マリリン 7日間の恋』ミシェル・ウィリアムズ初来日、愛娘からの義援金を寄付
ゴールデン・グローブ賞 『アーティスト』が3冠、『ファミリー・ツリー』に作品賞
ミシェル・ウィリアムズ、故ヒース・レジャーとの出会いは「宇宙的」
ザ・ホラーズ 来日独占インタビュー&ライヴ写真
2012-03-14
2月に開催された「Hostess Club Weekender」の初日の夜にヘッドライナーを務めた、UK出身の5人組、ザ・ホラーズ。そのサウンドはもちろん独自のファッションにも注目が集まり、デビュー当時から超大型ニューカマーとしてロック・シーンを騒がせていた彼らも、昨夏には3枚目のアルバムをリリース。この夜は彼らの来日を心待ちにしていた大勢の日本のファンの前で圧巻のライヴ・パフォーマンスを展開した。
ステージからオーウェン・パレットの歌声が聴こえる楽屋にて、ライヴ直前に敢行した今回のインタビューに応じてくれたのは、ベースのスパイダーことリース・ウェッブ。バンドのスポークスマンかのごとく、全ての質問にたっぷりと丁寧に答えてくれた。来日の度にどんどん良くなる彼らのライヴの模様を収めた写真と一緒にどうぞ!

左から=ジョセフ(Dr)、リース(B)、ファリス(Vo)
—今日はライヴ前にお時間ありがとうございます。昨年8月の「SUMMER SONIC 2011」以来の来日ですが、元気にしていましたか?
リース・ウェッブ(以下、RW): 前回サマソニで来日してから、クリスマスまではほとんどノンストップでライヴをしていたんだ。それから2週間ほど休んで、1月にまたライヴを再開した。ライヴ、ライヴでかなり忙しい日々だったよ。でもエキサイティングで良い時間を過ごしているけれどね。
—前回はニュー・アルバム『Skying』を発表した直後の来日でしたが、新作へのファンの反応はいかがでしたか?
RW: 最高だったよ。前回はサマソニの東京公演しかやらなかったから、もっと長く日本に滞在したかったな。でもアメリカのフェスで演奏したり、ヨーロッパをツアーしたり、昨日は台湾で演奏したし、インドネシアにも行ったんだ。新作を世界中で披露できて最高だよ。みんな楽しんでくれているしね。
—前作『Primary Colours』が素晴らしい評価を得ていた後の『Skying』でしたが、制作中はプレッシャーを感じましたか?
RW: 今作は自分たちのスタジオで、自分たちでプロデュースしたから、制作を始める段階ではメンバーの誰もが素晴らしい作品にしなければというプレッシャーを感じていたと思う。でも奇妙なことに、レコーディングを始めたら自分たちだけの空間にどっぷり浸って無我夢中になった。アルバムのことだけに集中していたから、外界で起こっている他のことは何も考えなくなったんだ。それに素晴らしい曲が書けた途端に、もう大丈夫だってわかったしね。楽曲に満足できてからは自分たちの作業だけに集中して、他のことは全部忘れちゃったよ。
—初めて自分たちでプロデュースしてみて、いかがでしたか?
RW: 僕らはかねてからプロデュースに興味があって、最初の2枚のアルバムでも制作面に大きく関わっていたんだ。『Primary Colour』ではプロデューサーを務めたジェフ(・バーロウ/ポーティスヘッド)と密に作業を進めていたしね。今作は自分たちでプロデュースするのに良いタイミングだと思ったし、モチベーションもあった。それでスタジオを設立して、機材を揃えて、自分たちでレコーディングしてやりたいことをやろうと決めたんだ。最も重要なことは自分たちのアイデアを実現することだった。現時点の僕たちには他の人からのインプットは不要で、自分たち自身のゴールやアイデアを達成することが何よりも大切なんだ。ハードワークだったけど、長い目で見たらやってみて良かったよ。僕らにとって思い入れの強い、とても私的な作品が完成したからね。やりがいが感じられたよ。
—制作するにあたって、最初に全員で話し合うのですか?それともスタジオに入って自然発生的に作っていくのですか?
RW: 僕らは制作が始まるまで話し合いはしないんだ。通常はとにかく一緒に演奏してみる。自分たちのスタジオができたから、そこでとりあえずみんなで演奏してみて、アイデアを出すところがスタート地点さ。そこから膨らませていって、いろいろ実験してみて、それを後からみんなで聴いて、どのような方向性にしようとか話し合うんだ。だから最初のアイデアは一緒に演奏するところから自然発生する。そこからいろんなアイデアを追加していくんだよ。わりと変わったやり方だと思うけどね。多くのバンドはソングライターが決まっているけど、僕らの場合は常に形が変わっていくんだ。曲作りが速いメンバーもいて、1日の終わりには曲が完成していることもある。その一方で、レコーディングの最初から最後までかかる曲もある。前に進んだかと思えば後退したり、新しいアイデアをどんどん試していったりしてね。だからこそ、自分たちのスタジオを持つことが重要なんだ。そういうスタイルで作業できる場所が必要だからね。

—第3者のプロデューサーがいない状態でレコーディングして、もめたりすることはありませんでしたか?
RW: たぶんケンカもあったよ(笑)逆になかったらおかしいよね、メンバーはみんな強い意見を持っているし。常に全員が同意見というわけにはいかないんだ。でもいつも最終的には、善かれ悪しかれ、なるべきようになるものだ。だからもちろん、レコーディング中は張りつめた空気になったり、口論したりもするけれど、それって健康的な仕事の進め方だと思う。そこからアイデアが生まれる場合もあるし、何が正しい選択肢なのか集中して考えることもできるからね。
—「Still Life」をリード・シングルに選んだ理由は?
RW: 実はあれがアルバムのために最初に書いた曲だったんだ。そして素早く完成した曲でもある。アルバムの世界観をうまく表現している曲だと思ったし、アルバムとアルバムの間には常に2年くらい空くから、バンドの現状をオーディエンスに紹介する上でも良い曲だと思った。『Primary Colours』のときは「Sea Within a Sea」を最初にリリースしたんだけど、あの曲はあのアルバムをうまく表現していたと思う。「Still Life」はとてもユニークな曲だけど、単純にみんなにあの曲を聴いてほしかったんだ。今作をスタートする上ではあの曲から始めるのが良いと感じた。
—今夜は「Hostess Club Weekender」のヘッドライナーですね。
RW: 『Primary Colours』と『Skying』から、自分たちのお気に入りの楽曲を演奏する予定だよ。みんなにも楽しんでもらえると思う!
—今回のイベントのラインアップで観たいバンドは?
RW: 本当はオーウェン・パレットを観たかったんだけど、取材が続いたからほとんど観られなかった。僕らは明朝ロンドンに出発するから、明日のライヴは観られないんだよね…
—そう言えば、以前にビヨンセの「Best Thing I Never Had」をカヴァーしていましたね。
RW: BBCのRadio 1で、バンドがカヴァー・ソングを演奏するという企画だったんだ。ラジオ局の編成リストのヘヴィ・ローテーションの中から選曲しないとならなかった。あの曲が特に好きというわけではなかったんだけどね。
—すごく意外で驚きました。
RW: だよね(笑)ただ単に、あの曲は何かできそうな曲だと感じたんだ。リリック的にもね。ビヨンセの曲の大半は、ダンスであろうがポップであろうが基本はソウル・ミュージックだから、手を加えやすいんだよね。ラジオで流れている多くの曲はダンスとかヒップホップとかいじりにくいものが多いから、僕らは何かしら冒険できる楽曲を選ぼうと思ったんだ。だからあの曲を選んだんだよ。今夜のライヴではカヴァーはやらないけどね。僕らのカヴァー曲は全くもってビヨンセのオリジナル・ヴァージョンと違うものにできたから良かったよ。彼女は僕らのヴァージョンを聴いてくれたのかな?聴いてくれているといいな。

—最近はザ・ホラーズのようなロック・バンドが減ってきているような気がします。昨今の音楽シーンについてはどう思いますか?
RW: 常にエキサイティングなムーヴメントがどこかしらで起こっていると思うんだ。ただ、時によく探さないとならないだけさ。求めているものが常にテレビやラジオで流れているわけではないからね。最近は、ニュージーランド出身でイースト・ロンドン在住のコナン・モカシンというアーティストがすごく気に入っている。去年『Forever Dolphin Love』というアルバムをリリースして、とても良いんだよ。それに数年前に出てきたサンフランシスコ出身のザ・ウッデン・シップスというバンドもよく聴いている。ロンドンの新人バンド、トイも。最近シングルをリリースしたんだ。僕らも一緒によくライヴをやっているんだけど、気に入っているバンドだよ。
とても良い新しい音楽はたくさん存在するんだけど、残念なことに、多くのバンドがアンダーグラウンドからブレイクする機会を与えられていないように思う。だから聴く方がよく探さないとね。そういった意味では僕らはラッキーだと思う。自分たちが音楽的にやりたいことをやりたいようにやりながら、ある一定のラインを超えることができて、ラジオで流してもらったり、ティーン向けの雑誌で取り上げてもらったりできているんだから。それでいて、自分たちが聴いてほしいようなサウンドはキープしているんだからね。
—新作の制作は始めていますか?
RW: まだ新作に取りかかる時間がないんだけど、みんな何かしらのアイデアは浮かんでいると思う。ある特定の曲のアイデアというよりも、どのように新作を形作りたいか、という意味でね。全員が何かしらのムードやフィーリングを考えているんじゃないかな。どんな新作になるかは全く分からないけどね。でも僕自身はフィーリングが浮かんでいるし、他のみんなもそうだと思うよ。あと2ヶ月以内には制作にとりかかる時間もできると思う。スタジオが僕らを待っているからね!
—自分のスタジオがあるっていいですね。
RW: うん、すごく良いんだけど、残念なことにスタジオで過ごす時間が全然ないんだ。毎日いろんな音楽を聴きながら、もし毎日曲作りができたらどんなに素晴らしいだろうと思うんだけどね。残念ながら常に移動していて、そんな贅沢は許されないんだ。でも曲作りに集中できるのは、とてもエキサイティングなことだよ。いつかもっとスタジオで時間が過ごせるようになったら嬉しいね。
—ツアー中に曲を書くことはありますか?
RW: 個人的にはないよ。僕は他の人と一緒に曲を作る方が好きなんだ。でもトム(・カウァン/シンセサイザー)はほとんどエレクトロニック・ミュージックを作っているから、常に曲を書いているよ。ザ・ホラーズの曲じゃないとしても、誰かのリミックスを手掛けたり、個人的な曲を作ったりしているからね。僕もやることもあるけど、ライヴ演奏で仲間と一緒に作る方がエキサイティングに感じるんだ。
—日本のファンはザ・ホラーズの音楽と同じくらい、あなたたちのファッションにも興味があるようです。あなたから見て日本のファンのファッションはどう思いますか?
RW: 日本のファンのファッションは素晴らしいと思う!来日すると必ず行く原宿の古着屋があるんだ。何か良いものはないかとチェックすることにしている。僕らが行くのは古着屋がメインだよ。日本のファッションでクールだと思うのは、常にファッションが音楽と深く関わっていること。自分の好きな音楽をファッションで表現しているんだと思う。僕にとっては音楽の方がファッションより大切だけど、でも音楽はライフスタイルの一部だからね。ロカビリーからパンクまで、日本の人は音楽とファッションを強く結びつけてきたんだと思うんだ。ユースのアイデンティティという感じかな。そういう点がいいなと思っている。僕も初めて音楽にはまった時はそうだったしね。
—日本のファンはファッションもザ・ホラーズ風ですよね。ガールフレンドまでマッチしていたりして。
RW: それは嬉しいよね!最近はそういうバンドって少ないんじゃないかな。音楽史をさかのぼると、確かにファッションの面でも影響を及ぼしたバンドは多い。ジーザス&メリー・チェインやセックス・ピストルズとかね。最近そういうバンドは少ないと思うけど、僕らはかなり初期からそれを実現してきたように思うよ。
—単独ツアーや夏フェスで再来日する予定はありますか?
RW: まだ日本ではちゃんとしたツアーをしたことがないんだ。単独ライヴは数回やったけど、大阪と東京とサマソニだけだし、ぜひもっと大規模なツアーを実現してみたいと思うよ。特に日本でね。以前は無理だったかもしれないけど、今はもっと実現できるチャンスがあるんじゃないかな。
—日本のファンにメッセージをお願いします。
RW: ザ・ホラーズ全員から、こんにちは!僕らの音楽を聴いてくれてありがとう。今夜のライヴを観てくれる人もいると思うけれど、来られなかった人は次回に会おうね!



ザ・ホラーズ:

2006年、デビュー前にも関わらずNME誌の表紙を飾るなど超ド級の注目新人UKバンドとしてシーンに登場。07年のデビューアルバム『Strange House』はUKチャート37位を獲得。ポーティスヘッドのジェフ・バーロウと映像監督のクリス・カニンガムをプロデューサーに迎えた2ndアルバム『Primary Colours』はUKチャート25位を獲得。2010年の東京での単独公演はソールドアウトし、大喝采を巻き起こした。そして2011年7月にはサード・アルバム『Skying』をリリース。NME(8/10点)、UNCUT(4/5点)、MOJO(4/5点)、Q(4/5点)と軒並み高評価を得、話題となっている。
レーベルサイト>>
Photos: KNTR
Live Photos: Kazumichi Kokei
Interview + Text: Nao Machida
ステージからオーウェン・パレットの歌声が聴こえる楽屋にて、ライヴ直前に敢行した今回のインタビューに応じてくれたのは、ベースのスパイダーことリース・ウェッブ。バンドのスポークスマンかのごとく、全ての質問にたっぷりと丁寧に答えてくれた。来日の度にどんどん良くなる彼らのライヴの模様を収めた写真と一緒にどうぞ!

左から=ジョセフ(Dr)、リース(B)、ファリス(Vo)
—今日はライヴ前にお時間ありがとうございます。昨年8月の「SUMMER SONIC 2011」以来の来日ですが、元気にしていましたか?
リース・ウェッブ(以下、RW): 前回サマソニで来日してから、クリスマスまではほとんどノンストップでライヴをしていたんだ。それから2週間ほど休んで、1月にまたライヴを再開した。ライヴ、ライヴでかなり忙しい日々だったよ。でもエキサイティングで良い時間を過ごしているけれどね。
—前回はニュー・アルバム『Skying』を発表した直後の来日でしたが、新作へのファンの反応はいかがでしたか?
RW: 最高だったよ。前回はサマソニの東京公演しかやらなかったから、もっと長く日本に滞在したかったな。でもアメリカのフェスで演奏したり、ヨーロッパをツアーしたり、昨日は台湾で演奏したし、インドネシアにも行ったんだ。新作を世界中で披露できて最高だよ。みんな楽しんでくれているしね。
—前作『Primary Colours』が素晴らしい評価を得ていた後の『Skying』でしたが、制作中はプレッシャーを感じましたか?
RW: 今作は自分たちのスタジオで、自分たちでプロデュースしたから、制作を始める段階ではメンバーの誰もが素晴らしい作品にしなければというプレッシャーを感じていたと思う。でも奇妙なことに、レコーディングを始めたら自分たちだけの空間にどっぷり浸って無我夢中になった。アルバムのことだけに集中していたから、外界で起こっている他のことは何も考えなくなったんだ。それに素晴らしい曲が書けた途端に、もう大丈夫だってわかったしね。楽曲に満足できてからは自分たちの作業だけに集中して、他のことは全部忘れちゃったよ。
—初めて自分たちでプロデュースしてみて、いかがでしたか?
RW: 僕らはかねてからプロデュースに興味があって、最初の2枚のアルバムでも制作面に大きく関わっていたんだ。『Primary Colour』ではプロデューサーを務めたジェフ(・バーロウ/ポーティスヘッド)と密に作業を進めていたしね。今作は自分たちでプロデュースするのに良いタイミングだと思ったし、モチベーションもあった。それでスタジオを設立して、機材を揃えて、自分たちでレコーディングしてやりたいことをやろうと決めたんだ。最も重要なことは自分たちのアイデアを実現することだった。現時点の僕たちには他の人からのインプットは不要で、自分たち自身のゴールやアイデアを達成することが何よりも大切なんだ。ハードワークだったけど、長い目で見たらやってみて良かったよ。僕らにとって思い入れの強い、とても私的な作品が完成したからね。やりがいが感じられたよ。
—制作するにあたって、最初に全員で話し合うのですか?それともスタジオに入って自然発生的に作っていくのですか?
RW: 僕らは制作が始まるまで話し合いはしないんだ。通常はとにかく一緒に演奏してみる。自分たちのスタジオができたから、そこでとりあえずみんなで演奏してみて、アイデアを出すところがスタート地点さ。そこから膨らませていって、いろいろ実験してみて、それを後からみんなで聴いて、どのような方向性にしようとか話し合うんだ。だから最初のアイデアは一緒に演奏するところから自然発生する。そこからいろんなアイデアを追加していくんだよ。わりと変わったやり方だと思うけどね。多くのバンドはソングライターが決まっているけど、僕らの場合は常に形が変わっていくんだ。曲作りが速いメンバーもいて、1日の終わりには曲が完成していることもある。その一方で、レコーディングの最初から最後までかかる曲もある。前に進んだかと思えば後退したり、新しいアイデアをどんどん試していったりしてね。だからこそ、自分たちのスタジオを持つことが重要なんだ。そういうスタイルで作業できる場所が必要だからね。

—第3者のプロデューサーがいない状態でレコーディングして、もめたりすることはありませんでしたか?
RW: たぶんケンカもあったよ(笑)逆になかったらおかしいよね、メンバーはみんな強い意見を持っているし。常に全員が同意見というわけにはいかないんだ。でもいつも最終的には、善かれ悪しかれ、なるべきようになるものだ。だからもちろん、レコーディング中は張りつめた空気になったり、口論したりもするけれど、それって健康的な仕事の進め方だと思う。そこからアイデアが生まれる場合もあるし、何が正しい選択肢なのか集中して考えることもできるからね。
—「Still Life」をリード・シングルに選んだ理由は?
RW: 実はあれがアルバムのために最初に書いた曲だったんだ。そして素早く完成した曲でもある。アルバムの世界観をうまく表現している曲だと思ったし、アルバムとアルバムの間には常に2年くらい空くから、バンドの現状をオーディエンスに紹介する上でも良い曲だと思った。『Primary Colours』のときは「Sea Within a Sea」を最初にリリースしたんだけど、あの曲はあのアルバムをうまく表現していたと思う。「Still Life」はとてもユニークな曲だけど、単純にみんなにあの曲を聴いてほしかったんだ。今作をスタートする上ではあの曲から始めるのが良いと感じた。
—今夜は「Hostess Club Weekender」のヘッドライナーですね。
RW: 『Primary Colours』と『Skying』から、自分たちのお気に入りの楽曲を演奏する予定だよ。みんなにも楽しんでもらえると思う!
—今回のイベントのラインアップで観たいバンドは?
RW: 本当はオーウェン・パレットを観たかったんだけど、取材が続いたからほとんど観られなかった。僕らは明朝ロンドンに出発するから、明日のライヴは観られないんだよね…
—そう言えば、以前にビヨンセの「Best Thing I Never Had」をカヴァーしていましたね。
RW: BBCのRadio 1で、バンドがカヴァー・ソングを演奏するという企画だったんだ。ラジオ局の編成リストのヘヴィ・ローテーションの中から選曲しないとならなかった。あの曲が特に好きというわけではなかったんだけどね。
—すごく意外で驚きました。
RW: だよね(笑)ただ単に、あの曲は何かできそうな曲だと感じたんだ。リリック的にもね。ビヨンセの曲の大半は、ダンスであろうがポップであろうが基本はソウル・ミュージックだから、手を加えやすいんだよね。ラジオで流れている多くの曲はダンスとかヒップホップとかいじりにくいものが多いから、僕らは何かしら冒険できる楽曲を選ぼうと思ったんだ。だからあの曲を選んだんだよ。今夜のライヴではカヴァーはやらないけどね。僕らのカヴァー曲は全くもってビヨンセのオリジナル・ヴァージョンと違うものにできたから良かったよ。彼女は僕らのヴァージョンを聴いてくれたのかな?聴いてくれているといいな。

—最近はザ・ホラーズのようなロック・バンドが減ってきているような気がします。昨今の音楽シーンについてはどう思いますか?
RW: 常にエキサイティングなムーヴメントがどこかしらで起こっていると思うんだ。ただ、時によく探さないとならないだけさ。求めているものが常にテレビやラジオで流れているわけではないからね。最近は、ニュージーランド出身でイースト・ロンドン在住のコナン・モカシンというアーティストがすごく気に入っている。去年『Forever Dolphin Love』というアルバムをリリースして、とても良いんだよ。それに数年前に出てきたサンフランシスコ出身のザ・ウッデン・シップスというバンドもよく聴いている。ロンドンの新人バンド、トイも。最近シングルをリリースしたんだ。僕らも一緒によくライヴをやっているんだけど、気に入っているバンドだよ。
とても良い新しい音楽はたくさん存在するんだけど、残念なことに、多くのバンドがアンダーグラウンドからブレイクする機会を与えられていないように思う。だから聴く方がよく探さないとね。そういった意味では僕らはラッキーだと思う。自分たちが音楽的にやりたいことをやりたいようにやりながら、ある一定のラインを超えることができて、ラジオで流してもらったり、ティーン向けの雑誌で取り上げてもらったりできているんだから。それでいて、自分たちが聴いてほしいようなサウンドはキープしているんだからね。
—新作の制作は始めていますか?
RW: まだ新作に取りかかる時間がないんだけど、みんな何かしらのアイデアは浮かんでいると思う。ある特定の曲のアイデアというよりも、どのように新作を形作りたいか、という意味でね。全員が何かしらのムードやフィーリングを考えているんじゃないかな。どんな新作になるかは全く分からないけどね。でも僕自身はフィーリングが浮かんでいるし、他のみんなもそうだと思うよ。あと2ヶ月以内には制作にとりかかる時間もできると思う。スタジオが僕らを待っているからね!
—自分のスタジオがあるっていいですね。
RW: うん、すごく良いんだけど、残念なことにスタジオで過ごす時間が全然ないんだ。毎日いろんな音楽を聴きながら、もし毎日曲作りができたらどんなに素晴らしいだろうと思うんだけどね。残念ながら常に移動していて、そんな贅沢は許されないんだ。でも曲作りに集中できるのは、とてもエキサイティングなことだよ。いつかもっとスタジオで時間が過ごせるようになったら嬉しいね。
—ツアー中に曲を書くことはありますか?
RW: 個人的にはないよ。僕は他の人と一緒に曲を作る方が好きなんだ。でもトム(・カウァン/シンセサイザー)はほとんどエレクトロニック・ミュージックを作っているから、常に曲を書いているよ。ザ・ホラーズの曲じゃないとしても、誰かのリミックスを手掛けたり、個人的な曲を作ったりしているからね。僕もやることもあるけど、ライヴ演奏で仲間と一緒に作る方がエキサイティングに感じるんだ。
—日本のファンはザ・ホラーズの音楽と同じくらい、あなたたちのファッションにも興味があるようです。あなたから見て日本のファンのファッションはどう思いますか?
RW: 日本のファンのファッションは素晴らしいと思う!来日すると必ず行く原宿の古着屋があるんだ。何か良いものはないかとチェックすることにしている。僕らが行くのは古着屋がメインだよ。日本のファッションでクールだと思うのは、常にファッションが音楽と深く関わっていること。自分の好きな音楽をファッションで表現しているんだと思う。僕にとっては音楽の方がファッションより大切だけど、でも音楽はライフスタイルの一部だからね。ロカビリーからパンクまで、日本の人は音楽とファッションを強く結びつけてきたんだと思うんだ。ユースのアイデンティティという感じかな。そういう点がいいなと思っている。僕も初めて音楽にはまった時はそうだったしね。
—日本のファンはファッションもザ・ホラーズ風ですよね。ガールフレンドまでマッチしていたりして。
RW: それは嬉しいよね!最近はそういうバンドって少ないんじゃないかな。音楽史をさかのぼると、確かにファッションの面でも影響を及ぼしたバンドは多い。ジーザス&メリー・チェインやセックス・ピストルズとかね。最近そういうバンドは少ないと思うけど、僕らはかなり初期からそれを実現してきたように思うよ。
—単独ツアーや夏フェスで再来日する予定はありますか?
RW: まだ日本ではちゃんとしたツアーをしたことがないんだ。単独ライヴは数回やったけど、大阪と東京とサマソニだけだし、ぜひもっと大規模なツアーを実現してみたいと思うよ。特に日本でね。以前は無理だったかもしれないけど、今はもっと実現できるチャンスがあるんじゃないかな。
—日本のファンにメッセージをお願いします。
RW: ザ・ホラーズ全員から、こんにちは!僕らの音楽を聴いてくれてありがとう。今夜のライヴを観てくれる人もいると思うけれど、来られなかった人は次回に会おうね!



ザ・ホラーズ:

2006年、デビュー前にも関わらずNME誌の表紙を飾るなど超ド級の注目新人UKバンドとしてシーンに登場。07年のデビューアルバム『Strange House』はUKチャート37位を獲得。ポーティスヘッドのジェフ・バーロウと映像監督のクリス・カニンガムをプロデューサーに迎えた2ndアルバム『Primary Colours』はUKチャート25位を獲得。2010年の東京での単独公演はソールドアウトし、大喝采を巻き起こした。そして2011年7月にはサード・アルバム『Skying』をリリース。NME(8/10点)、UNCUT(4/5点)、MOJO(4/5点)、Q(4/5点)と軒並み高評価を得、話題となっている。
レーベルサイト>>
Photos: KNTR
Live Photos: Kazumichi Kokei
Interview + Text: Nao Machida