MTV BLOG

スパイク・ジョーンズ『her/世界でひとつの彼女』来日インタビュー後編

2014-06-27


ビースティ・ボーイズやファットボーイ・スリム、ビョークといった数々のアーティストの名作ミュージックビデオや、人気シリーズ「jackass」など、MTVでもすっかりおなじみの奇才スパイク・ジョーンズ。常に奇想天外なアイデアで観る者を驚かせる監督の最新映画『her/世界でひとつの彼女』が、6月28日(土)より全国で公開される。

映画は近未来のロサンゼルスを舞台に、AI(人工知能)型OSのサマンサと恋に落ちていく主人公セオドアの物語。これまでにない設定ながらも、普遍的な感情を繊細に描いたスパイクは、今作で第86回アカデミー賞脚本賞を受賞した。MTV Newsは4年半ぶりに来日したスパイクにインタビュー。映画の見どころや舞台裏について、たっぷりとうかがった。

インタビュー前編はこちら>>

──今作の衣装は1920年代〜30年代を参考にしたそうですが、近未来が舞台の作品で過去のファッションを採用しようと決めた理由は?

70年代に50年代のものがカムバックしたり、90年代に70年代のものがカムバックしたりするよね。でも20年代はまだカムバックしたことのない時代のように感じた。時代を決めることで、独特な世界観を作り上げることができたよ。

レトロにしようとしたわけではなく、その時代のアイデアを起用したんだ。主人公セオドアのハイウェスト・パンツにしても、当時とは違った暖かみのある赤や柔らかい素材と合わせてみた。ゴールは独自の世界観を作り上げることだったんだ。セオドアの口ひげも20年代っぽいし、赤ちゃんの名前にしたって、トレンドは繰り返すと思うんだよね。



──とても美しい今作の脚本は監督のオリジナルとのことですが、脚本家としては今後どのように活動していきたいですか?

これからも書き続けていきたい。でも、オープンな気持ちでいたいと思う。10年後に自分が何をしているかは分からないし、決めたくないんだ。未来に何が起こるかは分からないから、いつでもいろんなチャンスを発見できるようにしておきたい。

──これまで監督としてたくさんの作品を手掛けてこられましたが、脚本家としてアカデミー賞を受賞したことについてはどう感じられましたか?

僕は過去に短編を書いていたし、初めての仕事は雑誌のライターだった。ミュージックビデオやショートフィルムのトリートメントも自分で書いてきた。そういう意味では、今回の受賞は自然なことのように感じるよ。どんな賞でも受賞するって最高のことなんだけど、今回は脚本家として受賞できたことがとてもうれしかった。物書きとして、僕らはみんな、それがどれだけ大変な作業か分かっているだろう?

──孤独な仕事ですよね(笑)

うん、とてもね(笑)



──さらに監督は良い役者でもありますよね。『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の出演シーンは本当に面白かったですし、今作でも主人公がプレイするゲームに登場する、宇宙人の子ども役として声の出演をされています。役者業はお好きですか?

好きだよ。監督として、他の監督の仕事ぶりを間近で見る機会は貴重なんだ。もちろん、役を作り上げて演じるのも楽しいしね。5作品でコラボレートしてきたマーティン・スコセッシとレオナルド・ディカプリオが生み出した世界に入れてもらって、世界で最も尊敬する監督のひとりであるスコセッシの仕事を見学できるなんて、とても稀なことなんだ。

──スコセッシ監督からはどのような演技指導をされましたか?

撮影前日に衣装を着て、あの口ひげをつけて、監督に会いに行ったんだ。「僕からは何が必要ですか?」って聞いたら、(スコセッシの物まねで)「こういう感じもありだし、こういう感じでもいいし…」って話しだして、「うわ、スコセッシだ!」って思ったよ(笑)最高だった。僕よりもあの役を上手に演じていたんじゃないかな。

実は言われたことが脚本と全然違ったから、「脚本と違いますよね?」って聞いたら、「いいんだよ、脚本は気にするな」って言うんだ。「話の筋は分かっているだろう?あとは好きなこと言っていいよ」ってね。撮影当日は何テイクも撮ったんだけど、会話のほとんどがアドリブだった。毎回レオといろんな会話をして、スコセッシは側で見ていて、たまに「おばあちゃんの話をしてみたら?」とか言われたよ(笑)

──今回は4年ぶりの来日ですが、日本でインスパイアされる場所はありますか?

僕は街を歩き回るのが大好きなんだ。日本には何か独特な美学があるように思う。街のデザインやお店の在り方、ものづくりにおいても、そこには美しさがあるよね。

キャンディの包み紙でさえも、美しい贈り物のようにデザインされているだろう?今作に登場する携帯端末のデザインやインターフェイスも、そんな風に感じられるものにしたかったんだ。見た目というよりもフィーリングという意味で、日本のキャンディの包み紙とグーグル・アースの中間くらいのデザイン性を求めていたんだ。



この前も夜7時くらいに代官山を歩いていたら、とても美しかったよ。お店が並んでいて、仕事帰りに友だちと飲みに行く人々がいて、川沿いの風景があって…東京には六本木みたいなとても忙しそうなエリアもあるけど、あんな風に落ち着いたエリアもあるから興味深いね。

──ファットボーイ・スリムのミュージックビデオ「Weapon of Choice」で俳優クリストファー・ウォーケンを宙に舞わせてみたり、『マルコヴィッチの穴』でジョン・マルコヴィッチの頭の中に入ってみたりと、いつも奇想天外なアイデアを見事に映像化される監督ですが、最近お気に入りのクレイジーな妄想はありますか?

いつも妄想しているよ。今回のインタビューは楽しいけど、時にはあまり楽しめないインタビューもあるんだ。そんな時は、目の前のテーブルに火を点けて、燃え上がる炎を囲んで取材が続いて行く様子を妄想したりしてね(笑)妄想することで助けられる時もあるんだよ。

──作品毎に予想外のアイデアが炸裂しているので、『マルコヴィッチの穴』のように監督の頭に入ってみたい人は多いと思います。

いいよ。でも、きっとがっかりするんじゃないかな。「なーんだ、私と同じような不安を抱えているんだ」って思われると思う。何か面白いものが見つかったら、ぜひ教えてほしいよ(笑)



──MTVの人気シリーズ『jackass』のようないたずらにしてもそうですが、ユニークな発想はどのような時に浮かぶのですか?作品を手掛ける上で大事にしていることはありますか?

僕は自分の気持ちに誠実に、間違いは気にせず、本当に作りたいものを作ろうと思って作品を手掛けているだけなんだ。みんなと何ら変わらないと思うよ。

ちょっと恥ずかしいと思うことでも素直に表現すると、多くの場合は人とよりつながることができる。自分を見せるという勇気ある行為を通して、人はより親密になれるんじゃないかな。

Interview + Text: Nao Machida
Photos (Spike Jonze): Taro Mizutani




『her/世界でひとつの彼女』

監督・脚本・製作:スパイク・ジョーンズ
キャスト:ホアキン・フェニックス、エイミー・アダムス、ルーニー・マーラ、オリヴィア・ワイルド、スカーレット・ヨハンソン
6月28日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
Photo courtesy of Warner Bros. Pictures

オフィシャルサイト>>

13:00

スパイク・ジョーンズ『her/世界でひとつの彼女』来日インタビュー前編

2014-06-26


ビースティ・ボーイズやファットボーイ・スリム、ビョークといった数々のアーティストの名作ミュージックビデオや、人気シリーズ「jackass」など、MTVでもすっかりおなじみの奇才スパイク・ジョーンズ。常に奇想天外なアイデアで観る者を驚かせる監督の最新映画『her/世界でひとつの彼女』が、6月28日(土)より全国で公開される。

映画は近未来のロサンゼルスを舞台に、AI(人工知能)型OSのサマンサと恋に落ちていく主人公セオドアの物語。これまでにない設定ながらも、普遍的な感情を繊細に描いたスパイクは、今作で第86回アカデミー賞脚本賞を受賞した。MTV Newsは4年半ぶりに来日したスパイクにインタビュー。映画の見どころや舞台裏について、たっぷりとうかがった。



──今作には主人公セオドアとAI(人工知能)型OSのサマンサの恋愛が描かれています。声だけの相手との恋愛シーンを描く上で大事にしたことはありますか?

1人しかスクリーンに登場しない中で2人のシーンを描くことは、今作における大きなチャレンジの1つだったように思う。でも、脚本を書いたときも役者たちと話し合ったときも、僕はそれをリアルな恋愛として話すようにしていたんだ。

サマンサが身体を持っていないことにより抱くであろう自己疑念について、スカーレット(・ヨハンソン、声の出演)と話した時も、僕らは常に人間関係の映画として考え、自分たちの人生や人間関係と結びつけて考えていた。もしかしたらそういった素直さが、人と人との結びつきを描いた作品として信ぴょう性をもたらし、観る人に響いたんじゃないかな。

──セオドアとサマンサは肌を触れ合うことができません。そこには特定の悲しみや寂しさがあると思いますが、監督は彼らの孤独感をどのようにとらえていましたか?

それはその通りだと思うし、だからこそ彼らは苦しむんだ。2人はそのことについて話し合っているし、たぶん問題を抱える他のどのカップルとも同じように悩んでいるよね。

長くつきあっていてもお互いの気持ちを話し合うことをせず、相手のことを深く理解していない恋愛もあるわけで。彼らの関係には間違いなく限界や苦しみがあるわけだけど、少なくとも本当の意味でつながりを感じ、お互いをよく理解していると感じられる関係ではあるんだ。

日本の皆さんには、今作をぜひカップルで観に行ってほしいね。そうしたら、パートナーとこういった会話ができるんじゃないかな?



──ホアキン・フェニックスが演じるセオドアというキャラクターには監督の愛を感じましたし、彼の演技も素晴らしかったです。現場で演じるホアキンを見ていて、深遠な気持ちになることはありましたか?

撮影中に彼の演技が心に響いた瞬間はたくさんあったよ。今回の撮影では少人数しか部屋にいないことが多かったんだ。モニターもなくて、僕はカメラの隣でホアキンの演技を見ながらメモを取っていて、それはとても親密な空間だった。モニターがないから、そこにいるのは僕とホアキンだけで、そういう意味でも僕らは通じ合っていて、とても親密なコラボレーションになった。

──セオドアには監督自身が投影されているのかな、と感じたのですが。

セオドアだけではなく、全ての登場人物に少しずつ自分が投影されているよ。全員に共感しながら書いていたし、特定の状況を経験したことがあるかどうかは関係なく、セオドアやエイミー(セオドアの友人)、セオドアがデートした相手のことだって、僕はみんなに共感しながら書いていたんだ。

──マンションのポストの前で、エイミー(エイミー・アダムス)がセオドアに“ひざカックンされるシーンがありましたね。 

あれは僕が友だちによく仕掛けるお気に入りのいたずらなんだ(笑)君もやったことある?

──あります(笑)あのシーンから現場の楽しそうな雰囲気が伝わってきました。監督が役者を演出するにあたって気をつけていることや、キャストを集中させるための雰囲気作りで工夫していることはありますか?

どの役者もそれぞれ違うので、もちろん演技のプロセスも違う。でも最も大切なのは、何をしても間違いではないと感じてもらえる環境を作ることなんだ。僕らはある意味、役者たちにバカな真似をするように頼んでいるようなものだからね。

それが感情的なことであろうが、セクシュアルなことであろうが、彼らには失敗を恐れず、自分自身を出してもらう必要がある。だから、良い悪いをジャッジすることのない、遊び心のある雰囲気を作りたいと思っているよ。役者が何でもできると感じられるような環境をね。



──アーケイド・ファイアやオーウェン・パレットが手掛けたスコアも素晴らしかったですが、特にヤー・ヤー・ヤーズのカレン・Oが書いた劇中歌「The Moon Song」が、セオドアとサマンサの心に優しく寄り添っているようで美しかったです。曲を書く上で、カレンにはどのようなリクエストをしたのですか?

僕に言わせれば、カレンには失敗なんてありえないんだ。彼女は心で感じたことを、とても深い形で自分の作品に詰め込むことができるアーティストだからね。最初はカレンが僕のアパートに来て、一緒にいろんなアイデアを試し、そこでコード進行が決まった。それから彼女は家に帰って、この曲を書いて僕に送ってくれたんだ。コーヒーテーブルに小さなレコーダーを置いて、1時間くらいで書いたそうだよ。

カレンがアカデミー賞の歌曲賞にノミネートされた朝、電話して伝えたらとても驚いていたよ。「1時間くらいで書いた曲でノミネートされるなんて」ってね。僕は彼女に、「1時間で書いたとしても、僕らは10年前から親しい友人だし、この曲は僕らの友情を通じて、お互いをよく理解しているからこそ生まれたんじゃないかな」って伝えたよ。

もちろん、彼女には脚本も読んでもらったし、曲が流れるシーンでの登場人物の気持ちについても話してあった。でも、僕にとって今作がどんな作品なのか、このシーンがどんな意味を持つのかを、彼女がちゃんと理解していたからこそ、友人として書くことができた曲なんだと思う。(関連ニュース

──アカデミー賞授賞式でのカレンとエズラ・クーニグ(ヴァンパイア・ウィークエンド)によるパフォーマンスも美しかったです。

ありがとう!僕らは数日前からカメラマンとリハーサルをして準備していたんだ。僕は月のセットをデザインして、カレンのドレスや靴も決めて、あの瞬間を演出させてもらった。すごくうれしかったよ。それは特別な瞬間だった。



──映画ではロサンゼルスがとても輝かしく映っていましたが、舞台が東京やニューヨークだったら、結末が違ったのではないかなと感じました。舞台にロサンゼルスを選んだ理由は?

僕らは現代の便利な世の中を誇張したような世界観を作りたかったんだ。どこへ行ってもコーヒーが飲めたり、美味しいものが食べられたりと、この世の中は本当に便利だけど、それでもなお僕らは孤独を感じている。東京のようにデザイン性の高い美しい街に住んでいても、どこかで孤独を感じるんだ。

LAは本当に住みやすいし、そもそも誇張されているのが今のLAなんだと思う。ビーチもあって、天気もよくて、とても住みやすいのに孤独だっていう点で、僕はあの街が完璧な舞台になると思ったんだ。

後編に続く)

Interview + Text: Nao Machida
Photos (Spike Jonze): Taro Mizutani





『her/世界でひとつの彼女』

監督・脚本・製作:スパイク・ジョーンズ
キャスト:ホアキン・フェニックス、エイミー・アダムス、ルーニー・マーラ、オリヴィア・ワイルド、スカーレット・ヨハンソン
6月28日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
Photo courtesy of Warner Bros. Pictures

オフィシャルサイト>>

15:00

サマソニ出演決定!ザ・ホラーズが新作『Luminous』を語る

2014-05-14


UK出身のロック・バンド、ザ・ホラーズが待望のニュー・アルバム『Luminous』をリリースした。前作『Skying』は全英5位を記録し、リリース毎に成長を見せている彼らの3年ぶりの新作は、“輝く”を意味するタイトルどおり、光あふれるアップリフティングな1枚だ。MTV Newsは先日プロモーション来日したベースのリース・ウェブにインタビュー。8月には「SUMMER SONIC 2014」への出演が決定している。

—前回のインタビューは2012年2月でしたが、この2年間はいかがお過ごしでしたか?

とても忙しかったよ。2012年2月に来日した後、年末までツアーが続いたんだ。アルバム『Skying』を引っさげて、2年くらいツアーしていたんじゃないかな。それからツアーのほぼ直後に新作の制作をスタートしたんだ。

—今回は前作『Skying』から約3年ぶりの新作リリースとなりますね。

今はホッとしているよ。かなり長い道のりだったからね。3年と言うととても長く聞こえるけど、僕らは多忙でノンストップで仕事していた。移動も多かったし、ライブもたくさん行って…それにスタジオで新作の制作に多くの時間を費やしていた。最も大変だったレコードとは言わないけれど、今までで1番安堵のため息が出た作品なんじゃないかな。後半は途中でフェス・シーズンが入ったりして、3、4ヶ月レコーディングを中断しなくてはならなかったし、早く完成させたかった。ようやく完成できて僕らはハッピーだよ。エキサイティングな旅だった。

—『Skying』のツアーが2年続いたとのことですが、実際にニュー・アルバムについて考え出したのはいつ頃だったのですか?

僕らはツアー中に曲作りはしないんだ。スタジオに再集結してプレイし始める時が、アルバム制作の始まりだよ。大抵は全てまっさらな状態から、新鮮な気持ちで次のことを考えるようにしている。今回はツアーの後、2週間くらいしか休まなかったんだ。2012年末には一緒にプレイし始めていたんじゃなかったかな。

『Luminous』に収録された曲を書き始めたのは昨年の頭だね。春には2曲できて、その内の1曲が「First Day Of Spring」だった。その日がロンドンで初めて暖かかった日だったから。それに「I See You」は僕らのお気に入りで、あの曲によってその後の方向性が決まって、とても興奮したことを覚えている。

—ザ・ホラーズの曲作りのプロセスは?

どのように書き始めるかという点で、僕らの間にルールはないんだ。時にはただ一緒にプレイしたりもするけれど、今作ではまるでダンス・レコードを作るかのようなことも試みた。楽器を使ってはいたけれど、シークエンスから始めて、リズムセクションを構築して…といった感じでね。だからそこにルールはないんだよ。

リリックは曲次第なんだけど、時に音楽と同時にリリックができていくこともある。それは僕にとっては1番楽しいケースだ。今作では「I See You」や僕らのお気に入りの1つ「Change Your Mind」で、そういったことが起きた。リリックはファリス(Vo)が書いているよ。僕らに意見やアイデアを聞くこともあるけれど、基本的には全てファリスが書いているんだ。

—『Luminous』というタイトルがぴったりな、光あふれるアップリフティングなアルバムですが、何かインスピレーションがあったのですか?

僕らは人をやる気にさせ、気持ちを高めるような作品を作ることに興味があったんだ。楽曲がいかに人のスピリットを高めることができるのか、どのように人を踊らせることができるのか、というアイデアを探求したかった。僕らにとって最も大切なのは、聴いた人に何かを感じてもらうということ。それはバンドを始めた頃から大切にしていることだよ。今回はいかに音楽が人の気持ちを高めることができるのか、というアイデアに興味があって、それがインスピレーションとなった。

—聴いた人に何かを感じてもらうという点では、ザ・ホラーズの音楽は作品毎に異なる感情を引き出してくれるような気がします。

僕らは方向性について話すことはしないし、作品を通じて何を成し遂げたいかといった計画も立てない。ただ分かっているのは、自分たちが何を楽しんでいるかということ。長年を経て自分たちの強みが分かってきたし、好きな手法や楽しめるサウンドも分かっている。それは既に自分たちの一部となっていて、常に作品に含まれてくる。アイデアやフィーリングは演奏を通じて僕らに伝わってくるんだ。それを受け止められると、正しい方向に進んでいるのが分かって、そのアイデアをさらに探求しようと思える。

—『Luminous』というタイトルの由来は?

タイトルはいつも最後に決めている。アルバム制作にはものすごく労力を費やすから、それぞれの作品が最初から終わりまで旅のようなものなんだ。だから、タイトルが音楽をちゃんと表現していることが重要になってくる。本や絵のタイトルをつけるみたいな感じで、作品の中に生きているサウンドを表現できるタイトルが必要なんだ。

僕らはボードにリリックやコード進行のアイデアなんかを書くんだけど、ある日ファリスがそのボードに「Luminous」(光を出す、輝く)という言葉を書いたんだ。最初はタイトルにするつもりはなかったんだけど、自分たちの演奏している音楽から得られるフィーリングと合っていて、アルバムが完成する頃には最もよく表現しているように思えた。アルバムの音楽が光やエネルギーを発しているように感じたんだよ。それで良いタイトルだなと思った。

—今回は共同プロデューサーを迎えたそうですね。

共同プロデューサーというのが合っているのか分からないけれど、ミックスをしてもらったんだ。僕らは全ての曲作りとレコーディングを自分たちのスタジオで行って、その音源を友人のクレイグ・シルヴィーのところに持って行ったんだ。僕らが制作し、ラフミックスしたものを、彼のスタジオでミックスしてもらった。彼と仕事をするのは3作目なんだけど、ミックスを通して息を吹き込んでくれるんだ。僕らがアイデアを共有する唯一の存在だよ。でも作品の大半は、僕らのスタジオで作ったものだよ。

—サウンド面では、今作はこれまでよりもずっとエレクトロニックなサウンドが強いですね。

エレクトロニック楽器や音楽は、かねてから僕らにとってのインスピレーションだった。今回はこれまで以上に、そこにフォーカスしたんじゃないかな。結果、今までよりも踊れるサウンドになったんだ。ハウス・ミュージックや特に90年代初期のデトロイト・テクノ、ヨーロッパのエレクトロニック・サウンドなどにインスピレーションを受けたよ。人の気分を高めたり、多幸感を生み出すために、どうやって曲が作られているか、という部分にインスパイアされたように思う。ナイトクラブでDJがやろうとするようにね。全曲ではないけれど、バンドとしてそういったことを試したかったんだ。それは決して新しいアイデアではなく、プライマル・スクリームのようなバンドが試みていることだよね。僕らは自分たちの好きなジャンルやサウンドをミックスすることで表現したかったんだ。

—新しい機材は導入しましたか?

トムがモジュラーシンセサイザーを組み立てて、あれはかなりのインスピレーションになった。ときどきサウンドスケープだけあって、そこから曲を作っていったりもした。シークエンスから始めることもあったしね。

—アルバムから最初に「I See You」を公開した理由は?

曲は初期に書いたもので、僕らが最初にエキサイトできたものだったし、アルバムの方向性を示していると感じられたから。アルバムには全く違ったサウンドの楽曲もあるけど、あまりネタばれをしたくなかったし、あの曲はイントロダクションとして最高だと思った。僕らの音楽を知っている人たちにはある意味親しみのあるサウンドだし、今までと違ったサウンドは取っておきたかったんだ。

—ファンの反応はいかがでしたか?

僕らは普段、インターネットで何を言われているかはあまりチェックしないんだけど、唯一チェックするのが1曲目を公開した時なんだ。前回と今回はトムの家でラジオの生放送を一緒に聴いて、今回はツイッターやFacebookもチェックしたんだよ(笑)僕はツイッターやっていないんだけど、みんなの反応を見るのは面白かった。みんなに音楽を聴いてもらうまで、長い間待っていたわけだしね。

—「Falling Star」では、アデルやコールドプレイ、ポール・マッカートニーら数々のアーティストの作品を手掛けたポール・エプワースがプロデューサーとしてクレジットされていますね。

プロデューサーというのが正しいクレジットかは分からないけど、あの曲で僕らはいろんなボーカルのアイデアを試したんだ。でもどこか納得いかなかったんだよね。既に長時間を費やしていたから、誰かに新鮮な気持ちで聴いてほしかったんだ。それでファリスが2日間だけ、いろんなアイデアをポールと一緒に話し合ったんだよ。

5人で集中していると、時に息が詰まりそうな状況になることもある。そういう時は、その状況から1度取り出して、他の人と一緒にアイデアを話し合うことがベストなんだ。今回初めて試みたんだけど、良い選択だったと思う。それであのような曲が完成したわけだからね。

—アルバムの中で特にお気に入りの楽曲はありますか?

常に変化しているし、どの曲も好きなんだけど、現時点では「In and Out Of Sight」がお気に入りの1つだね。エレクトロニックやダンスの要素がヘヴィーだという点では、この曲が1番そうなんじゃないかな。まるでエイリアンのようなボーカルのハーモニーも気に入っているよ。どこか宇宙的なフィーリングのある曲だよね。僕に言わせれば、今作はアートワークも含め、どこか宇宙的でスペーシーなヴァイブが感じられる(笑)

—日本のファンも新曲をライブで聴くのが楽しみだと思いますが、今後来日する予定はありますか?

実はSUMMER SONICに出演するんだ。いつかツアーもしてみたいね。

—ザ・ホラーズは結成から既に10年くらい経っているんですよね?

うん、非現実的だけどね。トムは18歳になりたて だったんじゃないかな。でも今も気持ちは少しも変わらないよ。いろんなことが変わったけれどね。他のメンバーは僕よりも大人っぽいから、違った答えが返っ てくるかも(笑)でも僕自身は何も変わっていない。今こうしてここに座って、4枚目のアルバムについて話していることがとてもうれしいよ。

—最後に日本のファンにメッセージをお願いします。

ハロー(笑)サマソニで会えるのを楽しみにしているよ。新曲を聴きに来てね!


Interview + Text: Nao Machida


ザ・ホラーズ:
2006年、デビュー前にも関わらず英「NME」誌の表紙を飾るなど超ド級の注目新人UKバンドとしてシーンに登場。09年発表の2作目『Primary Colours』が全英25位を獲得。「NME」誌1位他、国内外の年間ベストを総なめにした。11年の3作目『Skying』が全英5位を獲得し、「モジョ」誌2位を獲得。12年2月に開催した第1回「Hostess Club Weekender」でヘッドライナーを務めるなど人気バンドへと成長した。



『Luminous』
1. Chasing Shadows
2. First Day Of Spring
3. So Now You Know
4. In and Out Of Sight
5. Jealous Sun
6. Falling Star
7. I See You
8. Change Your Mind
9. Mine and Yours
10. Sleepwalk
11. Phone*
12. Nocturne*
*日本盤ボーナストラック

オフィシャルサイト>>
SUMMER SONIC 2014 オフィシャルサイト>>

15:00

BLOG SEARCH

PROFILE

  • ブログの説明
    MTV NEWSのニュースプレゼンター&スタッフが、現場から最新ニュースや取材の裏話をレポート!
  • ライタープロフィール
    最新の音楽や映画情報を毎日お届けするMTV NEWSの制作スタッフです。

ENTRIES

CATEGORIES

ARCHIVES

FEEDS