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ノエル・ギャラガーやジョニー・マーも絶賛、テンプルズがデビュー作を語る

2014-02-05
ノエル・ギャラガー、ジョニー・マーらが大絶賛する英ミッドランズ出身の注目新人サイケ・ロック・バンド、テンプルズが、待望のデビュー・アルバム『Sun Structures』をリリースした。フロントマンの実家の物置部屋でレコーディングしたという今作は、低予算でいかにジャック・ニッチェ(名作曲家)のようなプロダクションに仕上げられるかを目指したといい、独特のサイケデリックなサウンドが詰まっている。

MTV Newsでは、昨年11月に開催されたライブ・イベント「Hostess Club Weekender」のバックステージにて、ジェームス・バックショー(Vo/G)とアダム・スミス(Key/G)にインタビュー。初来日ライブ後の感想を含め語ってもらった。



ー初来日おめでとうございます。2月のデビュー・アルバム発売を前に、既に日本の音楽ファンの間でも注目を集めているテンプルズですが、メンバーはどのようにして出会ったのですか?全員ケタリング出身ですよね?

ジェームス: 同じ町の出身なんだけど、知り合いではなかったんだ。でもアダムがミュージシャンだということは知っていたよ。

アダム: 僕も。お互いがミュージシャンだということは知っていたよね。

ジェームス: テンプルズを始めるきっかけとなったのは、僕とトム(ベーシスト)が作った曲をレコーディングし始めたこと。それをネットにアップしたら、2ヶ月ほどでライブのオファーが来たんだ。

―「Shelter Song」ですよね?

ジェームス: そうだよ。ライブをするためには、バンドを組む必要があった。アダムの曲は以前からオンラインで聴いて気に入ってたし、彼が僕らのバンドにぴったりだと分かっていたんだ。サム(ドラマー)とはもっと前から知り合いで、週末に一緒に飲んだりしていた。サムも僕らのドラマーとしてぴったりで、そうやってバンドを結成したんだよ。

ーケタリングはどんな町なのですか?

アダム: ロンドンから電車で北に1時間ほど行ったところにある小さい町だよ。あまり面白いことは起こらないけど、まあ良い町だ。

ジェームス: みんな進学で1度はケタリングを出たんだけど、戻ってきたんだ。全員違う学校に行っていたんだけど、ちょうど良いタイミングに戻ってきた。僕らは今もケタリングをベースに活動しているよ。

―バンド名をテンプルズにした理由は?

アダム: トムが思いついたんだよね?

ジェームス: うん、僕らはバンド名をつけるより前に、曲がたくさんできていたんだ。バンド名には映画的で、かつシンプルな名前を探していた。“シネマティック・デザート・オブ・ユース”とか、そういう長ったらしいのは嫌だったんだよね(笑)シンプルでかっこいい名前が良くて、“Temples”は字面も良かった。それに、エルサレムの城壁を描いた、僕らのお気に入りの絵画があったんだ。レコード契約がもらえるかも分からない頃、自分たちのEPのアートワークとしてその絵を使ったんだけど、ジャケットとしても良かったし、テンプルズという名前が絵を象徴しているように思えたんだよね。

―「Shelter Song」をインターネットにアップして一気にブレイクしたわけですが、あの曲はトムとジェームスが初めて書いた曲なのですか?

ジェームス: うん、他にも3曲あったよ。アルバムに収録されている「The Golden Throne」も初期の曲なんだ。「Keep In The Dark」と「The Guesser」もね。何回かライブをしていくうちに、もっとペースが早くて、バンドの実験的な一面を表現できる曲が必要だと考えたんだ。それで書いたのが「Sun Structures」で、ライブでも演奏し始めた。他の曲はそれより後に書いた曲だから、どれも新しいよ。

ーライブ活動を始めた頃は、オリジナルの曲が少なかったわけですね。

ジェームス: 4曲だけ(笑)カバー曲を練習する時間もないままライブ活動を始めちゃったから、5曲のセットで何とか時間をもたせていたんだ。今はセットリストに入れる曲の選択肢があってうれしいよ。

アダム: 本当に!

ジェームス: 1時間10分とかライブできるんだからね。

ー「Shelter Song」を公開した時は、バンドも存在していなかったということですが、今こうして日本にいるなんて想像できましたか?

ジェームス: 全然(笑)良い曲ができていたし、いつかはライブしたいとは思っていたんだ。でも、音楽が自分たちをどこへ連れて行ってくれるかは、全く想像できなかったよね。すごいことだよ。3分半の音楽が、こうして僕らをここまで連れて来たくれたんだから。

アダム: そうだね(笑)

ートムとレコーディングを始める前は、どんな仕事をしていたのですか?

ジェームス: 日本にもあるか分からないけど、僕は失業手当をもらっていたんだ。1年半ほど手当をもらって仕事を探していたんだけど、工場とかではなく、音楽関係の仕事に就きたかった。でもケタリングには音楽業界もスタジオもないから難しくてね。

ー他にもロック・バンドはいるんですか?

ジェームス: あんまりいない。シーンもとても小さいんだ。

ーデビュー・アルバムにはテンプルズの独特なサイケデリック・ロックが詰まっていますが、メンバーはどのような音楽に影響を受けてきたのですか?

アダム: 決してサイケデリックな音楽を聴いて育ったわけではないんだよね。

ジェームス: 僕らの両親でさえ、ザ・ビートルズやキンクス、ストーンズは聴いていたかもしれないけど、サイケデリックな音楽を聴いていた世代ではない。もし両親があと5歳上だったら、そういった音楽も理解できたのかもね。

アダム: うちも。僕は自分で自分の好きな音楽を開拓するしかなかった。不思議なことに、僕らは一緒に育ったわけではないのに、みんな似たような音楽が好きだったんだ。

ーサイケデリック・ミュージックはある程度大きくなってから開拓したのですか?

アダム: うん。子どもの頃はヒップホップをよく聴いていた。

ー意外ですね、ラップしていたんですか?

アダム: 子どもの頃はラップしていたよ(笑)UKのアンダーグラウンドのヒップホップが好きだったんだ。

ジェームス: 僕は自分の部屋にエルヴィスの写真を飾っていた。まだ7歳で、彼のことはよく知らなかったんだけどね。それからソングブックをもらって、「Love Me Tender」とかシンプルな曲が載っていたのを覚えている。その年のクリスマスに初めてギターをもらったんだよ。

ー7歳のクリスマスに?

ジェームス: うん、ウクレレだったけどね。それでずっと遊んでいた。その2年後にハーフサイズのギターをもらって、もらってから20分で1曲マスターしたよ。

ー初めて覚えた曲は覚えていますか?

ジェームス: 確か「If I Had A Hammer」だったと思う。初心者用のギター本を持っていたんだ。初めて覚えたコードはEmだった。

アダム: (笑)

ジェームス: 簡単だよね(笑)

ーアダムは何か楽器を習っていましたか?

アダム: 僕は何も習っていなかったよ。15歳までサッカーをやっていたんだけど、ひざを痛めてしまったんだ。それで「ギターでも買うか」って、音楽を始めた。15歳くらいから曲を書いているけど、初めて書いた曲がいまだに最高の出来だよ(笑)

ー「Shelter Song」はどのように誕生したのですか?

ジェームス: 最初に僕がリフを思いついて、それからトムが参加して、2人で一緒に基本を作っていったんだ。それにドラムのサウンドもね。モータウンっぽいリズムセクションを書いて。そこから僕の頭の中に浮かんだアイデアを出して、それをトムと一緒にまとめていった。決して長時間考え込んだわけではなく、とても早く出来上がった曲なんだ。インスピレーションは何だったんだろうな…

アダム: ラブソングだろ?

ジェームス: 歌詞は曲ができてから書いたんだ。曲に合わせて言葉を書いていった。

アダム: 良い歌詞だ。

ー「Shelter Song」をレコーディングした時点では、ジェームスとトムが全ての楽器を演奏したのですか?

ジェームス: その通り。アダムとサムが加入する前だからね。今回のアルバムは僕の実家で作ったから、レコーディングのスペースも限られていたし、2人が加入前の曲でも、そのままのサウンドで良いものは録りなおさなかった。でも次のアルバムは違う場所で作るよ。

ーHeavenly Recordingsが、あなたたちのライブ・パフォーマンスを観る前に契約したというのは本当の話ですか?

ジェームス: うん。

アダム: クレイジーだよね。

ジェームス: すごく驚いたよ。その時点では僕らの写真すら出回っていなかったし、詳細な情報もなかった。さっき話した絵を使ったアートワークしか世に出ていなかったんだよ。でもそれが逆に良くて、みんな先入観なしに音楽を聴いてくれたんだ。年齢も見た目も知らないままね。

ーもしかしたら70歳かもしれないのに。

ジェームス: そうだよね(笑)

アダム: ほんとだよね(笑)でもHeavenlyは素晴らしいレーベルで良かったよ。

ージョニー・マーが「Shelter Song」を「今年最も良い曲のひとつだ」と言ったり、ノエル・ギャラガーがテンプルズを「世界最高のニューカマーだ」と言ったりしたと話題になっていますが、こうした現状をどう思いますか?

ジェームス: 分からないな。

アダム: 彼らはクレイジーだよ(笑)

ー実際にお会いしたことはありますか?

アダム: うん、良い人たちだったよ。ジョニー・マーには、「マンチェスターでライブをすることがあったら、うちで洗濯していいよ」って言われた(笑)

ジェームス: ノエルには、「君たちのサウンドは、俺がオアシスでの20年で得ようとしたのに得られなかったサウンドだ」って。

―それはすごいですね!注目のデビュー・アルバムは2月にリリースされますが、ようやく完成してどのような気分ですか?

ジェームス: 興奮しているよ。ライブの合間をぬってレコーディングしてきたから、完成した今、ようやくライブに集中できて最高だ。もちろん、最近でも好きな時に曲作りはするけど、レコーディングのことを心配する必要はない。2014年はこのアルバムを引っさげてツアーするんだからね。

ー「Shelter Song」を書いてから、どれくらいの時間が経ったのですか?

ジェームス: あれは2012年の7月か8月だったかな。まだそんなに経っていないよ。最後に書いた曲「Fragment's Light」は、アルバムの締切りの3週間前に書いたんだ。

アダム: ほんの2ヶ月前のことさ。

ジェームズ: 「Mesmerize」も書いてから半年くらいしか経っていないしね。

ーアルバムのタイトルに『Sun Structures』を選んだ理由は?

アダム: 本当はアルバムのタイトルを『Prisms』にしようと思っていたんだ。そしたらケイティ・ペリーが『Prism』っていうアルバムをリリースしたから、ダメになっちゃったんだよ!

ジェームス: 『Prism 2』にしても良かったんだけどね(笑)でも、バンドの作品として映画的なタイトルを探していて、『Sun Structures』は好奇心をそそる言葉の組み合わせだと思ったんだよ。

―実家でレコーディングしたそうですが、すごく理解のあるお隣さんだそうですね。

ジェームス: そうなんだよ(笑)60歳くらいの庭師なんだけど、僕が生まれた頃からうちの隣に住んでいるんだ。本当に良い人で、1度も騒音について苦情を言われたことがない。「君が作っているのは音楽で、決して騒音ではないよ」って。とても優しいんだ。父親には電気代でちょっと文句を言われたけどね(笑)でも基本的には、親たちも僕らの音楽活動を応援してくれているんだ。

ーアルバムをセルフプロデュースした理由は?

アダム: その方がよりコントロールできるし、好きなだけ時間を費やせるから。それに、既に良いサウンドができていたから、高いお金を払って他のプロデューサーを雇う理由がなかったよね。

ジェームス: プロデューサーの名前のためにね。僕らは自分たちでプロデュースしたサウンドに自信を持っているんだ。

ー将来的に一緒に仕事をしてみたいプロデューサーはいますか?

アダム: ブライアン・イーノ。

ジェームス: 特にこの人っていう人は思いつかないかな。一緒に仕事をしたいプロデューサーはみんな死んでいると思う。ジャック・ニッチェとかさ。フィル・スペクターはまだ生きているけど、刑務所にいるしね。

ーデビュー・アルバムを制作する上で、バンド内でのこだわりはありましたか?

ジェームス: 新鮮味に欠けるサウンドにならないようにすること。過剰なプロデュースは避けたかったんだ。アルバムを通じて、その時点での自分たちが表現できるような一連のサウンドを作りたかった。

ー「Hostess Club Weekender」での日本での初ライブは、かなり盛り上がっていましたね。既にたくさんの日本のファンを獲得しているようでした。

ジェームス: ああ、オーディエンスは最高だったよ!すごく良かった。

アダム: 日本のファンもすごく盛り上がってくれてうれしかった。

ジェームス: プレゼントもたくさんもらったよ!イラストを描いてくれた人もいて、うれしかった。

アダム: 素晴らしかったね。

ー滞在中に日本でトライしたいことはありますか?

アダム: 今日の午後はオフだから、神社に行くつもりだよ。

ジェームス: 僕はワサビが食べたい。ワサビって日本のものだよね?イングランドにワサビ味のマメがあっておいしいから、何かワサビ味のものが食べたいんだ。

ー2013年は大きなターニングポイントになったかと思いますが、振り返ってみてどのような1年でしたか?

ジェームス: 良い年だった。

アダム: 早かったし、長くもあった。

ジェームス: 9時5時の仕事をしていたら、きっと毎日同じことの繰り返しだろう。僕らも毎日ライブをやっているわけだけど、行く先々で新しい体験が待っている。だから、あっという間のように感じるけど、たくさんの経験をして充実しているんだ。

アダム: 全体を通して最高の年だったね。

ー最後に日本のファンにメッセージをお願いします。

アダム: ありがとう。みんなのことが大好きだよ。これ以上ないほどに歓迎してくれて、素晴らしい時を過ごせたよ。

ジェームス: アリガトウ。絶対にまた来日したいよ。明日にでもね!


Interview + Text: Nao Machida


テンプルズ:
英ミッドランズ出身の4人組サイケデリック・ロックバンド。12年に発表した「Shelter Song」が反響を呼び、英「NME」誌の“ベスト・ニュー・バンド・オブ・2013”リストに選出。ノエル・ギャラガーやジョニー・マーが彼らのライブを絶賛し、ミステリー・ジェッツのオープニング・アクトにも抜擢される。アルバム・デビュー前からHostess Club Weekenderにて初来日を果たし、満員の観客を熱狂させたことも記憶に新しい。いま最も注目されるUKロックのニュー・カマー。




『Sun Structures』
1. Shelter Song
2. Sun Structures
3. The Golden Throne
4. Keep In The Dark
5. Mesmerise
6. Move With The Season
7. Colours To Life
8. A Question Isn’t Answered
9. The Guesser
10. Test Of Time
11. Sand Dance
12. Fragment’s Light
13. Shelter Song - Society Remix*
14. Mesmerise - Time and Space Machine Remix*

*日本盤ボーナストラック

オフィシャルサイト(英語サイト)>>

15:00

リトル・バーリー、ニュー・アルバム『Shadow』を語る

2013-12-25
ここ日本でも多くのファンを持つ英ロック・バンド、リトル・バーリーが、約3年ぶりとなるニュー・アルバム『Shadow』をリリースした。前作に引き続き、プロデューサーにエドウィン・コリンズを迎えて制作された新作は、これまでよりもダークでムーディなサウンドが印象的だ。MTV Newsでは、先日プライマル・スクリームのギタリストとして来日した、フロントマンのバーリー・バドガンにインタビュー。待望の新作の制作秘話をじっくりと語ってもらった。



—3年ぶりのニュー・アルバムの完成おめでとうございます。日本のファンも楽しみにしていたと思います。

今年は僕がプライマル・スクリームのツアーで忙しかったから、曲作りやレコーディングの時間を設ける必要があった。ライブの合間の時間をできる限り使って曲を書いていたよ。

—別のバンドで演奏しながら自分のバンドの曲を作るというのは、簡単なことではないですよね。

でもプライマル・スクリームでは曲を書いているわけではないからね。プライマルではギターの演奏だけに集中しているけど、リトル・バーリーでは曲作りからアートワークまで、あらゆる側面を考える必要がある。どのように自分たちの作品を表現するかを考えるんだよ。

今回はレコーディングの時間が限られていたから、スタジオ入りするまでに全て準備が整っているよう、リハーサルを入念に行った。16曲のレコーディングとミックスを18日間で行ったんだ。

—すごいですね。実際の曲作りはいつから始めていたのですか?

2年くらい前かな。ボビー(・ギレスピー)たちとプライマルのツアーをまわっていて、とても忙しかったんだ。だから少しでも時間があったら曲を書いていた。友人がスタジオを持っていて、毎日使っているわけではないからって、ライブルームの鍵を貸してくれたんだ。僕はそこに古いカセットマシンを持参して通っていた。

—カセットマシンを使っていたのですか?

4トラックのレコーダーを使っているんだ。音が良いからね。スタジオに行ってデモを作っていた。ドアを閉めれば外界から遮断されて、集中できてよかったよ。

—ロンドンのスタジオですか?

うん、家から近くて便利だよ。キャスター付きの小さなスーツケースにカセットマシンと紙とマイクとヘッドフォンを詰めて、ギターを背負って、スタジオに歩いて行くんだ。家から15分か20分くらい、スーツケースを転がして歩くのさ。そこで1日中作業して、終わったら家に歩いて帰っていた。曲作りの大半はそんな感じだったよ。

—曲は全て自分で書いているのですか?

僕が始めることが多いね。デモを作って、ボーカルを入れて、それをヴァージルとルイスに聴かせるんだ。そこから3人で作業を開始する。曲作りの時間が限られている時は、リハーサルの時点で何かしら形になったアイデアがあった方がいい。説明していたら時間がかかってしまうから、デモを聴かせた方が早いんだよね。僕がアイデアを用意して、彼らと一緒にアレンジを変えてみたり、他のアイデアを試してみたりするんだ。

—そして今作は、ヴァージルを迎えて2作目のアルバムとなりますね。

ああ、ヴァージルは2枚のアルバムに参加した初めてのドラマーなんだ。バンドを結成して10年以上が経つ…というか、最初はルイスもいなくてバンドではなかったんだ。ファースト・シングルは自分だけで作ったんだよ。当時の姉の彼氏がドラムを演奏してくれて、ベースは自分で弾いた。それから1人目のドラマーのウェインと出会って、ロンドンに引越してルイスと出会った。それでようやくバンドになったんだ。だからヴァージルは2枚のアルバムに参加した最初のドラマーなんだ!ある意味、画期的な出来事だよ。呪いを解いてくれた(笑)

—今のラインアップはライブでの息もぴったりですよね。

ヴァージルが加入してから、バンドのアイデンティティが安定したように思う。ライブもそれまでよりたくさんやっているし、リハーサルもたくさんやっている。ヴァージルのおかげで落ち着いたよ。ようやくバンドがあるべき姿になれたっていうか。

—ヴァージルのお父さん(註:イエスのギタリスト、スティーヴ・ハウ)の正体を最初は知らなかったって本当ですか?

うん、ヴァージルは何も言っていなくて、だいぶ経ってから言われた。ルイスがヴァージルの演奏をライブで観て、「良いドラマーを見つけた」って言ったのがきっかけで出会ったんだ。それからヴァージルが僕らのライブを観に来て、僕らのファンで、レコードも持っているって言われて友だちになった。ある時、ライブでドラマーが必要だったからヴァージルにお願いして、それからずっと一緒にやっているんだよ。ある意味、運命的だった。お父さんにも2度ほど会ったけど、とても良い人だったよ。

—アルバムに話が戻りますが、リトル・バーリーは作品毎に新たな一面を見せてくれますね。今作はこれまでよりもダークで、ストレートなロックサウンドという印象を受けました。

今作ではもっとムードを出したかったんだ。インスピレーションの1つは映画音楽なんだよ。いつか映画音楽を作ることができたらいいなと思っていて、でも映画がないから(笑)、だったら映像に合うような音楽を作ってみようと思った。それが1つのアイデアだった。

—何か特定の映画や映像をイメージしていましたか?

特にはないんだけど、いろんなサウンドトラックにインスパイアされたよ。マカロニウェスタンでさえ、サントラにはクールなギターサウンドが入っていたりするよね。あとはずっと前からファンだったカン(ドイツのロック・バンド)について話したこともインスピレーションになった。前作は50年代のロックンロールっていう感じだったけど、今作はもう少しダークで、ちょっとサイケデリックな作品にしたかったんだ。とはいえ、これまで通りギターありきでね。ギターでさまざまなサウンドを試してみたかった。それが今作のアイデアだよ。

—ファズペダルを使用した「Fuzz Bomb」もそうですよね。

そうそう。あの曲のアイデアはかなり前から温めていた。それは非常にシンプルな、まるでシンプルなヒップホップのビートに、ストゥージズ風のギターサウンドを加えたようなアイデアだったんだ。友だちがあのサウンドのためにペダルを作ってくれた。

—ファズを使用した感想は?

基本的にはファズとワウワウを同時に使ったんだ。友だちでザ・ダットサンズのメンバーでもあるクリスチャンが、2つのペダルをボックスに組み立ててくれたんだよ。アイデアはかなり前からあって、ヴァージルとデモを作ってあったんだけど、歌詞がなかったんだ。ようやく歌詞ができて、この曲がアルバムで最初にデモを作った曲になった。

—アルバムをよりダークなサウンドにしたいというのは、意識的なものだったのですか?

今年の1月にブライアン・ジョーンズタウン・マサカー(註:米サンフランシスコ出身のサイケデリック・ロック・バンド)のアントン・ニューコムとセッションしたんだ。彼はベルリンにスタジオを所有していて、フランスのバンドとのセッションに僕を招待してくれた。僕らは面白いインストの音楽をいくらか作ったんだよ。ダークでムーディなサウンドで、彼らとのセッションにとても刺激を受けた。

プライマル・スクリームも含め、他のバンドと一緒に仕事をすることで学ぶことは多いですか?

うん、すごく多いよ。バンドごとに異なるアプローチがあるし、曲作りの方法も違うからね。プライマル・スクリームからはたくさんの影響を受けた。サウンドが違っても学ぶことは多いんだ。他のバンドと関わることで、自分のバンドを新鮮な角度から見ることができる。物の見方を変えるって、健全なことだよ。

—アルバムのタイトルに『Shadow』を選んだ理由は?ダークなサウンドにも関係していますか?

面白いことに、アルバムのタイトルの多くはルイスが思いつくんだ。ジャケットにした時のバランスやロゴを考えて、『Shadow』がいいんじゃないかって。僕も良いタイトルだと思った。それに収録曲「Shadow」は、今作をよく表しているユニークなサウンドだしね。あの曲だけ別のスタジオでレコーディングしたんだ。あのユニークなサウンドは、大きな部屋でレコーディングした結果なんだよ。部屋の四隅にマイクを設置して録音して、あのような雰囲気のあるサウンドが生まれたんだ。

—レコーディングの時期は?

レコーディングは8月に行った。プライマル・スクリームのフェス出演があったから忙しくて、レコーディングが可能で、スタジオが空いているのが、その時期だけだったんだ。だからとにかくその時期にやる必要があった。そしたらプライマル・スクリームの追加公演が決まって、スタジオ入りが数日遅れてしまった。実際のレコーディングでは、ルイスとヴァージルはそれぞれのパートを2日間で終わらせたんだよ。ギターに2日、ボーカルに2日、パーカッションに1日を費やして、それからミックスを始めた。

—前作に続き、今作でもエドウィン・コリンズを共同プロデューサーとして迎えていますね。

レコーディングにかけられる時間が限られていたし、素晴らしいスタジオだということも分かっていたし、エドウィンとエンジニアのセンスも信用していたし、彼らは素晴らしい機材を持っているからね。それに、以前にも一緒に仕事をしていたから、そこまで細かく説明しなくても理解してもらえるんだ。ラフなデモを聴いてもらって、「こういうサウンドを考えている」って伝えるだけで、彼らはすぐに理解してくれるんだよ。

—エドウィン・コリンズはベテラン・ミュージシャンでもありますが、プロデューサーとして一緒に仕事をするとどのような人なのですか?

とても楽しい人だよ!スタジオでは笑いが絶えないんだ。エドウィン自身もすごく面白いし、エンジニアのセスも同じくらい面白くてね。2人揃うとさらに面白くて、まるでお笑いコンビみたいだよ(笑)あの2人がいると、僕らはいつも爆笑さ。いつもバカなことばかり言っているよ。

でも、楽しいだけではなくて、彼らは素晴らしい耳の持ち主なんだ。彼らはあのスタジオを20年くらい使っているから、何から何まで完璧に理解しているしね。素晴らしいプロデューサーとエンジニアだよ。エドウィンは僕らのために本当によくしてくれて、彼がいなかったら今の僕はいないよ。

—18日という短期間で行ったレコーディングとのことですが、振り返ってみていかがでしたか?

前作『King of the Waves』を作った時は、細かいところまで全てを完璧にしようと思っていた。でも気づいたんだ。もしそこに良いスピリットがあれば、それはそのままにして、次に進んだ方がいいんだよね。人は常に「もっと良く出来るはず」と思いがちで、1つのことに1日を費やすこともある。でも今作では、そのような贅沢はできなかった。だから、今作の大半は1テイク目か2テイク目の録音なんだよ。

—確かにものすごくライブ感のある作品ですよね。

そうだね。それに前作はヴァージルが参加した初めてのアルバムだったけど、前作から今作までに一緒に演奏して、レコーディングして、お互いをよく知ることができた。それによって、バンドのコアがより力強くなったように思う。だからこそ、今作には僕らのパフォーマンスを詰め込むことができたんだ。曲作りの段階でライブのことを考えることができたから、サウンドにより深みが生まれたように思う。

—実際に完成したアルバムを聴いてみて、どう感じましたか?

満足だよ。常に「もっとこうすればよかった」とか考えるものだけど、前に進まなければならないとね。さもなければ、いつまでも完成しなかったガンズ・アンド・ローゼスの『Chinese Democracy』のようなことになってしまうよ。僕らはアルバムに1700万ドルとか費やす余裕はないからさ(笑)スピリットとサウンド、それに曲のメッセージに確信があれば、それでいいんだ。今作はこれまでにない早さで完成したよ。その瞬間のエナジーやスピリットを大切にしたんだ。それが今作から学んだことでもあり、今後もそのようなアプローチを取り入れたいと思っている。

—日本のファンにおすすめしたい、特に気に入っている曲はありますか?

それぞれの曲を違った理由で気に入っているけれど、「Eyes Were Young」が特に好きかな。1番ライブ感を収めることができたように感じるから。「Shadow」も大切な曲だよ。あの曲でのルイスとヴァージルの演奏は最高だと思う。でもどの曲も気に入っているよ。

—日本にもリトル・バーリーのファンはたくさんいますが、日本の印象は?

みんな優しいし、ご飯も美味しいよね。もう13回か14回は来日していると思う。音楽を仕事にしていなかったら来日できなかったと思うから、とてもうれしいよ。ストーン・ローゼスが初来日した時の話を読んで、ずっと来てみたかったんだ。いつかはもっと日本の文化や歴史を知りたいと思っているよ。

—日本での1番の思い出は?

東日本大震災の1ヶ月後に来日した時のことは忘れられないよ。不安だったし、来日するかどうか迷ったけど、来て良かった。日本のファンを少しでも元気づけたかったんだ。オーディエンスのスピリットも感じられたし、パワフルな体験だった。日本には良い思い出がいっぱいあるよ。

—今回はプライマル・スクリームとしての来日ですね。バンドのメンバーと日本で遊びに行ったりしますか?

メンバーが多いから、同じ時間にみんなが起きているとは限らないんだよね(笑)でもギターショップに行ったり、レコードを買いに行ったりするよ。

—これまでにポール・ウェラーやモリッシーなど、多くのアーティストと共演していますね。

みんなからモリッシーの印象を聞かれるんだけど、彼は内に秘めたタイプの人だから、あまり知らないんだ(笑)クールな物静かな人だよ。でもとても良い人で、彼のおかげで大きな会場で初めて演奏することができた。

—個人的に人生で最も影響を受けたアルバムは?

ストーン・ローゼスのファースト・アルバムかな。僕には音楽好きな姉がいて、姉の持っていたあのアルバムを聴いて、サッカーではなくてギターがやりたいって思ったんだ。サッカーは得意じゃなかったしね。それで15歳くらいでギターを始めて、人生が変わったんだ。今でもあのアルバムはよく聴くよ。

今年はパリでストーン・ローゼスのサポートをすることができたんだ。音楽を始めたきっかけとなったバンドだから、僕にとっては大事件だった。さらにその1週間後にプライマル・スクリームのグラスゴー公演があって、姉が観に来たんだ。そこで姉をストーン・ローゼスに会わせることができた。姉はレニと奥さんと楽しそうに話していて、それが僕にとってのハイライトにもなった。姉がいなかったら、あのレコードには出会っていないし、僕は今ここにいないからね。

—1番好きなギタリストは?

僕の中で“ビッグ4”と呼んでいるんだけど、ジョン・スクワイア、ジョニー・マー、J・マスシス、ジミ・ヘンドリックス。全員イニシャルがJなんだよ。

—日本のファンにメッセージをお願いします。

今作を引っさげて、必ず日本でライブをしたいと思っているよ。長年応援してくれて本当にありがとう。ニュー・アルバムを楽しんでね。クリスマス・プレゼントにも最適だよ(笑)


Interview + Text: Nao Machida


リトル・バーリー:
バーリー・カドガン(Vo,G)、ルイス・ワートン(B)、ヴァージル・ハウ(Dr)の3人組英ロックバンド。2005年、デビュー・アルバム『We Are Little Barrie』で無名の新人から一躍有力アーティストにまで一気に上り詰め、翌年のセカンド・アルバム『Stand Your Grund』、10年のサード・アルバム『King of the Waves』でその地位を確固たるものにした。「SUMMER SONIC 06」ではビーチ&アクア・ステージでトリを務めた。バーリーはプライマル・スクリームやモリッシーのバックギタリストとしても活躍し、ポール・ウェラーやケミカル・ブラザーズのレコーディングにも参加するなど人気ギタリストとしての顔を持つ。


『Shadow』
1. Bonneville
2. Fuzzbomb
3. Sworn In
4. Stop or Die
5. Deselekt
6. Pauline
7. It Don't Count
8. Everything You Want
9. Realise
10. Eyes Were Young
11. Black Mind *
12. Shadow
13. Clone 24 *
14. Fuzz No 6 *
* ボーナストラック

日本オフィシャルサイト>>


18:00

話題のエレクトロ・ポップ・バンド、チャーチズがデビュー・アルバムを語る

2013-09-30
スコットランド・グラスゴー出身の新人エレクトロ・ポップ・バンド、チャーチズ。8月に開催された「SUMMER SONIC 2013」では、アルバム発表前にもかかわらず多くのファンが詰めかけたことが話題となった3人組が、ついにデビュー・アルバム『The Bones of What You Believe』をリリースした。MTV Newsでは、サマソニで来日したバンドからローレン・メイベリー(Vo)とイアン・クック(Key/B/Vo)にインタビュー。バンド誕生秘話や待望のデビュー・アルバムについて、じっくりと語ってもらった。



—日本へようこそ。今回が初来日だそうすね。

ローレン: ええ、3人とも初来日なの。ずっと来てみたかったから、すごくワクワクしているわ。音楽活動で来日することができるなんて、クールだよね。

イアン: うん。

—日本の第一印象はいかがですか?

イアン: アメイジングだよ。昨日到着したばかりで、まだ渋谷周辺しか行っていないけど、とてもきれいな街で感心している。道ばたにゴミも落ちていないし、とても清潔でモダンな素晴らしい街のようだね。

ローレン: 東京の街は映画や写真で観たことがあったの。実際に来てみると、個性たっぷりの街だと感じるわ。それは写真では伝わらなくて、実際に来てみて分かったことよ。

—少しは観光できましたか?

ローレン: 昨夜はラーメン屋に行って、それからゲームセンターに行って卓球をしたの。今日は取材が終わったらビデオゲーム屋に行きたいんでしょ?

イアン: うん。秋葉原で買い物するんだ。秋葉原はビデオゲーム・ジャンキーのメッカって聞いているよ(笑)

ローレン: 私は昨日猫カフェに行ったら閉まっていたから、今日もう1度行ってみようと思っているわ。サマソニでは大阪にも行くんだけど、卓球のボールみたいなスナックがあるって聞いたの。

—タコ焼きですか?

ローレン: それ!ぜひ食べてみたいわ。中に何が入っているの?

—タコです(笑)

イアン: 名前に“タコ”って入っているじゃないか(笑)僕は大阪のピザみたいなものも食べたいんだ。

—お好み焼きですか?

イアン: それかも。

ローレン: いろんな街に行って、ローカルな食べ物にトライするのは楽しいよね。

—初来日ということで、まずはバックグラウンドについてお伺いします。メンバーは3人ともグラスゴー出身ですか?

2人: うん。

—チャーチズはいつ頃に結成したのですか?

イアン: マーティンと僕は10年くらい前からの友だちなんだ。別のバンドで活動していたんだけど、それまでやっていたことに飽きて、何か違うことがしたくなった。そして2011年9月にスタジオ入りして、いろんなアイデアで遊び始めたんだ。ちょうど同じ頃、僕はローレンの所属していたブルー・スカイ・アーカイヴスっていうバンドのEPをプロデュースしていた。彼女の声がすごく気に入ったからマーティンに聴かせて、僕らは彼女にスタジオに来てもらって、それまでに作ったものを聴いてもらうことにしたんだ。試しに少し歌ってもらったところ、3人の間には特別な何かがあるっていうことに気づいた。それで一緒に曲作りを始め、最終的にバンドになった。最初は曲作りのプロジェクトとして始めたんだけど、だんだんやっていくうちに、バンドとしてどこまで行けるか試してみようっていうことになった。

ローレン: まあまあ順調に進んでいるよね(笑)まさか音楽を仕事にする日が来るなんて、思ってもいなかったわ。たとえ疲れていて、朝早い飛行機に乗るために3時起きでも、“でも、この状況って最高じゃん”って思うの。

イアン: (笑)

ローレン: 人は自分がどれだけラッキーか忘れがちだけど、大好きなことで東京に来られるなんて本当に最高だよね。

—チャーチズをスタートするまでは、どのような仕事をしていたのですか?

イアン: 僕は大学を卒業してから、ずっと音楽に携わってきた。バンド活動はお金にはならなかったけどね(笑)やらなければならないことではなく、自分がやりたいと思うことを仕事にしたかったから、映画やテレビ、CMの音楽を手掛けていたよ。それにプロデュースやミックスもしていた。常に音楽が仕事ではあったけど、バンド活動が職業になったのは今回が初めてだよ。すごく良い気分だ(笑)

—ローレンはジャーナリストだったそうですね?

ローレン: そうなの。大学で法律の学士号を取った後、大学院でジャーナリズムの勉強をしたわ。卒業後、数年間はフリーランスのジャーナリストとして活動していた。ほんの数ヶ月前までね。音楽活動をしながらするのにも良い仕事だったの。クリエイティブでありながら時間の自由がきくしね。

—どのようなジャンルの記事を書いていたのですか?

ローレン: アートやカルチャーよ。バンドやプロデューサーをインタビューしたりしていたわ。

—テーブルのこちら側に居たわけですね。

ローレン: そういうこと(笑)今こうしてこちら側に座っているのは妙な気分。とても奇妙だけど、興味深いわ。記者によって聞くことも考え方も違うし、正直に書く人もそうではない人もいるしね。

—今でも書いているんですか?

ローレン: ときどきウェブサイトに書いているわ。地元の友だちのサイトを手伝っているの。女性向けのサイトで、ラジオ番組やPodcastもやっているのよ。前回帰った時も2日しかいなかったんだけど、急いでミーティングしてPodcastを作ったわ。地元に帰ると、みんなが普通の人として接してくれるのがうれしいの。私はいつも10分遅刻する人なんだけど、今回のミーティングも10分遅れちゃって、友だちに「絶対に遅れると思った!」って言われたわ(笑)いつまでも昔のままのマヌケな自分として接してくれるっていいよね。

—サイトの名前は?

ローレン: TYCIだよ。アドレスはtyci.org.uk。私の大事なベビーなんだ。

—イアンはチャーチズを始めるまで、どのような音楽をプレイしていたのですか?

イアン: 3人に共通して言えることなんだけど、ギターベースのインディ・ロック・バンドに所属していたんだ。

—他のバンドの活動は今でも続けていますか?

ローレン: 今はライブ活動はしていないわ。私がチャーチズで忙しいから。でもブルー・スカイ・アーカイヴスはみんな仲良くて、チャーチズの活動も応援してくれているの。私ともう1人のシンガーのポールは、お互いにデモを送り合ったりしているわ。

—チャーチズをスタートした時に描いていたイメージや方向性は?

イアン: このプロジェクトは特に明確なビジョンを掲げずにスタートしたんだ。唯一の方向性は、方向性がないということだったと思う(笑)ジャンルによっては、楽曲はこのくらいの長さで、ギターソロはダメで…とか、暗黙のルールが定着しているよね。僕らはそういったルールを全部投げ捨てて、自然に書けたものを曲にすることを大切にした。良いソングライティングと強いメロディーが、このバンドにとって最も大切だったことだよ。最初に聴いた時に人々を夢中にさせられるのは、そういった要素だと思うからね。中には4、5回聴いて夢中にさせるバンドもいるけれど、僕らは最初から聴く人の心をつかみたかった。それと同時に、繰り返し聴いても興味深いように、いろんな要素が詰まった作品にしたんだよ。

—何度も聞かれていると思いますが、なぜチャーチズ(Chvrches)というバンド名にしたのですか?

ローレン: バンド名についてはずっと話し合っていて、ながーいリストがあったわ。でも最終的に言葉の持つヴァイブが気に入ったのと、視覚的なイメージがすぐに思いつくような力強さがあったから、チャーチズに決めたの。選んだ理由は宗教的でもアンチ宗教的でもなく、その名前の奥深さと、視覚的に形にした時の姿なのよ。アートワークは全て友人のエイミー・バロウズが手掛けているの。ロゴも全てのジャケットも彼女の作品よ。スペルに「V」が入っているのは彼女の責任なの。なぜ「Churches」ではなく「Chvrches」なのかっていつも聞かれるんだけど、彼女がロゴを作った時に使っていたフォントのせいなのよ。

—チャーチズのスペルは、ロゴのデザインができてから決まったのですか?

イアン: 実はそうなんだ。

ローレン: 「Churches」より「Chvrches」の方が検索に引っかかりやすいし、結果的にとても良かったわ。

—インターネットで「Lies」を発表してから大きな注目を集めたそうですが、アップしたのはいつ頃だったのですか?

イアン: 「Neon Gold」っていうブログにアップしたんだ。2012年に作った曲だよ。

ローレン: バンドは2011年9月にスタートしたから、まだ2年しか経っていないの。何年も時間を費やして計画しても何も起こらないこともあるし、分からないものよね。私たちはたまたま運良くみんなに注目してもらえただけ。とてもラッキーだったわ。

イアン: 運の力も大きいし、良い場所に良いタイミングで居ることが大事だって聞くよね。でも僕は、良い場所になるべく長い時間居ることが大事だと思う。僕らは長年に渡って音楽に携わり、それぞれがバンド活動をしてきたわけで、ようやくここへ来て良い感じに物事が進んだんだよ。

ローレン: レコード会社やマーケティング戦略はなく、自分たちでインターネットにアップしたのも良かったと思っているの。そこには世界征服を狙うための戦略的で邪悪なプランはなかったわ(笑)

イアン: 実際にそんなプランがあったらよかったけどね(笑)「Lies」をネットにアップした時は、様子を伺いたかっただけなんだ。誰か1人でも聴いてくれるかな、と思って。でもアップした日にメールがどんどん届いた。「うわ、すごいことになっているな」って感じだったよ。それで別の曲をアップしたら、さらなる反応が届いた。全く予測していなかったし、とてもありがたく思っているよ。

—今年3月に米テキサス州で行われた「SXSW」でのライブは、大きな話題となっていましたね

ローレン: あれはクレイジーだったわ。でも私たちにとって、良い足がかりになったんじゃないかな。今はひたすらライブをして、アルバムが出るのを待っているの。

—そういった全てのことが、デビュー・アルバムがリリースされる前に起こったなんて信じられませんね。

ローレン: クレイジーだけど、それがインターネットの持つパワーなんじゃないかな。今はレコード会社も決まって、とても理解ある人々で感謝しているわ。でも、みんながオンラインで私たちのことを話題にしてくれなかったら、レーベルが私たちに興味を持つことはなかったわ。ブログにアップしたら、それを聴いた人が友だちに広めてくれて、それ以上にパワフルなことってないと思う。昔の音楽業界とは違って、一般の人たちがいろんなものを聴いて、その中から何がクールかを決めているのよ。たとえば「Neon Gold」のようなブログは、たった2人でスタートしたんですって。彼らはひたすら書き続けて、今ではみんなが彼らの意見を尊重しているわ。それってすごくクールなことだと思う。

—あのデペッシュ・モードとツアーもまわったそうですね。

イアン: あれは信じられなかった。昔から好きだったバンドだし、『Violator』は僕にとってものすごく重要なアルバムなんだ。そんな彼らとツアーをまわるなんて、「オーマイガッド、これ現実?」って感じだったよ。デペッシュ・モードは今でも観客に全てを捧げようとする情熱的なバンドなんだ。スタジアムいっぱいの5、6万人の観客を前に、ちゃんとコミュニケーションをとっているんだよ。それをできる人はこの世に少ししかいないと思う。それに毎晩ライブで大好きな曲を聴けたのも良かった。

—チャーチズのエレクトロ・ポップはとても中毒性がありますが、2人はどのような音楽に影響を受けてきましたか?

ローレン: 3人とも音楽的に共通点が多いんだけど、それと同時に、ユニークなサウンドを生み出す上で十分な違いもあるの。みんなコクトー・ツインズやザ・キュアーとか、もっとポップなところではホイットニー・ヒューストンやシンディ・ローパーなんかが好きよね。マーティンはヒップホップやR&Bも大好きで、それは私たちの楽曲のビートに影響していると思うの。そういった全ての影響が作品に反映されているんじゃないかな。

イアン: それに、特定のミュージシャンの音に似過ぎないようにすることも大切だよね。影響を受けた音楽をうまくサウンドに反映して、新しい作品として認識されるのは、新人バンドにとって難しいことだと思う。

—9月にはようやくアルバム『The Bones of What You Believe』がリリースされるわけですが、タイトルに込められた意味は?

ローレン: 「Strong Hand」という楽曲のリリックの一部をタイトルにしたの。3人ともリリックとして気に入っていたのだけど、文脈なくタイトルとして使うと違った意味が生まれるというところも気に入ったわ。私にとっては、このアルバムにたくさんの労力や時間、情熱を費やしてきたわけで、このアルバムこそが自分が信じてることの骨子(bones)なんだって思うの。

—アルバムには「Lies」をはじめとした既におなじみの楽曲も収録されていますね。

イアン: 最終的にどの曲を収録すべきか、僕らはたくさんの時間を費やして考えたんだ。収録曲を決めたら、今度は曲順を考えた。陳腐に聴こえるかもしれないけど、最初から最後まで通して聴くことで、1つの体験を生み出したかったんだ。ある曲が好きだからリピートで聴くのではなく、1枚を通して体験してほしいんだよ。

—アルバムを完成するまでにどのくらいの時間がかかりましたか?

イアン: 曲作りは2011年10月にスタートしたんだ。それで今年の…いつ頃だっけ?

ローレン: 4月か5月くらいまで常に書いていたわ。最後に書いたのは「By the Throat」。

イアン: 君のお気に入りでしょ?

ローレン: 最終的にお気に入りになったわ。最後に書いた曲だし、今のこのバンドを最も正確に表現している曲だと思うから。私やバンドにとって大切な要素が全て詰まっているの。奇妙なプロダクションと力強いメロディー、必ずしもサウンドにマッチしていないリリックとかね。そういうぶつかり合いが好きなの。

イアン: 僕も。

—イアンのお気に入りは?

イアン: 難しいな…好きな曲を選ぶのは、お気に入りの子どもを選ぶようなものなんだ。「The Mother We Share」は、バンドらしいサウンドが生まれたという意味で、最初に気に入った曲。それに「Night Sky」も大好きな曲だ。その2曲はお気に入りだけど…みんな特別な曲だよ。

—ローレンはとても魅力的で独特な歌声の持ち主ですが、初めてチャーチズの曲を歌ったのを聴いた時、どのように感じましたか?

イアン: 当時僕らがやろうとしていたエレクトロなサウンドに、ローレンの声が純粋さを加えてくれたような気がした。それに彼女の声はとても自然で、アクセントが大袈裟ではなく良い感じにクリアで、まるで語っているかのように歌うんだ。中には話す時よりも強いアクセントで歌うアーティストもいるけど、僕からしたら、それってちょっと嘘っぽいんだよね。

ローレン: アメリカン・アクセントで歌うイギリスのバンドもいるよね。話し方は全然違うのに(笑)もしかしたら好きなバンドに影響されているのかもしれないけど、私にはそういうことは思いつかなかったの。

イアン: それこそが君のボーカルの美しさなんだ。何も考えずに自然にあんな風に歌うんだから。

ローレン: 私のことが好きなの?(笑)今日は日記に、「イアンには嫌われていないようだ」って書くわ。

イアン: マーティンは分からないけどね(笑)

ローレン: 「マーティンに関しては不明」(笑)

—プロデュースは自分たちで行ったそうですね。最も大変だったことは?

イアン: 「Lies」が世間に広まった後、騒々しいことからスタジオでの環境を守ることが1番大変だったかな。メールに返信したり、マネージャーと相談したりしながらだと、勢いが途切れて曲を書くのが難しいんだ。

ローレン: それに、多くの人があの曲を気に入ってくれてラッキーだったけど、同じような曲を繰り返し書くことはしたくなかった。それは多くのミュージシャンが陥る状況だと思うんだけど、私たちは同じようなサウンドの曲を12曲詰め込んだアルバムにはしたくなかった。セルフプロデュースすると、他のプロデューサーを迎えた時には得られない自由が与えられるけど、自分たちで終わりを決めなければならないの。それは難しかったわね。

—日本のファンに会うのは楽しみですか?

ローレン: うん!世界中いろんな場所で演奏して、異なる反応が得られるのが面白いわ。日本のオーディエンスはとてもエネルギッシュで、真剣に聴いてくれると聞いているし、楽しみね。

—日本では多くのファンがローレンのかわいさにも夢中になっています。

ローレン: ありがとう(笑)日本の女の子はとてもおしゃれよね。東京を歩いていると、自分がダサいんじゃないかって思っちゃう!みんなユニークなスタイルだし、同じものを着ていても、それぞれひねりを加えているから分からないくらいよ。それに、私は小柄だから日本の洋服が合うんじゃないかって思うの。イギリスではパンツを買ったら自分で裾上げしないとならないのよ。

—すごい速さで注目を集めているチャーチズですが、これまでに最も驚いたことは何ですか?

ローレン: 私たちにとっては、いまだに全てがサプライズよ!何にも驚かなくなって、それが日常となった時、長く続けてきたと思えるんじゃないかな。

イアン: この状況がどれだけユニークなのか、いつまでも把握していることが大切なんだ。決して慣れたり、当たり前だと思ったりせずにね。明日には全てが変わってしまうかもしれないから、僕らは今の状況を幸せに思っている。全てに対して驚けることが幸せだよ。

—アルバムが完成した今、チャーチズの今後の予定は?

ローレン: 年末までは忙しいの。オーストラリアに行って、日本へ来て、今後はヨーロッパでフェスに出演するわ。それからアルバムを引っさげて全米ツアーとヨーロッパ・ツアーをまわるの。クリスマスには数週間休みをもらって、リラックスする予定よ。

—ジャパン・ツアーの予定はありますか?

イアン: ジャパン・ツアー!

ローレン: 実現できたらいいわね。

イアン: いつかは分からないけど、ぜひ再来日したいな。

—チャーチズとしての活動は今後もずっと続けていくんですか?

ローレン: 楽しいと思える限りはね。義務感を感じるようになったら、もう曲は書けないと思う。たまには朝3時に起きなくちゃならないけど、今のところは自分たちの活動を心から楽しんでいるわ。とにかくよく話し合って、自分たちのやりたい形でバンド活動をすることが大切よ。そうすれば、将来的に振り返った時に楽しかったなって思えると思う。自分の信じていることをするのが大切なの。

—最後に日本のファンにメッセージをお願いします。

ローレン: 日本のファンのみんな、こんにちは!初来日してみんなに会えて、とてもワクワクしているわ。アルバムを気に入ってくれるとうれしいな。

イアン: 日本のファンに会えてとてもうれしいよ。ライブが待ち切れないね。


Interview + Text: Nao Machida




チャーチズ:
グラスゴー出身のローレン・メイベリー(Vo)、イアン・クック(Key/B/Vo)、マーティン・ドハーティ(Key/Vo)で結成した3人組バンド。注目新人を選ぶ「BBCサウンド・オブ・2013」で5位を獲得。レーベル契約前からネットを中心に人気が爆発。2013年3月、 配信と12インチシングルで『Recover EP』を発表。同月に出演した米テキサス州オースティンで行なわれた世界最大の音楽コンベンション「SXSW」では、会場に詰めかけたオーディエンスと音楽関係者で超満員となった。海外ではデペッシュ・モード、トゥー・ドア・シネマ・クラブの サポートを務め話題沸騰中。同年7月、日本独自企画盤『EP』で日本デビュー。8月にはサマソニで初来日を果たし話題をさらった。9月、待望のデビュー・アルバム『The Bones of What You Believe』をリリース。



『The Bones of What You Believe』

1. The Mother We Share
2. We Sink
3. Gun
4. Tether
5. Lies
6. Under The Tide
7. Recover
8. Night Sky
9. Science/Visions
10. Lungs
11. By The Throat
12. You Caught The Light
13. Strong Hand *
14. Broken Bones *
15. Gun - KDA Remix *
16. The Mother We Share - We Were Promised Jetpacks Remix *
17. The Mother We Share (Blood Diamonds Remix) *
18. The Mother We Share (Kowton's Feeling Fragile Remix) *
*日本盤ボーナストラック

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