MTV BLOG

スパイク・ジョーンズ『her/世界でひとつの彼女』来日インタビュー前編

2014-06-26


ビースティ・ボーイズやファットボーイ・スリム、ビョークといった数々のアーティストの名作ミュージックビデオや、人気シリーズ「jackass」など、MTVでもすっかりおなじみの奇才スパイク・ジョーンズ。常に奇想天外なアイデアで観る者を驚かせる監督の最新映画『her/世界でひとつの彼女』が、6月28日(土)より全国で公開される。

映画は近未来のロサンゼルスを舞台に、AI(人工知能)型OSのサマンサと恋に落ちていく主人公セオドアの物語。これまでにない設定ながらも、普遍的な感情を繊細に描いたスパイクは、今作で第86回アカデミー賞脚本賞を受賞した。MTV Newsは4年半ぶりに来日したスパイクにインタビュー。映画の見どころや舞台裏について、たっぷりとうかがった。



──今作には主人公セオドアとAI(人工知能)型OSのサマンサの恋愛が描かれています。声だけの相手との恋愛シーンを描く上で大事にしたことはありますか?

1人しかスクリーンに登場しない中で2人のシーンを描くことは、今作における大きなチャレンジの1つだったように思う。でも、脚本を書いたときも役者たちと話し合ったときも、僕はそれをリアルな恋愛として話すようにしていたんだ。

サマンサが身体を持っていないことにより抱くであろう自己疑念について、スカーレット(・ヨハンソン、声の出演)と話した時も、僕らは常に人間関係の映画として考え、自分たちの人生や人間関係と結びつけて考えていた。もしかしたらそういった素直さが、人と人との結びつきを描いた作品として信ぴょう性をもたらし、観る人に響いたんじゃないかな。

──セオドアとサマンサは肌を触れ合うことができません。そこには特定の悲しみや寂しさがあると思いますが、監督は彼らの孤独感をどのようにとらえていましたか?

それはその通りだと思うし、だからこそ彼らは苦しむんだ。2人はそのことについて話し合っているし、たぶん問題を抱える他のどのカップルとも同じように悩んでいるよね。

長くつきあっていてもお互いの気持ちを話し合うことをせず、相手のことを深く理解していない恋愛もあるわけで。彼らの関係には間違いなく限界や苦しみがあるわけだけど、少なくとも本当の意味でつながりを感じ、お互いをよく理解していると感じられる関係ではあるんだ。

日本の皆さんには、今作をぜひカップルで観に行ってほしいね。そうしたら、パートナーとこういった会話ができるんじゃないかな?



──ホアキン・フェニックスが演じるセオドアというキャラクターには監督の愛を感じましたし、彼の演技も素晴らしかったです。現場で演じるホアキンを見ていて、深遠な気持ちになることはありましたか?

撮影中に彼の演技が心に響いた瞬間はたくさんあったよ。今回の撮影では少人数しか部屋にいないことが多かったんだ。モニターもなくて、僕はカメラの隣でホアキンの演技を見ながらメモを取っていて、それはとても親密な空間だった。モニターがないから、そこにいるのは僕とホアキンだけで、そういう意味でも僕らは通じ合っていて、とても親密なコラボレーションになった。

──セオドアには監督自身が投影されているのかな、と感じたのですが。

セオドアだけではなく、全ての登場人物に少しずつ自分が投影されているよ。全員に共感しながら書いていたし、特定の状況を経験したことがあるかどうかは関係なく、セオドアやエイミー(セオドアの友人)、セオドアがデートした相手のことだって、僕はみんなに共感しながら書いていたんだ。

──マンションのポストの前で、エイミー(エイミー・アダムス)がセオドアに“ひざカックンされるシーンがありましたね。 

あれは僕が友だちによく仕掛けるお気に入りのいたずらなんだ(笑)君もやったことある?

──あります(笑)あのシーンから現場の楽しそうな雰囲気が伝わってきました。監督が役者を演出するにあたって気をつけていることや、キャストを集中させるための雰囲気作りで工夫していることはありますか?

どの役者もそれぞれ違うので、もちろん演技のプロセスも違う。でも最も大切なのは、何をしても間違いではないと感じてもらえる環境を作ることなんだ。僕らはある意味、役者たちにバカな真似をするように頼んでいるようなものだからね。

それが感情的なことであろうが、セクシュアルなことであろうが、彼らには失敗を恐れず、自分自身を出してもらう必要がある。だから、良い悪いをジャッジすることのない、遊び心のある雰囲気を作りたいと思っているよ。役者が何でもできると感じられるような環境をね。



──アーケイド・ファイアやオーウェン・パレットが手掛けたスコアも素晴らしかったですが、特にヤー・ヤー・ヤーズのカレン・Oが書いた劇中歌「The Moon Song」が、セオドアとサマンサの心に優しく寄り添っているようで美しかったです。曲を書く上で、カレンにはどのようなリクエストをしたのですか?

僕に言わせれば、カレンには失敗なんてありえないんだ。彼女は心で感じたことを、とても深い形で自分の作品に詰め込むことができるアーティストだからね。最初はカレンが僕のアパートに来て、一緒にいろんなアイデアを試し、そこでコード進行が決まった。それから彼女は家に帰って、この曲を書いて僕に送ってくれたんだ。コーヒーテーブルに小さなレコーダーを置いて、1時間くらいで書いたそうだよ。

カレンがアカデミー賞の歌曲賞にノミネートされた朝、電話して伝えたらとても驚いていたよ。「1時間くらいで書いた曲でノミネートされるなんて」ってね。僕は彼女に、「1時間で書いたとしても、僕らは10年前から親しい友人だし、この曲は僕らの友情を通じて、お互いをよく理解しているからこそ生まれたんじゃないかな」って伝えたよ。

もちろん、彼女には脚本も読んでもらったし、曲が流れるシーンでの登場人物の気持ちについても話してあった。でも、僕にとって今作がどんな作品なのか、このシーンがどんな意味を持つのかを、彼女がちゃんと理解していたからこそ、友人として書くことができた曲なんだと思う。(関連ニュース

──アカデミー賞授賞式でのカレンとエズラ・クーニグ(ヴァンパイア・ウィークエンド)によるパフォーマンスも美しかったです。

ありがとう!僕らは数日前からカメラマンとリハーサルをして準備していたんだ。僕は月のセットをデザインして、カレンのドレスや靴も決めて、あの瞬間を演出させてもらった。すごくうれしかったよ。それは特別な瞬間だった。



──映画ではロサンゼルスがとても輝かしく映っていましたが、舞台が東京やニューヨークだったら、結末が違ったのではないかなと感じました。舞台にロサンゼルスを選んだ理由は?

僕らは現代の便利な世の中を誇張したような世界観を作りたかったんだ。どこへ行ってもコーヒーが飲めたり、美味しいものが食べられたりと、この世の中は本当に便利だけど、それでもなお僕らは孤独を感じている。東京のようにデザイン性の高い美しい街に住んでいても、どこかで孤独を感じるんだ。

LAは本当に住みやすいし、そもそも誇張されているのが今のLAなんだと思う。ビーチもあって、天気もよくて、とても住みやすいのに孤独だっていう点で、僕はあの街が完璧な舞台になると思ったんだ。

後編に続く)

Interview + Text: Nao Machida
Photos (Spike Jonze): Taro Mizutani





『her/世界でひとつの彼女』

監督・脚本・製作:スパイク・ジョーンズ
キャスト:ホアキン・フェニックス、エイミー・アダムス、ルーニー・マーラ、オリヴィア・ワイルド、スカーレット・ヨハンソン
6月28日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
Photo courtesy of Warner Bros. Pictures

オフィシャルサイト>>

15:00

BLOG SEARCH

PROFILE

  • ブログの説明
    MTV NEWSのニュースプレゼンター&スタッフが、現場から最新ニュースや取材の裏話をレポート!
  • ライタープロフィール
    最新の音楽や映画情報を毎日お届けするMTV NEWSの制作スタッフです。

ENTRIES

CATEGORIES

ARCHIVES

FEEDS