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フランツ・フェルディナンド、原点回帰の新作『Right Thoughts, Right Words, Right Action』を語る

2013-08-28
その音を聴いたら誰もが踊らずにはいられない、スコットランド・グラスゴー出身の4ピース・バンド、フランツ・フェスディナンドが帰ってきた!2009年リリースのサード・アルバム『Tonight』のツアー後、1年間はほとんど話すこともなかったという4人が、ついに待望のニュー・アルバム『Right Thoughts, Right Words, Right Action』を発表。「本当に良い作品ができた場合だけ、アルバムを作ることにしようと決めた」というコメントも納得の内容に仕上がっている。MTV Newsは、先日プロモーション来日したベーシストのボブ・ハーディにインタビュー。踊らずにはいられない、どこかファースト・アルバムを思い出させるような原点回帰とも言える新作を引っさげて、11月には来日公演が決定している。



—今回の来日は楽しんでいますか?

楽しんでいるよ!日本は大好きなんだ。オフは合羽橋に買い物に行ったよ。ぶらぶら歩いて、ナイフのクリーナーを買った。僕は昔シェフだったんだ。本当は食品サンプルが目的だったんだけど、すごく高いんだね!アレックスは寿司をちょっとだけ買っていたよ。

—今回の新作『Right Thoughts, Right Words, Right Action』は、前作『Tonight』から4年ぶりとなりますね。

『Tonight』の後、2011年春まで2年ほどツアーして、それから12ヶ月間は休みを取ったんだ。その後、再び集まって、アルバムを作ることに決めたんだよ。

—12ヶ月間は完全にオフだったのですか?

バンドとして少しだけ活動したことはあったけど、基本的にはメンバーそれぞれが好きなことをしていた。アレックスはレコードを作って、ニックはサイド・プロジェクトのボックス・コダックスのレコードを作って…とか、いろいろね。

—あなたは何をして過ごしましたか?

僕は絵を描いていたよ。バンドを始めてからは遠ざかっていたんだけどね。ツアー中に1週間の休みがあっても、なかなか絵を描くのは難しいものなんだ。ヘトヘトになるから、かなり長い休みがないとできないんだよね。僕はもともとアートスクールで絵画を学んでいたんだよ。

—12ヶ月間の休みが明けたら、ニュー・アルバムを作ることは決まっていたのですか?

それがそうでもなかったんだ。僕らは12ヶ月間、ほとんど話していなかったんだよね。ツアーで疲れ切って、お互いに飽き飽きしていた(笑)それでアルバムを制作する予定がないまま、アレックスとスコットランド北部のオークニー諸島で会ったんだ。島で12時間くらい散歩しながら、今後のことについて話し合った。そして、本当に良い作品ができた場合だけ、アルバムを作ることにしようと決めたんだ。だから締切りとかはなかったんだよ。

—そうだったんですか。そして、その話し合いの後に曲作りを始めたわけですか?

うん、ニックとアレックスがロンドンで曲作りを始めた。僕とポールは今もグラスゴーに住んでいるんだ。バンドの作業はロンドンのスタジオで行うんだけどね。僕はアレックスとリリックのアイデアを出したりして、割とスローなプロセスだった。アイデアを書き留めて、それから曲を書いて、最初は楽器を弾き始めるまでに数ヶ月かかったんだ。2011年末にかけて、4人で実際に演奏し始めて、ノース・ロンドンでデモを作った。楽曲は良かったんだけど、その時の演奏はサイアクだったんだ(笑)初めて合わせて演奏したから、スローでつまらない感じでね。結局アルバムの大半は2012年に制作したんだ。

—フランツ・フェルディナンドの曲作りのプロセスは?

ニックとアレックスがメインのソングライターだね。アレックスと僕は、最初の段階で曲のアイデアを理論的に話し合うんだ。時には2人で一緒に作詞することもある。曲はニックとアレックスが作るんだよ。そして練習室で編曲する時は、ポールと僕も意見を出す。特にポールはドラマーだからね。

—『Right Thoughts, Right Words, Right Action』は、ファースト・アルバムを思い出させるような、踊らずにはいられないフランツならではの魅力が詰まっていますね。このアルバムを制作する上で、方向性やテーマなどは決めていましたか?

今回のアルバムの制作過程は、最初にバンドを始めた頃にちょっと近かったかもね。僕らは壮大で大きなテーマのある楽曲を作りたかったんだ。たとえば「Fresh Strawberries」は、死について歌ったかなり重い楽曲なんだけど、それを楽しい感じに仕上げている。または僕とアレックスがリリックを書いた「The Universe Expanded」は、宇宙規模の壮大な曲でありながら、同時に特定のことについて書いたパーソナルな曲でもあるんだ。人生の小さな出来事を宇宙規模のものと比較することで、壮大な曲にしているんだよ。

—サウンド面では?

サウンドに関しては最後に決まったんだ。今回はまず楽曲を書こうということに決めて、楽曲が誕生して、実際にギターやピアノで演奏できるようになって、骨組みを完璧に仕上げてから、それをスタジオに持ち込んだ。楽曲さえしっかりできていれば、良い曲を壊すことは難しいからね。だから、サウンドやフィーリングはその後に手掛けたんだよ。3週間単位で、最初の1週間にニックとアレックスが曲を書き、次の1週間は4人でリハーサルして、バンドとしてアレンジやフィーリングを決め、それから1週間をスタジオで過ごしたんだけど、1度に1、2曲しかやらないことにしたんだ。そうすることで、そこに生じるエネルギーを保っていた。何週間もスタジオに缶詰になるようなことがないようにね。

—以前にインタビューした時、フランツは「女の子を踊らせる音楽を作りたい」とおっしゃっていたのが印象的でしたが、今はどんな気持ちで楽曲を作っているのですか?

僕らは今でも常に、“ダンス・ミュージックを演奏するギター・バンド”でありたいと思っているよ。

—完全にうまくいっていますね。

そうだね(笑)今では4人で一緒に演奏すると、自然とそうなるんだ。暗黙の了解で、全てがダンサブルになる。その大部分はポールのおかげだと思うよ。彼はエレクトロニック・ミュージックやハウス・ミュージックにはまっているから…アレックスもだね。だから、僕らの楽曲はリズムが常にダンサブルなんだ。少なくとも僕にはそう思えるよ。

—フランツの楽曲は、聴くとすぐにフランツだと分かるのに、それと同時にいつも新鮮です。今作では何か変えようと思ったことはありますか?

あるとすれば、今作は前2作品(『You Could Have It So Much Better』と『Tonight』)とは違うということかな。スタジオ入りする前に楽曲を完成させてから作った、という意味で。2枚目と3枚目では、曲作りとレコーディングを同時に進めていたんだ。特に3枚目の時は終わりのないまま部屋に入り、アルバムが完成するまでは出て来ないという状態だった。あれはあまり良い環境ではなかったよ。でも今作では、各曲が別の入口からスタートしていって、スタジオに入る前に楽曲が完成していることを第一優先にしたんだ。

—最初に完成した楽曲は?

確か最初の頃にアレックスが一人でデモを作ったのは、「Stand On The Horizon」と「Goodbye Lovers & Friends」だったと思う。「Love Illumination」は終盤に作ったんだけど、そのリフは最初の方にレコーディングした楽曲から生まれたものだったんだ。リリックのアイデアもあったから、それを1つにしてあの曲にしたんだよ。終盤になると、その時点で1年くらい一緒に演奏していたから、簡単ではないけどスムーズに進むようになった。一緒に時間を過ごすことによって、お互いの考えも分かってくるしね。

—今作で新たにトライしたことはありますか?

うん、たとえば「The Universe Expanded」は、その大半をストックホルムでビヨーン・イットリングとレコーディングしたんだ。彼が手掛けたリッキ・リーの作品をかねてから気に入っていたし、長年にわたって、彼のバンド(ピーター・ビヨーン&ジョン)と一緒にライブをしていたからね。ビヨーンとレコーディングした楽曲の骨組みは、おとなしめで少し行儀が良過ぎる感じだった。だから、スコットランドに持ち帰って、その上に重ねるようにレコーディングし、そこから下にあるものを差し引いたんだ。キックドラム風の音は、実はアレックスがマイクで胸を叩いている音なんだよ。パーカッション風の音は、アレックスの無精ひげの音なんだ。あの曲ではこれまでにやったことのないような、普段とは違ったアプローチを取ってみた。楽曲の最後のコーラス部分では、ストックホルムでのセッションが入ってくる。スコットランドから始まり、ストックホルムで終わるって感じ(笑)

—レコーディングは主にどこで行ったのですか?

「Right Action」と「Goodbye Lovers & Friends」はロンドンで行った最初のセッションで、ホット・チップのジョーとアレキシスとレコーディングしたんだ。長年の知り合いで、UKでは同じレーベルに所属しているし、僕らは彼らの音楽の大ファンだからね。彼らはちょうどツアーに出る前で、2週間くらいしか時間がなかったんだ。それで僕らと2曲を一緒に作って、逃げて行った(笑)

—レコーディングはいかがでしたか?

良かったよ!僕らは彼らの音楽が大好きだから、一緒にスタジオ入りして、その仕事ぶりや、頭がどのように回転するのかを見ることができてうれしかった。彼らはメロディーも得意だし、非常に才能豊かなプロデューサーなんだ。プレーヤーとしても素晴らしいしね。ビヨーンとのストックホルムでのセッションでは、「Treason! Animals.」と「The Universe Expanded」をレコーディングした。それから再びロンドンで、ノルウェー出身のトッド・テリエともレコーディングしたんだ。彼の作品の大ファンだから、こちらから依頼したんだよ。彼は「Evil Eye」と「Stand On The Horizon」を手掛けた。レコーディングはロンドンで行い、その音源を彼がオスロへ持ち帰ってプロデュースしてくれたんだ。残りはスコットランドとロンドンで、全て自分たちでセルフ・プロデュースした。他のプロデューサーを迎えた時も、僕らが共同プロデュースしたんだよ。

—レコーディング風景を撮影した動画を観ましたが、いつも仲良くて楽しそうですね。

今回は特に楽しいレコーディングだったよ。最近はあまりケンカもしないしね。お互いからしばらく距離を置いたのも良かったよ。何年も一緒に居るとストレスフルなものだから(笑)でもしばらく離れてから再会すると、どうして最初に相手のことが好きだったのかを思い出すんだよね。

— 4人がそれぞれベッドの中で目覚める、アルバムのトレーラー動画も面白かったです。フランツはビジュアル面でもいつもユニークな作品を出していますが、自分たちでアイデアを出すんですか?

あのトレーラーはアンディ・ノウルズっていう友人が作ったんだ。スタジオで撮影されたビデオも全て彼が手掛けた。すごく才能ある面白い男なんだよ。実際のミュージックビデオに関しては、僕らがディレクターと密に作業を進める。コンセプトやイメージといったことから全てね。バンドとディレクターでやり取りを繰り返して進めるんだ。

—リード・トラック「Right Action」のミュージックビデオは?

あのビデオはジョナス・オデールが手掛けた。60年代のペンギン・ブックスの本のデザインを参考に、エチオピアン・アートの要素なども取り入れられている。かなりパンチの効いた曲だから、陽気でアニメっぽいビデオにしたかったんだ。

—アルバムのタイトル『Right Thoughts, Right Words, Right Action』も、この楽曲の歌詞から取っているわけですよね?

うん。最初は「The Universe Expanded」がアルバムのタイトルとしても良いんじゃないかと話していて、もう1つの候補は「Evil Eye」だった。でも、『Right Thoughts, Right Words, Right Action』はとてもポジティブなイメージだし、バンドとして、今作にはポジティブな印象を抱いていたからね。ポジティブなエネルギーの詰まった作品だと考えて、このタイトルを選んだ。

—特に気に入っている楽曲はありますか?

「Stand On The Horizon」かな。ベースラインがすごく気に入っているんだ。「Bullet」は演奏していてとても楽しいし、「Evil Eye」もね。

—今作はライブにもぴったりな楽曲ばかりですね。11月の来日公演が今からとても楽しみです。

エネルギッシュなライブになるといいね。僕も来日公演がとても楽しみなんだ。実は収録曲は全て、既にどこかしらで演奏したことがあるんだよ。でも、来日公演ではアルバムがリリースされた後に演奏するわけだから、オーディエンスの反応が楽しみだよ。

—これまでの新曲への反応はいかがでしたか?

すごく良かったよ!セットリストにもうまくフィットした。過去の作品とも合うし、良い感じだよ。

—フランツは日本でも大人気ですが、皆さんにとって日本のイメージは?

信じられないくらいファンが熱狂的だよね。日本のファンは本当に音楽に夢中になって、熱中してくれるようだ。バンド活動をしていると、それはとてもうれしいことなんだよ。ものすごく遠い国からやって来て、こんなに自分たちの音楽にはまってくれる人がいるって、うれしいことだ。

—心に残っている日本での思い出は?

初来日の時にカラオケして、とても楽しかった…そういえば、ずっとカラオケ行ってないな!次回は行かなきゃ。すごく酔っぱらって…何を歌ったんだっけな(笑)1度来日した時に、ちょうどリバティーンズも来日していたこともあった。それで一緒にカラオケに行って、彼らがフランツの曲を歌って、僕らがリバティーンズの曲を歌ったんだよ。

—MTVの特番で、芸者とお座敷遊びしたこともありますよね?

そうだった!あれはすごかった!芸者とゲームしたんだ(笑)あれは楽しかったよ。来日すると普段はしないようなことができて楽しいよね。それに僕はいつも代々木公園に行くんだ。渋谷から歩いて行かれるし、ピースフルですてきな場所だ。

—今回の来日では、ファンとツイッターのQ&Aセッションをしたそうですね。

最高だったよ。答えられる以上にたくさんの質問が届いたんだ。レーベルのスタッフが質問を訳してくれたから、英語が分からないファンとも交流することができて良かった。中には奇妙な質問もあったね(笑)

—アートスクールで出会って、今でも仲の良さそうなバンドですが、今作のアルバムの最後の曲「Goodbye Lovers & Friends」は、別にお別れという意味ではないですよね?

大丈夫だよ(笑)あれはただ楽曲として書いただけで、アルバムの最後に入れるのにぴったりだと思っただけだからさ。僕らはあまり先のことは計画しないんだ。アルバムを出したらツアーを行うけど、その後にアルバムを制作する予定は決まっていない。スケジュール帳を予定でいっぱいにしたいタイプの人間ではないんだ。どちらかというと、それは避けたいくらいで。だから、未来は何が起こってもおかしくないよ。

—バンド活動をしていて、最も幸せを感じるのはどんな時ですか?

良いライブをした後かな。アルバムが完成した時も達成感はあるけど、その後に今のような時期が来るでしょ?誰も聴いたことのない段階で、アルバムについて話さなきゃならない時期がね(笑)でも実際にアルバムが出て、ツアーが始まり、良いライブができてファンが新曲に反応を示してくれると、それが最高のバズだと思う。パーティーして祝いたくなるよ。

—休みの日にメンバーと一緒に過ごすことはあるんですか?

うん、アレックスと合羽橋に行ったし(笑)ポールと僕はグラスゴーに住んでいるから、よく会うよ。ポールが僕のバーベキューに来たり、僕が彼の住んでいるエリアに歩いて行って、ビールを飲んだりね。

—最後に日本のファンにメッセージをお願いします。

日本のファンのみんな、こんにちは。いつもライブに来てくれてありがとう。ニュー・アルバムを気に入ってくれるといいな。11月に戻ってくるからライブで会おうね!


Photo: Andy Knowles
Interview + Text: Nao Machida


フランツ・フェルディナンド

イギリスはグラスゴーにて、アレックス・カプラノス(Vo, G)とボブ・ハーディ(B)を中心に2001年に結成された4人組バンド。地元でライブ活動を始めると徐々に注目を集め、2003年にUK人気レーベルDOMINOと契約を果たす。04年リリースのデビュー・アルバム『Franz Ferdinand』が全英3位を記録し、主要音楽賞を総なめにして、一躍世界的な注目を集めるように。05年にセカンド・アルバム『You Could Have It So Much Better』をリリース、全英チャート1位を獲得すると同時に、世界各地で大ヒットを記録、日本でもオリコン洋楽チャート1位を記録した。翌年には「FUJI ROCK FESTIVAL」で史上最速のヘッドライナーを務め、大きな話題に。09年にサード・アルバム『Tonight』をリリースし、フジロックで2作連続でのヘッドライナーを務めた。本作『Right Thoughts, Right Words, Right Action』は、4年ぶり通作4作目となる待望の新作スタジオ・アルバム。



『Right Thoughts, Right Words, Right Action』

1. Right Action
2. Evil Eye
3. Love Illumination
4. Stand On The Horizon
5. Fresh Strawberries
6. Bullet
7. Treason! Animals
8. The Universe Expanded
9. Brief Encounters
10. Goodbye Lovers and Friends
11~13. 無音トラック
14. Evil Eye (Todd Terje extended mix)(ボーナストラック)
15. Stand On The Horizon (Todd Terje extended mix)(ボーナストラック)

<MTV関連番組>
MTV LIVE: フランツ・フェルディナンド
9/16 [月] 14:00 - 15:30
9/22 [日] 23:30 - 25:00

Franz Ferdinand Japan Tour 2013
2013年11月19日(火)20日(水) 東京:ZEPP TOKYO
2013年11月22日(金) 大阪:ZEPP Namba
Info:SMASH www.smash-jpn.com

アルバムリリース特別サイト>>

15:00

UK出身のキュートな実力派、ガブリエル・アプリン来日インタビュー

2013-08-23


その歌声とソングライティング・スキルが高く評価され、今最も注目を集めるニューカマーの1人、ガブリエル・アプリン。全英アルバム・チャートで初登場2位を獲得したデビュー・アルバム『English Rain』が8月に日本でもリリースされ、その直後には「SUMMER SONIC 2013」で初来日公演を実現した。MTV Newsでは、サマソニと東京での単独公演を終えた彼女にインタビュー。インターネットにアップした動画をきっかけにデビューへの道をつかんだ弱冠20歳の歌姫に、デビューまでの経緯や初めての日本でのライブについて聞いた。

—7月に初来日したそうですが、日本の第1印象はいかがでしたか?

カルチャーショックを受けることはなかったけど、日本の文化にすごく興味を引かれたわ。アジア自体が初めてだったから、全く異なる場所に来られてうれしかった。日本の人はみんな優しくて素晴らしいと思ったし、いろんな人から写真撮影を頼まれたり、出待ちされたりしたの。それってイングランドでもようやく始まったばかりだから、初めての日本でそんなことが起こってびっくりしたわ。とにかく日本はアメージング、最高よ!

—まずはバックグラウンドについてお聞きしたいのですが、イギリスの田舎町(ストーンヘンジで有名なウィルトシャー)で、“ヒッピーな家庭”で育ったそうですね。具体的にはどのような環境だったのですか?

ある意味、とても“普通”だったわ。でもすごく気に入っていたの。とても落ち着いていて、つつましくて。すごくオーガニックでスピリチュアルな場所よ。

—両親がヒッピーだったというのは?

両親は長髪でダボダボの服を着て、一日中、畑で過ごしていたの(笑)とても自然が多い場所で、住んでいる人も自然派なのよ。それに大きな音楽シーンもあって、特にアコースティック・ミュージックが盛んだったわ。

—どんな音楽を聴いて育ちましたか?

両親が聴いていた音楽を聴いて育ったの。フリートウッド・マックとか、ジョニ・ミッチェル、ボブ・ディラン、ニック・ドレイク…60年代に活躍したシンガーソングライターが多いわね。

—学校の友だちとは、聴いていた音楽が違ったのではないですか?

それは間違いないわね!実際に学校の友だちが何を聴いていたのかも知らないわ(笑)

—最初に音楽を始めたのはいつ頃ですか?初めて弾いた楽器は?

11歳か12歳くらいで、まずはピアノを弾き始めたの。レッスンを受けたわけではなく独学でね。「ピアノを学びたい」とか思っていたわけでもなく、ゴールもなくて、「ちょっと弾いてみようかな」って感じで。極めたいとか思っていなかったから、レッスンに行こうとも思わなかったの。

—家族のどなたかがピアノを弾いていたのですか?

ママが弾いていたんだけど、特に真剣にというわけでもなかったの。どうしてうちにピアノがあったのか分からないわ。それから14歳の時にギターを弾き始めて、そのまま続けていったという感じ。ギターも独学よ。それまでの私は文章を書くのが好きだったの。英文学が大好きで、学校でも1番好きな科目だった。自分でも詩や短編小説を書くのが好きだったから、音楽を始めたときに、文章と音楽を一つにすればいいんだって気付いたの。



—楽曲だけでなく、ガブリエルさんの大きな魅力の1つは、そのアンジェリックで特別な歌声だと思います。歌は習っていたのですか?

ありがとう!でも全然!特に音楽をやる理由とかゴールはなかったから、ただ楽しんで歌っていただけなのよ。「私にもできるかな?」って試してみたくて始めただけ。いろんなことに興味を持っていて、その中の1つに過ぎなかったの。目標としていた歌手もいないし、今も自分がどんな声なのかよく分かっていないわ。でも、特にジョニ・ミッチェルの影響は、間違いなく受けていると思う。彼女は高音も低音も歌えて、いろんな声色を自由自在に操ることができて、私もぜひああいう歌い方を学びたいわ。彼女の影響は大きいわね。

—文章を書くことから始めて、そこに音楽をつけていったとのことですが、曲作りはいつ頃始めたのですか?

13、4歳の頃に曲を作り始めたんだけど、当時はあまり上手じゃなくて、初めてまともな曲が書けたのは15、6歳の頃ね。

—インターネットにポップ・ソングのカバーをアップしたことがきっかけで有名になったそうですね。初めてカバーした曲は?

(しばらく考えて)…全然思い出せない(笑)昔のビデオは観ないようにしているの。だって、今観ると「うわ〜、サイアク!」って思うから。でも、今でもコメントを残してくれたり、楽しんでくれたりする人がいるから、削除はしたくないんだ。それに時系列で自分の成長を振り返ることができるのもいいでしょ?でも、いろんな曲をカバーしたから、最初の曲は覚えてないな。その時は特に目的もなく、「これで有名になってやる!」とか思っていなかったし(笑)誰も観ないだろうと思ってやったことなのに、実際に観てくれる人がいて本当にびっくりしたの。それでそのまま続けていったんだけど、音楽に携わりたいとは思っていたとはいえ、それが何かにつながるとは思ってもいなかったわ。でもいつの間にかリスナーが集まっていて、とても忠実なファンベースができていたのよ。

—最初にネットにパフォーマンス動画をアップしたきっかけは覚えていますか?

一緒に歌っていた友だちがお母さんに見せるために、たまたま私の演奏を撮影したの。それをネットにアップして、彼女のお母さんに送ったわけ。私自身は、ネットは自分の演奏した音源を保管する場所として使っていたわ。誰も私のことなんて知らなかったから検索されることもなかったし、音源を保管するのに便利だなって思って。サイアクな音源もアップしていたのに実際に観る人がいて…「何で観てるの!?」って感じだった!当時の私は15歳でレコーディング・スタジオに行かれなかったから、ネットは1つの手段だったのよ。無料のレコーディング・スタジオって感じ。こうなった今はアップして良かったと思っているわ(笑)

—世界中からコメントが書き込まれて驚きましたか?

うん、でも幸いなことに、すごく良いコメントばかりだったの。偏った人はいなくて、みんなとても優しかった。フィードバックをもらえてうれしかったわ。



—カバーといえば、イギリスのデパート「John Lewis」のCMで、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドのヒット曲「The Power of Love」をカバーしていましたね。デビュー前にあんなに有名な曲を、しかもテレビCMでカバーするって、どんなお気持ちでしたか?

実は全然ナーバスではなかったの。私は昔からJohn LewisのクリスマスCMの大ファンで、ぜひ歌いたいと思っていたし、ファースト・シングルが出るよりも早くオファーされるなんて思ってもみなかったから、「絶対にやらなきゃ!」って思った。だから、とにかくものすごく興奮していたわ。「何が何でもやらなきゃ!」って。あの曲は名曲だから私ももちろん知っていたし、とにかくワクワクしていて、緊張は全くなかったの。

—フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドのメンバーと実際に会ったことは?

ホリー・ジョンソンと何度か話したわ。彼は私のカバーをとても気に入ってくれて、応援してくれたのよ。

—最近はどんな音楽を聴いていますか?

いろんな音楽を聴いているわ。ポップ・ミュージックも大好きだし、私はよくラジオを聴くの。お気に入りのバンドはザ・ナショナルよ。それに「SUMMER SONIC」でM.I.A.を観たんだけど、素晴らしかったわ!M.I.A.は大好き。バスティルっていうUKバンドも好きよ。

—先日はワン・ダイレクションの「Best Song Ever」をカバーしていましたね。あの曲はどうしてカバーしようと思ったのですか?

あれはBBC Radio1の企画で、決まったプレイリストの中から選ぶことが条件だったの。最初はジェイク・バグの曲にしようかと思ったんだけど、彼の音楽は私のスタイルとすごく似ているなと思って。それで完全に真逆な曲にチャレンジしてみたいと思って(「Best Song Ever」を)選んだのよ。カバーしていて、とっても楽しい曲だったわ。



—今月はついに日本でもデビュー・アルバム『English Rain』がリリースされました。日本で自分のアルバムが出るってどんな気分ですか?

アメイジング!さっき日本盤をもらったんだけど、ちゃんと歌詞が日本語に訳されていて、本当に素晴らしかった!信じられないわ。たくさんの人が実際に買ってくれたことも信じられない!とにかくアメイジングよ。

—アルバムのタイトル『English Rain』には、どのようなメッセージが込められているのですか?「November」という楽曲の歌詞に登場するフレーズですよね?

アルバムのタイトルを決める時に、曲のタイトルからは取りたくなかったの。それで「November」に登場する“English rain”というフレーズはいいかもなって思って。あと、「How Do You Feel Today?」っていう曲の中に“laughter of guns”っていうフレーズがあって、それも候補だった。それでまずジャケットを撮って、写真と合う方に決めようということになったの。花と傘と風船を使って写真を撮影して、最終的に傘の写真を使うことになったわけ。傘の写真だから“Rain(雨)”がいいね、って。それにサウンドにも昔ながらのイギリスっぽいフィーリングがあったから、『English Rain』に決まったの。

—なるほど。きっとイギリスの雨は、昨夜の日本の雨よりずっと優しいんでしょうね…

オーマイガッド!(東京・原宿アストロホールでの)ライブ前に食べ物を買いに出たら、ものすごい雨が降っていたわ!会場に戻る時に、ファンに声をかけられたの。CDを持ってきてくれたから、大雨の中でサインをしたわ(笑)ステージに上がるまでにびしょぬれになっちゃった!

—「Panic Cord」や「Please Don't Say You Love Me」など、アルバムにはとても素直で私的な感情を歌った曲が収録されています。曲を書く時は、ご自身の経験に基づいて書いているのですか?

基本的にはそうなんだけど、「Please Don't Say You Love Me」だけ違うの。「Panic Cord」は、とても不思議な男の子との実体験よ。友だちと一緒にしか遊んだことなかったんだけど、ある時、その気はないんだって伝えようとしたら、「でも別れられないよ」って言われて。「つきあってないんだけど…」って感じだった(笑)そしたら、「僕は思い出を箱に詰めてあるのに」って。「え!?」って思っちゃった。もしかしたらスイートな人で、ライブのチケットとか取ってあるのかなって思ったら、レシートとか、チョコレートのパッケージとか、私が拾った葉っぱまで取ってあったの!それがあの曲のもとになった話よ。でも別におかしな人っていうわけではなくて、ただ良い人過ぎただけっていうか、ごめんねって感じだった(笑)「Please Don't Say You Love Me」は私の体験ではなく、友だちに聞いた話なの。多くの曲は自分の経験で、そうじゃない場合は知っている人から聞いた話を元に書いているわ。

—他にはどんなことから曲作りのためのインスピレーションを得ますか?

私は60年代の社会的な出来事について書かれた曲が大好きなの。ジョン・レノンとベトナム戦争とか、ボブ・ディランとジョニ・ミッチェルと産業革命とか。だから、私も社会的な問題について書くことが好きなんだけど、今はあまり書きたい題材がないから、待たなきゃね(笑)



—アルバムの中で特に大切に思っている曲はありますか?

うーん、アルバム全体を大切に思っているわ。お気に入りの楽曲揃いだし、だからこそ収録したの。このアルバム自体が私にとってはとても大切よ。

—アルバムに収録された「Home」は、EPに収録されていたオリジナル版よりもサウンドに深みが感じられました。今作のレコーディングで新たにトライしたことはありますか?

最初に「Home」を作った時はレコード契約もない頃だったから、あるもので作るしかなかったの。でも本当はやりたいことがたくさんあったから、このアルバムでは当時できなかったことを実現したわ。オーケストラを迎えてレコーディングしたりね。とはいえ、オリジナル版と完全に違うものにはしたくなかったの。突然ロックバンドみたいにはしたくなかったから、あのような形に落ち着いたわ。

—今作では、ジャミロクワイやカイリー・ミノーグ、エミリー・サンデー、エリー・ゴールディングなど、数々のアーティストの作品を手掛けているマイク・スペンサーをプロデューサーに迎えたそうですね。彼との仕事はいかがでしたか?

素晴らしかったわ。彼はとても才能豊かなの。ものすごく忙しい人で、たくさんのアーティストが一緒に仕事したがっているから、プロデュースしてもらえたことを幸運に思うわ。私はこのアルバムを、クラシックでありながらモダンな作品にしたかったの。きっと彼なら作品にモダンなエッジを加えてくれるだろうと思っていたわ。私がクラシックなアイデアを出したら、見事に目指していたものに完成してくれて、本当に満足しているの。彼はストリングスのアレンジも全てやってくれて、本当に素晴らしい現場だったのよ。

—まだ聴いたことのない日本のファンには、このアルバムをどのように楽しんでほしいですか?また、アルバムを通じてどのようなメッセージを伝えたいですか?

全体を通したテーマのようなものはないのだけど、UKの私と同世代の人たちは楽曲に共感してくれているわ。今回出会った何人かの日本のファンも共感できると言ってくれたから、とてもうれしく思っているの。だから、これから聴く人にも共感してもらえたらうれしいわね。それに年上のファンたちも、私の音楽にジョニ・ミッチェルや両親からの影響を見出してくれているみたい。聴く人の世代には関係なく、この作品から何か得るものを見つけてもらえるといいな。

—幅広い世代の人が楽しめるアルバムですよね。ご両親はどんな感想を持たれていましたか?

両親は私の作品なら何でも好きなの(笑)紅茶を飲みながら聴いているわ。



—昨夜の東京公演では、多くのファンが楽曲を合唱していてすごく驚きました。

本当よね!ものすごく驚いちゃった。みんなが歌い出した時、「どうなってるの!?」ってギターを弾く手を止めそうになっちゃったわ!「どうして知ってるの??」って(笑)あれは素晴らしかった!UKだったら分かるけど、日本でも合唱してくれるなんて。まだ日本でリリースされていない曲を知っている人もいたのよ。日本のファンはすごいわね!イングランドでは「合唱して」って頼まないと、なかなか歌わないことが多いのに。

—日本のオーディエンスは欧米よりもシャイで礼儀正しいと言われていますが、実際にライブをしてみていかがでしたか?

とても礼儀正しかったけど、シャイではなかったわね!完璧なオーディエンスだったわ。私の中でもかなりお気に入りのオーディエンスよ。

ーライブ中に英語で話しかけているファンもいましたね。

まるでビヨンセみたいな気分だった(笑)みんなすごく音楽を理解してくれて、手拍子して、本当に楽しんでくれているのが伝わってきた。私もとっても楽しかったわ。

—「SUMMER SONIC」にも出演していましたが、日本のフェス体験はいかがでしたか?

アメイジング!ずっと前からサマソニに出たかったの。サマソニに出演経験のあるバンドをたくさん知っているから、いろんな噂は聞いていたのよ。「いつかは私も日本でプレイしたいな!」って思っていたわ。だから、ようやく出演するチャンスをいただいた時には、何を期待すべきか分かっていたのよ。

—あの暑さも期待していましたか?

インドアでプレイするんだと思っていたから、エアコンがあるから大丈夫でしょ、って思っていたら…あれは恐ろしかったわ…ものすごく暑かった!笑っちゃうくらい(笑)

—ライブはCDとはまた違った魅力があって、とても楽しかったです。12月にはジャパン・ツアーが決定していますが、今回見逃したファンのために、どんなライブになるか教えてください。

アルバムにはスローでソフトな楽曲もいくつか入っているけど、ライブ全体がそうなるわけではないの。アップテンポな曲もあるし、バンドを従えてライブするから、エネルギッシュなステージをお見せするわ。より親密な曲は私がギターで演奏するし、さまざまなサウンドをお聴かせできると思う。

—日本でのライブは好きですか?

うん!正直言って、これまでで最高のオーディエンスだったかも。

—7月の来日時には猫カフェに行ったそうですね。今回の来日で1番の思い出は何ですか?

ディズニーシーに行ったの!最高だった。それに京都が素晴らしかったわね。伝統的な日本の文化に触れることができたわ。今回の来日で気づいたんだけど、子どもの頃に好きだったものの多くが日本のものだったの。大好きな映画は『千と千尋の神隠し』なんだけど、監督は日本人なんでしょ?トトロも好きなのよ。



—日本ではガブリエルさんのキュートなルックスにも注目が集まっていますが、日本の女の子はどう思いましたか?

ものすごくかわいかったわ!日本のファッションも大好きだし、日本の人はとても上品で親切で、だからこそ美しいんだと思う。

—現在20歳とのことで、多くのMTV視聴者と同世代ですね。お休みの日は何をするのが好きですか?

ディズニーランドに行くこと(笑)それにカラオケが最高に楽しかった!(小声で)滞在中は毎晩行っちゃったの!朝まで歌った日もあるのよ。カラオケはかなり大好き!

—何を歌ったんですか?

エアロスミスとか、オアシスとか、シンディ・ローパーとか…あらゆる曲を歌ったわ。最高だった(笑)

—デビュー・アルバムがリリースされた今、今後の予定は?

UKに帰ったらいくつかフェスに出演して、ジョン・メイヤーのヨーロッパ・ツアーに同行して、それから自分自身のUKとヨーロッパ・ツアーを行って、そして12月になったら日本に帰ってくるわ。

—インターネットに何となくアップしたところから始まって、今はこうして日本にいるわけですが…

ベッドルームで曲を書いていたら、いつの間にかこうなっちゃった!信じられない(笑)

—もしミュージシャンになっていなかったら、どんな仕事がしたいと思いますか?

アートが大好きだし、ものづくりが大好きだから、何かしらアートに関することをしていると思う。あと、音楽活動を始める前に、ドイツ語と英語の通訳になる勉強を始めていたところだったの。だから、もしかしたらいつか再開するかもしれないわ。



—今後はアーティストとして、どのような活動をしていきたいですか?

今やっていることをずっと続けていきたいわ。可能な限り続けて、新しいことを学んでいきたいわね。

—日本のファンにメッセージをお願いします。

こんなに温かく歓迎してくれてどうもありがとう!全く想像していなかったから、すごく感謝しているわ。本当にどうもありがとう!


Photo: Tetsuro Sato
Interview + Text: Nao Machida




ガブリエル・アプリン:

英ウィルトシャー出身、20歳のシンガーソングライター。ヒッピーな両親の元で育ち、10代初めから楽器を弾くことを覚え、ケイティ・ペリーやシー・ロー・グリーンらのカバーをインターネットにアップことをきっかけに注目を集める。17歳で初めてEPをリリース。19歳の時にリリースした3枚目のEP『Home』のタイトル曲は500万回以上の再生回数を記録、英iTunesのシングル・オブ・ザ・ウィークに選ばれた。その後、パーロフォンと契約し、2012年冬にCMソングとしてオンエアされたフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの「The Power of Love」のカバーでブレイク。全英シングル・チャートを制覇した。2013年にデビュー・アルバム『English Rain』をリリース。全英アルバム・チャートで2位に初登場した。



『English Rain』

1. Panic Cord
2. Keep On Walking
3. Please Don’t Say You Love Me
4. How Do You Feel Today
5. Home
6. Salvation
7. Ready To Question
8. The Power Of Love
9. Alive
10. Human
11. November
12. Start Of Time

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トラヴィス、5年ぶりのニュー・アルバム『Where You Stand』を語る

2013-08-14
1996年のデビュー以来、レディオヘッドやオアシスらと並んでUKロック・シーンを牽引してきたスコットランド・グラスゴー出身の4人組バンド、トラヴィスが、約5年ぶり通算7枚目となる待望のオリジナル・アルバム『Where You Stand』をリリースした。バンドはアルバムの発売に先駆け、6月に4年ぶりの来日を実現。東京・恵比寿ガーデンホールにて開催された「Hostess Club Weekender」に出演した。MTV Newsはバックステージにて、ライブ直前のバンドを直撃。フロントマンのフラン・ヒーリィとベースのダギー・ペインに、アルバムやミュージックビデオの制作秘話を聞いた。



—前回の来日から4年ぶりですね。日本のファンは首を長くして待っていました。

フラン・ヒーリィ(Vo): 随分と経ってしまったね。この4年の間に、僕らは父親になったんだよ。

—全員ですか?

ダギー・ペイン(B): 全員!

フラン: そして、1年半ほど前からカジュアルに曲作りを始めた。アルバムだとか、具体的な話は抜きにしてね。

—締切りは設定しなかったのですか?

フラン: うん、決めたくなかったんだ。初めてロンドンに来た頃、あれは確か…17年前だ!

ダギー: ジーザス!

フラン: (笑)むかーし昔、遥か彼方の銀河系からロンドンにやって来た頃、僕らはただ集まって、良い曲を作ろうとしていただけだった。もちろん、いつかアルバムを作りたいとは思っていたけどね、だから今回も、あの頃のような純粋な気持ちで曲を作ろうと思ったんだ。

ダギー: それに今の僕らは、とてもラッキーな立ち位置にいる。特定の会社やレコード・レーベルに対する責任もなく、時に友だちに手伝ってもらったりして、好きにやることができるからね。たとえばナイジェル・ゴッドリッチとか、ちょこちょこ手伝ってもらったよ。

—フランの手書きのメモでアルバムの完成が発表された時、日本のファンも大喜びでした。前作から5年が経過していますが、今回はなぜじっくりと時間を費やそうと考えたのですか?

フラン: 特に決めてはいなかったんだ。2009年にツアーから戻って、それは過去最高のツアーと言えるほどのものだった。そんなツアーが終わって、僕らは何の計画や予定もないまま「じゃあ、またね」って別れたんだ。ありがたいことに、成功は欲しいものを何でも与えてくれる。つまり、子どもと過ごす時間を与えてくれるんだよ。もし一緒に過ごさなかったら、子どもたちは大きくなってしまうからね。その時間は2度と取り戻せないだろう。だから僕らは、何よりも大切なことに時間を費やそうと決めたんだ。

—とても素敵なことですね。

フラン: 次第に少しずつ曲作りは始めたけれど、特に集中して取り組んでいるわけではなかった。1週間ほど1ヶ所で集まったら、数ヶ月は離れて過ごし、また1週間どこかで会って、数ヶ月が過ぎて…最終的にかなりの量の楽曲が手元に揃っていたけど、それでもスタジオ入りした時点では、アルバムができるかどうか確信はしていなかった。でもレコーディングを始めたらすぐにワクワクして、「これは良い作品になりそうだね」ってことになったんだ。

—フランは現在ベルリン在住だそうですが、他のメンバーはどこに住んでいるのですか?

ダギー: アンディはリバプールに住んでいて、ニールはランカスター、僕はグラスゴーとニューヨークを行ったり来たりしている。

—みんなバラバラなんですね。どこで集合するのですか?

ダギー: このアルバムは面白いことに、世界中のいろんな場所で作ったんだよ。最初のセッションはロンドン、2度目はベルリン、3度目はイングランド南部、それからニューヨークに行って、再びベルリンに行って…そんな感じで、そこら中で作ったんだ。

—ソングライティング・ツアーといった感じですか?

ダギー: そうだね(笑)かなりグローバルなアルバムだよ。

フラン: それに今回の曲作りでは…僕らは23歳でロンドンに引越したんだけど、26歳の時に有名になって、バンドが突然ビッグになった。そういうことが起こると、いろんなものを失ってしまうんだ。急に10年後の未来まで早送りされたような状態で、気づけば自分の中の残されたものをかき集めている自分自身がいて…もしこれまでの全てがなかったら、僕らは普通の仕事をして、大人になって、変わっていっただろう。誰もが成長と共に変わるものだからね。大人になり、子どもを持って、自分の子ども時代を少しだけ手放すんだ。今回のレコーディングでは、大人として、父親としてのお互いをよく知る機会になった。でも、18歳の頃に出会った仲間は永遠に18歳のままなんだって、すぐに気づくんだけどね(笑)

ダギー: すぐに18歳の自分たちに戻ってしまうんだよね。クリスマスに地元に帰ると、10代の頃の自分に返ってしまうようにさ(笑)

—曲作りは世界中で行ったとのことですが、レコーディングはどこで行ったのですか?

ダギー: 大半はノルウェーのオーシャン・サウンドという素晴らしいスタジオでレコーディングした。北海の沿岸にあるんだよ。11月だったから凍えるほど寒かったけど、とても美しかった。人里離れた場所だったから、アルバムだけに集中することができたしね。あと数曲は、ベルリンのハンサ・スタジオでレコーディングした。世界的に有名なスタジオで、素晴らしかったよ。

—集まると18歳に戻ってしまうという4人ですが、レコーディングで何か面白い思い出はありますか?

ダギー: レコーディングの最高の思い出は、ノルウェーで「Moving」という曲を録っていた時のこと。フランが高音を歌うのに苦戦していたんだ。「この高音を出すにはアドレナリンが必要だ」って言い出して(笑)

フラン: パバロッティだって、時にアドレナリンを必要としたそうだ。

ダギー: アドレナリンを得るために僕らにあったのは、凍るほど冷たい海だけだった。そこでフランは、スタジオを飛び出して服を脱ぎ捨て、海に飛び込んだんだ!

フラン: 気温は7度で、水はものすごく冷たかったよ…僕は2分半ほど海の中で過ごし、ビーチを駆け上がってスタジオに戻り、高音を歌ったんだ。

ダギー: 海から飛び出てスタジオに舞い戻り、真っ直ぐにボーカル・ブースへ走ってきたよ。全ては映像に記録してある(笑)

フラン: 僕のことを笑う彼らも映っているんだ。

—すごいですね(笑)高音は無事に歌えたのですか?

フラン: うまくいったよ。

ダギー: 氷の風呂が効いたんだ(笑)

—フランはレコーディングでも自分を痛めつけていたようですが、「Where You Stand」のミュージックビデオを観て、「また自虐的になっている!」と思ってしまいました。顔面にケーキをぶつけられたり、逆さ吊りのまま落とされたり…

ダギー: ほんとだ(笑)

フラン: つまりは、こういうことだと思うんだ。人は面白いことに、他人が痛めつけられるのを見るのが好きなんだと思うんだよね。

—“罪深き楽しみ”ということですか

フラン: まさに。昔、日本のテレビ番組で「ザ・ガマン」ってあったでしょ?子どもの頃、よく観ていたんだよね。

—UKでも放送されていたんですか!?

フラン: うん、僕らはいつもあの番組を観ていて、あれが日本の第1印象なんだ(笑)

ダギー: そうそう、あれが最初に日本に触れた瞬間だった(笑)

—あの番組ですか…

フラン: 大好きだったんだ。すごい面白いと思っていたよ(笑)

ダギー: 人が痛めつけられたり、失敗したりする姿を見たいっていうのは、人間の自然な衝動なんだと思う。ネットでもそういう動画は人気でしょ?そういうものに引きつけられちゃうんだよね。

—だからフランは、いつも自分を痛めつけているわけですか(笑)

ダギー: そういうこと!

フラン: がんばってるよ。この状況は、いつかは変わるはずだ。実は今回はアンディに主演を務めてもらおうと思っていたんだけど、みんなが「ダメダメ、お前がやらなきゃ」って。

—過去のミュージックビデオでも、ハンプティ・ダンプティに扮したり(「Coming Around」)、殺されかけたり(「Walking in the Sun」)、何時間も腕立て伏せしたり(「Turn」)…

フラン: 崖から飛び降りたり…(「Why Does It Always Rain On Me」)

ダギー: 石を投げつけられたり…(「Writing to Reach You」)

フラン: 僕に何も起きないビデオはないのかね。

ダギー: 「Sing」は?

フラン: 「Sing」は全員真っ白だったね。ちなみに今までで最悪のビデオは、「Beautiful Occupation」だったな。

ダギー: うわ、あれはサイアクだった。

フラン: まるで拷問だったよ。ひどいビデオだ。僕らは小さな部屋に押し込まれたんだ。あの撮影で重病になってもおかしくないと思ったよ。

ダギー: (笑)

フラン: 本当だよ。こんな小さな部屋に入れられて、30人くらいが周りでスプレーを使ってグラフィティを描いていたんだから。通気口のない密封された部屋で!「これは健康に悪いだろ」って思ったのを覚えているよ。僕ら以外は全員ガスマスクしていたんだよ!あれはひどかったね…

—あのビデオはそんな状況で撮影されたんですね…話は「Where You Stand」に戻りますが、アルバムの表題曲でもあるタイトルに込められた意味は?

フラン: ダギーが書いたから、ダギーに説明してもらおう。

ダギー: あの曲はずっと書き続けていた曲で、最終的にXTCのアンディ・パートリッジの娘でソングライターのホーリー・パートリッジとのライティング・セッションで完成したんだ。彼女は素晴らしいよ。あの曲を聴かせて「今いち先に進めないんだよね」って話したら、手伝ってくれた。ノルウェーでフランも一緒に完成させたんだ。

フラン: 違うよ、お前が偶然この曲を流していたんだよ。

ダギー: そうだっけ?

フラン: 何だか美しい曲が聴こえてきて、「誰の曲?」って聞いたら、ダギーが「僕の曲なんだけどね」って。

ダギー: それで手伝ってもらって、リリックを完成させたんだ。決して何が起こっても、人間関係は保つ価値があるっていうことを歌っている。友情であれ、恋愛であれ、家族であれ、バンドであれ、どんな関係でもね。何があっても一緒にいることが大切なんだ。

—とても美しい曲ですよね。

フラン: うん、とてもね。僕は1度決めたら覚悟するタイプだから、なおさら共感できるよ。最近は退屈だからとかいう理由で、簡単に別れてしまう人が多いように思う。でも、他の誰かと一緒に何かを乗り越える経験って、大切だと思うんだよね。

ダギー: 間違いないね。完璧を求める人が多いけど、完璧なんてありえないよ。完璧な人間関係なんて存在しない。そこには必ず山や谷があるんだ。最近は受け入れる前に諦めてしまう人が多いよね。だからこの曲では、困難を乗り越えて一緒にいることの大切さを歌っているんだ。

—ライブで聴くのも楽しみです。

フラン: 僕も!

ダギー: (笑)

フラン: 実はこの曲ではギターを弾いていないから、マイクを持って自由に歌えて、シンガーとしてうれしいんだ(笑)



—それから、この取材の前に「Another Guy」のミュージックビデオも観ました。すごく可笑しかったです!

2人: (笑)

フラン: 友人のヴォルフガング・ベッカーと作ったんだけど、彼こそがビデオの中の“アナザー・ガイ”なんだ。ヴォルフガングはとても有名なドイツ人の映画監督で、映画『グッバイ、レーニン!』を手掛けたんだよ。

—あの“アナザー・ガイ”は、『グッバイ、レーニン!』の監督だったんですか!?

ダギー: 彼がビデオの“アナザー・ガイ”だなんて、びっくりだよね(笑)

—名演技でしたね!

フラン: そうなんだ。ヴォルフガングはものすごく良い役者だからこそ、最高の監督なんだ!彼とはベルリンで友だちなんだけど、ビデオに出演することになった理由は、僕が車を貸してほしいって電話したから。そしたら「何に使うの?」って言うから、「ビデオを作るんだよね。合成用のグリーンスクリーンを持っている人を知らない?」って聞いたら、「それじゃだめだよ、ちゃんとやらなきゃ」って。「でもヴォルフガング、僕らはVHSのカメラで撮影するんだよ…」って言ったよ(笑)そしたら、「ちょっとプロデューサーに何本か電話させるから、折り返す」って。それで最終的に、めちゃくちゃドデカいスタジオで撮影することになったんだ!グリーンスクリーンもあってね。

ダギー: ジェームズ・ボンドの映画でも撮るのかよ、って感じだったよ(笑)

フラン: しかも手伝ってくれたのは、ユルゲン・ユルゲスっていう世界的に有名な撮影監督なんだ。過去にマイケル・ファスベンダー監督やヴィム・ヴェンダース監督なんかとも仕事をしてきたような人だよ。72歳の白髪の彼が、VHSカメラで撮影してくれたんだ(笑)

ダギー: 80年代みたいだよね(笑)

フラン: すごく楽しかったよ。

ダギー: 彼らもあのビデオを制作するのをすごく楽しんでくれたんだ。

—どうしてアルバムに先駆けて、「Another Guy」をリリースしようと決めたのですか?

フラン: ビデオのアイデアが浮かんだからかな(笑)あの曲かアルバム1曲目の「Mother」にしようと思ったんだけど、どうしてもビデオのアイデアが浮かばなくて。「Another Guy」は良いアイデアが浮かんだから決めたんだ。トラヴィスはこれまでも愉快なビデオを作ってきただろう?だから、あのビデオにしたんだ。

—フィルムといえば、フランは先日、ヴィム・ヴェンダース監督に初めて会ったそうですね。トラヴィスのバンド名は、監督の名作『パリ、テキサス』(1984)の主人公の名前から取ったそうですが、初めて会ってみていかがでしたか?

フラン: 遂にバンドに名前を与えてくれた人と会うことができて、本当に感激だったよ。

—監督はそのことを知っていたのですか?

フラン: 知っていたんだ!とても優しい人だった。ベルリンでうちの近所に住んでいるんだよ。毎日家の前を通るんだ。これからは家の前に立って、出待ちするよ(笑)

ダギー: 偶然のフリしてね。

フラン: 「やあ、ヴィム」って。「げ、またこいつかよ」って思われるだろうね(笑)とにかく彼はとても良い人だったよ。とてもラブリーな人だった。僕はスターに会って舞い上がってしまった。

—先ほどもおっしゃったように、トラヴィスは17年間ずっと同じメンバーで活動されています。メンバーが脱退したり、解散したりするバンドも多いですが…

フラン: いっぱい目撃してきたよ…

ダギー: いっぱいね…

—なぜトラヴィスは、ずっと一緒に続けてこられたのだと思いますか?

ダギー: 離れている時間を持つことを大切にしているからだと思う。距離を置いて、リフレッシュして、それぞれがいろんな経験をすることをね。ツアーやレコーディングで常に一緒にいると、全員が同じ経験をするだろう?そうすると画一化された情報や経験を得ることになって、それはちょっと窮屈になりかねないんだ。だから、離れた時間を持つことが大切なんだよ。

フラン: そこで再び話は「Where You Stand」に戻るけど、一緒にいることが大切なんだよ。諦めないで、一緒に居続けるんだ。その方が面白いしね。ファンの立場からしても、たとえばR.E.M.からビル・ベリーが脱退した時、それはもうそれまでのR.E.M.ではなくなってしまったよね。

ダギー: ああ、1人でも抜けるとサウンドが変わるだけでなく、メンバー間に生じるケミストリーが変わってしまって、別物になってしまうんだ。オアシスの初代ドラマー、トニー・マッキャロルが脱退した時だって、その後のサウンドは決して同じものではなかった。最初に存在した奇妙な原子エネルギー的なものが、1つの粒子がなくなったことで、薄れてしまうんだ。



—トラヴィスはこれからもずっと音楽を作り続けますか?

フラン: そう願うよ。

ダギー: そう願うね。今後しばらくは、ライブをたくさんやる予定だけどね。

フラン: でも、僕らは同時に曲も書いているんだよ。

—今回はイベントへの出演でしたが、また単独ツアーで戻ってきてくださいますか?

フラン: イエス。

ダギー: 絶対に戻って来るよ!

フラン: 僕らはまた日本に来ることを、すごく楽しみにしているんだ。今回はこのイベントに招待してもらって、「最高!」って思った。しばらく来日していなかったからね。



—最後に日本のファンにメッセージをお願いします。

フラン: 日本のファンのみんな、長い間来日していなくてごめんね。でも今夜のライブや今後のライブで、必ず埋め合わせをすると約束するよ。僕らが制作を楽しんだのと同じくらい、みんながニュー・アルバムを楽しんでくれるといいな。

ダギー: 次の来日までに、4年も経たないように注意するよ(笑)

—ぜひお願いします!

フラン: 今度は3年半かな(笑)

ダギー: (笑)


Interview + Text: Nao Machida
Live Photo: Kokei Kazumichi




トラヴィス:
スコットランドはグラスゴー出身、レディオヘッドやオアシス、コールドプレイと並び英国を代表するロック・バンド。1997年『Good Feeling』でアルバム・デビュー。99年にナイジェル・ゴドリッチをプロデューサーに迎えたセカンド・アルバム『The Man Who』で全英チャートの1位を獲得すると、全世界で約400万枚のセールスを記録。続くサード・アルバム『Invisible Band』(2001年)は全英チャート初登場1位、全世界で約300万枚を売り上げ、UKトップ・バンドとしての地位を確実なものとした。03年に4th『12 Memories』、04年にベスト・アルバム『Singles』、07年に5th『The Boy with No Name』をリリース。08年には自身たちのレーベル<レッド・テレフォン・ボックス>から6th『Ode to J. Smith』を発表、大きな話題を呼んだ。13年、約5年ぶり通算7枚目となる待望のオリジナル・ニュー・アルバム『Where You Stand』をリリース。




『Where You Stand』
1. Mother
2. Moving
3. Reminder
4. Where You Stand
5. Warning Sign
6. Another Guy
7. A Different Room
8. New Shoes
9. On My Wall
10. Boxes
11. The Big Screen
12. Anniversary*
13. Parallel Lines*
14. Ferris Wheel*
*日本盤ボーナストラック

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