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トラヴィス、5年ぶりのニュー・アルバム『Where You Stand』を語る

2013-08-14
1996年のデビュー以来、レディオヘッドやオアシスらと並んでUKロック・シーンを牽引してきたスコットランド・グラスゴー出身の4人組バンド、トラヴィスが、約5年ぶり通算7枚目となる待望のオリジナル・アルバム『Where You Stand』をリリースした。バンドはアルバムの発売に先駆け、6月に4年ぶりの来日を実現。東京・恵比寿ガーデンホールにて開催された「Hostess Club Weekender」に出演した。MTV Newsはバックステージにて、ライブ直前のバンドを直撃。フロントマンのフラン・ヒーリィとベースのダギー・ペインに、アルバムやミュージックビデオの制作秘話を聞いた。



—前回の来日から4年ぶりですね。日本のファンは首を長くして待っていました。

フラン・ヒーリィ(Vo): 随分と経ってしまったね。この4年の間に、僕らは父親になったんだよ。

—全員ですか?

ダギー・ペイン(B): 全員!

フラン: そして、1年半ほど前からカジュアルに曲作りを始めた。アルバムだとか、具体的な話は抜きにしてね。

—締切りは設定しなかったのですか?

フラン: うん、決めたくなかったんだ。初めてロンドンに来た頃、あれは確か…17年前だ!

ダギー: ジーザス!

フラン: (笑)むかーし昔、遥か彼方の銀河系からロンドンにやって来た頃、僕らはただ集まって、良い曲を作ろうとしていただけだった。もちろん、いつかアルバムを作りたいとは思っていたけどね、だから今回も、あの頃のような純粋な気持ちで曲を作ろうと思ったんだ。

ダギー: それに今の僕らは、とてもラッキーな立ち位置にいる。特定の会社やレコード・レーベルに対する責任もなく、時に友だちに手伝ってもらったりして、好きにやることができるからね。たとえばナイジェル・ゴッドリッチとか、ちょこちょこ手伝ってもらったよ。

—フランの手書きのメモでアルバムの完成が発表された時、日本のファンも大喜びでした。前作から5年が経過していますが、今回はなぜじっくりと時間を費やそうと考えたのですか?

フラン: 特に決めてはいなかったんだ。2009年にツアーから戻って、それは過去最高のツアーと言えるほどのものだった。そんなツアーが終わって、僕らは何の計画や予定もないまま「じゃあ、またね」って別れたんだ。ありがたいことに、成功は欲しいものを何でも与えてくれる。つまり、子どもと過ごす時間を与えてくれるんだよ。もし一緒に過ごさなかったら、子どもたちは大きくなってしまうからね。その時間は2度と取り戻せないだろう。だから僕らは、何よりも大切なことに時間を費やそうと決めたんだ。

—とても素敵なことですね。

フラン: 次第に少しずつ曲作りは始めたけれど、特に集中して取り組んでいるわけではなかった。1週間ほど1ヶ所で集まったら、数ヶ月は離れて過ごし、また1週間どこかで会って、数ヶ月が過ぎて…最終的にかなりの量の楽曲が手元に揃っていたけど、それでもスタジオ入りした時点では、アルバムができるかどうか確信はしていなかった。でもレコーディングを始めたらすぐにワクワクして、「これは良い作品になりそうだね」ってことになったんだ。

—フランは現在ベルリン在住だそうですが、他のメンバーはどこに住んでいるのですか?

ダギー: アンディはリバプールに住んでいて、ニールはランカスター、僕はグラスゴーとニューヨークを行ったり来たりしている。

—みんなバラバラなんですね。どこで集合するのですか?

ダギー: このアルバムは面白いことに、世界中のいろんな場所で作ったんだよ。最初のセッションはロンドン、2度目はベルリン、3度目はイングランド南部、それからニューヨークに行って、再びベルリンに行って…そんな感じで、そこら中で作ったんだ。

—ソングライティング・ツアーといった感じですか?

ダギー: そうだね(笑)かなりグローバルなアルバムだよ。

フラン: それに今回の曲作りでは…僕らは23歳でロンドンに引越したんだけど、26歳の時に有名になって、バンドが突然ビッグになった。そういうことが起こると、いろんなものを失ってしまうんだ。急に10年後の未来まで早送りされたような状態で、気づけば自分の中の残されたものをかき集めている自分自身がいて…もしこれまでの全てがなかったら、僕らは普通の仕事をして、大人になって、変わっていっただろう。誰もが成長と共に変わるものだからね。大人になり、子どもを持って、自分の子ども時代を少しだけ手放すんだ。今回のレコーディングでは、大人として、父親としてのお互いをよく知る機会になった。でも、18歳の頃に出会った仲間は永遠に18歳のままなんだって、すぐに気づくんだけどね(笑)

ダギー: すぐに18歳の自分たちに戻ってしまうんだよね。クリスマスに地元に帰ると、10代の頃の自分に返ってしまうようにさ(笑)

—曲作りは世界中で行ったとのことですが、レコーディングはどこで行ったのですか?

ダギー: 大半はノルウェーのオーシャン・サウンドという素晴らしいスタジオでレコーディングした。北海の沿岸にあるんだよ。11月だったから凍えるほど寒かったけど、とても美しかった。人里離れた場所だったから、アルバムだけに集中することができたしね。あと数曲は、ベルリンのハンサ・スタジオでレコーディングした。世界的に有名なスタジオで、素晴らしかったよ。

—集まると18歳に戻ってしまうという4人ですが、レコーディングで何か面白い思い出はありますか?

ダギー: レコーディングの最高の思い出は、ノルウェーで「Moving」という曲を録っていた時のこと。フランが高音を歌うのに苦戦していたんだ。「この高音を出すにはアドレナリンが必要だ」って言い出して(笑)

フラン: パバロッティだって、時にアドレナリンを必要としたそうだ。

ダギー: アドレナリンを得るために僕らにあったのは、凍るほど冷たい海だけだった。そこでフランは、スタジオを飛び出して服を脱ぎ捨て、海に飛び込んだんだ!

フラン: 気温は7度で、水はものすごく冷たかったよ…僕は2分半ほど海の中で過ごし、ビーチを駆け上がってスタジオに戻り、高音を歌ったんだ。

ダギー: 海から飛び出てスタジオに舞い戻り、真っ直ぐにボーカル・ブースへ走ってきたよ。全ては映像に記録してある(笑)

フラン: 僕のことを笑う彼らも映っているんだ。

—すごいですね(笑)高音は無事に歌えたのですか?

フラン: うまくいったよ。

ダギー: 氷の風呂が効いたんだ(笑)

—フランはレコーディングでも自分を痛めつけていたようですが、「Where You Stand」のミュージックビデオを観て、「また自虐的になっている!」と思ってしまいました。顔面にケーキをぶつけられたり、逆さ吊りのまま落とされたり…

ダギー: ほんとだ(笑)

フラン: つまりは、こういうことだと思うんだ。人は面白いことに、他人が痛めつけられるのを見るのが好きなんだと思うんだよね。

—“罪深き楽しみ”ということですか

フラン: まさに。昔、日本のテレビ番組で「ザ・ガマン」ってあったでしょ?子どもの頃、よく観ていたんだよね。

—UKでも放送されていたんですか!?

フラン: うん、僕らはいつもあの番組を観ていて、あれが日本の第1印象なんだ(笑)

ダギー: そうそう、あれが最初に日本に触れた瞬間だった(笑)

—あの番組ですか…

フラン: 大好きだったんだ。すごい面白いと思っていたよ(笑)

ダギー: 人が痛めつけられたり、失敗したりする姿を見たいっていうのは、人間の自然な衝動なんだと思う。ネットでもそういう動画は人気でしょ?そういうものに引きつけられちゃうんだよね。

—だからフランは、いつも自分を痛めつけているわけですか(笑)

ダギー: そういうこと!

フラン: がんばってるよ。この状況は、いつかは変わるはずだ。実は今回はアンディに主演を務めてもらおうと思っていたんだけど、みんなが「ダメダメ、お前がやらなきゃ」って。

—過去のミュージックビデオでも、ハンプティ・ダンプティに扮したり(「Coming Around」)、殺されかけたり(「Walking in the Sun」)、何時間も腕立て伏せしたり(「Turn」)…

フラン: 崖から飛び降りたり…(「Why Does It Always Rain On Me」)

ダギー: 石を投げつけられたり…(「Writing to Reach You」)

フラン: 僕に何も起きないビデオはないのかね。

ダギー: 「Sing」は?

フラン: 「Sing」は全員真っ白だったね。ちなみに今までで最悪のビデオは、「Beautiful Occupation」だったな。

ダギー: うわ、あれはサイアクだった。

フラン: まるで拷問だったよ。ひどいビデオだ。僕らは小さな部屋に押し込まれたんだ。あの撮影で重病になってもおかしくないと思ったよ。

ダギー: (笑)

フラン: 本当だよ。こんな小さな部屋に入れられて、30人くらいが周りでスプレーを使ってグラフィティを描いていたんだから。通気口のない密封された部屋で!「これは健康に悪いだろ」って思ったのを覚えているよ。僕ら以外は全員ガスマスクしていたんだよ!あれはひどかったね…

—あのビデオはそんな状況で撮影されたんですね…話は「Where You Stand」に戻りますが、アルバムの表題曲でもあるタイトルに込められた意味は?

フラン: ダギーが書いたから、ダギーに説明してもらおう。

ダギー: あの曲はずっと書き続けていた曲で、最終的にXTCのアンディ・パートリッジの娘でソングライターのホーリー・パートリッジとのライティング・セッションで完成したんだ。彼女は素晴らしいよ。あの曲を聴かせて「今いち先に進めないんだよね」って話したら、手伝ってくれた。ノルウェーでフランも一緒に完成させたんだ。

フラン: 違うよ、お前が偶然この曲を流していたんだよ。

ダギー: そうだっけ?

フラン: 何だか美しい曲が聴こえてきて、「誰の曲?」って聞いたら、ダギーが「僕の曲なんだけどね」って。

ダギー: それで手伝ってもらって、リリックを完成させたんだ。決して何が起こっても、人間関係は保つ価値があるっていうことを歌っている。友情であれ、恋愛であれ、家族であれ、バンドであれ、どんな関係でもね。何があっても一緒にいることが大切なんだ。

—とても美しい曲ですよね。

フラン: うん、とてもね。僕は1度決めたら覚悟するタイプだから、なおさら共感できるよ。最近は退屈だからとかいう理由で、簡単に別れてしまう人が多いように思う。でも、他の誰かと一緒に何かを乗り越える経験って、大切だと思うんだよね。

ダギー: 間違いないね。完璧を求める人が多いけど、完璧なんてありえないよ。完璧な人間関係なんて存在しない。そこには必ず山や谷があるんだ。最近は受け入れる前に諦めてしまう人が多いよね。だからこの曲では、困難を乗り越えて一緒にいることの大切さを歌っているんだ。

—ライブで聴くのも楽しみです。

フラン: 僕も!

ダギー: (笑)

フラン: 実はこの曲ではギターを弾いていないから、マイクを持って自由に歌えて、シンガーとしてうれしいんだ(笑)



—それから、この取材の前に「Another Guy」のミュージックビデオも観ました。すごく可笑しかったです!

2人: (笑)

フラン: 友人のヴォルフガング・ベッカーと作ったんだけど、彼こそがビデオの中の“アナザー・ガイ”なんだ。ヴォルフガングはとても有名なドイツ人の映画監督で、映画『グッバイ、レーニン!』を手掛けたんだよ。

—あの“アナザー・ガイ”は、『グッバイ、レーニン!』の監督だったんですか!?

ダギー: 彼がビデオの“アナザー・ガイ”だなんて、びっくりだよね(笑)

—名演技でしたね!

フラン: そうなんだ。ヴォルフガングはものすごく良い役者だからこそ、最高の監督なんだ!彼とはベルリンで友だちなんだけど、ビデオに出演することになった理由は、僕が車を貸してほしいって電話したから。そしたら「何に使うの?」って言うから、「ビデオを作るんだよね。合成用のグリーンスクリーンを持っている人を知らない?」って聞いたら、「それじゃだめだよ、ちゃんとやらなきゃ」って。「でもヴォルフガング、僕らはVHSのカメラで撮影するんだよ…」って言ったよ(笑)そしたら、「ちょっとプロデューサーに何本か電話させるから、折り返す」って。それで最終的に、めちゃくちゃドデカいスタジオで撮影することになったんだ!グリーンスクリーンもあってね。

ダギー: ジェームズ・ボンドの映画でも撮るのかよ、って感じだったよ(笑)

フラン: しかも手伝ってくれたのは、ユルゲン・ユルゲスっていう世界的に有名な撮影監督なんだ。過去にマイケル・ファスベンダー監督やヴィム・ヴェンダース監督なんかとも仕事をしてきたような人だよ。72歳の白髪の彼が、VHSカメラで撮影してくれたんだ(笑)

ダギー: 80年代みたいだよね(笑)

フラン: すごく楽しかったよ。

ダギー: 彼らもあのビデオを制作するのをすごく楽しんでくれたんだ。

—どうしてアルバムに先駆けて、「Another Guy」をリリースしようと決めたのですか?

フラン: ビデオのアイデアが浮かんだからかな(笑)あの曲かアルバム1曲目の「Mother」にしようと思ったんだけど、どうしてもビデオのアイデアが浮かばなくて。「Another Guy」は良いアイデアが浮かんだから決めたんだ。トラヴィスはこれまでも愉快なビデオを作ってきただろう?だから、あのビデオにしたんだ。

—フィルムといえば、フランは先日、ヴィム・ヴェンダース監督に初めて会ったそうですね。トラヴィスのバンド名は、監督の名作『パリ、テキサス』(1984)の主人公の名前から取ったそうですが、初めて会ってみていかがでしたか?

フラン: 遂にバンドに名前を与えてくれた人と会うことができて、本当に感激だったよ。

—監督はそのことを知っていたのですか?

フラン: 知っていたんだ!とても優しい人だった。ベルリンでうちの近所に住んでいるんだよ。毎日家の前を通るんだ。これからは家の前に立って、出待ちするよ(笑)

ダギー: 偶然のフリしてね。

フラン: 「やあ、ヴィム」って。「げ、またこいつかよ」って思われるだろうね(笑)とにかく彼はとても良い人だったよ。とてもラブリーな人だった。僕はスターに会って舞い上がってしまった。

—先ほどもおっしゃったように、トラヴィスは17年間ずっと同じメンバーで活動されています。メンバーが脱退したり、解散したりするバンドも多いですが…

フラン: いっぱい目撃してきたよ…

ダギー: いっぱいね…

—なぜトラヴィスは、ずっと一緒に続けてこられたのだと思いますか?

ダギー: 離れている時間を持つことを大切にしているからだと思う。距離を置いて、リフレッシュして、それぞれがいろんな経験をすることをね。ツアーやレコーディングで常に一緒にいると、全員が同じ経験をするだろう?そうすると画一化された情報や経験を得ることになって、それはちょっと窮屈になりかねないんだ。だから、離れた時間を持つことが大切なんだよ。

フラン: そこで再び話は「Where You Stand」に戻るけど、一緒にいることが大切なんだよ。諦めないで、一緒に居続けるんだ。その方が面白いしね。ファンの立場からしても、たとえばR.E.M.からビル・ベリーが脱退した時、それはもうそれまでのR.E.M.ではなくなってしまったよね。

ダギー: ああ、1人でも抜けるとサウンドが変わるだけでなく、メンバー間に生じるケミストリーが変わってしまって、別物になってしまうんだ。オアシスの初代ドラマー、トニー・マッキャロルが脱退した時だって、その後のサウンドは決して同じものではなかった。最初に存在した奇妙な原子エネルギー的なものが、1つの粒子がなくなったことで、薄れてしまうんだ。



—トラヴィスはこれからもずっと音楽を作り続けますか?

フラン: そう願うよ。

ダギー: そう願うね。今後しばらくは、ライブをたくさんやる予定だけどね。

フラン: でも、僕らは同時に曲も書いているんだよ。

—今回はイベントへの出演でしたが、また単独ツアーで戻ってきてくださいますか?

フラン: イエス。

ダギー: 絶対に戻って来るよ!

フラン: 僕らはまた日本に来ることを、すごく楽しみにしているんだ。今回はこのイベントに招待してもらって、「最高!」って思った。しばらく来日していなかったからね。



—最後に日本のファンにメッセージをお願いします。

フラン: 日本のファンのみんな、長い間来日していなくてごめんね。でも今夜のライブや今後のライブで、必ず埋め合わせをすると約束するよ。僕らが制作を楽しんだのと同じくらい、みんながニュー・アルバムを楽しんでくれるといいな。

ダギー: 次の来日までに、4年も経たないように注意するよ(笑)

—ぜひお願いします!

フラン: 今度は3年半かな(笑)

ダギー: (笑)


Interview + Text: Nao Machida
Live Photo: Kokei Kazumichi




トラヴィス:
スコットランドはグラスゴー出身、レディオヘッドやオアシス、コールドプレイと並び英国を代表するロック・バンド。1997年『Good Feeling』でアルバム・デビュー。99年にナイジェル・ゴドリッチをプロデューサーに迎えたセカンド・アルバム『The Man Who』で全英チャートの1位を獲得すると、全世界で約400万枚のセールスを記録。続くサード・アルバム『Invisible Band』(2001年)は全英チャート初登場1位、全世界で約300万枚を売り上げ、UKトップ・バンドとしての地位を確実なものとした。03年に4th『12 Memories』、04年にベスト・アルバム『Singles』、07年に5th『The Boy with No Name』をリリース。08年には自身たちのレーベル<レッド・テレフォン・ボックス>から6th『Ode to J. Smith』を発表、大きな話題を呼んだ。13年、約5年ぶり通算7枚目となる待望のオリジナル・ニュー・アルバム『Where You Stand』をリリース。




『Where You Stand』
1. Mother
2. Moving
3. Reminder
4. Where You Stand
5. Warning Sign
6. Another Guy
7. A Different Room
8. New Shoes
9. On My Wall
10. Boxes
11. The Big Screen
12. Anniversary*
13. Parallel Lines*
14. Ferris Wheel*
*日本盤ボーナストラック

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