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祝オスカー2冠!『ジャンゴ 繋がれざる者』クエンティン・タランティーノ監督 来日会見レポート

2013-02-26


『レザボア・ドッグス』から『イングロリアス・バスターズ』まで、誰にも真似のできないユニークな作品の数々を発表してきたクエンティン・タランティーノ監督の最新作『ジャンゴ 繋がれざる者』が、3月1日に全国で公開される。映画は南北戦争前のアメリカ南部を舞台にした西部劇。解放奴隷のジャンゴがドイツから来た賞金稼ぎのDr.キング・シュルツに導かれ、奪われた妻を取り戻すため、農園の領主カルヴィン・キャンディに立ち向かう姿が、監督ならではの骨太なアクションと共に壮大なスケールで描かれている。

ここでは、公開を目前に来日したタランティーノ監督の記者会見の一問一答を紹介。大好きな日本で終始ハイテンションだった監督が、今作の魅力や裏話をたっぷりと語った。映画は日本時間2月25日に発表された第85回アカデミー賞で、脚本賞(タランティーノ)と助演男優賞(クリストフ・ヴァルツ)を受賞。2人の受賞スピーチもあわせてお楽しみください。



クエンティン・タランティーノ監督(以下、監督): みんなに会えてうれしいよ!

—監督は脚本も手掛けられていますが、なぜ今の時代に西部劇を撮ろうと考えたのでしょうか?

監督: 実は映画製作を始める前から、いつか西部劇を作りたいと思っていたんだ。過去の作品にも西部劇の要素は取り入れていたしね。あのウォルター・ヒルでさえ、西部劇の要素を取り入れた作品を作り続けて、ようやく『ロング・ライダーズ』を作るに至ったと語っていた。僕は『パルフ・フィクション』を“ロックンロール・マカロニ・ウェスタン”と呼んでいたし、日本のサムライ映画やショウ・ブラザーズのカンフー映画の影響を受けている『キル・ビル Vol. 1』に対して、『キル・ビル Vol. 2』はマカロニ・ウェスタンの影響を受けているんだ。『イングロリアス・バスターズ』だって、特にオープニング・シーンは西部劇的な作りになっている。そして今回ようやく自分自身の西部劇を作る機会を得られたのさ。でも、奴隷制度のような、通常の西部劇では扱われないような題材を選ぶことで、僕は僕流の西部劇を作った。西部劇をこれまでとは違った獣にできると思ったし、普通の歴史映画とは違ったものにできると思って、このテーマを選んだんだ。

—レオナルド・ディカプリオが初の本格的悪役に挑むということが発表された時から、日本では大きな話題でした。彼を冷酷な領主カルヴィン・キャンディ役に抜擢した1番の理由は?

監督: おかしなことに、あの役はもっと年上の設定で書いたんだ。そしたら突然、「レオナルドが脚本を読んで、君に会いたがっている」と連絡を受けた。僕らは前からお互いのファンだったから、彼は僕が脚本を書き上げたらすぐに読んで、何か自分に演じられる役がないか探してくれたようだ。彼がカルヴィン・キャンディについて話したがっていると聞いて、「カルヴィン・キャンディだって?」と思ったよ。60歳くらいの男をイメージして書いた役だったからね。実際に彼と会って、作品や登場人物について話すうちに、キャンディを若い設定にするという彼のアイデアが気になってきたんだ。帰ってからよく考えて、確かにキャンディは“悪の帝国の悪い王様”というよりも、南北戦争前の南部におけるルイ14世のような、手に負えない王子のような存在にした方が、強いキャラクターになると考えた。ものすごく面白いアイデアだと思ったよ。



—実際に悪役に扮したレオナルド・ディカプリオの演技を見ての感想を教えてください。

監督: 彼の演技は素晴らしいというだけでなく、本当に見事な性格描写だったと思う。彼は言うまでもなく世界有数の映画スターであり、主演俳優だ。でも、有数の性格俳優でもあるんだ。登場人物に埋没して、レオナルドが見えなくなるんだよ。キャンディの性格描写は、僕がこれまでに作ってきた登場人物の中でも最高だった。劇中で彼がハンマーを手にするシーンは本当に恐ろしかったよ。それは彼の見事な演技のおかげなんだ。

—ジャンゴ役のジェイミー・フォックスとDr.キング・シュルツ役のクリストフ・ヴァルツのコンビがとても良かったです。監督から2人にどのようなディレクションをしたのですか?

監督: 脚本の時点から、ジャンゴとシュルツはとても大切なキャラクターだった。ジェイミーとクリストフは、人としても役者としても考え方も、これ以上ないくらい全く違うタイプなんだ。でも、ジャンゴとシュルツにも同じことが言える。リハーサルも面白かったし、現場での撮影も面白かったけど、デイリー(1日に撮影したものを上映する)を観るまで、自分が金塊を掘り当てたことには気づいていなかった。あの2人の間には魔法があったんだ。彼らは『明日に向って撃て!』やテレンス・ヒルとバッド・スペンサー以来の最高の西部劇コンビだと思う。

—2人の演技の見どころは?

監督: 僕が気に入っているシーンは、「I Got a Name」が流れるモンタージュ・シークエンス。初めて自由の身になったジャンゴが、キング・シュルツと一緒に賞金稼ぎとして、馬に乗って雪山を歩いて行くシーンだよ。あれは劇中で最も感動的なシーンだと思う。チームとしての2人の対等な関係が描かれているんだ。今こうして説明しているだけで、涙が出てくるよ。



—『イングロリアス・バスターズ』に続いて出演したクリストフ・ヴァルツについて。

監督: クリストフは現場における一服の清涼剤だった。今作は現代のアメリカに生きる僕らがいまだに社会的犠牲を払っている、奴隷制という史実を描いた物語なんだ。お察しがつくように、現場では白人と黒人の間にピリピリした空気が流れていた。題材が題材だからね。クリストフはアメリカ人ではなくオーストリア人で—彼をドイツ人と呼んだらダメだからね—オーストリア人だからこそ、一人だけピリピリしていなかったんだ。これは彼の国でもなければ、彼の問題でもなく、彼の恥でもないわけだから、現場のピリピリ感を流すことができたんだよ。「どうでもいいじゃん、とにかく始めようよ。映画を作ろう。そんなこと忘れなよ」ってね。「150年も前のことなんだから、物語を伝えることに集中しよう。もう十分だろ!」ってさ(笑)

僕が怖じ気づいた時もクリストフに心境を伝えたら、「『イングロリアス・バスターズ』の時に言ったじゃないか。ドイツ人にあの映画は作れなかったよ。君はドイツ人や第2次大戦の側面は気にしていなかっただろう?『イングロリアス・バスターズ』は君にしか作れなかった。『ジャンゴ』で自分自身の足かせになってはダメだ。自由に作れよ」って言ってくれた。「そのとおりだ!」って思ったよ。

—カルヴィン・キャンディの執事スティーブン役を演じたサミュエル・L・ジャクソンの演技が最高でしたが、彼にはどのようなリクエストをしましたか?

監督: サムには僕も圧倒されたよ!スティーブン役のサムを演出するのは、シェイクスピアがDNAに流れている俳優に『ハムレット』の演出をするようなものだ。あのようなレベルの高い、かつ誇張されたような演技は、彼の血に流れているんだ。初めての読み合わせが終わった時、クリストフが「サム・ジャクソンには驚いたよ」と言っていた。「インスパイアされたと同時に驚異を感じたよ。あの男は演劇界の獣だ!」とね。

確かに僕はサムを演出したわけだが、思い出せないくらい微細なものだった。演出というよりも、一観客として彼の演技を味わって、楽しんで、極微細な調整をするという感じだ。毎日公開初日に最前列でサムの演技が観られるというような、光栄な立場を味わわせてもらったよ。



—ご自分も脇役で出演されていますが、最初から自分が演じるつもりで書いたのですか?

監督: あの役は僕が演じるために書いたわけではないんだ。あれは最後に撮影したシーンで、その時点で僕らのスケジュールは大幅に遅れていた。最初はあの役もキャスティングしてあったんだけど、撮影を延期し続けたおかげで、役者を失ってしまったんだ。別の人をキャスティングしても、さらなる延期で失ってしまって。それにどうやって撮影しようか実際に考えた時点で、ものすごく危険を伴うシーンだと分かったから、役者にお願いする気になれなくてね。たとえばサム・ワーシントンに爆薬を背負わせるなんて、できっこないだろう?(笑)だから僕が自分でやったんだ。たとえもし死んでも、自分の映画だから問題ないし!

—今作にはラブストーリーの要素も含まれていましたが、それは最初から決めていたことですか?

監督: ほぼ最初から、ジャンゴがブルームヒルダを救いに行くという物語を描こうと思っていた。最初からロマンスとして書き始めたんだよ。ジャンゴが報復するという西部劇的に楽しいシーンもあるけど、ただの血まみれの銃撃戦ではなく、誰もが理解できるような要素を追加したかったんだ。ジャンゴには復讐の旅ではなく妻を救うためのロマンスを求める旅に出てほしかった。さらに、おとぎ話のような要素を取り入れようと考えた。つまり、ブルームヒルダは悪の帝王により高い塔にとらわれたお姫様で、それを救うヒーローがジャンゴなんだ。

ご存知かもしれないが、僕は『仁義なき戦い』シリーズの深作欣二監督と友だちだった。これもご存知かもしれないが、「仁義」という言葉は英語に訳せないんだ。「名誉」のようなものだけど、それ以上の言葉で、「人間性」のようなものだけど、それ以上の言葉だと思う。ある時、欣二に彼の考える「仁義」の意味を聞いてみた。すると彼は、「仁義とは、この世の終わりまでしたくないけれど、必ずしなければならないもの」と答えた。今作に照らし合わせると、ようやく一人の男として自由になったジャンゴは、愛するブルームヒルダを救うために自分が逃げてきたはずの地獄に戻る。彼女があと1分でも長く奴隷でいるようでは、彼は生きていけないからだ。それこそが「仁義」なんだ。



—今作はアメリカの各地で撮影されたそうですが、映画製作において、監督の考える時間とお金の効率の良い使い方を教えてください。

監督: プロデューサーや映画会社に聞いたら、その質問は他の人に聞くべきだと言うだろう(笑)監督にとって最も重要なのは、自分が求めていることが分かっていること。それがちゃんと脚本に書かれているということ。考えたことを強要するのではなく、オープンな気持ちで撮影に臨む必要があるが、何を求めているかは明確であるべきだ。監督の仕事は決断することだから、優柔不断な監督がいるということが理解できないよ。

残念ながら、10年、20年、30年と残るような素晴らしいアクションを撮りたかったら、それには時間がかかる。サム・ペキンパーだって、1週間で『ワイルドバンチ』のラストを撮ったわけではないだろう。時間がかかったことは、作品を観れば分かる。会話のシーンはリハーサルどおりにできるし、当日のみんなの緊張さえ乗り越えれば、それは可能なんだ。でもアクション・シーンでは、どれくらい時間がかかるか予測するのは難しい。素晴らしいアクションには時間がかかるし、素晴らしいアクション、イコール日数だと思う。

—『レザボア・ドッグス』から20年が経ちましたが、今作はどのような思い入れのある作品となりましたか?

監督: 今作はとても特別な作品なんだ。ずっと作りたかった西部劇だし、アメリカの奴隷制についても、かねてから描いてみたかった。うわべだけでなく包み隠さず、でも同時に、映画として楽しい作品としてね。僕にとっては『キル・ビル』が1番の大作なのだが、それと同じくらい壮大なスケールで描けたと思う。

それに僕は今作が肝の座った作品になったことを誇りに思っている。危なっかしい作品で、たくさんの危険な試みをしたんだ。悪い評価を受けたり、拒否されたりするかもしれないというリスクを、僕らはあえて大作にかけてみた。たくさんの時間とお金を費やした作品だし、商業的にも芸術的にも自分たちを破滅させかねなかったんだ。でも結果的にそうはならなかったようだし、僕は今作をとても誇りに思っているよ。この仕事を20年来続けてきたが、今でも僕はリスクを恐れず、常に自分のアソコを差し出すようなつもりで映画を撮っているんだ(笑)



<第85回アカデミー賞受賞スピーチ>
クエンティン・タランティーノ/脚本賞:
僕の脚本に関しては、素晴らしい演技をしてくれた役者たちに感謝したいと思う。僕がここに立っているのは彼らのおかげなんだ。最高のキャスティングをするチャンスは1度しかない。キャラクターに息吹を与え、息の長い存在にするためには、ぴったりの人選が必要なんだ。今回はバッチリだったよ。それに脚本部門も脚色部門も豊作だったから、特に今年受賞できたことを光栄に思う。今年はライターの年だよ!じゃあな!


Photo: Mark Davis/WireImage

クリストフ・ヴァルツ/助演男優賞:
どうもありがとう。同じ部門にノミネートされたアーキンさん、デ・ニーロ さん、ジョーンズさん、ホフマンさんに敬意を表します。僕は今作で演じたキング・シュルツに感謝しきれません。つまり、それは彼と今作の荘厳な世界を創りあげたタランティーノ監督に感謝しきれないということです。僕らはヒーローの旅に同行しました。ヒーローとは、クエンティンのことです。(監督に向かって) 勇敢な君は登頂に成功した。勇敢な君は竜を倒した。そして価値を信じて炎をくぐり抜けた。今のはキング・シュルツの言葉です。ごめんね、借りずにはいられなかったよ。ありがとう。


Photo: Kevin Winter/Getty Images




『ジャンゴ 繋がれざる者』

南北戦争勃発直前のアメリカ南部。奴隷のジャンゴが、元歯科医のキング・シュルツに銃の手ほどきを受け、賞金稼ぎで荒稼ぎ!へんてこなコンビが涼しい顔して、お訪ね者を次々と殺しまくる。ジャンゴの目的は、ただひとつ。彼の自由と妻ブルームヒルダを奪った白人に復讐し、妻を取り戻すこと。妻が農園の領主カルヴィン・キャンディの元にいることを突き止めたジャンゴ。だが、キャンディは部下のスティーブンと、奴隷たちを鍛え上げ、互いに闘わせて楽しむ極悪人だった。妻を取り戻すための“生きるか死ぬか”の壮絶な闘いが始まるー。

監督・脚本:クエンティン・タランティーノ
出演:ジェイミー・フォックス、クリストフ・ヴァルツ、レオナルド・ディカプリオ、ケリー・ワシントン、サミュエル・L・ジャクソン、ほか
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
2013年3月1日(金)より丸の内ピカデリー他全国ロードショー

オフィシャルサイト>>

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Text: Nao Machida

14:33

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