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超能力者 VS 科学者の頭脳戦『レッド・ライト』ロドリゴ・コルテス監督に聞く

2013-02-14


ロバート・デ・ニーロがカリスマ超能力者に扮し、超常現象の嘘を暴こうとするシガーニー・ウィーバーとキリアン・マーフィー演じる科学者チームと頭脳戦を繰り広げる謎解きスリラー『レッド・ライト』が、2月15日より全国で公開される。メガフォンを執ったのは、棺桶に閉じ込められた男を描いた究極のワンシチュエーション・スリラー『リミット』を手掛けた、スペイン出身のロドリゴ・コルテス監督。今作では超能力者と科学者チームの対決を通じて、観客のマインドを最後の最後まで絶妙にコントロールしている。MTV Newsでは、初来日したコルテス監督を直撃。『レッド・ライト』誕生までの経緯や、現場で起きた奇妙なエピソードなど、作品の裏話を教えてもらった。



—『レッド・ライト』は最後まで予測不可能な展開で呆然としました。映画が終わった後も何だか気になって、眠る前にストーリーを思い返してしまいました。

ロドリゴ・コルテス監督: そう言ってくれてとてもうれしいよ。僕は最後まで終わることを抵抗するような映画が好きなんだ。脳内から出て行ってくれないような作品がね。多くの場合、観客は映画が終わるとすぐに忘れ始める。でも中にはどういうわけか、頭の中に留まる作品があるんだ。時間をかけて消化する必要があるような作品だよ。観客は全ての答えを得たと思っていても、次の瞬間、自分が間違っていたことに気づく。疑問を持たせるのはとても大切なことだから、そのような感想を聞くとうれしいんだ。

—前作『リミット』は世界的な成功を収めましたが、今作を制作するにあたって、どのような気持ちで挑みましたか?

監督: 僕は鈍感だから何のプレッシャーも感じなかった。おかげでいつも助かっているよ。知性のなさは意外と便利なものだ(笑)

—『レッド・ライト』のような映画は知性がないと作れませんよ!

監督: それが作れちゃったんだよ(笑)実は『レッド・ライト』の脚本は『リミット』を作る前に書いたものなんだ。だから、作品を選ぶ上で特に迷いはなかった。僕は自分のキャリアにとって何が都合が良いかは考えず、単純に伝えたいことがあるから素直に伝えているだけなんだよ。もしかしたら多少のプレッシャーを感じるべきだったのかもしれないけど、できる限り最高の作品を作ることに専念することにした。少なくとも、その方が健康的だよね。

—『レッド・ライト』はネタバレせずに話すのが難しいタイプの作品ですが、カリスマ的な超能力者と、超常現象のペテンを見抜こうとする科学者チームの対決というアイデアは、どのように浮かんだのですか?

監督: アイデアは一瞬でひらめいたようなものではなく、自然な流れで広がっていった。最初はでっちあげられた超能力について考えるところから始めたんだ。2つの相反するコンセプトが1つになっている。1つは超能力、つまりは魔法、説明できないもので、それは映画にとって完璧なバックグラウンドになる。もう1つはでっちあげ、つまりは人間のつく嘘だ。それにより、触れられる、物質的で具体的なものが生まれる。科学的なアプローチができるんだ。僕はその点に魅了された。

—監督自身、脚本を書く前は超能力などに対して懐疑的だったのですか?

監督: リサーチを終えた今の方が懐疑的な気がするよ(笑)懐疑的ということは、疑問を持つということだからね。自分を懐疑的だと言う人の多くは、実際には否定論者なんだと思う。彼らはただ否定するだけなんだよ。でも本来は懐疑的というのは疑問を持つことであって、何も知らなかったかのように、物事をゼロから熟考することなんだ。そうすれば、物事に対してとてもクリーンなアプローチができる。状況を再評価する必要があるんだ。

—相当のリサーチを要した作品だと思われますが、撮影前にはどのような準備をしたのですか?

監督: 1年半かけて、「超能力者や信者」と「懐疑論者や否定派」の両側からリサーチをしてみた。すると、どちらの“チーム”もとても似たような行動をとっていたんだ。みんな自分たちにリスクを及ぼすことは否定するんだよ。人間は誰しも自分に都合の良いことだけを信じようとすることに気づいた。

—リサーチ中は実際に超能力者に会ったのですか?

監督: ああ、多くの人に会ったよ。彼らについて学び、インタビューもたくさん読んだ。でも目を見張るようなものは何もなかった。僕が目にした全てのことは、単純なマジックのトリックで説明できたんだ。超能力が本当に存在するのかは分からないけど、超常現象を信じるかと言われたら、僕の答えはノーだ。自然を超越することはできないと思うからね。でも超能力は別の問題だ。なぜなら、世の中にはいまだに解明されていない現象があるから。たとえばラジオの高周波は、16世紀には超能力だと考えられていたんだよ。だから、ふさわしいツールに辿り着くまでは、解明できないこともある。

—科学者側の言い分についてはどう思われますか?

監督: 科学は常に進化している。1世紀前には科学的に証明ができなかったことが、今はできている場合も多々ある。科学は進化し続け、証明できることは増えて行くだろう。一部の人にとって、科学は宗教のようなものだ。結局のところ、多くの場合、全ては信念に基づいているんだと思う。人間にとって、自分が信じていることが最も重要なんだ。先に結論が決まっていて、その結論を支えるセオリーを求めたがる。人間の脳みそはそのようにできているんだ。


物理を信奉するマーガレット・マシスン博士役はシガーニー・ウィーバー。

—ロバート・デ・ニーロ、シガーニー・ウィーバー、キリアン・マーフィーなど、今作ではそれぞれの登場人物を描く役者の演技力が際立っていました。どのようなプロセスでキャスティングしたのですか?

監督: 今作のキャスティングについて考えると、もしかしたら超常現象は存在するのかもしれないと思うよ(笑)どうやってこんなキャスティングが実現したのか、説明がつかないからね。多かれ少なかれ、最初はいつもと同じように、理想のキャストのリストを作るところから始めた。それぞれの登場人物に対し、観客が感情移入できるような役者を第1希望から第10希望くらいまで挙げるんだ。常識的に、第7希望くらいが実現すればいいなと考える。第1希望はダメ元で、絶対に無理だろうけど、念のためトライしてみるんだ。でもどういうわけか、今作では第1希望の役者がみんな参加してくれたんだ!

—彼らはどのような理由で出演を決めたのですか?

監督: 誰もがキャラクターや会話、それにたくさんの層からなる綿密な脚本に強い反応を示してくれた。デ・ニーロとはシシリアで、シガーニーとはニューヨークで、そしてキリアンとはロンドンでミーティングをしたんだ。まるで世界ツアーだったよ。どれもとても素晴らしいミーティングだった。お互いを探り合ってね(笑)そして数ヶ月後、みんなで撮影をしていたんだ。本当に何が起こったんだか、訳が分からないよ(笑)

—70年代生まれとのことで、デ・ニーロやシガーニーが出演している作品を観て育ったのではないかと思いますが、スクリーンを通して観ていたスターたちを演出するのはどんな気分でしたか?

監督: それを考え出したら自分に不利になるから、現場では忘れるように心がけていた。最初はまさに“生きる伝説”が目の前にいるわけだけど、2分も経てば、彼らだって同じ人間だと分かる。撮影現場では、彼らの偉業については考えないようにするんだ。もし考え出したら押しつぶされてしまうからね。でもみんなとても温かくてフレンドリーな人たちだったよ。デ・ニーロは40年もトップの俳優でいるにもかかわらず、今でも脚本に書かれた自分のキャラクターを表現ことだけに集中しているんだ。それは感動的だったし、気持ちが少し楽になったよ。

—今作のテーマは観客にたくさんの論議をもたらすと思います。現場ではみんなで超能力について話し合ったりしましたか?

監督: その箱は開けたくなかったんだ(笑)キャラクターに集中してほしかったからね。役者にはそれぞれの登場人物の背景を理解する上で知っておいてほしい情報だけを与えた。与えた情報は役によって全く違ったんだ。シガーニーにはある本を読むように勧めて、キリアンには別の本を勧めた。デ・ニーロとは撮影に入る前に、信じられないかもしれないけどスカイプで話し合ったんだよ(笑)超能力者だけでなく、政治家や心霊治療者、牧師など、さまざまな人たちの声やジェスチャーなどについて話したんだ。テーマに対する個人的な意見は置いておいてね。

—物語の主軸でもある助手のトム・バックリーを演じたキリアン・マーフィーは、特に役にピッタリでしたね。不思議な目力が印象的でした。

監督: 彼はパワフルであり、同時にエレガントでもある、アメイジングな役者だと思う。2つの特性を持った珍しい人だ。演技では時にとても純粋な面を見せる。まるでボーイスカウトのような、幼い表情を持っているんだ。だが、一瞬にして、とても不穏な人物に変身できる。ものすごくダークで、この役に完璧な一面だった。彼はラブコメを一瞬でホラー映画にできるような役者。それはとてもパワフルな素質だと思う。普段はとてもフレンドリーで楽しい人だよ。



—ホラー映画の現場では超常現象が起こったりするとよく聞きますが、『レッド・ライト』の現場で奇妙な出来事はありましたか?

監督: 超常現象は禁じられていたよ(笑)通常は1日あたり10〜12カットを撮影するところを、僕らは40カットも撮影しなければならなかったからね。だから、他のことを考えているわけにはいかなかった。でもおかしな出来事はあったよ。ある晩、オフィスで翌週の撮影の準備をしていたんだ。すると窓に何かがぶつかる大きな音が聞こえた。それは窓にぶちあたった鳥で、死体が床に落ちていた。まるで今作のワンシーンのようにね。脚本は既にできていたから、興味深い偶然だと思った。そして翌日、そのことをキリアンに話したら、同じ時間に彼のホテルの窓にも鳥が突っ込んでいたことが分かった。ストーリーは2つ増え、鳥は2羽減ったといったところだ(笑)

—ついに超常現象を信じる気になりましたか?(笑)

監督: 説明はできないけど、あれは“レッド・ライト”(赤信号、警告)かもね。でも僕らの現場の雰囲気はとても良くて、笑いが絶えなかったよ。時にストーリーがダークであればあるほど、現場の空気は明るいんだ。常にジョークが飛び交っていたし、キャストとの仲も良かった。でも僕が「アクション」と言うと、全てのムードが一変して、ものすごく張りつめた空気になるんだ。

—ベテラン揃いですが、現場でのキャストたちの様子は?

監督: みんなおもしろかったよ。シガーニーはとても皮肉っぽいシャープなユーモアのセンスの持ち主なんだ。デニーロはとても温かい人柄で、シャイというわけではないけれど、口数は少ない。彼が3つ言葉を発すると、それは倍の意味を持つような素晴らしい人だよ。キリアンもとても面白い人だ。僕らはまるで同じ車を運転している相棒のようだった。

—デ・ニーロは出てきた瞬間から、カリスマ超能力者サイモン・シルバーにしか見えませんでした。

監督: 素晴らしいよね。彼には人を引きつける存在感があるんだ。彼を一目見ると、史上最高の超能力者だと信じてしまう。何を演じても史上最高になれる人だよ。何しろロバート・デ・ニーロだからね!

—日本の映画ファンには、どのように『レッド・ライト』を楽しんでほしいですか?

監督: 僕が保障できるのは、観客は自分自身を疑い始めるはずだということ。映画が始まった時点では安心していて、自分で自分の考えをコントロールできると信じている。でも、だんだんその感覚を失っていくだろう。自分自身の知覚を信用できなくなる瞬間が来ると思うよ。自分が理解していると確信していても、必ず裏切られるんだ。

—これから映画を観に行く人に、何か一つ注意を払うべきヒントをあげるとしたら?

監督: 注意を払うのではなく、チケットにお金を払ってほしいな(笑)それは冗談で、僕は何にも注意を払ってほしくないんだ。今作はマジックのトリックだから。どこに注意を払っても、それは間違っていると思うよ。

—まだ全ての答えを得られていないような気分です…もう1度観て、1度目に見逃した全ての“レッド・ライト”を見つけたいです。

監督: 多くの場合、疑問は答えよりも大切なんだ。2度目に観ると、1度目に見逃したたくさんのディテールを発見するだろう。そして、全ての“レッド・ライト”が最初からそこにあったことに気づくんだ。どれをどのように解釈するべきか、自分が何を探していたのかが分からなかっただけでね!



『レッド・ライト』

物理学を信奉するマーガレット・マシスン博士とジョシュのトムは、科学力によって数え切れないほどの超常現象のペテンを見抜き、イカサマ超能力者の嘘を暴き出してきた。そんな彼らの前に、恐るべき強敵が出現する。30年以上も姿をくらませていた超能力者サイモン・シルバーが表舞台に復帰したのだ。やがてマーガレットは因縁あるシルバーの呪いに襲われたかのように倒れ、トムは奇妙な現象に悩まされながらもシルバーの調査に身を投じていく。はたしてシルバーの超能力は本物なのか。そしてシルバーが復活を遂げた真の目的とは…。

監督/脚本/編集/製作:ロドリゴ・コルテス
出演:キリアン・マーフィー、シガーニー・ウィーバー、ロバート・デ・ニーロ、ほか
配給:プレシディオ
2013年2月15日(金)より、TOHOシネマズ六本木ヒルズ他全国ロードショー!
©2011 VERSUS PRODUCCIONES CINEMATOGRAFICAS S.L.(NOSTROMO PICTURES) / VS ENTERTAINMENT LLC

オフィシャルサイト>>

Interview + Text: Nao Machida

10:34

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