MTV BLOG

デス・キャブ・フォー・キューティーのベンジャミン・ギバードがソロ・アルバムを語る

2012-10-17
全米チャートで首位を獲得し、グラミー賞受賞経験もある、米ワシントン州出身の人気ロック・バンド、デス・キャブ・フォー・キューティー。そのフロントマン、ベンジャミン・ギバードが、自身初となるソロ・アルバム『Former Lives』を完成した。過去8年間に書きためてきた楽曲を収録したという今作には、曲を書いたその時々のベンの視点が詰め込まれており、デス・キャブとは違った独自の世界観が楽しめる。

ここではアメリカ・ロサンゼルス在住のベンがMTV Newsのために答えてくれた、貴重な電話インタビューをご紹介。ソロ・アルバムの制作秘話から、日本盤ボーナス・トラックとして収録された「イチローのテーマ」まで、じっくりと語ってくれた。



—まずはソロ・アルバムの完成おめでとうございます。今作に収録されたのは過去8年間に書きためてきた作品だそうですが、バンドとしての楽曲よりも私的な作品のように感じました。このタイミングでソロ・アルバムとしてリリースしようと決めた理由は?また、楽曲を書いた時点で、いつか発表しようと考えていたのでしょうか?

ベンジャミン・ギバード(以下、ベン): 別に(ソロ・アルバムのリリースを)計画していたわけじゃないんだ。気付くとレコード1枚出せるくらいの曲が溜まっていて。で、レコーディングしようって決めて、そこからアルバム1枚作れれば、と思ったんだよ。

—デス・キャブ・フォー・キューティーとして15年前から活動してきたわけですが、他のメンバーは『Former Lives』を聴いて、どのような感想を言っていましたか?あなたのソロ活動について応援してくれていますか?

ベン: みんな応援してくれているよ。誰かが何か気に入らないと、大抵はしばらく避けられたりするもんだけど、今のところ周りはみんなこのレコードの話をしているし、楽しんでくれていると思う。だから、気に入ってくれているんじゃないかな。

—8年という長い月日の間に書かれた楽曲ということで、特定のコンセプトやテーマが感じられるバンドのアルバムとは異なり、それぞれの楽曲に異なる世界観を感じました。それぞれの曲に書きたい想いを込めるという作業はいかがでしたか?バンドのアルバム用の曲作りと比較して、自由に取り組めましたか?

ベン: (バンドとソロの)ソングライティングのプロセス自体はあんまり変わらないな。僕はソングライターだから、常にプレイして、曲を書いてる。いつでも曲を思いついたら、それを形にする、っていう。だからどんな場合でも、ソングライティング自体はほとんど同じなんだ。実際、今回のアルバムの曲は、その当時作っていたデス・キャブのアルバムにはうまくはまらなかった曲なんだよ。曲として良くなかったっていうんじゃなく、デス・キャブのアルバムにはまらなかった曲だね。



—アルバムタイトル『Former Lives』に込められた意味は?あなたにとって、このソロ・アルバムはどのような存在なのでしょうか?

ベン: デス・キャブのアルバムとは違って、このレコードはもっと長いスパンから生まれてきたレコードだから、このタイトルを付けることで、それぞれの曲世界を一つにくくれるような気がしたんだ。それぞれの曲は僕の人生の違う時期の視点を提示しているからね。その時に辿り着いた場所、その時に歩いていた道、その時に出会った人たち。だから…それを説明するようなタイトルじゃなく、全体を暗示するようなタイトルにしたかった。それと、やっぱり全体を繋ぐような感じが気に入ったんだ。

—過去の日記を読むといろいろな感情がわいてくるものですが、過去に書いた楽曲をアルバムとして発表するにあたって、当時のことを振り返ったりしましたか?ハードディスクにはもっと私的な発表したくない楽曲も詰まっているのでしょうか?

ベン: 書いた曲のことはあまり考えないようにしているんだ。もうかなり前に、自分がどれだけ曲をストックしているかも考えなくなった(笑)

—アルバムの資料を読んだ時には、さまざまな時期に書かれた楽曲集で、“カウポークをベースにマリアチバンドの1人として歌った曲”もあるなど、全く異なるサウンドのミックスになるかと想像していました。でも、全体を通して聴くと不思議な統一感が感じられたのですが、アルバムを制作するにあたって、過去に書いた曲に手を加えたりしたのですか?

ベン: 今回サウンド的に比較的統一感があるのは、やっぱりほとんどが同じスタジオでレコーディングされたからだろうな。同じプロデューサーでね。だから曲としてはいろんな時期に書かれていて、ある数ヶ月間に集中して書かれたわけじゃなくても、レコーディングが同時期だったから統一感がある。それぞれの曲を、それぞれが書かれた時期にレコーディングしていたら、たぶんアルバムとしてはうまくいかなかったと思う。中にはかなり古い曲もあるし…でも同時期にレコーディングしたことで、サウンド的に同じパワーがあるものとして提示されていると思う。



—アーリマートのアーロン・エスピノーザとのレコーディングはいかがでしたか?全ての楽器を演奏したそうですが、バンドの作品を制作するのと違った苦労や楽しさはありましたか?

ベン: アーロンとは90年代からの知り合いだから。もちろん今回のレコーディングでもっと親しくなって、ほんとに楽しかった。彼のスタジオでレコーディングしたんだけど、本当に素晴らしいスタジオなんだ。完全に設備が整っているんだけど、普通の生活スペース風で、プロフェッショナルなレコーディング・スタジオっていう雰囲気じゃないんだよね。だから、リラックスしてクリエイティヴになれると同時に、ちゃんとレコーディング・スタジオにいる気持ちになれる。僕はそういう場所が好きなんだ。

—リード・トラックに「Teardrop Window」を選んだ理由は?この曲はロサンゼルスに移ってから書かれた、シアトルをインスピレーションにした曲だと思いますが、どのような想いを綴ったのですか?

ベン: シアトルにはスミス・タワーっていう建物があって。1914年に建てられて、30年代までは西海岸で一番高い建造物だった。ニューヨーク・シティ以外では唯一の高層建築だったんだ。建物としても本当に美しいんだよ。堂々としていて威厳があって、スペース・ニードルができるまでは、シアトルのスカイラインにおける宝石的な存在だった。今はシアトルと言えばスペース・ニードルで、映画でシアトルが出てくる時は絶対にスペース・ニードルが映されるんだけど。みんなが『シアトルと言えばスペース・ニードル』と思っている。もちろん、あれもいいんだけど、僕としては個人的にずっと愛してきたスミス・タワーについて曲が書きたかった。見過ごされてきた素晴らしいものについてね。

—エイミー・マンとのデュエット「Bigger Than Love」はとても素敵なラブソングですが、この曲のインスピレーションは?エイミーとデュエットすることになった経緯も教えてください。実際に一緒に歌ってみていかがでしたか?

ベン: エイミーとは友だちなんだ。あの曲は最初からデュエットだったんだけど、それを誰と一緒に歌えるか考えた時に、最初に浮かんだのがエイミーだった。で、彼女が来てくれて。本当に素晴らしかったよ。自分がずっと昔から聴いていた彼女の声が、僕が書いた曲を歌っているんだから。スピーカーからそれが聞こえてきて…ほんとクレイジーだったな。素晴らしい仕事をしてくれた。



—「Something’s Rattling (Cowpoke)」はマリアチバンドの一員として歌ったと読みましたが、カウポークをベースに楽曲を作るというアイディアはどのようにして生まれたのですか?

ベン: あれはLAに住んでいた時に作った曲なんだ。スタン・ジョーンズが書いた“カウポーク”っていう曲、カウボーイのヨーデルの曲が気に入って、それに僕が新しい歌詞を付けたんだけど。実は書いた後に著作権をクリアしなきゃいけなくて…馬鹿な話なんだけど、それをしなきゃいけないって気付いたのが結構遅くて。著作権を持っている人を追跡して、許可をもらうのにしばらくかかって、ちょっと緊張したんだよね(笑)で、あのコーラスはトリオ・エラスっていう女性三人のマリアッチ・バンドに頼んだんだ。僕が彼女たちの前でギターで歌って、「君たちのライヴでこれをやるとしたらどんな感じ?」ってやってもらったら、もうすぐにあのコーラスになった。ほんと、すごくいい仕事をしてくれたよ。

—アルバムの中で特に思い入れのある楽曲はありますか?また、常に曲作りをしているとのことですが、今後も(たとえばまた8年後に)、楽曲が集まった時点でこのようなソロ・アルバムを発表することを考えていますか?

ベン: 特に好きな曲っていうのは…ないかな。その時々によって違うし。それぞれが自分の人生のある時期から生まれた曲だしね。今はソロ・アルバムをまた作ろうとか、そういう気持ちはないけど、これからもずっと曲を書いていくだろうし、いい曲をたくさん作りたいとも思っている。だから、そこから例えば8年後にはまたソロ・アルバムとして何枚かリリースできていればいいな、っていう感じかな。それを目指すっていうよりは。

—ボーナス・トラックとして元シアトル・マリナーズのイチロー選手に捧げた「Ichiro’s Theme(イチローのテーマ)」が収録されていて、日本のファンは大喜びすると思います。この楽曲は彼がマリナーズ在籍中に書かれたのですか?
 
ベン: うん、2年ほど前に書いた曲なんだ。彼がまだマリナーズにいた頃に。僕はLAに住んでいて、ちょっとシアトルに対してホームシックみたいな気持ちになっていて。それで彼のテーマ曲を書いたんだけど、今は彼もヤンキースだからね。ニューヨークでの活躍を願っているよ。

—このアルバムを引っさげてツアーをまわるそうですが、ソロのステージはどのようなものになりますか?

ベン: ソロのアコースティック・ライヴは前にもやったことがあるからね。ギターとピアノとかで。今回もそうなると思う。

—日本にもたくさんのデス・キャブ・ファンがいるのですが、ソロとして来日する予定はありますか?今後の予定は?

ベン: 日本にも(ソロのライヴで)行きたいよ、もちろん!スケジュール的にうまくいけば。日本でプレイするのはいつだって楽しいからね。

—日本のファンにメッセージをお願いします。

ベン: 日本のファンのサポートには、長年本当に感謝してる。僕らみんな、日本に行くのはいつも楽しみにしているんだよ。僕にはものすごく親しみが感じられる場所なんだ。第二の故郷って言えるくらい。だから、日本に行くチャンスがあるたびにほんと感謝しているし、楽しみにしているよ。



ベンジャミン・ギバード

1976年生まれ。米ワシントン州べリンガムで結成された4人組のロック・バンド、デス・キャブ・フォー・キューティーのフロントマン&ソングライター。デス・キャブ・フォー・キューティーは現在まで7枚のアルバムをリリース。メジャー移籍後の3枚のアルバムは全てグラミー賞にノミネートされ、6枚目のアルバム『ナロー・ステアーズ』は全米アルバム・チャートの1位を獲得している。また、ジミー・タンボレロとのデュオ、ザ・ポスタル・サーヴィスでも知られ、2003年にリリースされたアルバム『ギヴ・アップ』は全米でゴールド・ディスクを獲得している。『Former Lives』は、ベンがここ8年の間に書いた楽曲からなるアルバムで、長年の友人でもあるアーリマートのアーロン・エスピノーザによってレコーディングされた自身初のソロ・アルバムとなる。ゲストとして、エイミー・マンやスーパーチャンクのジョン・ウースター他が参加。

日本オフィシャルサイト>>
『Former Lives』全曲試聴実施中!

17:01

グライムスが語るグライムス誕生秘話

2012-10-10
あっという間に夏も終わり、肌寒い季節になってきました。夏フェスの思い出にひたりつつ、部屋でぬくぬくと音楽を楽しんでいる人も多いのでは?ここでは「SUMMER SONIC 2012」で初来日果たした、カナダ出身のグライムスことクレア・バウチャーのインタビューをご紹介します。

英「NME」誌の「最もエキサイティングな新人バンド2012」に選出され、そのフォトジェニックなルックスで数々の表紙を飾るなど、すっかりインディー・シーンのアイコン的存在となった彼女ですが、数年前まで音楽経験は全くなく、完全独学で曲作りを始めたのだとか。まるでティーンの女の子のような早口で、グライムス誕生秘話をオープンに語ってくれました。



—グライムスはどのようにして始まったのですか?

グライムス: ミュージシャンの友だちが多いから、いつもバックコーラスを頼まれていたの。私の友だちグループでは、女の子のバックシンガーの需要がある時期があったわけ。それで私は友だちのためにバックコーラスをやっていたんだけど、その時にレコーディングの様子を観察して、やり方を把握したの。それで自分でもやり始めたって感じかな。

—子どもの頃から音楽をやっていたわけではなく?

グライムス: 全然!(音楽は)実は私にとってかなり新しいものなんだ。だからこそ、ものすごいスピードで超はまったんだと思う。音楽制作を始めたのは2009年か10年かな。もとはバンクーバー出身で、モントリオールに引っ越したんだよ。

—グライムスという名前の由来は?

グライムス: 特に意味はないの。曲を作ったんだけど、それを出す段階で友だちが「何かアーティスト名がないと」って。げ、どうしよう、って思った。でもMySpaceが流行っていた頃、友だちといっぱい曲を作って、存在もしないニセモノのバンド名でアップするっていう遊びをしていたのね。いろんなページをアップした中で、たまたま“グライムス”のアクセスが1番良かったわけ。それで、「じゃあグライムスにしようよ、既に1番人気だから」って(笑)だからグライムスは、元は私のでっちあげたニセモノのバンド名なんだ。

—すごい経緯ですね(笑)今はグライムスという名前は気に入っていますか?途中で変えようと思ったことは?

グライムス: こうなるんだったら、きっと違う名前にしていたかも。でも、何の意味もないっていうのもちょっとクールだよね。

—名前を聞いただけでは、どんな人か分からないのもいいですよね。

グライムス: 多くの人はグライムスと聞くとUKのラッパーなんじゃないかと想像するみたい(笑)最初にグライムスって適当につけた時は、ジャンル・リストに“グライム”があったから。それでページのジャンルの欄に“グライム、グライム、グライム”って書いて、(複数形で)“グライムス”にしたの。適当だよね(笑)

—あなたのサウンドはとてもユニークですが、子どもの頃はどんな音楽を聴いて育ったのですか?

グライムス: ゴスとかメタルにすごくはまっていたわ。インダストリアル・ロックとかね。

—ナイン・インチ・ネイルズとか?

グライムス: うん、ナイン・インチ・ネイルズは大好き!トゥールとか。1番好きなのはマリリン・マンソンだよ。スマッシング・パンプキンズとかコクトー・ツインズも好き。





—ご自身のサウンドはそういったサウンドとは全く違いますが、どのようにして見出したのですか?

グライムス: 成り行きでこうなったとしか言えないな。私はちゃんとした音楽教育を受けていないし、奇妙な音楽的影響が多い環境で育ったし…。たとえば、私が10歳の時にはナップスターが流行っていたの。私たちの世代はそういった音楽サービスが子どもの頃からあった最初の世代だと思うのね。それによって、人々の音楽の聴き方は完全に変わったわ。過去2年間に、あらゆる音楽を聴いて育った私たちの世代が自分たちで音楽を作る年齢になって、全ての境界線がなくなったように思う。

そういった環境に加えて、私は音楽教育を受けてこなかったから、「音楽はこう作るべきだ」という固定観念がないわけ。ミュージシャンの友人の大半は音楽への理解があるけれど、私はそれがないまま音楽制作を始めた。多くの失敗やおかしな手法が、最終的にはプラスになったんだと思う。たとえば、「ヒップホップのビートを作ろう」って始めたのに、エンヤ的な要素が満載だったりね(笑)とにかく、避けられないような余分な要素がたくさんあるのよ。

—音楽教育を受けてこなかったことによる産物なのですね。

グライムス: 確実にそうだと思う。私はダンスやイラストのトレーニングを受けて育ってきたのだけど、そういったことに対しては固定観念をなかなか破ることができないの。子どもの頃から、どのようにして描くべきかを深く学んできたから、自分の中でも癖がついているのよね。だから音楽に関しては、知識がなかったことが本当に良かったと思う。

—あなたの音楽について書いた記事をたくさん読みましたが、ライターたちは作品をどう説明すべきか悩んでいるようでした。あなた自身は自分のサウンドをどう表現しますか?

グライムス: グライムスとして作っている音楽に関しては、“エクスペリメンタル・ポップ”(実験的ポップ)だと思う。気分が良くなる音楽という意味で、ポップだと思うんだ。

—中毒性もありますしね。

グライムス: うん、ラモーンズだってブリトニー・スピアーズだってポップと言われるし、ポップは極端に幅広いジャンルだと思うの。そこに属す全ての音楽に共通する唯一のことは、満足感があるっていうこと。私にとって、自分で気分が良くなる音楽を作ることがとても大切で、だからこそポップだと思う。でも、音楽制作を通じて常にいろんなことにトライしているし、何でもやってみたいから、ポップには限定したくない。だから“エクスペリメンタル・ポップ”なの。



—最新アルバム『Visions』は日本でも6月にリリースされましたが、過去4年間に制作した4枚目のレコードだそうですね。すごく生産性が高いですよね。

グライムス: 私にとって音楽制作は、暇があればやるようなことなの。メンタルヘルスを保つためにも音楽制作は必要なのよ。だから、どんどん作ることができてしまうわけ。衝動的に音楽を制作しているの。

—常に曲作りを?

グライムス: うん。最近は常にツアーに出ていてヴォーカルをレコーディングできないから、ちょっと難しいんだけどね。レコードは全部自分でプロデュースしているの。とても恥ずかしいんだけど、曲はGarageBand(作曲ソフト)で作ったわ(笑)ほとんど全て自分でやったんだよ。作詞も含めて、グライムス名義でやっていることは全て自分でやっているの。「Nightmusic」のミュージックビデオは例外ね。「Oblivion」のミュージックビデオは他の人の協力を得て作ったわ。でも今後は全てのミュージックビデオも100パーセント自分で手掛けるつもり。

—全く音楽経験がなかったのに、こんなにも中毒性のある楽曲をたくさん作れるってすごいことですよね。

グライムス: いろんな音楽を聴くからね。音楽教育は受けていないけど、音楽に超超超取り憑かれているの。10代の頃、音楽がどのように作られているかは全く分からなかったけど、百科事典のような知識はあった。音楽に関する全てのことに取り憑かれていたのよ。ダンスを習っていたこともあって、音符は読めないけどリズム感はあったし。だから、音楽制作を始めた時はとてもロジカルに考えられたわ。

—楽曲を書くときは、どのようなことからインスピレーションを受けますか?

グライムス: 視覚的なインスピレーションが多いわね。常にミュージックビデオを念頭に置いているし。

—今作は4ADレーベルからの初のリリースですが、大きなレーベルと契約して注目を集めた気分は?

グライムス: 良い感じだよ。多くの人にとって、レーベルとの契約は目標だと思うの。でも私はすごくシャイだし、誰にも自分の音楽を聴かせたくなかった。ある意味、無理強いされて聴かせるようになったという感じ。ライヴもやるようになって、それは良いことなんだけど、常に自分の最大の恐怖に直面しているような気分だった。でも、レーベルとの契約はポジティヴなことだと思う。自分の殻を破る上で良い経験となったわ。1年前だったら、知らない人と話すなんて不可能だったもの。ものすごくシャイだったの。

—大勢の前でライヴをやることも嫌だった?

グライムス: サイアクよ。昔は泣いていたわ(笑)泣きながらステージを走り降りていたの。

—今はライヴに慣れましたか?

グライムス: 多かれ少なかれね。


手にはタトゥー風に“グライムス”の落書きが。

—英「NME」誌が「最もエキサイティングなニューカマー」に選ぶなど、4ADと契約後、さらに注目が集まっていますね。

グライムス: クールなことよ。そういう状況は昔だったら脅えていたわ。「怖すぎてできない」って泣き叫ぶような時期もあった。でも、実際はとても居心地の良い場所なんだと気づいた。意見もたくさん言えるしね。意見すら言えないアーティストは多いから、4ADは良いレーベルだと思う。自分の音楽も聴いてもらえるし…社会に対して納得の行かないことがたくさんあるのだけど、それを変える最善の方法は、社会において重要な人になることだと思うの。それに、アート活動で生活できるということも幸せに感じるわ。私の仕事はアートを作ること。そう言える人は数少ないもの。それは良いことだと思う。

—『Visions』をリリースした感想は?

グライムス: 現時点で既に完成から1年ほど経っているの。確か昨年の8月29日に完成したのよ。アルバムは3週間でレコーディングしたの(笑)

—3週間!だから生産性が高いんですね。

グライムス: うん。8月1日に始めたから…1ヶ月くらいかな。だから完成からは1年くらい経っているんだけど、今聴くとたくさんの失敗に気づくわ。こうすれば良かった、というような部分があるの。シャイに感じて、リバーブとかを被せた部分も多いし…分からないけど。満足しているし、誇りに思っているけどね。

—あなたの声はまるで楽器のようですね。過去にトレーニングを受けたことはないとのことですが、自分の歌声をどのように見出したのですか?

グライムス: 誰でも歌えるって気がするの。自信の問題だと思うな。コミュニケーションのしかたというか。それに、言語と歌には相互関係があると思う。だから英語じゃない言語の音楽でも聴くことができるし、理にかなうの。オペラとかR&Bとか特定のジャンルのシンガーになるために受けられるトレーニングはあるのかもしれないけど、本来歌うことにトレーニングは必要ないと思っているわ。私だって、人生で歌った経験はゼロなのにバックシンガーをやっていた。「歌ってみて」と言われて歌ったら、「それでいい」って言われただけ。必要だったのは、誰かから「歌が上手だね」って言われることだけで、それで自信がつくのよ。

—自分の歌声を初めて聴いたときの感想は?とても耳心地が良い歌声ですよね。話し声とも少し違って。

グライムス: 話し声とはかなり違うよね。私はいろんな声が出せるの。もちろん、歌いやすい音域はあるけれどね。あまり自分の声として聴いていないかも。自分の声だって考えすぎるとパニクってしまうわ。ある意味、自分から切り離して聴かないと。音楽を作るときは自分を注ぎ込むんだけど…だって、音楽を聴いている時に「この人、朝ご飯に何を食べているのかな?」とか考えないでしょ?だから、私も自分の音楽を聴く上で、自分については考えないようにしている。ここでは何が起きていて、どうやったら改善できるかってことを考えているわ。でもそれも考えすぎるとパニクってしまう(笑)

—アルバム・ジャケットも非常にユニークですが、ご自分で手掛けたのですか?日本語の文字も入っていましたね。

グライムス: うん、インチキな日本語よ(笑)最初は落書きレベルで絵を描いていたんだけど、ジャケット・デザインの締切りが迫っていたから、「これでいいや」って。でも音楽もアートも同じところから生まれるんだと思うの。いつもホラー映画を観ながら絵を描くんだけど、このジャケットはギャスパー・ノエの『エンター・ザ・ボイド』を観ながら描いたのよ。映画の中に日本語の文字がいっぱい出てきたから、それで文字を書き始めたわけ。生と死、愛と苦しみについての映画だったけど、私の音楽もそうだと思うの。



—ビデオも作って、絵も描いて、音楽も作って、すごいクリエイティヴですね。

グライムス: アートはアートだと思うの。クリエイティヴィティはクリエイティヴィティよ。もしクリエイティヴな人がいたら、何をやらせてもクリエイティヴなんだと思う。アートが得意な人は科学も得意だと思うな。考え方に制限がないというか。

—ところであなたはファッションもユニークですね。日本のファンも注目していると思います。

グライムス: 私は日本のファッションを真似しているのよ!まだ原宿には行っていないけど、絶対に気に入ると思う。子どもの頃から興味があったから、特にファッションに関して、来日をとても楽しみにしていたの。



—ツイッターで日本のことを「グライムスの精神的な故郷」と書いていましたね。

グライムス: 日本のカルチャーが本当に大好きなの。アニメでも、とても強い女性のキャラクターが登場するでしょう?あれは他の国では見られないと思う。すごくかわいいのに、とってもバイオレントだったり。『キル・ビル』で栗山千明が演じたキャラクターとか、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』とか、ああいう作品にはとてもパワフルな若い女性のキャラクターが登場するわ。非常に日本的な興味深いカルチャーだと思う。昔から強い共感を感じていたの。人は常に世界を見つめて、自分と共感できるものを探すものでしょ?私は『もののけ姫』の方が、『X-MEN』なんかよりもずっと共感できたわ。だから、そういった作品を参考にしてきたの。

—来日前のメッセージビデオで「トトロを連れて行く」と言っていましたが、本当に連れてきたんですね。子どもの頃に買ったのですか?

グライムス: 違うの、LAで買ったのよ。子どもの頃に買ったトトロも持ってるんだ。トトロはいくつか持っているの。


このトトロ型リュックサックを背負って、さっそうと取材現場に登場。

—今後はグライムスとしてどのように成長していきたいですか?

グライムス: 前はインタビューなんて無理だったけど、今ではこうして答えられるようになったし、少しずつ成長していると思う。以前は自分の声を出すのが怖いからリバーブを使いまくっていたけど、今後はもっと印象的な作品を作りたいな。キュートさや子どもっぽさを抑えたいわ。いつもメディアに「愛らしい」って言われて、ちょっとムカつくの。だって「愛らしい」存在になんてなりたくないから。もっと力強い、アグレッシヴなアーティストになりたい。もちろん、それでもポップ・ミュージックであることに変わりはないけどね。

—既に次の作品は手掛けているのですか?

グライムス: クリスマス・イヴまで休みがないの。でも休みに入ったらすぐにレコーディングを始めるつもりよ!



グライムス
カナダのバンクーバーを拠点に活動中の女性ソロアーティスト。本名クレア・バウチャー。独学で作曲を学び、宅録で作品を作り始める。これまでに自主レーベルからスプリット作を含む計3枚のアルバムをリリース。4枚目となる本作より、英名門レーベル<4AD>に移籍した。NMEの"最もエキサイティングな新人バンド2012"の1位に選出され、今年最も飛躍が期待される女性アーティストとして既に高い注目を浴びている。「SUMMER SONIC 2012」で待望の初来日を果たした。

オフィシャルサイト>>

Photos: Tetsuro Sato
Interview + Text: Nao Machida

15:01

BLOG SEARCH

PROFILE

  • ブログの説明
    MTV NEWSのニュースプレゼンター&スタッフが、現場から最新ニュースや取材の裏話をレポート!
  • ライタープロフィール
    最新の音楽や映画情報を毎日お届けするMTV NEWSの制作スタッフです。

ENTRIES

CATEGORIES

ARCHIVES

FEEDS