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ダーティー・プロジェクターズのデイヴが新作を語る

2012-07-04
2009年に発表した前作『Bitte Orca』で大絶賛を浴びたダーティー・プロジェクターズが、本日(7月4日)世界待望のニュー・アルバム『Swing Lo Magellan』をリリースした。ニューヨーク市街地から車で4時間ほど北西へ上がった、ニューヨーク州デラウェア群の民家にて、作曲から録音まで全て自分たちの手で行ったという今作。前作とは違い、メロディや歌が前面に押し出され、バンドの新たな魅力を開花させている。ここでは、独りで民家にこもり曲作りに励んだというバンドの中心人物、デイヴ・ロングストレスの来日独占インタビューをどうぞ。



—久しぶりの来日はいかがですか?

デイヴ: 日本は大好きなんだ。すごくクールな街だと思う。たとえニューヨークからでも、東京に来ると30年先の未来に居るような気分になるよ。今回は3度目の来日だよ。去年はクアトロでライヴをするために来日した。あれはアメイジングなコンサートだった。それにフジロックにも出たよ。

—フジロックでは2回ライヴをされましたよね。

デイヴ: そうそう、2度ね。フジロックのライヴは最高だったよ。山に行けたのも良かった。すごく美しい場所だったし、空気もとてもきれいで新鮮だったし、本当にアメイジングだった。

—山と言えば、ニュー・アルバム『Swing Lo Magellan』も山にこもって作ったそうですね。

デイヴ: そのとおり!

—なぜニューヨーク州北部のデラウェア群を選んだのですか?

デイヴ: 前作『Bitte Orca』を引っさげて世界中をツアーした後、ホームであるブルックリンに帰りたくなったんだ。デラウェア群はニューヨーク市内から3、4時間ほど離れた山で、ホームにも近いし、純粋にクリエイティブな環境を持つことができて理想的だったんだ。

—ある意味、クレイジーなツアーの日々からのデトックスですか?

デイヴ: まさに!デトックスして、独りで自分自身の思考と向き合いたかったんだ。とても価値ある時間だったよ。



—山の中で完全に独りで過ごすなんて、怖い思いはしませんでしたか?

デイヴ: 怖くないよ。独りで過ごすのは好きなんだ。それに、ときどきゾクっとするのも良いもんだよ。ツアー中は常にみんなに囲まれているからね。

—ダーティー・プロジェクターズは特に大所帯ですしね。

デイヴ: そうなんだよ(笑)バンドには大勢のメンバーが居るし、行く先々でたくさんの素晴らしい出会いもあるしね。だから、それとは真逆の環境に行くって、かなりクールなことだったよ。たった独りで、自分と自分の思考しか存在しない場所にこもったんだ。ときどき寂しくなったらブルックリンに帰っていた。夜中に運転すれば2時間半で着いちゃうんだ。

—なるほど。その山の中で、どれくらいの時間を曲作りに費やしたのですか?

デイヴ: 5ヶ月ほどを曲作りに費やした。全部で70曲書いたよ。ダーティー・プロジェクターズの初期のアルバムはストーリー性があったり、自分たちの記憶からブラック・フラッグのアルバムを再解釈するというコンセプトがあったりしていた。ああいったアルバムだと、ストーリーを伝え終わったり、コンセプトを実現させたりした時点で、曲作りは終わるんだ。でも今回はとにかく曲を書いた。曲ごとの小さな世界を作って、それぞれを美しい小さな木箱に詰め込むという感じの作業だった。永遠に続けられるような気がしたよ。とても満足感を得られる作業だった。

—今作に収録された楽曲からは、確かにそれぞれ異なる世界観を感じました。誰も居ない家の中で、どうやってさまざまなインスピレーションを受けたのですか?全ては想像の世界なのですか?

デイヴ: そうだね、どれも僕の頭の中から生まれたんだと思う。僕は常に頭の中にアイデアを抱えて過ごしているんだ。ツアーはとても強烈な時間で、ときに数週間分のことを1日で体験したりするんだよ。さまざまなバックグラウンドの人とたくさん会話をするしね。だから、考える時間がないんだ。そういった体験から生まれた考えを現像するという作業は、とてもリラックスできる時間だった。



—70曲全てをその家で書いたのですか?ツアー中に曲作りはしましたか?

デイヴ: 僕にとって、ツアー中に曲作りするのはとても難しいことなんだ。周りに人が多すぎるよ(笑)でも、自覚はしていなかったけど、ツアー中にいくつかGarageBand(音楽制作ソフト)で曲を作ってはいたんだ。その内のいくつかは今作の収録曲のベースになっている。7曲目(「Maybe That Was It」)は自分のPCに入っていたGarageBandのファイルを発見して作った曲なんだ。いつどこで作ったのかは全く覚えていないんだけどね。どこかの国のホテルの部屋で作ったらしく、後ろでアンバーとヘイリーがおしゃべりしているのが聞こえる。そこで僕が独り静かに♪フンフンフン♪って歌っているのさ(笑)でも全く作った記憶がない。2010年のテキサスかもしれないし、2008年のコペンハーゲンかもしれない。フジロックの可能性だってある。

—クレイジーな体験ですね。

デイヴ: ああ、完全にジェイソン・ボーン的なことだよ。

—音楽面でも、新作は前作『Bitte Orca』と大きく異なるサウンドですね。意識的にサウンドを変えたのですか?それとも、これがたまたま制作時にバンドが選んだディレクションだったのですか?

デイヴ: そのどちらでもあるかな。僕は自分が過去にやったことを繰り返すのは好きではないんだ。だからこそ、ダーティー・プロジェクターズはこれまで成長してきたんだと思う。今回初期に書いた楽曲は少し『Bitte Orca』風だと感じていたよ。でも、そこを突破して前進し、新たな領域に突入したかったんだ。今作は間違いなく、とてもダイレクトで明確な作品にしたいと考えていた。磨き上げた石のような楽曲を作りたかったんだ。まばゆいタペストリーのようだった『Bitte Orca』とは対照的にね。切り刻んだヴォーカルに、連動したギターパートといった前作とは違って、今作はメロディとリリック、そしてリズムを重視した。



—世界的に大ヒットした『Bitte Orca』に続く新作ということで、プレッシャーもあったのではないですか?

デイヴ: おかしな話なんだけど、あまりにもたくさんの曲を書いたことによって、自分で自分を騙すことができたみたいで、あまりプレッシャーを感じずに済んだんだ。作った楽曲を編集することも考えなかったよ。とにかく曲を作って、自分で「これはこの考えを曲にしたものだ」という感覚を得られたら次の曲を作る、といった感じだった。そして次、そして次…どんどん書き続けたよ。ある時点まで到達したら、それまでに作った曲を振り返ってみた。すると、より引き立っている曲もあれば、いくつか組み合わせて良い曲になるものもあった。今作はそういった調子で作ったんだけど、どう思われるかを心配せずに制作できて良かったよ。それに常に頭にあったのは、僕らはケイティ・ペリーでもスヌープ・ドッグでもない、ただのアート・バンドだということ(笑)

—5ヶ月で70曲も作ったとは生産性が高いですね。壁にぶつかるようなことはなかったのですか?

デイヴ: 確かにいつもより良く書ける時期というのはあったかも。自分のフィーリングにいかに触れることができるかという問題だと思うんだ。おかしなものだよね…おかしくはないか(笑)

—オフィシャルサイトでは「Gun Has No Trigger」が先行公開されましたが、なぜあの曲を選んだのですか?

デイヴ: アルバムの収録曲は全てユニークなんだ。「Gun Has No Trigger」の魅力はとてもミニマルな曲だということ。ランDMCやN.W.A.といった80年代初期のヒップホップにインスパイアされて作った曲なんだ。どんなに小さな要素も外すことなく、楽曲が完成している。ヴォーカルは三重のハーモニーで、そのうち1つでも外すと「何か変だぞ?」と感じる。その3つの声と僕の声、そして超メチャクチャなグルーヴとベースだよ。N.W.A.の録音はそうやってできているんだ。声とビートとスネアでビッグなサウンドが生まれる。それに楽曲の内容や意味が、今の時代に合っているかもしれないと思った。

—ヒップホップを聴いて育ったんですか?あなたの音楽からはさまざまなジャンルの要素が感じられますよね。

デイヴ: うん、あらゆる音楽を聴いて育ったんだ。マーラーとランDMCのコンビネーションという感じかな。

—アルバムのタイトル『Swing Lo Magellan』の意味は?

デイヴ: 「Swing Low, Sweet Chariot」(黒人霊歌)が大好きだから。あの曲の持つフィーリングがとても気に入っている。あの曲は良い象徴になるなと思ってね。



—それから「About to Die」という楽曲が気になったのですが。すごくクレイジーで可笑しいくらいですよね。

デイヴ: そうなんだよ、そう言ってくれると嬉しいよ!みんなから「ものすごくシリアスでダークな曲ですね」とか言われちゃってさ。最高に可笑しい曲なのに!

—完全に隔離された家で書いたというのが分かった気がしました(笑)

デイヴ: 最高にクレイジーだよね(笑)独りで自分の考えと向き合っているうちに、あとから振り返ったら何のことだか分からない領域に達していたのかも。

—それから、「Maybe That Was It」はザ・ストロークスの「Is This It?」のアンサーソングだと聞いたのですが、本当ですか?

デイヴ: あれはジョークだったんだ。

—ジョークだったんですか!?

デイヴ: ぶっちゃけると、本当のところは分からない。ストーリー性のあるアルバムと、個々の曲を作ることの違いは、後者ではとにかく1曲1曲にいろんなことを詰め込もうとするんだ。それだけに、あとからインタビューで説明するのが難しい。それぞれの曲は、ただその瞬間にそうなっただけだからね。各曲が個々に完結していて、まるで石ころのようなものさ。だから、時に各曲について僕が語ることの多くはジョークか言い逃れか嘘になってしまう(笑)自分の作品について語るのは難しくて、もしかしたら最も正直な意見は、何も言わないことなのかもしれない。その瞬間に真実だと感じたことを曲にするわけだからね。あの曲は変な曲だよ。アンサーソングかどうか、本当のところは僕にも分からない。ある意味、そうなんだと思う。でも、アンサーソングを書こうと思って書いた曲ではないということは明確だよ。

—では、今この瞬間におけるお気に入りの収録曲はどれですか?

デイヴ: 今この瞬間は…そうだな、「Dance For You」かな。メロディがすごく気に入っているんだ。リリックはちょっと恥ずかしいんだけどね。自然にできた曲で、あとから書き直そうと思ったんだけど、いざ書き直してみると、「これは真実ではないな」って感じるんだ。だから、このおかしな恥ずかしい曲が残ったのさ。とはいえ、あのような構成の楽曲を自分が書けるとは思っていなかったよ。ブリッジが気に入っているし、メロディもうまくいった。あの曲を聴いた時に感じられる気分が気に入っているよ。

—今作ではエンジェルが不在ですが、ツアーには参加するのですか?

デイヴ: 正直まだ分からないよ。エンジェルは僕らよりも若いんだ。彼女はソングライターになりたいと思っている。今はソングライターとしての自分探しに集中しているんだよ。



—それから、数年前にビョークとEP『Mount Wittenberg Orca』コラボレートしていましたが、彼女との仕事はどのような体験でしたか?

デイヴ: 素晴らしかったよ。ビョークは昔から僕のヒーローだったからね。非常に情熱的で直感的でありながら、同時にイマジネーションを駆使して自由な作品を作ることも可能なのだということを示してくれたアーティストだった。ビョークは他人とは真逆の発想を、彼女ならではの美しいフュージョンにしてしまうんだ。彼女の作品に最初に出会ったとき、本当に大切に感じたよ。それに、彼女はルールには全く興味がなくて、自らのルールを作った人なんだよ。すごく刺激を受けたよ。長年にわたって魅了されてきたけど、あの時は彼女を見ているだけでたくさんのことを学ぶことができた。本当に素晴らしいアーティストだよ。決してディーヴァ的ではなく、君とこうして話しているのと同じように、とても話しやすい人だったよ。

—日本のファンはあなたたちのライヴを楽しみにしていますが、新作を引っさげて再来日する予定はありますか?

デイヴ: 秋に再来日するよ。日本でライヴするのは大好きなんだ。僕らのショーに興味を持ってくれていることが伝わってくる。オーディエンスがちゃんと注目してくれるからね。そういうオーディエンスの前で演奏するのが1番良いんだ。また来日できる日を楽しみにしているよ。
 

Photos: Tetsuro Sato
Interview + Text: Nao Machida



ダーティー・プロジェクターズ
米ニューヨークはブルックリン出身の6人組バンド。2002年にデヴィッド・ロングストレス(Vo, G)が中心となりバンドを結成。幾度のメンバーチェンジを経て、現在はデイヴに加えてナット・ボールドウィン(B)、アンバー・コフマン(G, Vo)、ブライアン・マックーマー(Ds)、ヘイリー・デックル(Vo)、エンジェル・デラドゥーリアン(Vo)の6人編成となる(本作では休養中のエンジェルを除く5人編成になっている)。今までに現在までに5枚のスタジオ・アルバムを発表。英DOMINO移籍後初めて発表した2009年の5作目『Bitte Orca』が年間ベスト・アルバムを総なめにし、本格的ブレイクを果たす。2011年、ビョークとのチャリティー・コラボ作品『Mount Wittenberg Orca』が待望の初CD化され、大きな話題となる。

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ダーティー・プロジェクターズ単独日本ツアー決定>>


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