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ザ・モーニング・ベンダーズ改めポップ・エトセトラ クリストファー・チュウ独占インタビュー

2012-06-08

2010年にリリースしたアルバム『Big Echo』が世界で高い評価を受け、一躍人気バンドの仲間入りを果たした米カリフォルニア州出身のザ・モーニング・ベンダーズ。昨年は「SUMMER SONIC 2011」にも出演し、ここ日本の音楽ファンをライヴでも魅了した。
 

そんな彼らがバンド名を「ポップ・エトセトラ(POP ETC)」に改名したというニュースが飛び込んできたのは、今年3月のこと。同時に無料配信されたミックステープは、その新たなサウンドに世界中のファンが驚いたようだ。MTV Newsは先日プロモーション来日したフロントマンのクリストファー・チュウに、バンド改名の理由や新作のサウンドについて詳しく語ってもらった。

—先日ツイッターで、来日することを日本語でつぶやいていましたね。


クリストファー・チュウ(以下、クリス):
ちょっとだけね、がんばってみた(笑)


—感心しました!日本で生まれたそうですね。


クリス:
うん。逗子(神奈川県)でね。


—何年くらい逗子に住んでいたのですか?


クリス:
1年半だけだよ。日本語は最近になって勉強し始めたんだ。だから、実は子どもの頃に覚えたわけではないんだよ(笑)


—そうなんですね。逗子での1番の思い出を聞こうと思っていたのですが、赤ちゃんだと何も覚えていないですよね(笑)


クリス:
覚えてないんだけど、数年前に逗子に帰ってみたんだ。それが1番の新しい思い出だよ(笑)2年前に逗子に行って自分が生まれた家を見てきた。まだそこにあったんだ。それに昔、うちの両親が行っていた場所も訪れてみたよ。小さな本屋やスーパーマーケット、寿司屋とかね。


—今回はザ・モーニング・ベンダーズあらためPOP ETC(ポップ・エトセトラ)として日本に帰ってきたわけですね。もう何度も聞かれているかと思いますが、新しいバンド名について教えてください。


クリス:
もちろん!この名前がバンドにふさわしいと考えた1つ目の理由は、人が耳にした時に、僕らのサウンドが少しでも想像できるような名前にしたかったから。もちろん実際に音楽を聴くまでは分からないわけだけど、想像だけでもできればいいなと思ってね。世の中にはとてもランダムな印象の名前のバンドがたくさん存在する。たとえば、ザ・ビートルズだって、名前を聞いただけでは彼らのサウンドは全く想像つかないよね。だから僕らはただのバンド名に留まらず、自分たちが演奏する音楽やジャンルを表現するこの名前が気に入ったんだ。


それに、現時点の自分たちにフィットするだけではなく、これまでの僕らや、これから僕らが進んで行きたい方向をとらえている名前を選びたかった。僕がなぜポップ・ミュージックが恐らく1番好きなのかというと、ポップ・ミュージックはとても幅広く常に変化しているからだ。ポップというのは、そこに関連した特定のサウンドはなく、ただ人々が受け入れて気に入ったサウンドを指すんだよ。僕らはポップと共に成長し、変化して、一緒に進んで行くことができると思った。だからこの名前を選んだんだ。



—そもそも最初はなぜ、ザ・モーニング・ベンダーズという名前を選んだのですか?私は「ベンダー」が差別用語になりうることを知らなかったので、オフィシャルサイトで発表された声明文を読んで驚きました。


クリス:
僕らも知らなかったから、とてもショッキングだったよ。最初にバンド名を決めた時は、他の多くの人と同様、深く考えていなかったんだよね(笑)当時の僕らは無名の小さなバンドだったし、こんなに長く続くかも分からなかった。ずっと音楽を続けたいとは思っていたけれど、このバンドで続けられるかは分かっていなかったんだ。だから、今回発表したような「ベンダー」という言葉の持つ意味(註: UKやヨーロッパの各地で“ホモセクシャル”を意味する差別用語として使用されている)も改名の理由だけれど、同時に自分たちも大きく変わってきたから、もう「ザ・モーニング・ベンダーズ」というバンド名が合わないように感じたんだ。僕らは熟考した上で、改名する機会が欲しかったんだよ。


—ある意味、良いタイミングだったわけですね。


クリス:
そうなんだ。それが主な理由ではないけど、ちょうど良いタイミングだった。


—「ベンダー」という言葉がイギリス英語で持つ意味については、いつ頃知ったのですか?


クリス:
バンド結成からしばらくはイギリスやヨーロッパの音楽シーンと縁がなかったから知らなかったよ。セカンド・アルバムをリリースしてイギリスでツアーを行った時に、現地の人からバンド名について聞かれるようになったんだ。そこで気づいた。


—バンドを改名する上で、最も大きな懸念事項は何でしたか?


クリス:
うーん、最大の懸念事項はみんなに知らせることだったんじゃないかな。「バンド名を変更した」という情報をみんなに伝えることだよ。1番恐れていることは、僕らのバンドが消えたとか死んだとか解散したとか思われること。僕らが活動を続けているとは知られることなくね。今でも町で人から、「君たち、ザ・モーニング・ベンダーズだろ?」と言われるし、その度に改名したって伝えないとならないんだ。インターネットだけでは全ての人に伝えることができないからね。でも改名は必要不可欠だった。選択肢はなかったよ。


—改名するにあたって、他にも候補はあったのですか?


クリス:
しばらくはいろいろあったんだけど、ポップ・エトセトラを思いついてからは、これが1番合っていると思ったんだ。


—「POP ETC」はタイポグラフィー的にもかっこいいですよね。良いグラフィックデザインになりそうです。


クリス:
そうそう、僕らもそういう意味でも気に入っているんだ。短いけど印象が強くて明確な名前が良かったんだよね。


こちらがニュー・アルバムのアートワーク。


—ファンからは新しいバンド名についてどのような反応が届いていますか?


クリス:
今のところは評判良いよ。バンド名を改名しただけではなく、サウンドも変えたから、最悪の事態を想定していたんだ。ファンにとっては、1度に受け入れるには激しい変化だよね(笑)でも、バンド名にもサウンドにも「気に入った」ってメッセージをもらっているよ。中には新しいバンド名が気に入らない人たちや、改名したことに腹を立てている人たちも居るけれど、僕らに選択肢はなかったから、それは仕方ないと思う。バンド名を改名する前から新しいサウンドでアルバムを制作していたから、改名しようがしまいが、ネガティヴな反応を示した人は居たと思うしね。だからいずれにせよ、必要なら今片付けちゃおう、みたいなことだった(笑)


—バンド名を改名するだけで怒るほどあなたたちが好きなのに、皮肉ですね。改名しているのはあなたたちなのに。


クリス:
そうなんだよ、奇妙だよね(笑)自分の経験とも重ねてみたんだけど…たとえばブラーがアルバム『Think Tank』を制作した頃、当時はそれを聴いて、「変なの。僕の知っているブラーじゃないし、気に入らないな」って思っていたんだ。でも、5年とか10年が経過した今、あれは僕のお気に入りのアルバムになっている。彼らのやったことは素晴らしいと思うし、革新的だったと思うんだ。でも、たとえ彼らがあのような作品をリリースしたからといったって、当時の僕は彼らをミュージシャンやアーティストとして尊敬することをやめなかったよ。「今は理解できないけど、しばらく経ってから再訪してみよう」って思った。だけど今はインターネットがあって、ファンが直接アーティストに簡単にメッセージを送ることができるから、音を聴いて直感的反応で「僕が聴きたいのはこんなサウンドじゃない」と思ったら、すぐにコメントをタイプしちゃうんだろうね。


—インターネットで好きなアーティストに関する膨大な情報を得ても、実際にちゃんと作品を聴いていない場合もありますよね。ミュージシャンもリスナーも音楽的に成長して変化していくものだと思うのですが。


クリス:
ほんと、その通りだよ。常に変化していくものだよね。バンド改名の発表とミックステープの配信をアルバム・リリースの数ヶ月前に行うことで、リリースする頃には僕らの音楽に集中してもらえるようになっていると理想なんだけど(笑)





—ミックステープは、なぜ無料配信にしたのですか?


クリス:
ファンにものすごく感謝しているという気持ちを示したかったんだと思う。一部のファンが期待しているものとは大きく違うサウンドを提供することへの葛藤もあったんだ。でも、最終的にはこの作品を作ろうと思った。自分たちにとってエキサイティングで刺激的なものを提供するのが、ファンにとっても1番良いと思うしね。だからファンに対して、『こんなにいろんな変化を遂げて、新たな道を進んで行く僕らについて来てくれてありがとう』っていう気持ちを示す何かを贈りたかった。僕らのファンの多くはそういった意味で、とても誠実だと思う。そんなファンがいることって、本当にスペシャルのことだよね。


—ミックステープを何度も聴かせていただきましたが、あなたたちの新たなサウンドに驚かされました。なぜ今回は違った方向に進もうと決めたのですか?


クリス:
2つのことによる結果だと思うんだ。1つはさまざまな音楽を聴いたこと。子どもの頃に聴いていた音楽を再び聴き返してみたんだ。


—たとえば?


クリス:
90年代の音楽だよ。ボーイズIIメンとか。ボーイズIIメンの『II』(1994)は初めて買ったアルバムだよ、CDではなくテープでね(笑)あとはマライア・キャリーとかさ。子どもの頃、ラジオでかかっていた曲だよ。子どもの頃に好きだった曲を、ここ数年で再発見したんだ。あらためて聴いてみるとメロディが美しいだけではなく、楽曲の構成も素晴らしいし、パフォーマンスもすごいことに気づいた。たとえばボーイズIIメンのハーモニーはとても複雑で、他に例を見ないほど巧妙に作り上げられているんだ。


だから一部のポップ・ミュージックがいかにリッチで、10歳の頃の僕と、音楽が大好きな今の僕をどれほど魅了できるかに気づき、自分たちも次のアルバムでそういったことを成し遂げたいと思った。即効性があって、初めて聴いたときから夢中にさせてくれて、さらにたくさんの個性が詰まっていて、聴けば聴くほど新しい魅力が発見できるような作品をね。


—なるほど。子どもの頃に他にはどんな音楽を聴いていましたか?


クリス:
いつも聴く音楽はどんどん変わっていくし、かなり幅広いんだ。常に新しいものを探している。MTVも観ていたよ!小さい頃はうちにMTVがなくて、たしか5年生の頃に観られるようになったんだったかな。すごくハッピーだったよ。それでもっと前のポップ・ミュージックも聴くようになった。ザ・ビートルズとかクラシックなポップ・ミュージックをね。


—ミックステープではビョークをカヴァーしていますが、なぜあの曲を選んだのですか?


クリス:
ずっと前から好きな曲で、いつかカヴァーしようって話していたんだ。こういうスタイルでカヴァーしたら面白い曲だと思ってね。



—バンドを改名する前から新作の音楽を作り始めたとのことですが、新しいバンド名は新たなサウンドに少しでも影響を与えたと思いますか?


クリス:
うん、間違いなく影響はあると思うよ。過去の音楽を振り返ることで僕ら全員が気づいたのは、自分が好きな音楽はそのほとんどがポップ・ミュージックだということ。時代はさまざまだけどね。全般的にそれこそが自分が音楽を愛している理由であると気づいて、だからこそ、バンド名がぴったりなんだ。今作は僕らがそういったことに気づくきっかけとなった。


—ニュー・アルバムのタイトルは?


クリス:
『POP ETC』、セルフタイトルにしたよ。僕らにとって“再生”となる作品だし、今作は僕らからの声明になると思うんだ。


—新作を作るにあたって、セカンド・アルバムの成功によるプレッシャーはありましたか?


クリス:
ああ、あったよ。プレッシャーはあったから、ファンの期待に応えなければと思った。


—リスナーが求めているものを提供しなければ、というプレッシャーは感じますか?


クリス:
うん。ファンには非常に感謝しているし、彼らが気に入るものを提供したいって思う。でもその一方で、もしまた『Big Echo』の続編的な作品を発表しても、それはうまく行かないんだ。あのアルバムや、あれらの楽曲を作る上で感じたインスピレーションを再現することなんて無理だよ。あのイメージで何を作っても、オリジナルを水で薄めたものになってしまうだろう。もしかしたら、最初は求めているとおりのサウンドに満足してくれるかもしれないけれど、長期的にはうまく行かないと思うんだ。2年後にザ・モーニング・ベンダーズを聴こうと思った時には、たぶん『Big Echo』を聴くだろう。それが彼らが最初に聴いたアルバムで、よりインスパイアされた瞬間が詰まった作品なんだからね。

だから、自分たちがインスパイアされたものを詰め込んだ作品を提供することが1番良いと考えた。僕らにとって、それは安全地帯を飛び出して自分たちの境界線を広げ続けること。そしてソングライティングや僕らの音楽に新しい何かを持ち出してくれる、さまざまな人と仕事をすることなんだ。それこそが、自分にとって最高のものを見出す方法だと思わない?


—確かに。そしてニュー・アルバムでは、デンジャー・マウスとアンドリュー・ドーソンをプロデューサーに迎えたそうですね。彼らとの仕事はいかがでしたか?


クリス:
最高だよ。これまでとは完全に違うんだ。プロセス自体が全然違ってね。『Big Echo』を作ったときは全てアナログで、テープに録音していた。


—『Big Echo』はセルフプロデュースでしたよね?


クリス:
うん、新作も自分たちでプロデュースしたよ。でも、他の人が共同プロデュースしてくれたんだ。『Big Echo』はバンドで演奏してテープに録音して完成した。でも新しいエンジニア陣との仕事では—アンドリューはカニエ・ウェストとかヒップホップやR&Bのアーティストと仕事をした経験が豊富な人なんだけど、アプローチが完全に違うんだ。コンピュータに録音すると常にパーツを動かせるから、録音したものが絶対的ではない。僕らにとっては、それは爽快なことだった。自由を与えられたような気がしたよ。全行程がすごくエキサイティングだった。始まりと終わりで全く違うものになっているんだからね。何か始めても、途中で一部を動かしたいと思ったら動かせるし、そういったプロセスによる結果がこの作品だから、とてもスペシャルなものになったよ。楽しいし、刺激的な作品だよ。



—デンジャー・マウスとの仕事はいかがでしたか?最近ではノラ・ジョーンズの新作『Little Broken Hearts』も手掛けていますよね。


クリス:
そうそう!スタジオでレコーディングしている時に、ノラの新作を少し聴かせてくれたんだ。彼も最高だったよ。何もアイデアを持たずにスタジオ入りするように言われたんだ。その場で彼と一緒に曲を書いたんだけど、僕は今まで他の人と一緒に曲を書いたことはなかったんだよね。弟と書いたことはあるけど、それは身内だから。だから、ブライアン(デンジャー・マウス)との曲作りはスペシャルな出来事で、今作は協力しあってできた作品なんだ。とても理にかなっていると思うよ。ポップやR&B、ヒップホップの世界では、そういったコラボレーションは多いからね。ポップの世界では流れ作業で楽曲を作るものだし。僕らはそこまではやらなかったけれど、他の人を迎えてアイデアを交換しあうという要素を取り入れることで、自分たちだけでは生まれなかったような作品が完成した。


—制作のプロセスが完全に違ったとのことですが、ライヴでは新曲をどのように演奏するのですか?


クリス:
実は今、まさにそれを考えているところ(笑)以前よりも大規模でスペシャルなことをしたいと思っている。ツアーをたくさんまわって数々のバンドを観てきたけれど、形ばかりのライヴも多いんだよね。みんな似たようなことをやって、あまり記憶に残らないというか。だから僕らは視覚的にも楽しいステージにして、音楽的にもライヴ特有のサウンドを提供したいと思う。古い曲を新しい方法で解釈して演奏したりしてみるよ。ライヴでしか観られないものを披露することで、ファンがライヴまで足を運ぶ理由を与え、記憶に残る時間を提供したいと思う。


—バンド名もサウンドも変わった上に、最近ではニューヨーク・ブルックリンに拠点を移したそうですね。そのことで音楽的に影響はありますか?


クリス:
確かに!それは良い質問だね。考えてもいなかったけど、このアルバムはニューヨークで作ったんだ。デンジャー・マウスとのレコーディングもニューヨークで行ったし、アルバムはブルックリンにある僕の小さなホーム・スタジオで仕上げた。だから間違いなくブルックリン・フレーヴァーは詰まっていると思うよ。



—全て一新という感じですね!


クリス:
そうだね!それが僕らの生き方なんだ。常に移動しているんだよ。僕はブルックリンも気に入っている。親戚がたくさん居るから何度も訪れていた場所で、かねてから住んでみたかったんだ。僕自身はカリフォルニア出身だけどね。


—今後の予定は?来日ツアーを行う予定はありますか?


クリス:
ぜひツアーしたいよ。まだいつになるかは分からないけどね。できるだけ早く帰ってきたいと思っているよ!日本のファンのみんなには、いつも応援してくれて感謝しているんだ。アリガトウ!


ポップ・エトセトラ日本オフィシャルサイト>>

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ポップ・エトセトラ:

2006年にカリフォルニアのバークレーで結成された3人組。現在のメンバーはクリストファー・チュウ(Vo, 兄)、ジョナサン・チュウ(G, 弟)、ジュリアン・ハーモン(Dr)。08年にデビュー・アルバムを発表後、人気英レーベル<Rough Trade>と契約。10年にセカンド・アルバム『Big Echo』で世界デビュー。サマーソニック2011で初来日し話題となった。2012年3月、バンド名をポップ・エトセトラに改名。同年6月に待望の新作アルバム『POP ETC』をリリース。


Photos (Christopher Chu): Tetsuro Sato
Interview + Text: Nao Machida

20:00

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