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待望の新作リリース!スピリチュアライズド来日独占インタビュー

2012-04-11
J・スペースマンことジェイソン・ピアース率いる英国ロック界の至宝、スピリチュアライズドが、本日(4月11日)約4年ぶりとなる待望のニュー・アルバム『Sweet Heart Sweet Light』をリリースした。MTV Newsは先日都内で開催されたライヴ・イベント「Hostess Club Weekender」のために来日したジェイソンにインタビュー。2年の月日を費やし、完璧な「ポップ・レコード」を作りたかったという新作の裏話や、最近の再結成ブームについてなど、たっぷりと語ってくれた。



—今日はお時間ありがとうございます。また来日してくださって嬉しいです。

ジェイソン・ピアース(以下、JP): ありがとう、俺もまた戻って来られて嬉しいよ。来日してからはずっとこの取材部屋に監禁されているんだけどね。この部屋の中で可能な限り楽しんでいるよ(笑)昨日到着したんだけど、1日中インタビューを受けていたんだ。

—それはお気の毒ですね。

JP: 構わないさ。自由時間はないけれど、そもそも演奏するために来日したんだからね。文句は言えないよ。

—日本はお好きですか?

JP: ああ、友人も何人かいるし。東京は奇妙な都市だ。俺の目には、街全体がまるで子どものために作られたように映る。

—そうですか?どんな部分が?

JP: 街中に子どものような好奇心や不思議さがあふれているよ。すごくカルチャーショックを受けるんだ。日本はイングランドやアメリカと同じように裕福なのに、関連性が全くない。全ては同じはずなのに、デザインだとか、あらゆることが完全に奇妙だ。まるで子どもがレゴで作った街のように見える。レゴでは少しずつパーツを足していくだろう?子どもの頭の中では、その全てに理由や計画があるわけだが、大人には奇抜に見える。日本も同じように何だか斬新に見えるんだ。別にそれが悪いと言っているわけではなく、非凡だと思うんだよね。

—ニュー・アルバム『Sweet Heart Sweet Light』の完成おめでとうございます。前作からは3年以上経っていますが、待望の新作は複数の都市でレコーディングしたそうですね。

JP: そう言うとグラマラスに聞こえるかもしれないけど、実際はそうでもないんだ。確かにストリングスはアイスランドでレコーディングした。アコースティック・ライヴをしていた時に、ストリングスの楽団やシンガーを連れて行く予算がなかったから、ツアーは2人でまわって、各地で地元のミュージシャンに出演してもらったんだ。その時にアイスランドで出会った、ミーナというバンドの娘たちが今作に参加してくれたんだよ。ツアーで出会ったほとんどの弦楽奏者はクラシック専門だったが、彼女たちはポップ・ミュージックを演奏している人たちで、とても気に入ったんだ。

さらにLAでも同じツアーで出会った3人の女の子たちと一緒にレコーディングしたんだ。ライヴに参加してもらった多くのシンガーはゴスペル・シンガーだった。教会のシンガーは独特の歌い方やハーモニーを持っているからね。でもLAでは想定外に3人のポップ・シンガーが参加することになった。彼女たちはレナード・コーエンの「So Long, Marianne」に登場する女性シンガーのような歌声の持ち主で。または、ボ・ディドリーやレイ・チャールズのバックシンガーのようだった。それで彼女たちに、LAで一緒にアルバムのレコーディングをしてほしいと依頼したんだ。

—それで複数の都市でレコーディングすることになったわけですか。

JP: ああ、特定のパートを異なる都市でレコーディングした。アルバムの大半は俺がウェールズに所有するスタジオで2回にわたってレコーディングしたんだ。最初は作詞したり、楽曲を構成したりするのに十分な素材をレコーディングして、楽曲ができたら再びスタジオに戻って必要なパートをレコーディングした。残りは全てロンドンの自宅で録音したよ。



—アルバムが完成するまでには、どれくらいの時間を要しましたか?

JP: 全体を通して2年近くかかった。2年間ずっと作業していたわけではなく、少しずつね。今作では時間にゆとりを持ちたかったんだ。スタジオで全てのアイデアを追求するにはお金がかかるし、常に時間との戦いのような気持ちになる。気に入っていようがいまいが、できたものを受け入れざるをえなくなるんだ。俺は主に「聴く」という作業に時間をかけることにした。多くのレコードでは、本当にアーティストが求めていたサウンドかどうかを確認する上で、聴くことに十分な時間が費やされていないように思える。だから俺は自分に失敗する余裕と、最終的に収録されないと分かっているようなアイデアでも試す時間を与えた。そこから何か発見があるかもしれないからね。時に…いや、大半の場合、失敗は最高の結果を生み出すんだ。常に成功していたら得られないような結果が、挑戦したことによる失敗によって得られるのさ。

—先ほどおっしゃっていましたが、今作を制作する前にアコースティック・ライヴを行ったそうですね。ツアーでの経験は今作のサウンドにどのようなインスピレーションを与えたと思いますか?

JP: アコースティック・ライヴによる影響は…俺は突然、ノイズの中に自分の声を紛らわすことができない状況に気づいたんだ。アコースティック・ライヴでは、いかに楽曲の構成が良いかが全てだった。だから、俺は基本的にはポップ・レコードが作りたかったんだ。トランプで作った家のように、各曲が互いを支え合うような11曲のコレクションにしたかった。壊れやすい楽曲があるからこそ、より過激な曲があり、壮大な楽曲と親密な楽曲が隣り合わせに存在するような作品にね。

そしてそれは、俺がこれまでに気づかなかったスピリチュアライズドの一面だった。これまでは音楽をより抽象的に形作っていたんだ。でも、ポップ・ミュージックにおいては隠れる場所がない。音楽は抽象的で奇妙なものにすればするほど、理解が難しいとされがちだ。「音楽的な知識が足りない君には理解できない」と言われてしまったりね。でもポップ・ミュージックは誰もが理解できる。だからこそ、ちゃんと作る必要があるんだ。その曲があるべき姿になるように、確実に完成させる必要があるんだよ。

—前作『Songs in A&E』をリリースする前に命を失いかけたそうですが、前作の楽曲は全て病気になる前に書かれたそうですね。生死をさまよった経験は、今作のために曲作りをする上で何か影響を与えたと思われますか?

JP: それは分からないな。俺は生まれ変わって戻ってきたかったんだ。何か伝えられることがあったらいいなと思っていたんだが…。

—生まれ変わったと感じますか?

JP: いいや、俺はかつてと同じ残念な人間なんだ。実はけっこうショックなんだよね。

—そんなことないですよ!

JP: マジでそうなんだよ。何か素晴らしいメッセージを抱いて戻ってきたかったんだ。「キッズ、大丈夫だ。俺たちの行く末に心配はないよ」とか言えるようなね。でも今でも昔と同じくらい疑念に満ちた、自信のない、以前のままの俺なんだ。

—そんな風には思えませんよ!

JP: ああ、今は良い感じだけどさ。今はこの時間を楽しんでいるよ(笑)



—2009年には1997年リリースの代表作『Ladies and Gentlemen We Are Floating in Space』を完全な形で披露するというライヴを行ったそうですが、その経験による影響はありますか?

JP: ああ、良くも悪くもね。

—悪くも?

JP: ああ。あのライヴはすごく名誉なことだったし、興奮したよ。俺はあのライヴに全てを捧げた。素晴らしい企画だったと思う。あのアルバムは単体で成り立つもので、全ての曲がアルバム全体の一部だからね。でも、あのライヴをやったことによって、最近の音楽が過去を振り返ってばかりいることに気づかされた。「これこそが名盤だった」「あれが全盛期だ」「あの頃の俺たちは特別だった」というようにね。そういった途方もないメランコリアにより、俺は深い悲しみを感じたんだ。あれほどパワフルですごく重要な音楽が死にかけていて、もう振り返ることしかできなくなっているんだ、とね。

未来に向けて進んで行く唯一の方法は、新たな名盤を作ることだ。時間をかけて、とても特別な一枚を今この時に出す必要がある。同世代のほとんどのバンドが再結成したり、過去の作品を振り返ったりしているように感じるよ。そもそも音楽というものは、未来に向けて大きな一歩を踏み出すことができないんだ。これまでに聴いたことがないような、正真正銘の新しい音楽を作ることは不可能なんだよ。音楽は進化していくもので、常に過去と関連せざるをえないからね。

これから新しいものを作る唯一の方法は、正しい方向に前進すること。俺は『Ladies and Gentlemen』のライヴにインスパイアされて、過去に頼らずに美しいものを今作りたいと思うようになった。過去を称賛することにより生じる問題は、作品がより早く歴史と化してしまうことだと思う。こんなに美しくパワフルな作品なんだ、博物館の展示物のようになってほしくないよ。俺は作品を自分たちの人生の一部として考えたい。そしてあの頃のような壮大なサウンドを、いま生み出したいんだ。

—おっしゃったように最近は多くのバンドが再結成していますが、そのような状況をどう思いますか?

JP: 正直な話、俺は他人をジャッジしようとは思わない。ただ、俺には向いていなかったというだけさ。誰もが自分の好きなようにするべきだと思う。俺からしてみれば、音楽の未来のために健康的な状況ではないと思うけど。

—新たなサウンドを生み出す上で?

JP: ああ。本当に新しい音楽を生み出すのは、新しい動物を作り上げるくらい不可能なことだ。音楽では一歩一歩がとてもスローでほんのわずかだからね。リスナーが真新しい音楽だと思っているものが、実際には過去の作品のスタイルを大幅に変えただけだったりする。新しく聴こえるように、過去の作品を組み合わせたりね。大切なことは、少なくとも正しい方向に進もうとトライすることだ。

—アルバムのタイトル『Sweet Heart Sweet Light』に込められた意味は?

JP: 『Sweet Heart Sweet Light』は「Hey Jane」のリリックの一部なんだ。アルバムは実はかねてから「Huh?(は?)」と呼ばれていた。ジャケットのアートワークのようにね。でも、そのタイトルを考える度にコメディのようなシナリオが浮かんでしまったんだ。誰かが「スピリチュアライズドのニュー・アルバム買った?」と聞いて、相手が「『Huh?』(は?)」と答える。そして再び「だから、スピリチュアライズドのニュー・アルバム買った?」と聞いて、「『Huh?』」と答える…とエンドレスに続くんだ。考える度に、そのことが頭の中にループしてしまった。そこで買ってくれた人たちが困らないように、『Sweet Heart Sweet Light』にしたんだ。もし買ってくれれば、の話だが。

—当然買いますよ!ファンは何年も待っていたんですから。

JP: だと嬉しいね。



—今回は「Hostess Club Weekender」にヘッドライナーとして出演されますが、どのようなステージを期待できそうですか?

JP: 最高だよ。まだライヴを再開して間もないんだ。俺はライヴが1番好きでね。もしレコードを作る必要がなければ、作らないだろう。ただ、レコードを出さないとライヴをしに来られないからね。ライヴで演奏しているときは、まるで音楽の滝の中に居るかのような最高の気分なんだ。レコーディングのように、うまくとらえなければと心配する必要もないしね。最高のスリルが感じられて、アメイジングだよ。日本にまた来られたことも嬉しいね。ライヴ前はいつになくハイになるよ。

—他の出演バンドで観たい人はいますか?

JP: 誰が出るのかよく把握していないんだ。ザ・ホラーズは前から知っているけどね。このバッジをくれた男は観てみたいな(セーターにアトラス・サウンドのバッジをつけていた)。

—ブラッドフォード・コックス、アトラス・サウンドですね。

JP: そうそう、そいつ。でも、俺たちの前に出るから、直前のバンドを観ることはなかなかできないんだよな。でも、また挨拶できたら嬉しいよ。

—最近はロック・バンドが減ってきていると言われていますが、昨今の音楽シーンについてはどう思いますか?

JP: うーん…俺がガキの頃から大して変わっていないように思うな。俺は音楽シーン自体には興味がないんだ。ただ単に売れるからという理由で、似たような音楽が作られるんだと思う。もしあるレコードが1万枚売れたら、もっと売るためにあと3組のバンドに同じような曲をやらせよう、ということさ。でも、市場とは無関係のことをしようとしている人は常に存在する。自分の中に存在する音楽を出したいから作品を作っている人たちだ。何が売れるか、何が人気かは関係なくね。

それに俺は音楽シーンの流行にうといんだ。常に新しい音楽を探さなければならないとは感じていない。世の中には膨大な量の作品が存在していて、その多くがかつてよりもリスナーに届けやすいから作られているんだと思う。名前をタイプすれば、そのアーティストの全作品をゲットすることができる世の中だ。だがそれは「音楽を聴く」という行為とは異なる。影響を受けるほど音楽に没頭するような状況からは遠ざかっているんだ。どんなアーティストのカタログだって流し聴きすることができるだろうけど、それは作品と友だちになるような状態とは違うよ。音楽が自分にとって意味を持つような状況ではない。俺が思うに、最終的には音楽が聴く人を探してくれるんだと思う。

—ところで以前、ハーモニー・コリン監督の『ミスター・ロンリー』の音楽を手掛けていましたが、監督は現在、新作映画を製作しているそうです。あなたは参加していないのですか?

JP: 俺は参加していないんだ。彼の前作「Trash Humpers」は驚異的だったよ。これまでに観た映画の中でも屈指の素晴らしい作品だった。『ミスター・ロンリー』よりもずっと良かったよ。「Trash Humpers」にも参加できたら良かったな。

—次回作「Spring Breakers」は、女子大生が春休みに遊ぶ資金を作るために強盗をするというようなストーリーらしいです。

JP: ありえるね。ハーモニー・コリンのマインドが生み出す作品はどれも深く破壊的で奇妙なものだから(笑)とにかく「Trash Humpers」は素晴らしかった。『イレイザーヘッド』と同じくらい良かったけど、それよりも格段に良かったよ。ほんとうに驚異的な作品だ。彼とは3 ヶ月前に話したのが最後かな。いつどこで何について話したのかも覚えていないけど、お互いに連絡は取り合っているんだ。俺は連絡を取るのが得意ではないんだけどね。

—日本のファンにメッセージをお願いできますか?

JP: ワーォ。は?…今のが俺からのメッセージだよ(笑)







Photos (Jason Pierce): KNTR
Live Photos: Kazumichi Kokei
Interview + Text: Nao Machida


スピリチュアライズド:


伝説的バンド、スペースメン3の中心人物、ジェイソン・ピアース a.k.a. J・スペースマンによって1990年に結成される。1991年以来コンスタントにアルバムを発表し、97年、20世紀のロック史に燦然と輝く傑作『Ladies and Gentlemen We Are Floating in Space(邦題: 宇宙遊泳)』をリリース。このアルバムは各方面で大絶賛を浴び、スピリチュアライズドの最高傑作として高い評価を得る。2001年『Let It Come Down』、03年に『Amazing Grace』を発表。そして05年6月に病に倒れ、一時は危篤状態まで陥り生死の狭間を行き来するほどまでに悪化するが、その後、奇跡的に回復に向かう。08年、前作から5年という期間を経て遂に『Songs in A&E』をリリース。同年には「SUMMER SONIC 08」にて久々の来日も果たし、スピリチュアライズド完全復活を強く印象付けた。本作『Sweet Heart Sweet Light』は約4年ぶり、通算7作目となるスタジオ・アルバムである。

オフィシャルサイト(英語)>>
新鋭ディレクター、AGロヤスが手掛けたリード・シングル「Hey Jane」の話題のミュージックビデオを配信中。

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