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バイオリンの貴公子、オーウェン・パレット来日独占インタビュー

2012-03-02
2月18日・19日、東京・恵比寿ガーデンホールにて、ライヴ・イベント「Hostess Club Weekender」が開催された。今回紹介するのは初日に出演したカナダ・トロント出身のアーティスト、オーウェン・パレット。バイオリンを奏で、ヴォーカルもエレクトロニクスも一人でこなすマルチプレーヤーだ。自身のソロ作品だけではなく、アーケイド・ファイアやベイルート、グリズリー・ベアからR.E.M.まで、多数のアーティストの作品でストリング・アレンジメントを手掛けたり、映画音楽を作曲したりと、幅広く活動している。

作品のサウンドやリリックから繊細で口数の少ない人をイメージしていたが、実際の彼は予想外にオープンな人柄だった。そしてとにかくよく喋る!ライヴ前日に行った今回のインタビューでは、制作中の新作からツイッターからR.E.M.からマライア・キャリーまで、ありとあらゆるトピックについて大いに語ってくれた。



—また来日してくださってありがとうございます。

オーウェン・パレット(以下、OP): こちらこそ。日本に来られてすごーーーく嬉しいよ! アメリカでは飛行機を降りると、「はぁ…」って感じなんだけど、日本に到着するとワクワクするしリラックスできる。今朝は最高に奇妙な朝ご飯を食べたよ。でも美味しかった。

—ツイッターでつぶやいていましたね。

OP: そうそう、ネバネバしたペースト状の山芋。あれって何て言うの?

—とろろですか?

OP:
いつもは納豆が一緒に出てくるんだけど、今朝はなかった。僕は納豆も食べられるし好きなんだ。でも今回の山芋は味が薄くて冷たかったな。そばがあったら良かった。ざるそばが大好きでね。

—日本食に詳しいんですね。

OP: うん!前回の来日の際は4週間も滞在したんだ。コリアン・タウンのある大久保に滞在した。オタク系のショップがいっぱいある中野にも近いし、新宿もすぐそこだし便利だったよ。それに白馬までスキーをしに行って、そばをいっぱい食べたんだ。白馬も雪質が良くて最高だったな。日本人がスキーをする姿はとてもおかしかったけど(笑)なんかワイルドなんだよね。カナダではスキーをする人って、いかにもアスリートって感じなんだけど、日本人は開放感あふれる感じ。でも最高に楽しい思い出だよ。正直言って日本に住みたいくらい…(延々と日本について語り始める)

—前回の来日からはいかがお過ごしでしたか?

OP: 元気だったよ。前回は精神的に落ち込んでいたんだ。ライヴもまるでキャット・パワーみたいで、「あ゛〜!」って感じだった(笑)でもライヴ後も日本に滞在して、美味しいご飯を食べてリラックスしたおかげで、ここ1年はとても幸せに過ごしているよ。

—日本が癒しになったわけですか。良かったですね。

OP: なったよ!トロントに帰ってからも引越しをしたり、バンドを結成したり、アクティブに過ごしているんだ。

—なるほど。今日はまずバックグラウンドについて少しお聞きしたいのですが、幼い頃に音楽を始めたんですよね?どのような経緯を経てソロ・プロジェクトを始めるまでに至ったのですか?

OP: 子どもの頃はオーケストラのバイオリニストになるような教育を受けていたんだ。よくネットの動画サイトに、コンテストでバイオリンを弾いているガキの動画とかアップされているだろう?まさにあんな子どもだった。でも10代の頃に作曲の方が好きになって、バイオリンは辞めた。それから20代前半はトロントで新しい音楽シーンに没頭して。当時はインディーズ・ミュージックとか、いろんなことが起こっていたんだ。それで僕も曲を書き始めて、友だちとレーベルを立ち上げて自分たちの楽曲を発表していた。ヒドゥン・カメラズを主軸に、他にも今では解散してしまったカナダのバンドがたくさん居たよ。コンスタンティンズとかロイヤル・シティとかね。それにもっと有名になって人気が出たブロークン・ソーシャル・シーンとかファイストがいたシーンもあった。僕らはみんな友だちで、何かしらでつながっていたんだ。音楽があふれていたよ。僕はそうやってアーティスト活動を始めたんだ。



—子どもの頃はクラシックだけ?それともポップ・ミュージックを聴いたりMTVを観たりしていたのですか?

OP:
そんなには聴いていなかったかな。9歳の時に初めてMTVを観たのを覚えているよ。兄が常にMTVを観ていたからね。でも僕はよく理解できなかったな。子どもの頃はよくラップを聴いていたんだ。

—意外ですね!?

OP: よく言われる(笑)初めてカセットで買ったアルバムはデジタル・アンダーグラウンドだった。実は今日そのことを考えていたんだよね。なぜか日本でデジタル・アンダーグラウンドについて考えていた(笑)

—意外と言えば、インターネットであなたがマライア・キャリーの曲を歌っている動画を観ました。

OP: マライア・キャリーは大好きなんだ。そういえば前にホイットニー・ヒューストンの曲をカヴァーしたこともあるんだけど、死んじゃったからもうできないな。「My Name Is Not Susan」っていう曲をカヴァーしたんだ。たぶんネットに出回っているよ。アップリフティングな曲ではないし、今歌ったらすごく悲しい曲になってしまうよね。でも良い曲だよ。ホイットニー・ヒューストンの曲の中で1番好きなんだ。明日のライヴではカリブーの曲をカヴァーするかも。

—最近1番好きなアーティストは?

OP: 最近は自分のアルバムの曲作りをしているから、他のアーティストの音楽をあまり積極的に聴いていないんだ。クラスターはよく聴いているけど新しいアーティストではないしね。新しいバンドはわからないな。ヘッスル・オーディオはよく聴いているし、最近オブジェクトの新しい12インチは聴いたよ。オブジェクトが1番のお気に入りかな。

—ソロ活動を始めた当初はファイナル・ファンタジーという名義で活動されていたんですよね。

OP: 子どもの頃は田舎で育って運転もできなかったし、街で遊ぶこともできなかったから、いつも家でゲームをやっていた。他に何もないからさ。それで何時間も「ファイナル・ファンタジー」をやっていたんだ。確か「ファイナル・ファンタジー6」だったと思う。80時間くらいやっていたよ。全てのキャラがマックスに達していて、僕らはただ荒野を冒険していた。ある意味、気が滅入るよね。でも楽しかったんだ。

それでループ・バイオリンの音楽を作り始めたとき、ゲームで遊んでいた頃と同じ状況にいる自分に気づいたんだ。ただ今回は24歳の大人になっていて、地下室にこもって黙々とバイオリンを弾いてループしていた。ものすごくたくさん練習が必要だから、まるで“グラインディング”みたいだと思った。“グラインディング”っていうのは、ロールプレイングゲームをする時にキャラを強くするために何度も戦わせること。当時の僕はまるでキャラを“グラインディング”しているような気分だった。だからソロの名義を「ファイナル・ファンタジー」にしたってわけ。あの名前がすごく恋しいけど、僕のものではないからね。

—バイオリンをループするというアイデアはどこから?

OP: 友だちが同じことをギターでやっているのを見て、バイオリンでやったらいいんじゃないかと思いついた。それでやってみたっていうわけさ。

—前回は初の来日公演でしたが、日本でのライヴはいかがでしたか?

OP: 楽しかったよ。日本の観客の前で演奏するのは最高だった。さっきも言ったように個人的にちょっと辛い時期だったから、自分の中でのベスト・ライヴだったとは言えないけれど、でも楽しかった。今回は最高のライヴになるよ!バンドと一緒にいればアンハッピーなんてことはありえないからね。メンバーは親友だし、バンドと一緒の方がずっと楽しい。

—楽しみですね。彼らと一緒にツアーをまわっているんですか?

OP: ちょっとだけね。最近は映画のスコアや、他のアーティストのアレンジメントの仕事で忙しかったから。今年はアレンジメントの仕事が多くて、スノウ・パトロールやR.E.M.の最後の曲等を手掛けた。さらにバイオリン協奏曲も書いていたから、そういった感じでバタバタしている中で、ゆっくりと自分の新作に取りかかっている感じだよ。

—とても生産性が高いですね。

OP: 言われてみればそうだね。実感はないんだけど。アルバムを作るのに3年もかかるからさ。頭の中でよく考えて、曲を書いて、それをレコーディングして。だから、自分にとってはすごくスローに感じる。

—確かに前作『Heartland』の時は、みんなが首を長くしてリリースを待っていました。

OP: そうなんだよ、3年くらいかかっちゃった。EPとか他の作品はいっぱい発表していたけれどね。アルバムの制作を通じていろんな事をする上で、学ぶことがたくさんあるんだ。僕はカントリー・ミュージックやダンス・ミュージックのように既に固定観念がある作品を作っているわけではないから、少しだけ余計に時間がかかるんだ。

—前作『Heartland』はリリックがとても難解なコンセプト・アルバムでしたが、新作もコンセプト・アルバムになるのですか?

OP: いや、新作では逆行する予定。もっと自由で自叙伝的なものを考えているんだ…ある意味ね。基本的には世界を破壊した男についての作品で、でも自叙伝的なんだよ(笑)

—その男性キャラクターに自己投影するということですか?

OP: その通り。ここ2年ほどフェミニスト文学をたくさん読んでいて、自分自身の男らしさに嫌気が差し、腹を立てているんだ。他の人の男らしさにもね。そういったことについて曲を書いている。

—最初にストーリーを決めて、そこからリリックに落としていくのですか?

OP: 最近のやり方は、自分の人生で起こった出来事の中から曲にしたら面白そうなものを選んで、それをリリックにしている。リリックを書いてから作曲しているんだ。



—ツイッターでは「新曲はとても気が滅入る」とつぶやいていましたね。

OP: オーマイガッド、すごく気が滅入るよ。最高に悲しい曲なんだ、説明もできないくらいだよ。地獄に堕ちることについての曲とかさ。本当に気が滅入るんだよね。それに新曲の多くはとてもバイオレントなんだ。最近は人生の出来事の中でも、よりダークな経験を選んで書いているからかもね。よりバイオレントで男性的な性質を反映したような出来事だ。本当に気が滅入るから、あまりこの話題を掘り下げない方がいいかも(笑)

—ところでツイッターを多用されていますが、ツイッターというメディアは気に入っていますか?

OP: 僕がツイートするときは、酔っぱらっているときか二日酔いのとき。ときどき何日もツイートがないときがあるだろう?そういう時期は実はとても健康的に過ごしていて、酒を飲んでいないんだよ。友だちと飲みに行って冗談とか言い合っているときに、「それウケる!」とか言ってツイートしたり、朝目が覚めて「起きたくない!」と思ったときにつぶやいたりする。だから僕のツイートがない時は健康に暮らしているということ。もしツイートが大量に続いたら飲み過ぎだと思ってくれていいよ(笑)

—先ほどもおっしゃっていたように、他のアーティストの作品のストリング・アレンジメントも多く手掛けていますが、そういった仕事はご自身のソロ作品にどのような影響を与えていますか?

OP:
影響を与えているとすれば、ただソロ作品に費やす時間が減るということだけ。僕はストリング・アレンジメントの仕事をアルバイトとして考えているんだ。でも他のアーティストの作品を手掛けるのは大好きだよ。自分の曲を書くよりも簡単に感じる。

—R.E.M.の最後の楽曲(解散後にリリースされたベスト盤『Part Lies, Part Heart, Part Truth, Part Garbage 1982–2011』に収録された「We Go Back to Where We Belong」)のアレンジメントも手掛けたそうですが、彼らとの仕事はいかがでしたか?

OP: 彼らとは実際には一緒に作業していないんだ。メンバーには会わなかったよ。あの曲のプロデューサー、ジャックナイフ(・リー)と一緒に仕事をしたのさ。でもバンドも完成した楽曲に満足してくれたと聞いている。マイケル・スタイプたちには会えなかったけどね。

—子どもの頃からR.E.M.は聴いていたんですか?

OP: 聴いていたという自覚はなかったんだ。彼らの楽曲はわりと好きだったけど、自分がファンだとは思っていなかった。彼らが解散して初めて、自分がどれだけ多くのR.E.M.の曲の歌詞を覚えているかに気づいたよ。自分の人生において、彼らの存在はザ・ビートルズと同じくらい大きいんだなって思った。だって20曲くらいの全ての歌詞を覚えていたんだから。奇妙だったよ。だから彼らが解散したことは、すごく悲しかったよ。

—今後、ストリング・アレンジメントを手掛ける予定のバンドはいますか?

OP:
ロビー・ウィリアムスの作品を手掛けるかも。わかんないけど。

—えっ!? 本当ですか?

OP: まだわからないけどね。本当は日本滞在中に作業しないといけないんだけど、スコアの仕事が溜まっていた上に腱鞘炎気味でね。そんなにひどくはないんだけど、ソファとかでおかしな角度でタイプしていたから手首が炎症を起こしてしまった。だからできるだけパソコンは触らないようにしているんだ。まだ未定だな。でもお金も必要だしな(笑)

—ぜひ一緒に仕事してみたいと思うアーティストは?

OP:
いないよ。もらえる仕事を引き受けるっていう感じ。でも唯一、ディアンジェロとは一緒に仕事してみたいな。

—確かディアンジェロは新作を制作中ですよね?

OP:
うん、ニュー・アルバムが出るっていう噂。最近はライヴを再開しているんだよ。ネットで最近のライヴ映像を観たら素晴らしかった。まるでプリンスでも観ているみたいに、最高にかっこ良かった。

—あなたは映画のスコアも手掛けていますね。前にあなたが手掛けた音楽に合わせて14人の役者が演じる短編の動画集「14 Actors Acting」という企画をインターネットで拝見しました。

OP: あの作品はあまりにも速く進んだから、よく覚えていないんだ。全ての音楽を6日間で書き上げたんだよ。14本の短編のための音楽を6日間で!それからチェコ共和国に飛んでオーケストラのレコーディングの指揮をして、ツアーで訪れたトルコのホテルでミックス作業をしたんだ。それを彼らに送ったっていうわけ。でもあの作品でエミー賞を受賞することができた。僕はエミー賞もグラミー賞も完全に運良く受賞できたんだ。

—次は映画音楽でアカデミー賞を狙えるかもしれないですね。

OP: うん、エミー賞、グラミー賞、アカデミー賞、トニー賞が4大アワードだからね。そのうちの2つを既に受賞したんだから、悪くないよね!



—今回は「Hostess Club Weekender」での来日ですね。

OP:
すごーくワクワクしてるよ!素晴らしいバンドを連れてきたし、きっと日本のみんなにも気に入ってもらえると思う。前回の来日公演は一人でステージに立ったけど、今回は3ピース・バンドなんだ。僕らはすごくラウドなんだよ(笑)これまでどおり僕がバイオリンやシンセサイザーを担当して、もちろんループもやるけど、そこにベースとドラムが加わった。彼らはすごく優秀な素晴らしいミュージシャンさ。古い曲もやるし、新曲もたくさん披露する予定。『Heartland』には「Tryst with Mephistopheles」のような今まで1度も演奏できなかった曲があって、今回は演奏するつもりなんだ。バンドが大好きだから本当に興奮している。彼らは最高だよ。ステージでみんなを圧倒する予定だよ。

—イベント後もしばらく日本に滞在するとのことですが、行きたい場所はありますか?

OP:
滞在中に中国茶が買いたいんだ。今回はずっと東京にいるつもり。今日は中野に行って漫画とか買う予定。そうだ!高級な寿司を食べに行くんだった!すごくワクワクしているよ。「すきやばし次郎」って知ってる?予約が取れたから、すごーーーーーく楽しみなんだ!絶対に美味しいはず。でも超高いんだよね。テレビでシェフのドキュメンタリーや、アンソニー・ボーディン(註: アメリカのシェフで番組司会者。すきやばし次郎を世界一の寿司屋と称賛)の番組も観たんだ。店には10席しかないんだよ。すごーーーーーく楽しみ〜!食事にそんなにお金を出したことないけど、今回は奮発するつもり。前回の来日時は焼肉とかそばとかラーメンとかばかりだったし…(延々と日本食について語る)

—フェスティヴァル等で再来日する予定はありますか?

OP: 今年の夏には間に合わないけど、来年アルバムをリリースする予定だから、来年は日本の夏フェスに出演できたらいいなと思っている。2006年にアーケイド・ファイアとサマソニに出たことがあるけど、自分では出たことがないんだ。フジロックは行ったこともないしね。

—山の中であなたの音楽を聴けたら最高ですね。

OP: 実現したらいいね。それに全国ツアーもやってみたい。大阪が大好きだし、地方にも行ってみたい。それに横浜にすごく行ってみたいんだよね。

—日本のファンにメッセージをお願いします。

OP:
レコード・プレーヤーをゲットして、アナログ盤を買ってね(笑)







オーウェン・パレット:

カナダはトロント出身のオーウェン・パレットは幼いころからクラシック音楽とバイオリンを学び、13歳で作曲を始め、大学でも音楽を専攻、本格的に作曲を学ぶ。卒業後、地元トロントの様々なミュージシャン達とのコラボを重ねるようになり、クラシックに限らず様々なバンドに参加し、レコーディングを手伝うようになる。アーケイド・ファイアへの参加で一躍世に名前を広めたオーウェンは、ファイナル・ファンタジー名義のデビュー・アルバム『Has a Good Home』をカルト・ヒットさせる。その後ザ・ラスト・シャドウ・パペッツの『The Age of the Understatement』へのストリングス・アレンジャーとしての参加で評価を決定付けたオーウェンはペット・ショップ・ボーイズなどを手掛けるまでになる。09年英名門レーベルDOMINOと世界契約を結び2010年アルバム『Heartland』をリリース。

オフィシャルサイト>>

Photos (Owen Pallett): KNTR
Live Photos: Kazumichi Kokei
Interview + Text: Nao Machida





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