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チルウェイヴの代表格、ウォッシュト・アウト来日独占インタビュー

2012-02-15
今回紹介するのは、1月下旬に来日したウォッシュト・アウトことアーネスト・グリーン。チルウェイヴ/グローファイ(※)と称される、いわばベッドルーム・ミュージックの代表格として知られるアメリカのアーティストだ。世界中のフェスティヴァルに引っ張りだこで、昨年はここ日本でもFUJI ROCK FESTIVAL等に出演し、その浮遊感あふれる独特なサウンドで日本の音楽ファンを魅了している。

東京公演の当日、インタビュー場所となったホテルを訪れると、そこに居たのはとてもメロウで良い意味で普通の好青年だった。大学を卒業したもののリーマン・ショックの影響で就職先が見つからず、やむなくジョージア州の実家に帰省。ぼちぼち履歴書を送ったりしながら、生まれ育った家のベッドルームで作った音源を何となくネットにアップしたら、あれよあれよという間にレコード・デビューしてしまったというのだ。一見アメリカン・ドリームのような話だが、アーネストからは野心のようなものが全く感じられない。その音楽と同様にフワフワとシーンにたどり着いた不思議な青年の来日独占インタビューをどうぞ。



—昨年のフジロック以来の来日ですが、再び来日した感想は?

アーネスト・グリーン(以下、EG): また来られて嬉しいよ。最高の気分! 日本は大好きなんだ。昨夜は雪を見ることができて面白かった。僕らの住むアメリカの南東部は、とても暖かくて滅多に雪が降らないんだ。東京でも珍しいことらしいね。すごく楽しかったよ。

—まずはアーティストになった経緯をお聞かせください。レコーディング・アーティストになるつもりはなかったって本当ですか?

EG: イエス。子どもの頃から音楽に親しんではいたけどね。幼い頃はクラシック・ピアノを習っていたし、12、3歳の反抗期にはピアノをやめてギターを始めた。パンクやロックンロールにはまっていたんだ。そして高校生になってから曲作りを始めた。初めてコンピュータを買って作曲ソフトで遊び始めたんだ。自分で全ての楽器を演奏できるマルチ・トラックのソフトに触れて、全く新しい世界が開けたよ。その時点からずっと独りでベッドルームに閉じこもって、できる限りたくさんの曲を作った。でも現実的ではなかったんだ。僕はいつもちょっと変わった実験的な音楽を聴いていたから、自分が作る音楽もそうだったしね。凝縮されたポップ・ソングはここ数年になって書き始めたんだよ。

—そして作った楽曲をネットにアップしたわけですか。

EG:
うん、自分が書いた曲をマイスペースにアップしたら、UKの音楽ジャーナリストがたまたま見つけて気に入ってくれて、メールをくれた。そして記事を書いてくれたんだ。その記事がきっかけで僕の音楽がいろんな人の元に届くようになった。ライヴなんてやったことなかったのに、初めてのライヴはソールドアウトでニューヨークの会場に800人も集まってしまったんだ! まるで何が起こっているのか理解できなかったよ。ライヴハウスのスタッフが話している技術的なボキャブラリーも、どうやって取材に答えていいかも、何も分からなかった。そういった世界を理解するのに半年から1年かかったよ。ようやく今になって、いろいろなことが自然にできるようになった。

—多くの人はレコード契約が欲しくて必死だったり、ライヴがしたくてたまらなかったりするのに、あなたは突然シーンに放り込まれてしまったんですね。

EG: その通り(笑)どうやって音楽シーンに入ることができるか、よくアドヴァイスを聞かれたりするんだけど、僕はとてもラッキーなことに、誰かが僕の音楽に偶然出くわしてくれたんだ。多くの場合はレーベルにデモ・テープを送ったりするみたいだよね。僕はそれもやったことがなかった。

—音楽を始めた当初から、バンドではなく独りで曲作りをしていたのですか?

EG: ギターを弾き始めた頃は友だちと演奏したりもしたよ。親父のガレージで、まさにガレージ・バンドさ。でもPCで曲作りを始めてからは独りでやっている。たぶん僕はワガママなんだと思う。全ての決断を自分で下したいから、PCでは何でも自分でできて楽しかった。

—趣味で作っていた楽曲を突然800人の前で演奏するなんて、どうやってパフォーマンスをするかは考えていたのですか?

EG: そうなんだよ、全く考えていなかったんだ! パフォーマンスに関しては、さまざまなアプローチを試してみたよ。最初はたった独りでステージに立ち、コンピュータとキーボードを2台くらい用意してやってみた。ダンス・ミュージックというか、DJっぽいパフォーマンスだったんだ。

—でも、歌もありますよね。

EG: うん、歌いながら(笑)僕の音楽はダンス・ミュージックやエレクトロニック・ミュージックからインスピレーションを得ている。通常そういった音楽は、バランスやミックスといった点で非常にプロフェッショナルな手法で制作されるもので、サウンドも素晴らしいし、クラブやフェスティヴァルの巨大なサウンドシステムで演奏するために作られているんだ。僕の音楽はそこからインスピレーションを受けてはいたけれど、もっとベーシックなピースから作られていた。レコーディングの技術的な経験はなかったからね。僕がやっていたことの多くは技術的には間違っていて、だからこそ他の音楽の中で目立ったんだと思う。でも技術的には最高のサウンドではないわけだから、巨大なサウンドシステムを通して聴くとあまりよく聴こえないんだ。僕はかなり早い時点でそれに気づいた。それに大勢のオーディエンスの前で、独りでステージに立つ自分があまりエンターテイニングではないということにもね(笑)

—全く経験がないのだから、800人の前に立つだけでもドキドキですよね。

EG: 完全に。バンドで演奏した経験の豊富なミュージシャンの友だちがたくさんいるから、今は4ピース・バンドとして演奏している。僕にとってもこの方がずっと楽しいし、ステージ上で僕らの間に生じるエネルギーがオーディエンスのヴァイブにも伝わって、お客さんとのコミュニケーションが発生するんだ。以前は独りでとても孤独を感じていた(笑)だから今の方がずっと良い体験ができているし、バンドの影響で僕の音楽にも変化が生まれたよ。



—これは私の偏見かもしれないのですが、最初に前知識なしにあなたの音楽を聴いて、当然ヨーロッパのアーティストだと思っていたのです。でもアメリカのしかもジョージア州出身だと聞いて驚きました。

EG: よく言われる(笑)

—最近では特に多くのラッパーを輩出しているジョージア州のイメージと違いました(笑)学校ではアウトサイダーでしたか?

EG:
うん、僕はいつも“変な音楽を聴いている変なヤツ”だった。

—当時聴いていたお気に入りのアルバムはありますか?

EG: ラッキーなことに、親父が幅広いジャンルのアナログ盤を持っていたんだ。子どもの頃はそういったレコードをよく聴いていたよ。

—どんなジャンルですか?

EG: クラシック・ロックからボブ・ディラン、ジャズもいっぱいあった。僕はインターネットがない時代を覚えている世代だから、子どもの頃に聴いていた音楽はラジオで流れていたものか、MTVで流れていたものか、親父のレコードだったんだ。姉貴がはまっていた音楽とかね。今の時代は小さな町の変なヤツが、世界の反対側に住む変なヤツと出会うことができる。自分の得意分野を活かすことが前よりも楽にできるよね、最高だよ。インターネットは僕の音楽が発掘される機会を与えてくれただけではない。今自分が作っている楽曲は全てインターネットで見つけたさまざまな音楽からインスピレーションを受けているんだ。

—インターネットで発掘されて、こんなに大きな反響を得たときはどのような気分でしたか? 想像していなかったんですよね?

EG:
奇妙だったよ。全く想像していなかった。以前からピッチフォークのような音楽サイトやブログをチェックしていたんだけど、ある日好きなバンドの情報をチェックしていたら、自分の写真がアップされていたんだ。すごく奇妙だった。恐くなるからあまり深く考えないようにしているけどね。曲作りをするときには頭をクリアにしておかないとできないんだ。リスナーやマスコミの期待とかを考え出したらうまくいかないよ。

—図書館の司書になりたかったというのは本当ですか?

EG: ウォッシュト・アウトとしての活動を始める前は、大学の図書館で働いていたよ。

—図書館情報学の修士号をお持ちとか?

EG: 大学では英文学と哲学を専攻していて、学生として図書館で働いていたんだ。給料が上がるから修士号を取った。2年間のプログラムだったよ。パートタイムで働いて、パートタイムで学校に通って、その2つの間に少しでも時間があると曲を作っていた。それしかやっていなかったんだ。わけの分からないことをしていたよね。だってフルタイムでミュージシャンになろうとは思ってもいなかったわけだし。

—今でも図書館で働きたいと思いますか?

EG: またあのライフスタイルも悪くないなって思う。素晴らしい仕事だよ。給料はさほど良くないかもしれないけど知的な刺激を受けられるし、多くの時間とエネルギーを創作活動に注ぐことができる。それが自分のパッションだから。

—当然、読書は好きなわけですよね?

EG: 好きだよ。昔はよくフィクションを読んでいたんだけど、今は音楽の技術的なことについて書かれたものしか読んでいないな。新しいプログラムを学習したり、音楽理論について読んだりね。飛行機ではいつもそういう本を読んでいるよ。新しいシンセサイザーの取扱説明書とか(笑)日本の作家では18歳か19歳の頃に読んだ村上春樹の「ノルウェイの森」をよく覚えているよ。



—2011年は初のフルレングス・アルバム『Within and Without』をリリースされましたが、どんなお気持ちですか?

EG: 本当に最高の気分だよ。アルバム制作には多くの時間とエネルギーを費やしたんだ。制作に8ヶ月かかったし、実際にリリースするまでに6ヶ月もあった。あまりに時間があったから何度も聴き直してしまって、これで本当に良かったのだろうか、ここは変えた方がいいかも、とか考えざるをえなかった。僕は常に新しいサウンドを発見しているからね。

—先に発表したEP(『High Times』、『Life of Leisure』)が素晴らしい評価を得ていたことで、アルバム制作におけるプレッシャーはありましたか?

EG: うん、確実にあったよ。今回は世界中にオーディエンスがいて、批評されることが分かっていたからね。

—ベッドルームを抜け出した初の作品ですしね。

EG:
その通り! 昔の楽曲は自分や数人の友人のためだけを思って作っていたし、今回とは大きく状況が異なっていた。それにEPとは違って、アルバムは全体を通して1つのアート作品のようなサウンドに仕上げたかったんだ。最初から最後まで自然な流れがあって、1つの作品に聴こえるようにね。

—アルバムのコンセプトのようなものは決めていたのですか?

EG: あまり細かくは決めなかった。制作の初期段階ではさまざまなパレットのサウンドで実験することに多くの時間を費やしていた。僕にとってはそれが重要なスタート地点なんだ。僕は概して、とても抽象的な考え方をしがちでね。だから特定のストーリーや登場人物に沿ったコンセプト・アルバムを作ることは想像できない。それよりもっとベーシックなものなんだよ。

—今作ではアニマル・コレクティヴやナールズ・バークレイ、ディアハンターの作品を手掛けたベン・アレンをプロデューサーに迎えたそうですね。

EG: 素晴らしい経験だったよ。音楽業界にネットワークがあるわけでもないから、大勢のプロデューサーの中からオーディションで選んだわけではないんだ。ベンは今、僕が住んでいるアトランタに住んでいて、僕の音楽が少し知られてきた頃にメールをくれた。君がさっき言っていたように、彼も僕が作っているような音楽がジョージア州の小さな町から発信されているというところに興味を持ったようだ(笑) だから、僕が唯一コンタクトできたプロデューサーが彼だったわけだけれど、僕は彼のスタイルがすごく好きだし、彼はアトランタに最高の機材を供えた素晴らしいスタジオを所有しているから、すごく幸運だったよ。

—彼からはどのような影響を受けましたか?

EG: 彼からの影響はとても重要だった。全部の楽曲を書き終えた時点で、僕はある意味、考え過ぎて行き詰まっていたから、一歩引いて自分の状況を客観視することが難しくなっていたんだ。アルバム制作の最後の1ヶ月にベンがやって来て、新鮮な視点で作品を見てくれた。それにより幅広いものをミックスすることで、アルバムのバランスをとってくれたんだ。そのサウンドに圧倒されたよ。

—ベッドルームではなくスタジオでレコーディングするのはエキサイティングでしたか?

EG:
ああ、すごく! スタジオに足を踏み入れたこともなかったから、最初はその移行がうまくできるものかと少し恐かった。全く異なる考え方をしなければならないからね。

—EPはサンプリングを多用していたので、アルバムのサウンドはどうなるのかと思っていたのですが、素晴らしかったです。

EG:
ありがとう! 実はそれが懸念事項だったんだ。アルバムはより多くの人に聴いてもらうわけで、サンプリングには著作権の問題がつきものだからね。法的な問題に巻き込まれたくなかったし、クリエイティブな面においてもサンプリングだけでは限界がある。まるでコラージュを制作していて、最後の1ピースを探すのに1週間かかるようなものだよ。一方で、もっとオーガニックな手法で楽曲を制作すれば、ピアノを演奏して、ゼロから曲を書く方がずっと簡単だ。それが最近の僕の考え方になってきた。『Within and Without』を制作中に、そういった考え方が色濃く影響してきた。でも、とにかくレコーディングはすごかった。最後のミックス作業を終えて初めてアルバムを聴いたときのことは忘れないよ。とても感動的だった。眠れない夜も多かったし、すごくワクワクしている日もあれば、最悪の気分で全部やり直したいと思っていた日もあったから。だから実際にアルバムが完成したときは最高の気分だった。これで先に進めると思った。

—なぜ『Within and Without』というタイトルにしたのですか?

EG:
もし僕が物書きだったら小説家よりも詩人だと思うんだ。僕は大体の流れで物事を考えがちだからね。小説家はディテールにこだわるだろう? 僕はこのタイトルが面白いと思った。制約がなくて、自分が興味を持っている多くのことをカヴァーできると思ってね。今作の音楽はとてもエモーショナルだし、このタイトルは複数のさまざまな意味に解釈できるところが気に入っているよ。

—そしてジャケット写真が素晴らしいですね!

EG:
ありがとう! 僕は非常に写真に興味があって、よく自分でも撮影しているんだ。この写真は構図が素晴らしいと思う。とてもバランスがとれているしね。これまでの僕の作品のアートワークは鮮やかな色を使っていたんだけど、新作はスタイル的にもこれまでのアイデアから一歩先に進んだものだと思っていたから、白いジャケットがとても良く合うと思った。何よりこの写真がしっくりきたんだよ。



—新作を引っさげての大阪でのライヴはいかがでしたか?

EG: 最高だった。日本でのライヴは大好きなんだ。僕らにとって1ヶ月半ぶりのライヴだったんだよ。アルバムが出てからずっとツアーをまわっていて数えるほどしか休みがなかったから、何かを変える余裕がなかったんだけど、振り返っていろんなことを変える時間が年末に初めてできたんだ。だからセットはこれまでと少し変えてみた。これまでに演奏したことのない曲もいくつかやったし、僕らは最高に楽しかったよ。オーディエンスも楽しんでくれたらいいけど。東京公演も楽しみだな。

—ところで、“チルウェイヴ”という言葉についてはどのように感じていますか? 最初にこの言葉を聴いたときは、ちょっと意味がわからなかったんですが。

EG: 僕もわからなかった!

—“グローファイ”とか。

EG: そうそう(笑)一体何だか理解に苦しむよね。インターネットで作り上げられたジャンルなんだと思う。ネット上に転がっている全てのものがそうであるように、そこには幾層もの皮肉が詰まっているんだ。こういった言葉はちょっとバカにしてつけられたんだと思うよ。そうは言うものの、確かに“チルウェイヴ”というジャンルが誕生していると思う。最近では自分が数年前に作った音楽にインスパイアされたと思われる、新しい音楽が出て来ているからね。きっと今から10年もすれば、ちょっとした遺産になるのかも。こういったぼんやりしたチルウェイヴのアルバムを収集する人も出てくるかもね(笑)でもウォッシュト・アウトはさまざまな影響のコンビネーションだと思うんだ。このプロジェクトは複数の異なる方向に進むことができると思うし、その方向性がチルウェイヴであろうがなかろうが、僕は気にしないようにしているよ。

—“チルウェイヴ”という言葉が正確にフィットしているかどうかはわからないですが、あなたの音楽の持つ浮遊感はとても気持ちが良いと思います。

EG: そう! それが僕の音楽の重要な部分なんだ。今後はいろんな楽器を試したり、これまでとは少し違うスタイルに挑戦したりはするかもしれないけれど、そういったフィーリングは決して失わないようにするよ。それが僕にとっては自然なやり方なんだ。僕の作品は深く考えて合理的に処理するようなことはしない。曲作りをしているときは、ただ楽器を演奏して、3時間後に曲ができあがっていることが多い。そのプロセスに陶酔してしまうんだ。

—今後の予定は?ずっとアーティスト活動を続けていきたいですか?

EG: そう願うよ。音楽は僕の情熱だしね。

—アーティストでやっていこう、と決心した瞬間は?

EG: 僕には音楽業界での経験がないから、ある時、レーベルにいる信頼している相談相手に「ツアーに出るなら昼間の仕事を辞めなければならないけど、その自信がない」と言ったんだ。そしたら彼が笑い出して、「お前なら大丈夫だよ。少なくとも今後3、4年は心配する必要はない」って。それはかなり初期の段階だった。同時に音楽活動は自分を再改革して良い作品を生み出すことだと思っている。仕事としての保障は全くないけれど、これまでに達成してきたことには満足しているし、もし明日に全てが終わったとしても僕は満足だよ。

—今後もたくさんの作品を楽しみにしています。

EG: ありがとう! 僕もたくさんの作品を作りたいと思うよ。

—最後にMTVを観ている日本のファンにメッセージをお願いします。

EG: みんなが僕のアルバムを気に入ってくれたらいいな。いつかライヴを観に来てね。今回はこの1年で3度目の来日で、日本は大好きなんだ。いつも楽しい時を過ごしているよ!




ウォッシュト・アウト:

アトランタ出身のアーネスト・グリーンによるプロジェクト。EP『Life Of Leisure』のリリースにより、ジョージア州の片田舎で静かで孤独な暮らしを送っていたアーネストは、一夜にしてブログで最も注目を浴びる人物になった。その年のイヤーポールを決める投票で、このEPはどの音楽メディアでも高い評価を獲得。深いサイケデリックとダンスのエナジーを持って料理された彼のポップ・ソングは、後に数々の模倣者を生み出した。

日本オフィシャルサイト>>

※チルウェイヴ/グローファイ:
ローファイでチルアウトな感覚があるインディのクラブ・ミュージック。シンセやループ、サンプリングやヴォーカルエフェクト他を使って、そこにディスコ、アンビエント、インディー・ロック、シューゲイザーの要素を混ぜ合わせたようなサウンド。特定の発信地を持たず、インターネットを介して世界中のアーティスト同士がつながったり、リスナーが爆発的に広がったりしているムーヴメントで、ウォッシュト・アウトの他にもネオン・インディアン、メモリー・カセット、トロ・イ・モワ等が属している。チルウェイヴとグローファイは同義で、「Hipster Runoff」というブログを運営しているカルロスという人が作った言葉と言われている。


Interview + Text: Nao Machida

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デヴィッド・フィンチャーが語る『ドラゴン・タトゥーの女』製作秘話

2012-02-09
ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーとヤー・ヤー・ヤーズのカレン・Oによるレッド・ツェッペリンの「移民の歌」のカヴァーにのせて、真っ黒いコールタールのような液体に絡まった人間が映し出された、ミュージックビデオのように強烈なオープニング・タイトルからスタートする『ドラゴン・タトゥーの女』。言わずと知れたフィルムメーカー、デヴィッド・フィンチャーによる話題の最新作が、いよいよ2月10日(金)に全国で公開される。

『セブン』で世界を震撼させた鬼才は、今作でも殺人、レイプ、ヴァイオレンスなど、目を背けたくなるほどにダークなシーンの数々を、原作に残酷なほど忠実に、恐ろしくも魅力的な独特の視線で描いている。1月の来日時、フィンチャー監督がMTV Newsをはじめとする日本のメディアの取材に応じ、極寒のスウェーデンで撮影された今作の製作秘話を驚くほど気さくにユーモアを交えて語ってくれた。



—誰かの悪夢に突き落とされたかのような冒頭のオープニング・タイトルから、一気に作品の世界に引き込まれました。あの部分ではトレント・レズナーとヤー・ヤー・ヤーズのカレン・Oによるレッド・ツェッペリンの「Immigrant Song(邦題: 移民の歌)」のカヴァーが使用されていましたが、なぜあの曲を使用したのですか?

デヴィッド・フィンチャー監督(以下、DF): スウェーデン北部でバンに乗ってロケハンをしていたんだ。iPhoneでレッド・ツェッペリンを聴いていたら「移民の歌」が流れてきた。“We come from the land of the ice and snow(僕らは氷と雪の国からやってきた)”っていう冒頭の歌詞があるだろう。それくらいシンプルなアイデアだよ(笑)ベタだと思ったのだが、だからといって使わない手はないと思った。それでトレントに電話をして、「「移民の歌」のカヴァーをするのはどう思う?」って聞いたんだ。彼も最初はベタだとあきれて、「今さらレッド・ツェッペリンはやめた方がいいよ」って言っていた。でもそれから2週間くらいして僕がLAに帰ってきた時に、カレンのヴォーカルが入ったあのカヴァーを聴かせてくれたんだ。それを聴いた僕らは口を揃えて「これはティーザーで使うべきだ」「オープニング・タイトルで使うべきだ」とうなっていたよ。

—ちなみに劇中のワンシーンで、ナイン・インチ・ネイルズのロゴ入りTシャツが衣装として使用されていて吹き出してしまいました。あれは監督のアイデアだったのですか?

DF: (笑)ああ、僕がトレントに許可を得たんだ。彼の許可なしには使えないからね。彼は「いいよ」って言っていた。Tシャツを着た男は引きこもりで人口統計学的に最も魅力的とはいえない人だけど、それでもトレントは「構わないよ、使いなよ」って言ってくれたよ。

—今作では撮っている人のリスベットへの愛が強く感じられました。それは観る者の考え過ぎでしょうか? それとも実際に他の作品の登場人物よりもリスベットには愛を感じていたのでしょうか?

DF: そんなことはないよ。僕は自分の作品における全ての登場人物に愛着を持つ必要があると思っている。たとえば『ソーシャル・ネットワーク』のマークには素晴らしくて面白い人だと感じた部分があったし、彼のことを尊敬していた。信じられないくらいバカバカしい失敗もするし、短絡的な行動もあったけれどね。エドゥアルドについてもウィンクルボス兄弟についても同じことが言える。全ての登場人物には存在意義があるわけだから、作品に登場する人物のことは決して侮辱しないようにしている。

今作の2人のことも大好きだよ。僕はミカエル・ブルムクヴィストと一緒にいるリスベットが大好きなんだ。ダニエル(・クレイグ)が演じたブルムクヴィストについては、たくさん話し合った。スウェーデン版の映画では、ミカエルはとても真面目で正義感が強い人物に描かれている。ダニエルには「もっとジェラルド・リヴェラ(註: アル・カポネの金庫の解体作業を撮影する権利を得たことで有名なアメリカのレポーター。壁を破って金庫までたどり着いたものの、金銀財宝が隠されているとされていた金庫の中は空っぽだった)のような一面を出すように」って常に言っていたんだ。マイクを手に「アル・カポネの金庫は空っぽでした、スタジオにお返しします!」って言うような、笑われるような要素もあるべきだとね。とにかく僕は彼もリスベットも大好きなんだ。


社会派ジャーナリスト、ミカエル・ブルムクヴィストに扮したのはダニエル・クレイグ。

—もしかしたら、ルーニー・マーラさんが演じたからこそ、監督のリスベットへの愛情が感じられたのではないかという気がしましたが。

DF:
ルーニーのことは人としても役者としても大好きだし、これ以上のリスベットはなかったと思っている。多くの人はルーニーが選ばれた理由について、僕らが見つけることのできた無名の女優の中で一番良かったからだと推測しているが、そこは論点ではない。僕らはストックホルムにもベルリンにもレイキャビクにもニューヨークにもシドニーにもパリにも事務所を構えてオーディションを行った。その結果、ルーニーがこのリスベットを演じるのに世界で一番適した役者だったから起用したんだ。彼女と僕が良い友人同士になれたのは、お互いを支え合う必要があったからさ。僕らはリスベットをどれだけうまく描けるかに命をかけていたからね。そのためにはお互いを信頼して限界まで挑む必要があった。

—今作を観て最も驚いたのは、原作では2作目で明かされる大きな秘密をリスベットがあっさりと明かしたことです。これはひょっとして監督の中で既に三部作の構想ができあがっているということですか?

DF: いや、三部作としては考えていなかったよ。1つのストーリーとして考えていたからこそ、秘密を出してしまったんだ。リスベットはその行動の多くが理解し難いし、計り知れない秘密を抱えている。ルーニーの演技の多くは彼女への注意をそらすためのものだ。だからこそ、観客やミカエルはリスベットに興味を持つ。でもずっと注意をそらしていたら飽きられてしまうからね。注目を与えてくれた観客にお返しをする必要がある。それで僕らはリスベットがさまざまなことを経て、「OK、ほんの少しだけ自分について明かす心の準備が整った」と考える瞬間を模索したんだ。「秘密を明かして、コーヒーでも入れよう」ってね。それはミカエルの道徳心にとっては、かなり強烈な情報なわけだけど(笑)僕らはリスベットとミカエルの間に絆が生まれたことを示す何かが必要だった。それはセックスではなく、仕事への満足感でもなく、何かもっと大きなものである必要があった。リスベットが秘密を明かすことによって2人の絆を描こうと考えたんだ。



—今作は控えめに言っても強烈なシーンが多く、非常にダークな作品です。暗くて寒い、自殺率が高いことでも有名な真冬のスウェーデンで撮影されたわけですが、現場の雰囲気はいかがでしたか? 壁にぶち当たったことはありましたか?

DF: スウェーデン人に自殺率のことを聞くと、すごくこだわるんだよね。彼らは日本の自殺率もスウェーデンと同じくらい高いはずで、スウェーデンの方が正直に正確な統計を出しているだけだって言っていたよ(笑)でも僕らはあくまでも架空の世界を演じていたわけだから、撮影は苦痛ではなかったよ。確かにとても気まずいシーンはあったけどね。だって、「これから2日間は裸になってもらって、手錠をしてベッドに縛りつけるから」とか伝えなければならなかったわけだから。でもジョークを言ったりして笑わせて、明るい雰囲気を作ろうと努めていた。

たとえば劇中のレイプのシーンでは、1台のカメラは後方に、もう1台はリスベットのリュックサックのところに置いて、15テイクほどを事務的に撮影した。全てのアクションを収めるためにね。あのシーンの撮影はかなり初期の段階に行ったのだが、下着を破って、彼女の上にまたがって、服を引き裂いて、といった全てのタイミングを試行錯誤しながら撮影した。最後のテイクにたどり着いたとき、手足を縛られ、猿ぐつわをはめられて、うつぶせに横たわったルーニーのところへ行き、「OK、僕が欲しいものは全て撮れたから、あとは君たちで楽しんで」って伝えたんだ。それがあのシーンの最後のテイクだった。そうやって雰囲気作りをしながら撮影していたよ。

—レイプのシーンでは、リスベットが原作には書かれてないような雄叫びを上げたのが印象的でした。

DF: 雄叫びというより子どものような叫びだったよね。あのシーンについては、ルーニーに「君は叫ぶことになるけど、事前には聞かせてほしくない。ただ準備しておいてくれ」と伝えてあった。でも当日、その声は本当に恐ろしいところから出てきた。リスベットは賢すぎて、あの状況に自分が置かれたことを受け入れられないんだ。それまでのリスベットは自分が悪用されないように、とにかく気をつけて自分を守ってきた。それがちょっとした油断の隙に彼にあそこまでされてしまう状況が信じられなくて、自分にすごく腹を立てているんだ。僕らはそういった状況について話し合った。

撮影当日、スタッフがセッティングをして、ルーニーが口に猿ぐつわをはめられてスタンバイして、そして叫び始めた。撮影中に危険なことがないように、僕は彼女の表情が見える位置で見ていたのだが、叫んでいる彼女の首の後ろの毛が逆立っているのが見えた。それくらい迫力があったんだ。まるで子どものような叫び声だった。常に自分を守ろうと気をつけてきたリスベットが自分に腹を立てていた。他にも興味深かったのは、途中でルーニーが服従したかのように叫ぶのをやめてしまったこと。相手の男は彼女が抵抗すればするほど興奮するから、リスベット(ルーニー)は途中からこれ以上この男を喜ばせたくないと思ってあえて叫ばなくなる。彼女はそこまで考えて演じていたわけだ。あの叫びには感心したよ。あれは100パーセント、ルーニーが考えた演技だ。


体当たりの演技でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたルーニー・マーラ。

—スウェーデンで撮影したことで、アメリカでは決して撮れなかったような、監督自身も予想していなかった映像は撮れましたか?

DF: ヴァンゲル家に続くあの道はとても独特だと思う。それに金持ちが猟をするために建てたマナーハウス。ああいった豪邸の多くが今はロッジとして使用されているのだが、あのような建築はアメリカにはないよ。この作品の舞台をシアトルに移そうとかいうようなアイデアは最初からなかった。検討すらしなかったことだ。これはスウェーデンを舞台にした非常にスウェーデン的なストーリーだから、スウェーデンで撮影するのが当然だと思った。

—前作の『ソーシャル・ネットワーク』では、そっくりな双子(アーミー・ハマーの一人二役)が実はCG処理だったと知って驚きましたが、今作では観る人が気づかないようなところで最新の技術を使っている部分はありますか?

DF: 映画の終盤に出てくるバイクのチェイス・シーンで、ルーニーどころかスタント・ウーマンを使っても、ヘルメットなしにバイクに乗って撮影することは許されていなかったんだ。だから実際の撮影はフランス人のスタント・ウーマンがヘルメットをかぶった状態で行って、あとからCG処理でルーニーの頭に差し替えたよ。

—「移民の歌」以外にも、かなり恐ろしいシーンでエンヤの「Orinoco Flow」が使用されていましたが、あのようなシーンにあの曲を選んだ理由は?

DF: 誰かが人を痛めつけているときに、ああいう耳心地良い音楽を流したら気持ち悪くておかしいと思ってね。あの曲かABBAかなって思ってさ(笑)



—エンド・クレジットでは、トレント・レズナーと妻のマリクイーン・マンディグ、アティカス・ロスのバンド、ハウ・トゥ・デストロイ・エンジェルズによるブライアン・フェリーの「Is Your Love Strong Enough?」のカヴァーを使用されていましたが、あれはトム・クルーズの映画『レジェンド』の主題歌でしたよね。

DF:
リドリー・スコットの映画と言ってほしいね(笑)ある日偶然にあの曲を聴いて、もし女性が歌ったら良いかもなって思ったんだ。それで試してみたら気に入ったんだよ。当初は最後のシーンのBGMとして使っていたんだけど、ちょっと押し付けがましく感じたからエンド・クレジットで流すことにしたんだ。次回作にはプロディジーの「Firestarter」を考えているよ(笑)

—最後に次回作として『海底2万マイル』を撮ることが決定しているそうですが、どのようなネモ船長を見せてくれるのですか?

DF: まだ脚本もないから、何も言えないよ!

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『ドラゴン・タトゥーの女』
凍てつくようなスウェーデンの冬。ジャーナリスト、ミカエル・ブルムクヴィストのもとに、財閥一家の大富豪から奇妙な依頼が舞い込んでくる。40年前の少女失踪事件の真実を暴き、犯人を捜してほしいというのだ。ミカエルは背中に龍の入れ墨(ドラゴン・タトゥー)を入れたアウトローな天才ハッカー、リスベット・サランデルと共に猟奇事件の真相に迫る…。

監督: デヴィッド・フィンチャー
脚色: スティーヴン・ザイリアン
原作: スティーグ・ラーソン
キャスト: ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ、クリストファー・プラマー、ほか
2月10日(金)TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー!

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『ドラゴン・タトゥーの女』主演 ルーニー・マーラ来日インタビュー
『ドラゴン・タトゥーの女』を観るべき5つの理由

Interview + Text: Nao Machida

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『ドラゴン・タトゥーの女』主演 ルーニー・マーラ来日インタビュー

2012-02-08
「誰がリスベット・サランデルを演じるのか?」——全世界で6500万部を売り上げたベストセラー小説を鬼才デヴィッド・フィンチャーが映画化することが決定したとき、ファンの頭に最初に浮かんだ疑問はこれだろう。スカーレット・ヨハンソンやナタリー・ポートマン、クリステン・スチュワートなど、ハリウッドの人気女優がこぞって演じたがったという『ドラゴン・タトゥーの女』の主役の座を射止めたのは、どちらかというと無名で、アウトローな天才ハッカーのイメージとはかけ離れた若手女優だった。

彼女の名前はルーニー・マーラ。フィンチャー監督の前作『ソーシャル・ネットワーク』の冒頭シーンで、主人公をばっさりと振る元彼女を演じたお嬢さま風の女の子だ。そのキャスティングに世間が議論を戦わせる中、マーラは着々と役作りに取りかかり、それまでのイメージを一新して完全にリスベットに変身してみせた(※2/26に開催されるアカデミー賞では主演女優賞にノミネートされている)。ここで紹介するのは、映画『ドラゴン・タトゥーの女』を引っさげて初来日したマーラのWEB媒体合同インタビュー。素顔の彼女はとてもシャイで言葉数も多くはなかったが、周囲に流されない芯の強さを感じさせる凛とした女性だった。



—まずはアカデミー賞主演女優賞ノミネートおめでとうございます。その喜びを最初にどのようにどなたに伝えましたか?

ルーニー・マーラ(以下、RM): 誰にも連絡する必要はなかったの、みんなが電話をくれたから(笑)確か最初に話したのはパパだったと思う。とても喜んでくれたわ。誰もが誇りに思ってくれて、応援してくれたの。嬉しかった。

—今作であなたが演じたリスベット役を巡って、多くの女優がオーディションを受けたとうかがっていますが、具体的にどのようなスクリーン・テストを受けたのですか?

RM: ごく一般的なオーディションだったわ。最初はキャスティング・ディレクターとのオーディションで、脚本からのいくつかのシーンを彼女の前で演じたの。その後、最初のスクリーン・テストを受けて、それはハリウッドの他のどの作品のスクリーン・テストとも同じようなものだった。それからあと何回かスクリーン・テストを受けて、最終的にダニエル(・クレイグ)とスクリーン・テストをして、そしてデヴィッドに見てもらうためのヘアメイクのテストがあって…そんな感じ。大半はよくあるプロセスだったわ。

—オーディションのどんな部分がデヴィッド・フィンチャー監督の決め手になったのだと思われますか?

RM: わからないわ。それは監督に聞いた方が良い質問かもね。監督はオーディションの初期段階から私がこの役に合うと確信していて、あとは他のみんなを説得するだけだったんだと思う。だからオーディションがあんなに長引いたんじゃないかな。長引けば長引くほど、彼は確信していったみたい。その時間で私の中にリスベットのクオリティを見出すことができたから。リスベットと同じように決して諦めず、この役のために何でもやろうという私の姿勢が伝わったんだと思う。

—オーディションの期間はどれくらいでしたか?ご自分から受けたのですか?

RM: 2ヶ月ちょっとかかったわ。自分から受けたくて受けたの。

—フィンチャー監督とは『ソーシャル・ネットワーク』に続いて2度目のお仕事ですが、演出面で他の監督と違うところや、印象的なことがあれば教えてください。

RM: 彼はとても協力的な監督なの。何でも話し合って考えていくのよ。役者とのコラボレーションを受け入れてくれるけど、同時に自身の映画製作に関して揺るぎない信念を持っている人。細部までこだわる監督で、映画製作におけるあらゆる側面において知識が豊富なの。技術的な面から物語を語る上でのことまで、全てにおいて卓越しているわ。

—今こうしてお話しをなさっている様子を見ると、あなたの落ち着いた雰囲気とリスベットの激しさがなかなか結びつかないのですが、リスベットが持つ熱のようなものは普段のあなたにもあるのですか?

RM: リスベットのような情熱は誰にでもあるものだと思う。でも、私は必ずしも今の意見に同意しないわ。リスベットはとても静かな人だと思うし、映画ではほとんど話さないくらいよ。口数が少ないかわりに、話したときはその発言が常に重要なの。私は彼女のことをとても静かな人だと思ったわ。だからこそ彼女が怒りをあらわにすると、よりパワフルに感じるのかもしれないわね。

—とはいえ、あれだけの熱を発する役はなかなかないと思うのですが、演じている最中や演じた後に、リスベットの性格を引きずることはありましたか?

RM: いいえ、引きずることはなかったわ。


リズベットに扮したルーニーはまるで別人。

—監督と共同作業で進めていったとおっしゃっていましたが、完成した映画を観るとリスベットはとても魅力的で豊かなキャラクターに描かれている印象を持ちました。リスベットというキャラクターはクランクイン当時からクランクアップまでにどのような変化を遂げましたか?

RM: 全ては原作の中に書かれていたことよ。私たちはとにかく本に忠実に描いただけ。リスベットは原作でもそうであるように、映画を通じて物語の最初から少しずつ成長して変化していく。でもその全ては本に書かれていることなの。

—映画の中のリスベットは原作に忠実であると同時に、どこか少しはかなげでもう1度会いたいと思うような存在でした。役作りをするにあたって、監督を含む製作陣から要求されたことと、ご自身で準備したことを教えてください。

RM: もちろん、役に挑むにあたって自分の中でのイメージは持っていたわ。でも映画の中で私たちが描いたリスベットと同じくらい、原作のリスベットも壊れやすくて気になる存在だと思うの。だからこそ、読者はシリーズの2作目や3作目を読むんだと思うわ。本を読むとリスベットと恋に落ちてしまって、彼女の身に何が起こるのか気になるからね。ルックスについては、私とデヴィッドと衣装デザイナーのトリッシュ・サマーヴィル、その他たくさんの人たちとのコラボレーションで決めたの。彼女の容姿についてたくさん話し合ったのよ。私は自分がどうなるべきかよくわかっていた。原作を読んだから、リスベットになるために何をしなければならないかは知っていたわ。彼女をどういうルックスにすべきかたくさんの話し合いが行われて、その過程でいろんなことを試したけれど、どんなことでも楽しんでできたわ。リスベットという役に入る上で重要なプロセスだと感じていたし、全てのことを喜んでやりたいと思った。

—時に感情的で大胆な行動に走るリスベットですが、彼女の行動で一番共感したことは?

RM:
もちろん共感できなければ演じることはできなかったと思う。さまざまなシーンで彼女に共感したわ。でも一番共感した行動を選ぶことはできないの。私は彼女という存在に共感しているのよ。

—テイク数が多いことで知られるフィンチャー監督ですが、今作のリスベットのシーンで最もテイク数が多かったのは?

RM: わからないわ。彼は常にたくさんのテイクを撮る監督だから、私はあまり気にしていなかったの。それが彼の手法だから。

—もうこれ以上できないと思ったり、躊躇したりしたことは?

RM: ないわ。

—完璧主義なのですか?

RM: はい。

—フィンチャー監督も完璧主義なイメージですけど。

RM: そうね、私たちはとても似ていると思う。


初来日に緊張気味。翌日の会見では「来日できただけでワクワクしています」とコメント。

—ご自分のイメージを180度変えてしまうような役に26歳にして出会ったわけですが、今後はどのような役に挑戦したいですか?

RM: 今後も興味深くて複雑な女性を演じられることを願うわ。尊敬している監督たちと仕事をして、出演していても観ていても楽しい映画を作り続けたいと思う。

—尊敬している監督とは?

RM:
尊敬している才能豊かな監督はたくさんいるから、あえて誰かを選ぶことはできないわ。

—あなたが観ていて楽しいのはどんな作品ですか?これまでに最もたくさん観た映画は?

RM:
うーん…すごくたくさんあるから…。一番のお気に入りとかはないけど、デヴィッドの作品は全部好きだし、『ペーパー・ムーン』は大好き。去年はデヴィッドに勧められてたくさんの映画を観たのだけど…すぐには思い出せないな(笑)でも『ペーパー・ムーン』はここ1年で観た中で最も好きな映画よ。

—そもそも女優になろうと思ったきっかけは?
 
RM: 幼い頃から演じることが好きで、興味を持っていたの。常に役者になりたいと思っていたけれど、特にきっかけになった瞬間はないわ。幼い頃から映画を観たり舞台を観たりするのが好きだったのよ。

—そして今、アカデミー賞にノミネートされるまでに成長したわけですが、これまでのキャリアを振り返って満足していますか?

RM:
わからないわ…まだまだやりたいことはたくさんあるし、達成したいこともたくさん残っている。学ぶべきこともいっぱいあるの。

—『ソーシャル・ネットワーク』や『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』など素晴らしいドラマ作品を多数手掛けているフィンチャー監督ですが、今作は『ゾディアック』や『セブン』などと同様、久々に猟奇性の強い作品であることも話題になりそうですね。

RM: 特に作品を比較する必要はないと思う。どの作品もそれぞれ別の意味で並外れたものだと思うわ。全ての作品に彼の息がかかっていて、彼だからこそ実現したものばかりよ。だから、私は監督の作品を比較して考えたことはないの。全ての作品がそれぞれに特別なものだと思う。

—トレント・レズナーとアティカス・ロスが手掛けた音楽についてはどう思いましたか?撮影中に聴いていた音楽はありますか?

RM: スウェーデンでの撮影中はあまり音楽を聴いていなかったの(笑)彼らの手掛けた音楽は素晴らしいと思うわ。映画の世界観を見事にとらえていたし、スウェーデンの寒さをサウンドで表現していた。最高よ。

—早くも続編の製作が決定したという噂が出ていますが、本当ですか?

RM:
私が知っている限りでは、そのような話はないわ。

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『ドラゴン・タトゥーの女』

凍てつくようなスウェーデンの冬。ジャーナリスト、ミカエル・ブルムクヴィストのもとに、財閥一家の大富豪から奇妙な依頼が舞い込んでくる。40年前の少女失踪事件の真実を暴き、犯人を捜してほしいというのだ。ミカエルは背中に龍の入れ墨(ドラゴン・タトゥー)を入れたアウトローな天才ハッカー、リスベット・サランデルと共に猟奇事件の真相に迫る…。

監督: デヴィッド・フィンチャー
脚色: スティーヴン・ザイリアン
原作: スティーグ・ラーソン
キャスト: ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ、クリストファー・プラマー、ほか
2月10日(金)TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー!

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デヴィッド・フィンチャーが語る『ドラゴン・タトゥーの女』製作秘話

Photos (Rooney Mara): Kenta Terunuma
Interview + Text: Nao Machida

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