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デヴィッド・フィンチャーが語る『ドラゴン・タトゥーの女』製作秘話

2012-02-09
ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーとヤー・ヤー・ヤーズのカレン・Oによるレッド・ツェッペリンの「移民の歌」のカヴァーにのせて、真っ黒いコールタールのような液体に絡まった人間が映し出された、ミュージックビデオのように強烈なオープニング・タイトルからスタートする『ドラゴン・タトゥーの女』。言わずと知れたフィルムメーカー、デヴィッド・フィンチャーによる話題の最新作が、いよいよ2月10日(金)に全国で公開される。

『セブン』で世界を震撼させた鬼才は、今作でも殺人、レイプ、ヴァイオレンスなど、目を背けたくなるほどにダークなシーンの数々を、原作に残酷なほど忠実に、恐ろしくも魅力的な独特の視線で描いている。1月の来日時、フィンチャー監督がMTV Newsをはじめとする日本のメディアの取材に応じ、極寒のスウェーデンで撮影された今作の製作秘話を驚くほど気さくにユーモアを交えて語ってくれた。



—誰かの悪夢に突き落とされたかのような冒頭のオープニング・タイトルから、一気に作品の世界に引き込まれました。あの部分ではトレント・レズナーとヤー・ヤー・ヤーズのカレン・Oによるレッド・ツェッペリンの「Immigrant Song(邦題: 移民の歌)」のカヴァーが使用されていましたが、なぜあの曲を使用したのですか?

デヴィッド・フィンチャー監督(以下、DF): スウェーデン北部でバンに乗ってロケハンをしていたんだ。iPhoneでレッド・ツェッペリンを聴いていたら「移民の歌」が流れてきた。“We come from the land of the ice and snow(僕らは氷と雪の国からやってきた)”っていう冒頭の歌詞があるだろう。それくらいシンプルなアイデアだよ(笑)ベタだと思ったのだが、だからといって使わない手はないと思った。それでトレントに電話をして、「「移民の歌」のカヴァーをするのはどう思う?」って聞いたんだ。彼も最初はベタだとあきれて、「今さらレッド・ツェッペリンはやめた方がいいよ」って言っていた。でもそれから2週間くらいして僕がLAに帰ってきた時に、カレンのヴォーカルが入ったあのカヴァーを聴かせてくれたんだ。それを聴いた僕らは口を揃えて「これはティーザーで使うべきだ」「オープニング・タイトルで使うべきだ」とうなっていたよ。

—ちなみに劇中のワンシーンで、ナイン・インチ・ネイルズのロゴ入りTシャツが衣装として使用されていて吹き出してしまいました。あれは監督のアイデアだったのですか?

DF: (笑)ああ、僕がトレントに許可を得たんだ。彼の許可なしには使えないからね。彼は「いいよ」って言っていた。Tシャツを着た男は引きこもりで人口統計学的に最も魅力的とはいえない人だけど、それでもトレントは「構わないよ、使いなよ」って言ってくれたよ。

—今作では撮っている人のリスベットへの愛が強く感じられました。それは観る者の考え過ぎでしょうか? それとも実際に他の作品の登場人物よりもリスベットには愛を感じていたのでしょうか?

DF: そんなことはないよ。僕は自分の作品における全ての登場人物に愛着を持つ必要があると思っている。たとえば『ソーシャル・ネットワーク』のマークには素晴らしくて面白い人だと感じた部分があったし、彼のことを尊敬していた。信じられないくらいバカバカしい失敗もするし、短絡的な行動もあったけれどね。エドゥアルドについてもウィンクルボス兄弟についても同じことが言える。全ての登場人物には存在意義があるわけだから、作品に登場する人物のことは決して侮辱しないようにしている。

今作の2人のことも大好きだよ。僕はミカエル・ブルムクヴィストと一緒にいるリスベットが大好きなんだ。ダニエル(・クレイグ)が演じたブルムクヴィストについては、たくさん話し合った。スウェーデン版の映画では、ミカエルはとても真面目で正義感が強い人物に描かれている。ダニエルには「もっとジェラルド・リヴェラ(註: アル・カポネの金庫の解体作業を撮影する権利を得たことで有名なアメリカのレポーター。壁を破って金庫までたどり着いたものの、金銀財宝が隠されているとされていた金庫の中は空っぽだった)のような一面を出すように」って常に言っていたんだ。マイクを手に「アル・カポネの金庫は空っぽでした、スタジオにお返しします!」って言うような、笑われるような要素もあるべきだとね。とにかく僕は彼もリスベットも大好きなんだ。


社会派ジャーナリスト、ミカエル・ブルムクヴィストに扮したのはダニエル・クレイグ。

—もしかしたら、ルーニー・マーラさんが演じたからこそ、監督のリスベットへの愛情が感じられたのではないかという気がしましたが。

DF:
ルーニーのことは人としても役者としても大好きだし、これ以上のリスベットはなかったと思っている。多くの人はルーニーが選ばれた理由について、僕らが見つけることのできた無名の女優の中で一番良かったからだと推測しているが、そこは論点ではない。僕らはストックホルムにもベルリンにもレイキャビクにもニューヨークにもシドニーにもパリにも事務所を構えてオーディションを行った。その結果、ルーニーがこのリスベットを演じるのに世界で一番適した役者だったから起用したんだ。彼女と僕が良い友人同士になれたのは、お互いを支え合う必要があったからさ。僕らはリスベットをどれだけうまく描けるかに命をかけていたからね。そのためにはお互いを信頼して限界まで挑む必要があった。

—今作を観て最も驚いたのは、原作では2作目で明かされる大きな秘密をリスベットがあっさりと明かしたことです。これはひょっとして監督の中で既に三部作の構想ができあがっているということですか?

DF: いや、三部作としては考えていなかったよ。1つのストーリーとして考えていたからこそ、秘密を出してしまったんだ。リスベットはその行動の多くが理解し難いし、計り知れない秘密を抱えている。ルーニーの演技の多くは彼女への注意をそらすためのものだ。だからこそ、観客やミカエルはリスベットに興味を持つ。でもずっと注意をそらしていたら飽きられてしまうからね。注目を与えてくれた観客にお返しをする必要がある。それで僕らはリスベットがさまざまなことを経て、「OK、ほんの少しだけ自分について明かす心の準備が整った」と考える瞬間を模索したんだ。「秘密を明かして、コーヒーでも入れよう」ってね。それはミカエルの道徳心にとっては、かなり強烈な情報なわけだけど(笑)僕らはリスベットとミカエルの間に絆が生まれたことを示す何かが必要だった。それはセックスではなく、仕事への満足感でもなく、何かもっと大きなものである必要があった。リスベットが秘密を明かすことによって2人の絆を描こうと考えたんだ。



—今作は控えめに言っても強烈なシーンが多く、非常にダークな作品です。暗くて寒い、自殺率が高いことでも有名な真冬のスウェーデンで撮影されたわけですが、現場の雰囲気はいかがでしたか? 壁にぶち当たったことはありましたか?

DF: スウェーデン人に自殺率のことを聞くと、すごくこだわるんだよね。彼らは日本の自殺率もスウェーデンと同じくらい高いはずで、スウェーデンの方が正直に正確な統計を出しているだけだって言っていたよ(笑)でも僕らはあくまでも架空の世界を演じていたわけだから、撮影は苦痛ではなかったよ。確かにとても気まずいシーンはあったけどね。だって、「これから2日間は裸になってもらって、手錠をしてベッドに縛りつけるから」とか伝えなければならなかったわけだから。でもジョークを言ったりして笑わせて、明るい雰囲気を作ろうと努めていた。

たとえば劇中のレイプのシーンでは、1台のカメラは後方に、もう1台はリスベットのリュックサックのところに置いて、15テイクほどを事務的に撮影した。全てのアクションを収めるためにね。あのシーンの撮影はかなり初期の段階に行ったのだが、下着を破って、彼女の上にまたがって、服を引き裂いて、といった全てのタイミングを試行錯誤しながら撮影した。最後のテイクにたどり着いたとき、手足を縛られ、猿ぐつわをはめられて、うつぶせに横たわったルーニーのところへ行き、「OK、僕が欲しいものは全て撮れたから、あとは君たちで楽しんで」って伝えたんだ。それがあのシーンの最後のテイクだった。そうやって雰囲気作りをしながら撮影していたよ。

—レイプのシーンでは、リスベットが原作には書かれてないような雄叫びを上げたのが印象的でした。

DF: 雄叫びというより子どものような叫びだったよね。あのシーンについては、ルーニーに「君は叫ぶことになるけど、事前には聞かせてほしくない。ただ準備しておいてくれ」と伝えてあった。でも当日、その声は本当に恐ろしいところから出てきた。リスベットは賢すぎて、あの状況に自分が置かれたことを受け入れられないんだ。それまでのリスベットは自分が悪用されないように、とにかく気をつけて自分を守ってきた。それがちょっとした油断の隙に彼にあそこまでされてしまう状況が信じられなくて、自分にすごく腹を立てているんだ。僕らはそういった状況について話し合った。

撮影当日、スタッフがセッティングをして、ルーニーが口に猿ぐつわをはめられてスタンバイして、そして叫び始めた。撮影中に危険なことがないように、僕は彼女の表情が見える位置で見ていたのだが、叫んでいる彼女の首の後ろの毛が逆立っているのが見えた。それくらい迫力があったんだ。まるで子どものような叫び声だった。常に自分を守ろうと気をつけてきたリスベットが自分に腹を立てていた。他にも興味深かったのは、途中でルーニーが服従したかのように叫ぶのをやめてしまったこと。相手の男は彼女が抵抗すればするほど興奮するから、リスベット(ルーニー)は途中からこれ以上この男を喜ばせたくないと思ってあえて叫ばなくなる。彼女はそこまで考えて演じていたわけだ。あの叫びには感心したよ。あれは100パーセント、ルーニーが考えた演技だ。


体当たりの演技でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたルーニー・マーラ。

—スウェーデンで撮影したことで、アメリカでは決して撮れなかったような、監督自身も予想していなかった映像は撮れましたか?

DF: ヴァンゲル家に続くあの道はとても独特だと思う。それに金持ちが猟をするために建てたマナーハウス。ああいった豪邸の多くが今はロッジとして使用されているのだが、あのような建築はアメリカにはないよ。この作品の舞台をシアトルに移そうとかいうようなアイデアは最初からなかった。検討すらしなかったことだ。これはスウェーデンを舞台にした非常にスウェーデン的なストーリーだから、スウェーデンで撮影するのが当然だと思った。

—前作の『ソーシャル・ネットワーク』では、そっくりな双子(アーミー・ハマーの一人二役)が実はCG処理だったと知って驚きましたが、今作では観る人が気づかないようなところで最新の技術を使っている部分はありますか?

DF: 映画の終盤に出てくるバイクのチェイス・シーンで、ルーニーどころかスタント・ウーマンを使っても、ヘルメットなしにバイクに乗って撮影することは許されていなかったんだ。だから実際の撮影はフランス人のスタント・ウーマンがヘルメットをかぶった状態で行って、あとからCG処理でルーニーの頭に差し替えたよ。

—「移民の歌」以外にも、かなり恐ろしいシーンでエンヤの「Orinoco Flow」が使用されていましたが、あのようなシーンにあの曲を選んだ理由は?

DF: 誰かが人を痛めつけているときに、ああいう耳心地良い音楽を流したら気持ち悪くておかしいと思ってね。あの曲かABBAかなって思ってさ(笑)



—エンド・クレジットでは、トレント・レズナーと妻のマリクイーン・マンディグ、アティカス・ロスのバンド、ハウ・トゥ・デストロイ・エンジェルズによるブライアン・フェリーの「Is Your Love Strong Enough?」のカヴァーを使用されていましたが、あれはトム・クルーズの映画『レジェンド』の主題歌でしたよね。

DF:
リドリー・スコットの映画と言ってほしいね(笑)ある日偶然にあの曲を聴いて、もし女性が歌ったら良いかもなって思ったんだ。それで試してみたら気に入ったんだよ。当初は最後のシーンのBGMとして使っていたんだけど、ちょっと押し付けがましく感じたからエンド・クレジットで流すことにしたんだ。次回作にはプロディジーの「Firestarter」を考えているよ(笑)

—最後に次回作として『海底2万マイル』を撮ることが決定しているそうですが、どのようなネモ船長を見せてくれるのですか?

DF: まだ脚本もないから、何も言えないよ!

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『ドラゴン・タトゥーの女』
凍てつくようなスウェーデンの冬。ジャーナリスト、ミカエル・ブルムクヴィストのもとに、財閥一家の大富豪から奇妙な依頼が舞い込んでくる。40年前の少女失踪事件の真実を暴き、犯人を捜してほしいというのだ。ミカエルは背中に龍の入れ墨(ドラゴン・タトゥー)を入れたアウトローな天才ハッカー、リスベット・サランデルと共に猟奇事件の真相に迫る…。

監督: デヴィッド・フィンチャー
脚色: スティーヴン・ザイリアン
原作: スティーグ・ラーソン
キャスト: ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ、クリストファー・プラマー、ほか
2月10日(金)TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー!

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Interview + Text: Nao Machida

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